Day of the Eagle by Robin Trower(1974)楽曲解説

Spotifyジャケット画像

1. 歌詞の概要

「Day of the Eagle(デイ・オブ・ジ・イーグル)」は、イギリスのギタリスト Robin Trower(ロビン・トロワー) が1974年にリリースしたセカンド・アルバム『Bridge of Sighs』の冒頭を飾る楽曲であり、彼の代表的なハード・ブルース・ロック・ナンバーのひとつである。

この曲の歌詞は、タイトルの「イーグル(鷲)」が象徴する力、自由、啓示、そして超越の瞬間をモチーフに、個人の内面にある“覚醒”や“変革”の瞬間を力強く描いている。
語り手は、暗闇や迷いの中にいる自分を鼓舞し、新しい高みへと飛翔しようとする意志を持って、夜明けのように訪れる「鷲の日」を迎える準備をしている。

そのメッセージは、明確なストーリーテリングというよりは、象徴的かつ詩的な言語によって、“魂の目覚め”を音とともに表現する構成となっている。

2. 歌詞のバックグラウンド

「Day of the Eagle」は、1974年にリリースされたアルバム『Bridge of Sighs』のオープニング・トラックであり、ロビン・トロワーのブルース・ロック的アプローチとジミ・ヘンドリックス直系のギター・サウンドが炸裂する曲として知られている。

このアルバムは、彼がProcol Harumを脱退してからの本格的なソロ活動の中で初めてメジャーな成功を収めたもので、アメリカではプラチナ・アルバムに認定されるヒット作となった。

「Day of the Eagle」はシングルとしてもリリースされ、トロワーのパワフルでエッジの効いたギター・プレイと、ボーカルのJames Dewar(ジェイムズ・デュワー)によるソウルフルな歌唱が絶妙に噛み合った名演として、ファンの間で根強い人気を誇る。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Day of the eagle
I was born for you
Day of the eagle
Nothing left to do

「鷲の日」よ
僕はお前のために生まれてきた
「鷲の日」よ
もう迷うことは何もない

I’m leaving the cities
And the sound of evil things
Yes, I’m leaving out of town
Out of broken wings

僕はこの街を離れていく
悪しきものたちの気配を振り払うために
壊れた翼を脱ぎ捨て
この町から飛び立つのさ

引用元:Genius 歌詞ページ

この歌詞では、“街”や“壊れた翼”といったイメージが過去の痛みや腐敗した環境を暗示しており、それを振り切って“鷲のように飛ぶ”ことが再生と自由の象徴となっている。

4. 歌詞の考察

「Day of the Eagle」は、内面の覚醒や霊的再生をテーマにした、**“魂の脱出劇”**とも言える楽曲である。

“鷲”は古くからアメリカ先住民のスピリチュアルな象徴であり、また多くの文化で天と地のあいだを行き交う“神の使い”のような存在とされてきた。その象徴性を踏まえると、この曲で語られる“鷲の日”とは、ただの物理的な旅立ちではなく、精神的な高みへと自分を解き放つ日=イニシエーションの瞬間を意味しているのだろう。

また、“壊れた翼”というフレーズは、過去の傷や挫折、飛べなくなってしまった経験を暗示している。しかし、その自分を脱ぎ捨てることで、真の自由を手にしようとする。
この構造は、自我の解体と再構築、つまり“変容”のプロセスを象徴しているようにも思える。

そして、このスピリチュアルな詩世界を支えるのが、ロビン・トロワーのうねるようなギター・リフと、霊性を帯びたサウンド・テクスチャーである。
単なるブルース・ロックの域を超えて、まるでギターが魂を導く風のように響くこの演奏は、言葉の意味を補完し、さらなる次元へとリスナーを誘っていく。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Are You Experienced? by Jimi Hendrix
    精神的な覚醒と内的変化をサイケデリックな音像で描いたロックの金字塔。

  • Free Bird by Lynyrd Skynyrd
    旅立ちと自由をテーマにした、壮大なロック・アンセム。

  • Rock Bottom by UFO
    宇宙的なスケールと個人の崩壊・再生をテーマにしたヘヴィ・ロック。

  • In My Time of Dying by Led Zeppelin
    生と死のあいだでの魂の旅を、ブルース・ロック形式で描いた大作。

  • Hoochie Coochie Man by Muddy Waters(またはJeff Beckのカバー)
    自己の力を誇示する“ブルースの神話性”を体感できるナンバー。

6. 鷲の翼で飛ぶ、その日のために

「Day of the Eagle」は、Robin Trowerがただのギター・テクニシャンではなく、ギターという言語を通じてスピリチュアルな物語を語る“音の預言者”であることを示した楽曲である。

この曲で語られる“鷲の日”とは、どこかで誰しもが待ち望んでいる、何かを変えるチャンスの瞬間だ。
過去を脱ぎ捨て、迷いを捨て、もう一度空へ――
その一歩を踏み出すために、必要なのは、自分の中に眠る“翼”に気づくことかもしれない。

トロワーのギターはその背中を押してくれる。
それは叫びでもなく説得でもなく、ただ静かに、確かに、魂の奥に風を送るような音なのだ。

「Day of the Eagle」は、**ブルースの土壌に咲いた“精神の解放歌”**である。
そして、聴くたびにあなたの中の“翼”に気づかせてくれる、不朽のロック詩なのだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました