
発売日:1977年
ジャンル:ブルース・ロック、ハードロック、サイケデリック・ロック、ソウル・ロック、ギター・ロック
概要
Robin Trowerの『In City Dreams』は、1977年に発表されたスタジオ・アルバムであり、彼のソロ・キャリアにおいて初期の重厚なブルース・ロック路線から、より洗練された都会的なサウンドへ移行していく過程を示す重要作である。TrowerはProcol Harumのギタリストとしてキャリアを築いた後、1970年代前半にソロへ転じ、James Dewarのソウルフルなヴォーカル、Bill Lordanの強靭なドラムとともに、トリオ編成を軸とする独自のブルース・ロックを確立した。
1974年の『Bridge of Sighs』は、Trowerの代表作として広く知られている。Jimi Hendrixからの影響を感じさせる深いヴィブラート、ワウやユニヴァイブを用いた揺らめく音色、重く沈むリズム、そしてDewarの温かく陰影のある声によって、単なるハードロックでもブルースの再演でもない、サイケデリックなギター・ブルースの世界を作り上げた。その後の『For Earth Below』『Long Misty Days』でも、Trowerは濃密なギター・トーンを軸に、幻想的で湿度の高いロックを展開していく。
『In City Dreams』は、その流れを受け継ぎながらも、全体の質感がやや変化している。タイトルに「City」が含まれているように、本作には従来の荒野的、霧深い、内省的なブルース感覚に加え、都会の夜、孤独、洗練、R&B的な柔らかさが入り込んでいる。ギターは依然としてTrowerらしく太く、深く、揺れているが、曲作りはよりコンパクトで、メロディも滑らかになっている。ヘヴィなギター・アルバムというより、ソウルフルなロック・アルバムとしての性格が強まっている点が特徴である。
本作で特に重要なのは、James Dewarの存在である。Robin Trowerの音楽はしばしばギター・ヒーロー文脈で語られるが、Dewarのヴォーカルがなければ、その魅力は大きく異なっていたはずである。彼の声は、ブルースの苦みを持ちながら、過度に泥臭くならず、どこか白人ソウル的な温かさを持つ。『In City Dreams』では、その声がより前面に出ており、Trowerのギターは単なる主役ではなく、声の感情を包み込み、応答し、時に拡張する役割を果たしている。
1977年という時代背景も見逃せない。ロックの世界ではパンクが台頭し、従来の長尺ギター・ソロやブルース・ロックの重厚さに対して、より短く、鋭く、反装飾的な音楽が勢いを増していた。一方で、アメリカではAORやソフト・ロック、ファンク、ソウルの影響を受けた洗練されたロックも広がっていた。『In City Dreams』は、そうした変化の中で、Trowerが自らのギター・スタイルを保ちながら、より曲中心で、メロディとグルーヴを重視する方向へ調整した作品として聴くことができる。
音楽史的には、本作はブルース・ロックの成熟期にあるアルバムである。1960年代末から70年代前半にかけて、Eric Clapton、Jimi Hendrix、Jeff Beck、Peter Green、Rory Gallagherらがブルースをロックの文脈で拡張した後、1970年代後半のギタリストたちは、その遺産をどう更新するかを問われていた。Trowerの場合、その答えは、より激しく弾くことではなく、音色、余白、歌、ムードを深めることだった。『In City Dreams』は、その方向性が明確に表れた作品である。
全曲レビュー
1. Somebody Calling
オープニング曲「Somebody Calling」は、アルバムの雰囲気を決定づける重要なナンバーである。タイトルは「誰かが呼んでいる」という意味を持ち、外部からの呼び声、内面の衝動、あるいは都市の夜に聞こえる匿名の声を連想させる。『In City Dreams』というアルバム全体が、都市的な孤独と夢の感覚を含んでいることを考えると、この曲はその入口として非常に効果的である。
サウンドはTrowerらしい太いギター・トーンを持ちながら、初期作品ほど重苦しくはない。リフは明確で、リズムは前へ進むが、全体にはどこか浮遊感がある。James Dewarのヴォーカルは、切迫した呼び声を過度に劇的に表現するのではなく、抑制されたソウルフルな歌い方で届ける。この声の落ち着きが、曲に大人びた緊張感を与えている。
歌詞のテーマは、何かに呼ばれて動き出す感覚として読むことができる。恋愛の呼び声であるとも、運命や欲望の呼び声であるとも解釈できる。重要なのは、その声がはっきりとした救済を示しているわけではない点である。呼びかけに応じることは、未知の場所へ向かうことでもある。アルバム冒頭から、Trowerはブルース・ロックを単なる感情の爆発ではなく、曖昧な内面の動きとして描いている。
2. Sweet Wine of Love
「Sweet Wine of Love」は、タイトルからしてソウルやブルースの伝統に深く根差した楽曲である。愛を甘いワインにたとえる表現は、陶酔、酩酊、官能、そして依存のニュアンスを含んでいる。Robin Trowerの音楽では、愛や欲望はしばしば霧のように漂い、はっきりした物語よりも感覚として響く。この曲もその系譜にある。
音楽的には、ゆったりとしたグルーヴとメロディアスなギターが中心である。Trowerのギターは、単に速いフレーズを弾くのではなく、音を長く伸ばし、ヴィブラートによって感情を揺らす。彼の演奏は、Hendrixの影響を感じさせながらも、より抑制され、ブルースの歌心に寄り添っている。
James Dewarのヴォーカルは、この曲の魅力を大きく支えている。彼は愛を甘く歌うが、声には少しの苦みがある。そのため、曲は単なるロマンティックなラヴ・ソングにはならない。ワインの甘さは、酔いと危険を伴う。歌詞における愛もまた、心を満たすと同時に、相手への依存や判断力の揺らぎを含んでいる。
「Sweet Wine of Love」は、『In City Dreams』のソウル・ロック的な側面をよく示す曲である。初期Trowerの重く幻想的なブルースに比べ、ここではより柔らかく、都会的で、歌を中心にした表現が前面に出ている。
3. Bluebird
「Bluebird」は、タイトルの通り、鳥のイメージを持つ楽曲である。ブルーバードは、幸福、自由、希望、あるいは遠くへ飛び去るものの象徴としてポップ・ミュージックにしばしば登場する。本作における「Bluebird」も、単なる自然の描写ではなく、心の中にある自由への憧れや、手の届かない幸福のイメージとして機能している。
サウンドは比較的穏やかで、メロディには浮遊感がある。Trowerのギターは大きく叫ぶのではなく、空を漂うように響く。ワウや揺らぎを含んだ音色は、鳥の飛翔というより、夢の中で空を見上げる感覚に近い。アルバム・タイトルの「Dreams」とも自然に結びつく曲である。
歌詞では、ブルーバードが希望の象徴として描かれる一方で、それは完全に手に入るものではないように響く。幸福は近くにあるようで、すぐに飛び去ってしまう。Trowerの音楽におけるメランコリーは、このような距離感から生まれる。強烈な悲しみを直接叫ぶのではなく、美しいものが遠ざかる感覚をギターと声で表現する。
「Bluebird」は、アルバムの中でTrowerの繊細な側面を示す楽曲である。ブルース・ロックの形式を使いながら、自然のイメージと内面の憧れを結びつける点に、本作の詩的な魅力がある。
4. Falling Star
「Falling Star」は、落ちる星、つまり流星や失墜する存在を思わせるタイトルを持つ。星は希望、名声、輝きの象徴であるが、それが落ちることで、栄光のはかなさや人生の不安定さが浮かび上がる。1970年代ロックにおいて「スター」は、ロック・スターそのもののイメージとも重なるため、この曲には自己言及的な響きも感じられる。
音楽的には、アルバムの中でもドラマ性のある楽曲である。Trowerのギターは、落下するような感覚を音で描くかのように、伸びやかでありながらどこか不安定なフレーズを奏でる。リズムは重すぎず、曲にゆるやかな推進力を与える。Dewarの声は、星の輝きと失墜を同時に見つめるような落ち着きを持つ。
歌詞のテーマは、夢や名声が永遠ではないこと、または輝いていたものが消えていく瞬間として読むことができる。『In City Dreams』というタイトルを考えると、この曲は都市で見る夢の危うさを象徴しているとも言える。都会には成功や光があるが、その光は一瞬で消えることもある。
「Falling Star」は、Trowerのギターが単なる技巧ではなく、イメージを描くための声として機能している好例である。星の落下という詩的な題材を、ブルース・ロックの重みとメロディの美しさで表現した曲である。
5. Farther On Up the Road
「Farther On Up the Road」は、Bobby “Blue” Blandなどで知られるブルースのスタンダードに連なる楽曲であり、アルバム中でもTrowerのブルース・ルーツが最も明確に表れたトラックである。タイトルは「この先の道で」という意味を持ち、いつか報いが来る、あるいは人生の先で再び向き合うことになるというブルース的な教訓を含んでいる。
Trowerはこの曲を、古典的なブルースの形を尊重しながら、自身のサイケデリックなギター・トーンで再解釈している。彼の演奏は、伝統的なブルース・ギタリストのように乾いたタッチで攻めるのではなく、音を太く伸ばし、空間に揺らぎを作る。これによって、古典的なブルースが1970年代のロック・サウンドへ自然に変換されている。
James Dewarのヴォーカルも重要である。彼は黒人ブルースを模倣するのではなく、自分の声の質感で歌う。そこには白人ブルース・ロックとしての距離があるが、同時に深い敬意もある。歌詞の中で語られる報い、失恋、人生の循環は、Dewarの声によって自然に説得力を持つ。
この曲は、『In City Dreams』の中で、Trowerがどれほどブルースの伝統に根ざしているかを示す役割を果たしている。都会的でソウルフルな方向へ向かった本作の中でも、根底にはブルースがある。そのことを確認させる重要なカヴァーである。
6. Smile
「Smile」は、タイトルからすると明るい曲を想像させるが、Robin Trowerの音楽における笑顔は、単純な幸福の表現とは限らない。笑顔は、慰めであり、自己防衛であり、痛みを隠す仮面でもある。この曲にも、そのような複雑な感情が含まれている。
サウンドは柔らかく、メロディにはソウル・バラード的な温度がある。Trowerのギターは控えめに歌を支えつつ、要所で感情を補足する。彼のギターは、ここでは主役として前面に出すぎず、声と同じ空気を共有するように鳴る。このバランスが『In City Dreams』の成熟を示している。
歌詞では、笑顔が関係を保つための行為として描かれているように響く。相手に笑ってほしい、あるいは自分が笑うことで何かを乗り越えようとする。ブルースやソウルにおいて、笑顔と悲しみはしばしば近い場所にある。Dewarの歌唱は、その二重性をよく表している。彼の声は温かいが、完全に晴れやかではない。
「Smile」は、本作の中でも静かな名曲といえる。ギターの派手な見せ場よりも、メロディ、声、余白によって感情を伝えるタイプの楽曲であり、Trowerが単なるギター・ヒーローではなく、歌を中心に据えたロック・ミュージシャンであることを示している。
7. Little Girl
「Little Girl」は、タイトルからして親密な呼びかけを含む楽曲である。ブルースやロックにおいて「little girl」という表現は、恋愛対象への呼びかけとしてしばしば使われるが、現代の視点からは、その言葉に含まれる保護的、支配的、あるいは時代的なニュアンスにも注意が必要である。1970年代のロック表現として聴く場合、その時代の恋愛言語が反映されている曲といえる。
音楽的には、ブルース・ロックらしいミドル・テンポのグルーヴがあり、Trowerのギターが曲の感情を牽引する。リフやソロは派手すぎず、ヴォーカルとの応答を重視している。Dewarの歌唱は、相手への呼びかけに柔らかさと切実さを加えている。
歌詞のテーマは、恋愛の中で相手を慰めたり、引き寄せたりする感覚として読める。ただし、Trowerの音楽では、こうした親密さにもどこか影がある。相手を求めることは、同時に自分の孤独を埋めようとする行為でもある。曲の温かいメロディの中には、そのような不安がにじむ。
「Little Girl」は、アルバム全体の中で比較的オーソドックスなブルース・ロック・ナンバーでありながら、Dewarの声とTrowerのギターの相性をよく示している。二人の表現が、楽曲のシンプルな構造に深みを与えている。
8. Love’s Gonna Bring You Round
「Love’s Gonna Bring You Round」は、アルバム終盤に希望の感覚をもたらす楽曲である。タイトルは「愛が君を立ち直らせる」「愛が君を戻してくれる」といった意味を持ち、愛の回復力をテーマにしている。『In City Dreams』には、孤独、夢、失墜、呼び声といった曖昧なテーマが多いが、この曲では比較的明確に肯定的なメッセージが提示される。
サウンドは温かく、ソウル・ロック的な響きが強い。リズムは穏やかに前進し、ギターは歌に寄り添う。Trowerのプレイは、ここでも感情の余白を重視しており、ギター・ソロで曲を支配するのではなく、愛の回復というテーマを音色で支える。
Dewarのヴォーカルは、この曲に大きな説得力を与えている。彼の声は、励ましを大げさに叫ぶのではなく、経験を重ねた人物が静かに語りかけるように響く。そのため、歌詞の前向きさは軽い楽観主義ではなく、痛みを知ったうえでの希望として受け取れる。
「Love’s Gonna Bring You Round」は、本作の中で最もソウルフルな温かさを持つ曲のひとつである。Robin Trowerの音楽が、暗く幻想的なブルースだけでなく、人を支えるような歌心も持っていたことを示している。
9. In City Dreams
アルバムの最後を飾るタイトル曲「In City Dreams」は、本作全体のテーマを集約する楽曲である。都市と夢という二つの言葉は、希望と孤独、現実と幻想、成功と喪失を同時に含む。都会は夢を見る場所でありながら、その夢が壊れる場所でもある。Trowerはこの曲で、その二面性を静かに描いている。
サウンドはアルバムの締めくくりにふさわしく、落ち着いた広がりを持つ。ギターは深く、余韻を残しながら鳴る。Trowerの音色には、夜の街の光がにじむような感覚があり、初期の霧深いブルースとは異なる都会的な幻想が生まれている。Dewarのヴォーカルは、夢を見つめる語り手として、曲全体に静かな重みを与える。
歌詞では、都市の中で見る夢が中心に置かれている。それは成功への夢かもしれないし、愛への夢かもしれない。あるいは、現実から逃れるための夢でもある。重要なのは、その夢が完全な救済ではなく、むしろ都市生活の孤独と結びついている点である。人は街の中で多くの人に囲まれながら、深い孤独を感じる。その孤独の中で夢を見ることが、この曲の核心にある。
「In City Dreams」は、アルバムの最終曲として、作品全体のムードを美しく締めくくる。Trowerのギター、Dewarの声、都市的なメランコリーが一体となり、本作が単なるブルース・ロック・アルバムではなく、夜の街と内面の夢を描く作品であることを明確にしている。
総評
『In City Dreams』は、Robin Trowerのキャリアにおいて、初期の重厚なサイケデリック・ブルースから、よりソウルフルで都会的な表現へ向かった作品である。『Bridge of Sighs』に代表される初期Trowerの魅力は、深い霧の中を進むようなギター・トーン、重くうねるリズム、そして幻想的なブルース感覚にあった。一方、本作ではその音楽性を保ちながらも、曲はよりコンパクトになり、歌の比重が高まり、R&Bやソウルに近い温かさが増している。
この変化は、1977年という時代とも関係している。長尺のギター・ソロやブルース・ロックの重厚さが以前ほど無条件に支持される時代ではなくなり、ロックはパンクの短さと攻撃性、あるいはAORやソウル・ロックの洗練へと分岐していた。Trowerは本作で、自らのギター・スタイルを捨てることなく、歌とムードを重視する方向へ調整している。そのため、『In City Dreams』は派手なギター・ヒーロー作品ではなく、成熟したブルース・ロック/ソウル・ロック作品として響く。
本作の最大の魅力は、Robin TrowerのギターとJames Dewarの声の関係にある。Trowerのギターは、Jimi Hendrix以降のロック・ギターの語彙を受け継ぎながら、より内向的で、濃密で、歌うような音色を持つ。速弾きや技巧の誇示よりも、音の揺れ、伸び、沈み込みによって感情を表現するタイプのギタリストである。一方、Dewarのヴォーカルは、ブルースとソウルの間に位置する温かい声を持ち、Trowerのギターの濃さを人間的な歌へ結びつける。『In City Dreams』では、この関係が特に自然に機能している。
歌詞のテーマとしては、愛、呼び声、夢、失墜、希望、都市の孤独が中心にある。初期Trower作品に見られた神秘的なムードは残りつつも、本作ではそれがより現実的な場所、つまり都市へ移されている。タイトル曲「In City Dreams」に象徴されるように、都会は夢を見る場所でありながら、その夢が壊れやすい場所でもある。「Falling Star」では輝きの喪失が、「Somebody Calling」では未知の呼び声が、「Love’s Gonna Bring You Round」では愛による回復が描かれる。アルバム全体は、夜の街を歩きながら、過去や愛や夢を思い返すような流れを持っている。
音楽的には、ブルース・ロック、サイケデリック・ロック、ソウル・ロックが自然に融合している。特に「Sweet Wine of Love」「Smile」「Love’s Gonna Bring You Round」では、Trowerの音楽が単なるハードなギター・ロックではなく、R&B的な温度を持っていることがよく分かる。一方で、「Farther On Up the Road」ではブルースの伝統への敬意が明確に示され、「Falling Star」やタイトル曲ではTrower特有の幻想的なギター・トーンが生かされている。
『In City Dreams』は、Trowerの代表作としては『Bridge of Sighs』ほど広く語られることは少ない。しかし、彼の音楽的成熟を理解するうえでは非常に重要なアルバムである。初期の重さや神秘性だけを期待すると、本作はやや控えめに感じられるかもしれない。しかし、聴き込むほどに、ギターの余韻、Dewarの声の深み、曲ごとのムードの違いが浮かび上がる。これは、派手な衝撃ではなく、夜の中でゆっくりと染み込んでくるタイプの作品である。
日本のリスナーにとっては、Jimi Hendrix、Cream、Free、Rory Gallagher、Peter Green期Fleetwood Mac、Gary Mooreのブルース寄り作品、あるいはProcol Harum周辺の英国ロックに関心がある場合に聴きやすい作品である。また、ギター・ソロの速さよりも、音色やフレージング、歌との関係を重視するリスナーには特に響くだろう。『In City Dreams』は、Robin Trowerがギタリストとしてだけでなく、ムードと歌を作るアーティストであることを示すアルバムである。
本作は、都会の夜に漂うブルース・ロックである。派手なネオンではなく、雨に濡れた路面に映る淡い光のようなアルバムであり、夢と孤独、愛と失墜、声とギターが静かに交差する。Robin Trowerの中期作品として、『In City Dreams』はもっと丁寧に聴き直されるべき一枚である。
おすすめアルバム
1. Bridge of Sighs by Robin Trower
1974年発表の代表作。Robin Trowerのギター・トーン、James Dewarのヴォーカル、サイケデリック・ブルースの深いムードが最も強く表れた作品である。『In City Dreams』がより都会的でソウルフルな方向へ進んだ作品だとすれば、『Bridge of Sighs』は初期Trowerの霧深く重い世界を体験できる基本作である。
2. Long Misty Days by Robin Trower
1976年発表の前作。『In City Dreams』へ向かう直前の作品として、初期の重厚なブルース・ロックと、よりメロディアスな方向性の中間に位置している。Trowerのギターは濃密でありながら、曲作りには徐々に柔らかさが増しており、両作を続けて聴くことで音楽性の変化がよく分かる。
3. Fire and Water by Free
1970年発表のFreeの代表作。Paul Kossoffの少ない音で深く歌うギター、Paul Rodgersのソウルフルなヴォーカルは、Robin TrowerとJames Dewarの関係を考えるうえで重要な比較対象である。派手な技巧よりも、余白とグルーヴで感情を表現する英国ブルース・ロックの美学が詰まっている。
4. Electric Ladyland by The Jimi Hendrix Experience
1968年発表のJimi Hendrixの代表作。Robin Trowerのギター・トーンやエフェクト感覚を理解するうえで避けて通れない作品である。ただし、TrowerはHendrixの直接的な模倣にとどまらず、その揺らめく音色とブルースの感覚を、より英国的で内省的なロックへ変換した。『In City Dreams』のギターの背景を知るために重要な一枚である。
5. Then Play On by Fleetwood Mac
1969年発表のPeter Green期Fleetwood Macの重要作。ブルースを基盤にしながら、サイケデリックな空気や内省的なメロディを取り込んだ作品であり、Robin Trowerの幻想的なブルース・ロックと深く響き合う。ギターの音色、余白、メランコリーを重視するリスナーにとって、『In City Dreams』と併せて聴く価値が高いアルバムである。

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