発売日: 2019年4月12日
ジャンル: ポストパンク、インディーロック
Fontaines D.C.のデビューアルバム「Dogrel」は、ダブリンの若きポストパンクバンドがその存在感を確立し、一躍注目を集めるきっかけとなった作品だ。タイトル「Dogrel」は、庶民的でリズミカルな詩を意味する言葉であり、まさにアルバム全体にわたってアイルランドの街並みや生活を叙情的に描き出す。ボーカルのグリアン・チャットテンの語り口調に近い歌声と、バンドの疾走感あふれる演奏が特徴で、シンプルなアレンジの中に荒々しさと情熱が込められている。
このアルバムには、アイルランドの労働者階級や都市の喧騒、日々の葛藤と希望が詩的に描かれ、都市生活のリアルな断片が散りばめられている。疾走感あふれるギターリフと緊張感を保ちながらも感情豊かな演奏は、The ClashやThe Pogues、Joy Divisionといったポストパンクやパンクロックの影響を色濃く受けながらも、どこかノスタルジックで情熱的な独自のサウンドを生み出している。「Dogrel」は、彼らのルーツに根差しながらも現代のアイルランドを鮮やかに描き出し、リスナーを都市の夜に誘う作品だ。
トラックごとの解説
1. Big
アルバムの幕開けを飾る「Big」は、僅か2分に満たない短いトラックながら、爆発的なエネルギーとアイルランド人としての誇りが感じられる一曲。シンプルでありながらも骨太なサウンドとチャットテンの力強いボーカルが印象的だ。
2. Sha Sha Sha
「Sha Sha Sha」は、キャッチーなギターリフとリズミカルなビートが耳に残るポップな一曲。歌詞には、日常生活の小さな葛藤が描かれ、都会の若者の視点がリアルに反映されている。
3. Too Real
「Too Real」は、重厚でダークな雰囲気を持つ一曲。鋭いギターサウンドとチャットテンの怒りに満ちたボーカルが、現代社会の不満や孤独感を浮き彫りにする。繰り返されるフレーズが緊張感を高め、迫力のある楽曲に仕上がっている。
4. Television Screens
ゆったりとしたテンポの「Television Screens」は、どこかノスタルジックなサウンドが特徴で、都会生活における孤独感が歌われている。チャットテンの低く語りかけるようなボーカルが、現代の疎外感を感じさせる。
5. Hurricane Laughter
「Hurricane Laughter」は、荒々しく迫力あるサウンドで、暴風のように感情が爆発するかのような楽曲。チャットテンのボーカルは狂気じみた熱量を帯び、音の波が押し寄せるような圧倒的な体験ができる一曲。
6. Roy’s Tune
「Roy’s Tune」は、アルバムの中でも穏やかな一曲で、アコースティックな響きが印象的。働く者の日常や愛を描いたリリックが心に沁みる。静かでありながらも奥深い感情が伝わるトラックだ。
7. The Lotts
「The Lotts」は、内省的な雰囲気が漂うトラックで、チャットテンのメランコリックなボーカルが印象的。淡々としたギターが静かに情景を描き出し、リスナーを深い感情の世界へと導く。
8. Chequeless Reckless
「Chequeless Reckless」は、鋭いリズムと鋭い歌詞が特徴のトラックで、批判的なメッセージが込められている。シンプルなリフと直球のリリックが、リスナーに鋭い印象を与える。
9. Liberty Belle
「Liberty Belle」は、自由と葛藤をテーマにしたアップテンポな楽曲で、キャッチーなメロディが印象的。アイルランドの誇りやアイデンティティが込められ、バンドの個性が発揮されている。
10. Boys in the Better Land
「Boys in the Better Land」は、アルバムの中でも特に印象的なトラックで、エネルギッシュなビートとノスタルジックなメロディが特徴的。チャットテンが異国に生きる者たちの葛藤や誇りを語り、力強いメッセージが込められている。
11. Dublin City Sky
アルバムの締めくくりとなる「Dublin City Sky」は、アコースティックギターと切ないメロディが心地よいバラード。ダブリンの街を歌うリリックが詩的で、まるでダブリンの夜空を見上げるかのような感覚に浸れる。
アルバム総評
「Dogrel」は、Fontaines D.C.がダブリンという都市とそこに生きる人々をリアルに描き出した、力強く詩的なデビューアルバムだ。疾走感あふれるギターと抑揚のあるボーカルが、アイルランドの若者たちが抱く誇りや不満、希望を鋭く表現している。リスナーは、各トラックを通して都市の喧騒や若者の叫び、労働者階級の生活の一コマに触れることができる。ブラックミディの荒々しさとエネルギーが詰まった「Dogrel」は、ポストパンクシーンに新たな風を吹き込み、デビュー作ながらその存在感を強く印象づけた。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Joy as an Act of Resistance by IDLES
アグレッシブで力強いメッセージが詰まったポストパンクの名盤。社会に対する批判と希望が「Dogrel」と共鳴する。
Is This It by The Strokes
シンプルなリフと都会の孤独感を描いたリリックが特徴のアルバム。荒々しさと都会のリアルが「Dogrel」に通じる。
Silent Alarm by Bloc Party
ポストパンクにエレクトロニカを融合させたアルバムで、疾走感とリリカルなテーマが「Dogrel」と共通している。
A Hero’s Death by Fontaines D.C.
Fontaines D.C.の2作目で、「Dogrel」の持つ荒々しさと対照的に、より内省的なサウンドが魅力の一枚。
Alligator by The National
メランコリックなメロディと都会の喧騒や孤独感を描いたリリックが、「Dogrel」のテーマと重なり合う作品。
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