
発売日:2021年2月5日
ジャンル:ポスト・ロック、ポスト・パンク、アート・ロック、マス・ロック、ノイズ・ロック、クレズマー、実験的ロック
概要
ブラック・カントリー・ニュー・ロードの『For the First Time』は、2021年に発表されたデビュー・アルバムである。ロンドンを拠点とする彼らは、2010年代後半から2020年代初頭にかけて注目を集めた英国の新世代ポスト・パンク/アート・ロック・シーンの中でも、特に異彩を放つ存在だった。ブラック・ミディ、スクイッド、ドライ・クリーニング、フォンテインズD.C.などと並び、ギター・ロックが再び知的で実験的な形で更新されていく流れの中に位置づけられるが、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの音楽は単なるポスト・パンクの再興ではない。そこには、ポスト・ロックの構築美、マス・ロックの変則性、クレズマー的な管楽器の旋律、フリー・ジャズ的な緊張、インディー・ロックの不器用な叙情、そしてインターネット世代特有の引用感覚が混ざり合っている。
本作の時点でのメンバーは、アイザック・ウッド、タイラー・ハイド、ルイス・エヴァンス、ジョージア・エラリー、メイ・カーショウ、ルーク・マーク、チャーリー・ウェインという7人編成である。ギター、ベース、ドラムに加え、サックス、ヴァイオリン、鍵盤が重要な役割を果たしており、一般的なロック・バンドというより、小編成の室内楽団がポスト・ロックを演奏しているような響きを持つ。特にルイス・エヴァンスのサックスとジョージア・エラリーのヴァイオリンは、楽曲に強烈な緊張感と劇的な高揚を与えている。
『For the First Time』というタイトルは、「初めて」という意味を持つ。デビュー・アルバムとしては非常に直接的なタイトルだが、ここには単なる新人らしい初々しさだけでなく、不安、自己提示、演技性、そして自分たちの音楽を初めて世界に差し出すことへの緊張も感じられる。本作の音楽は、完成された安定感よりも、何かがその場で組み上がり、崩れ、再び膨張していくような危うさを持つ。その不安定さが、デビュー作としての魅力になっている。
本作は全6曲で構成されている。曲数は少ないが、各曲は長尺で、展開が多く、一般的なロック・ソングの形式からは大きく外れている。「Instrumental」は、クレズマー風の旋律とポスト・ロック的な反復が組み合わされた導入曲であり、バンドの音楽的な射程を一気に示す。「Athens, France」は、初期シングルを再構成した楽曲で、語り、崩壊、性的・感情的な気まずさが混ざる。「Science Fair」は、アルバム中でも特にノイズと緊張が強く、ライブ空間の不穏な熱気をそのまま閉じ込めたような曲である。「Sunglasses」は、バンドの代表曲であり、階級、富、男性性、自己嫌悪、演技的な語りが長大な構成の中で展開される。「Track X」は、比較的穏やかで叙情的な楽曲だが、その柔らかさの中にも不安がある。そして「Opus」は、クレズマー的な疾走とロックの爆発を結びつけ、アルバムを壮大に締めくくる。
本作の最大の特徴は、緊張と崩壊のコントロールである。ブラック・カントリー・ニュー・ロードの曲は、最初から大音量で押し切るのではない。小さな反復、語りに近いヴォーカル、弦や管の不穏なフレーズ、リズムの変化によって、少しずつ圧力を高めていく。そしてある瞬間に、音が破裂する。この構成は、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーやスリント、トーク・トーク以降のポスト・ロック的な美学と関係しているが、そこに英国ポスト・パンクの皮肉、現代的な不安、そしてアイザック・ウッドの演劇的なヴォーカルが加わることで、独自の表現になっている。
アイザック・ウッドの歌唱は、本作の強烈な個性である。彼は伝統的な意味での美声のシンガーではない。むしろ、語る、叫ぶ、つぶやく、演じる、壊れる、といった表現を行き来する。彼の声には、過剰な自己意識、皮肉、恥、怒り、脆さが同時にある。歌詞もまた、直線的な物語よりも、固有名詞、会話の断片、奇妙な比喩、現代的な文化参照によって構成されている。日本のリスナーにとっては、英語圏の細かなニュアンスや引用をすべて追うのは難しいかもしれないが、声の緊張と音の構築によって、感情の圧力は十分に伝わる。
また、本作は2020年代初頭の若いロック・バンドが、過去のロック史をどのように扱うかを示す作品でもある。ポスト・ロック、ノー・ウェイヴ、ポスト・パンク、クレズマー、ジャズ、インディー、エモ、室内楽が参照されているが、それらは単なる知識として並べられるのではなく、現代の不安定な自己表現の材料として混ぜられている。ブラック・カントリー・ニュー・ロードは、ジャンルを横断すること自体を目的にしているのではない。むしろ、自分たちの不安や違和感を表現するために、既存のロック・フォーマットでは足りないから、複数の音楽語法を必要としている。
『For the First Time』は、デビュー作として非常に完成度が高い一方で、意図的に未完成な緊張も残している。音は粗く、歌は不安定で、曲は時に過剰である。しかし、その粗さこそが本作の魅力である。洗練された完成品ではなく、若いバンドが自分たちの神経をそのまま巨大な構造物に変えようとする瞬間が記録されている。2020年代の英国ロックにおいて、本作は新しい実験的ギター・ミュージックの重要な出発点となったアルバムである。
全曲レビュー
1. Instrumental
アルバム冒頭の「Instrumental」は、タイトル通り歌のないインストゥルメンタル曲である。しかし、単なる導入や前奏ではなく、ブラック・カントリー・ニュー・ロードというバンドの音楽性を一気に示す重要な楽曲である。冒頭からクレズマーを思わせる管楽器とヴァイオリンの旋律が現れ、そこにドラム、ベース、ギターが加わり、曲は徐々に熱を帯びていく。
音楽的には、東欧ユダヤ音楽的な旋律、ポスト・ロック的な反復、マス・ロック的な構築、ジャム・バンド的な熱量が混ざっている。一般的なロック・アルバムの導入であれば、ヴォーカル曲でバンドの顔を提示することが多いが、彼らは最初にインストゥルメンタルを置く。これは、ブラック・カントリー・ニュー・ロードが歌詞やフロントマンだけに依存するバンドではなく、アンサンブルそのものを主役にするバンドであることを示している。
この曲の面白さは、祝祭的でありながら不穏な点にある。旋律には踊りの感覚があり、リズムも前へ進む。しかし、音の積み重ね方にはどこか過剰な圧力があり、単純に楽しいダンス・ミュージックにはならない。むしろ、祭りが制御不能になっていくような感覚がある。明るさと不安、民俗的な旋律と現代的な緊張が同時に存在する。
アルバムの冒頭でこの曲が鳴ることによって、聴き手は最初から通常のギター・ロックの文脈を外される。ここでは歌より先に、集団の演奏があり、構築があり、崩壊への予感がある。「Instrumental」は、本作全体の音楽的語彙を提示する、非常に大胆なオープニングである。
2. Athens, France
「Athens, France」は、初期シングルとしても知られる楽曲をアルバム用に再構成したものであり、バンドの初期の特徴がよく表れている。タイトルは「アテネ、フランス」という地理的には奇妙な組み合わせであり、実在の場所というより、記憶や文化的イメージの混線を思わせる。ブラック・カントリー・ニュー・ロードの歌詞には、こうした固有名詞のずれや、現実と引用が混ざった感覚が多く見られる。
音楽的には、静かな語りのような導入から始まり、徐々に楽器が加わり、曲は感情的な緊張を高めていく。ギターは隙間を作り、サックスやヴァイオリンが不穏な輪郭を加える。曲の展開は、一般的なヴァース/コーラス型ではなく、語りの流れに沿って変化していく。これは、スリント以降のポスト・ロック的な語りのロックを思わせるが、より現代的な自意識と演劇性がある。
歌詞では、親密な関係の気まずさ、自己嫌悪、性的な不安、若者的な過剰な自己意識が断片的に現れる。アイザック・ウッドのヴォーカルは、感情を美しく歌い上げるのではなく、恥ずかしさや苛立ちをそのまま声に乗せる。これにより、曲は単なる恋愛や青春の歌ではなく、関係の中で自分がどう見えているのかを過剰に意識してしまう現代的な不安の歌になる。
「Athens, France」は、初期ブラック・カントリー・ニュー・ロードの魅力である、文学的な断片性と音楽的な構築がよく表れた曲である。美しいメロディよりも、場面の気まずさ、言葉の引っかかり、音が膨らむ瞬間の緊張が重要である。
3. Science Fair
「Science Fair」は、本作の中でも最も不穏で、ノイズ的な緊張が強い楽曲の一つである。タイトルは「科学フェア」を意味し、学校や展示会のような日常的で知的な場面を連想させる。しかし、曲の中でそのイメージはすぐに異様な熱気へ変化する。科学、若さ、見世物、競争、観察されることへの不安が混ざり合う。
音楽的には、静かな導入から始まり、サックスやギター、ドラムが徐々に不穏な圧力を高めていく。リズムは不安定で、音の隙間には緊張がある。曲が進むにつれて、演奏はますます激しくなり、最終的にはノイズと叫びに近いカタルシスへ向かう。ブラック・カントリー・ニュー・ロードの音楽における「溜め」と「爆発」の構造が非常に分かりやすく表れている。
歌詞では、ライブや集会のような場所にいる語り手の緊張、視線、身体の反応、周囲との違和感が描かれる。科学フェアというタイトルは、若者の知的な発表の場を思わせるが、曲の実態は、社会的な場に立たされた身体がパニックに近づいていく感覚である。アイザック・ウッドの声は、冷静な語りから次第に制御を失うように変化し、聴き手もその不安の中へ引き込まれる。
この曲は、ブラック・カントリー・ニュー・ロードが単なる技巧派バンドではないことを示している。変拍子や複雑な構成は、知的な遊びのためだけにあるのではない。それらは、現代的な不安や身体的な緊張を表現するために使われている。「Science Fair」は、本作の中で最も神経質で、攻撃的な楽曲である。
4. Sunglasses
「Sunglasses」は、『For the First Time』の中心的楽曲であり、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの初期を代表する大曲である。長尺の構成、演劇的なヴォーカル、階級意識、男性性、富、自己嫌悪、皮肉が複雑に絡み合い、本作のテーマを最も大きなスケールで提示している。
タイトルの「Sunglasses」は、単なるファッション小物ではない。サングラスは、視線を隠す道具であり、権力や余裕を演出するアイテムであり、自己防衛の仮面でもある。歌詞の中では、高級住宅、富裕層的な生活、女性の父親、社会的地位、男性的な自己演出が断片的に現れる。語り手はそれらに憧れているようでもあり、軽蔑しているようでもあり、その中に自分が取り込まれていくことを恐れているようでもある。
音楽的には、曲は静かな緊張から始まり、徐々に楽器が加わり、長い時間をかけて巨大な爆発へ向かう。ベースとドラムが重い土台を作り、サックスとヴァイオリンが不穏な旋律を重ねる。ギターは攻撃的に鳴るが、曲全体は単純なロック・アンセムにはならない。むしろ、緊張が何度も形を変えながら増幅していく演劇的な構成である。
歌詞の語り手は、非常に不安定である。彼は強がり、富や権力のイメージを身につけようとするが、その言葉の裏には自己嫌悪がある。サングラスをかけることは、自分を守るためであると同時に、自分を別の存在として演じることでもある。この曲における男性性は、安定した力ではなく、脆く、過剰に演じられたものとして描かれる。
「Sunglasses」は、2020年代初頭の英国ロックにおける重要な楽曲である。ポスト・パンク的な語り、ポスト・ロックの構築、現代的な階級不安、ネット世代の自己演出が一つに結びついている。長く、過剰で、時に滑稽でありながら、最終的には圧倒的な感情の爆発へ到達する。本作の核となる楽曲である。
5. Track X
「Track X」は、アルバムの中で最も穏やかで叙情的な楽曲である。タイトルは仮題のように無機質だが、曲自体は非常に柔らかく、親密な感触を持つ。アルバム前半の不穏さや「Sunglasses」の巨大な緊張の後に置かれることで、作品全体に静かな呼吸を与えている。
音楽的には、ギターと弦、管楽器が控えめに絡み、メロディは比較的親しみやすい。アイザック・ウッドのヴォーカルも、ここでは叫びや演劇的な語りよりも、抑えた歌として響く。曲の構成も他の楽曲に比べて穏やかで、バンドの別の側面を示している。
歌詞では、親密な関係、記憶、感謝、距離感が描かれる。ブラック・カントリー・ニュー・ロードの歌詞はしばしば皮肉や不安に満ちているが、この曲には比較的素直な感情がある。ただし、完全に透明なラヴ・ソングではない。そこには、相手との距離をうまく測れない不器用さや、言葉にすることで壊れてしまいそうな感情も含まれている。
「Track X」は、本作の中で重要な緩衝材である。アルバム全体が緊張と爆発だけで構成されていれば、聴き手は疲弊してしまう。この曲は、バンドが静かな叙情も扱えることを示し、次の「Opus」へ向かう前に、感情を一度内側へ戻す役割を果たしている。
6. Opus
アルバム最後を飾る「Opus」は、タイトル通り作品、楽曲、大作を意味する言葉を冠した終曲である。本作の締めくくりとして、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの音楽的な要素が最も劇的に結びついた楽曲である。クレズマー的な旋律、変則的なリズム、ポスト・ロックの構築、ノイズ的な爆発が一体となり、アルバムを激しく閉じる。
音楽的には、冒頭曲「Instrumental」と響き合う構成を持つ。どちらもクレズマー風の旋律が重要であり、バンドのアンサンブルが前面に出る。しかし「Instrumental」が導入としての祝祭的な緊張を持っていたのに対し、「Opus」はより破滅的で、終末的な高揚を持つ。アルバムの始まりと終わりが、同じ音楽語彙によって結ばれている点が重要である。
アイザック・ウッドのヴォーカルは、ここでも演劇的で、感情が次第に高まっていく。歌詞には、自己意識、関係の破綻、言葉の不安定さが感じられる。だが、この曲で最も重要なのは、言葉が最終的に演奏のエネルギーに飲み込まれていく点である。声、サックス、ヴァイオリン、ギター、ドラムが一体となり、曲はほとんど制御不能な速度で進んでいく。
「Opus」は、ブラック・カントリー・ニュー・ロードのデビュー作が持つ過剰さを象徴する終曲である。美しく整った結論ではなく、すべてが加速し、混ざり、崩れながら終わる。その終わり方は、本作の若さと野心にふさわしい。デビュー・アルバムの最後に「Opus」と名づけられた曲を置くこと自体が、皮肉であり、宣言でもある。彼らは最初から大作を作ろうとしていたし、その大作性をどこか自嘲的にも見ている。
総評
『For the First Time』は、ブラック・カントリー・ニュー・ロードのデビュー作でありながら、すでに非常に強い作家性とバンド・アイデンティティを持ったアルバムである。全6曲という短い構成ながら、それぞれの曲は濃密で、長尺で、複雑な展開を持つ。一般的なロック・アルバムのような即効性のあるシングル集ではなく、緊張、構築、崩壊、再構成を体験する作品である。
本作の最大の魅力は、ジャンルの混合が単なる知的な実験にとどまらず、感情の必然として機能している点である。ポスト・ロック、ポスト・パンク、クレズマー、ジャズ、ノイズ、マス・ロック、室内楽的アレンジが混ざっているが、それらは「多様な音楽を取り入れました」という表面的な折衷ではない。むしろ、アイザック・ウッドの不安定な語りと、バンド全体の過剰な緊張を支えるために、それらの語法が必要とされている。
アイザック・ウッドのヴォーカルと歌詞は、本作を非常に特異なものにしている。彼の声は、好みが分かれるタイプである。美しく安定した歌唱ではなく、演技的で、神経質で、時に過剰である。しかし、その不安定さが本作の本質である。彼は堂々としたロック・スターとして歌うのではなく、自分が見られていること、演じていること、滑稽であることをすべて意識しながら歌う。この過剰な自己意識が、2020年代の若いロック表現として非常に重要である。
歌詞面では、階級、男性性、性的な気まずさ、自己嫌悪、インターネット以後の引用感覚、文化的な断片が混ざる。特に「Sunglasses」は、現代の若い男性が富や権力や恋愛の中でどのように自分を演じ、同時にその演技に嫌悪するかを描いた楽曲として重要である。これは単なるロックの怒りではなく、自己批評を含んだ不安定な怒りである。
演奏面では、7人編成ならではの厚みが大きな魅力である。サックスとヴァイオリンが単なる装飾ではなく、曲の緊張を作る主要な要素になっている。ドラムは複雑な展開を支え、ベースは不安定な曲構造の中で重心を作る。ギターはしばしば音数を絞り、必要な場面で強いノイズを放つ。メンバー全員が、曲を派手に見せるためではなく、緊張の構築に貢献している。
一方で、本作にはデビュー作らしい粗さもある。曲の展開は時に過剰で、歌詞の演劇性は聴き手によっては大げさに感じられるかもしれない。アルバム全体も、完成された統一感というより、初期衝動と野心がぶつかり合った結果として成立している。しかし、その粗さは弱点であると同時に、本作の強度でもある。完全に整っていないからこそ、音楽がまだ成長中であり、危険であり、予測不能であることが伝わる。
『For the First Time』は、2020年代のロックにおいて重要な意味を持つ。ギター・ロックが過去の形式として扱われがちな時代に、ブラック・カントリー・ニュー・ロードは、ロックがまだ新しい緊張と構築を生み出せることを示した。ただし、それは従来のロックンロールの反復ではない。複数のジャンルを吸収し、文学的な断片と演劇的な声を使い、バンド全体のアンサンブルによって巨大な感情の構造物を作る新しい形である。
日本のリスナーにとって本作は、近年の英国インディー/ポスト・パンク・シーンを理解するうえで欠かせない一枚である。ブラック・ミディの技巧的で破壊的な音楽、スクイッドのリズム主導のポスト・パンク、ドライ・クリーニングの語りのロックなどと並べて聴くことで、英国の若いバンドがいかにロックを再構築していたかが見えてくる。その中でもブラック・カントリー・ニュー・ロードは、最も劇的で、最も感情の過剰さを持ったバンドの一つである。
総じて『For the First Time』は、若いバンドのデビュー作として異例の完成度と野心を持つアルバムである。緊張し、崩れ、叫び、踊り、皮肉を言い、また崩れる。美しさと気まずさ、知性と神経質さ、祝祭と自己嫌悪が同じ場所にある。タイトル通り「初めて」の作品でありながら、すでに一つの時代の空気を鋭く捉えた、2020年代英国アート・ロックの重要作である。
おすすめアルバム
1. Black Country, New Road『Ants from Up There』(2022年)
本作に続く2作目であり、バンドの評価を決定づけた重要作である。『For the First Time』の不穏なポスト・ロック/ポスト・パンク色に比べ、より叙情的で、室内楽的で、感情の開放が大きい。アイザック・ウッド在籍期の集大成として必聴である。
2. black midi『Schlagenheim』(2019年)
同時代のロンドン・シーンを代表するブラック・ミディのデビュー作である。マス・ロック、ノイズ、ポスト・パンク、実験的な構成が混ざり、ブラック・カントリー・ニュー・ロードと並ぶ新世代英国ロックの重要作である。より攻撃的で技巧的な方向から比較できる。
3. Slint『Spiderland』(1991年)
語りに近いヴォーカル、静と動の極端な対比、不穏なギター・ロック構築によって、後のポスト・ロックに大きな影響を与えた名盤である。『For the First Time』の緊張感や語りのロックを理解するうえで、重要な源流となる作品である。
4. Godspeed You! Black Emperor『Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven』(2000年)
長尺の構築、反復、弦や管を含む大編成、終末的な高揚を特徴とするポスト・ロックの代表作である。ブラック・カントリー・ニュー・ロードの壮大な構成や、ロック・バンドを超えたアンサンブル感に関心があるリスナーに関連性が高い。
5. Squid『Bright Green Field』(2021年)
同じ英国新世代ポスト・パンク・シーンの重要作である。リズムの反復、社会的な不安、語りに近いヴォーカル、緊張感のあるバンド・サウンドが特徴で、『For the First Time』と並べて聴くことで、2020年代初頭の英国ロックの多様な実験性がよく分かる。

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