アルバムレビュー:Conflicting Emotions by Split Enz

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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発売日: 1983年11月
ジャンル: ニューウェイヴ、シンセポップ、アートポップ、ポップロック

概要

『Conflicting Emotions』は、Split Enzが1983年にリリースした8作目のスタジオ・アルバムであり、タイトル通り“相反する感情”が音楽的にも人間関係的にも渦巻く、過渡期のドキュメントである
この作品では、バンド内の創作バランスが大きく揺らぎ、特にニール・フィンが圧倒的な主導権を握ったことが顕著に表れている

ティム・フィンはこの時期、自身のソロ・アルバム『Escapade』に注力しており、アルバムへの関与が限定的となった。
そのため、本作にはニール・フィン作の楽曲が大半を占め、Split Enzが事実上“Crowded Houseの前夜”と化したことを象徴する内容とも言える。
また、ドラマーのノエル・クロンティンが脱退し、ドラムマシン(LinnDrum)やプログラミングが多用されるなど、バンドの有機的な一体感は徐々に後退し、機械的で洗練された音像へと変化している。

その一方で、アルバムには内省的で美しいメロディと、繊細な感情表現が数多く含まれており、Split Enz後期の“壊れかけたロマンティシズム”が結晶化している。
ファンにとっては、終焉の予兆と静かな情熱が同居した“複雑な傑作”として評価されている。

全曲レビュー

1. Strait Old Line

先行シングルにして、洗練されたグルーヴが光るニールの代表曲。
“まっすぐな道”を象徴的に描きながら、その裏にある葛藤や誘惑が滲む構成。
LinnDrumのリズムが機械的でありながらも、感情の内側に深く入り込むクールな開幕曲

2. Bullet Brain and Cactus Head

ティム・フィンによるユーモラスかつ風刺的な楽曲。
一見コミカルなタイトルの裏に、思考の錯綜と自我のねじれが込められており、アルバム内でも最も“旧Enz的”なアプローチを残している。

3. Message to My Girl

本作随一のバラードであり、Split Enzのキャリア全体でも屈指の名曲。
ニール・フィンによる誠実で切実な愛の告白は、シンセポップという形式の中にあっても普遍的な抒情を宿している
メロディ、アレンジ、歌詞すべてが完璧に美しい。

4. Working Up an Appetite

エッジの効いたギターとファンキーなベースラインが絡む、ダンサブルなナンバー。
リリックはセクシャルかつユーモアを含み、Split Enzの“大人の顔”が見える一曲
プロダクションの洗練が際立つ。

5. Our Day

穏やかな時間の記憶を描くニールの小品的楽曲。
メロディはシンプルながら、コーラスワークとコード進行に豊かな感情の起伏が込められており、何気ない日常に宿る“宝石のような瞬間”をすくい取った詩情がある。

6. No Mischief

ティム・フィンが本作に残した、数少ない内省的バラード。
混乱のなかにある“もう悪さはしない”という決意とも諦念ともとれるテーマ。
彼の不在が濃厚なこのアルバムの中で、微かな痛みと誠実さを響かせる貴重な一曲

7. The Devil You Know

シニカルなタイトルに反して、ポップで耳に残るナンバー。
“知っている悪魔のほうが、知らない天使よりマシ”という皮肉が、大人の葛藤や選択の妙を描き出す
軽快なサウンドと裏腹のメッセージが面白い。

8. I Wake Up Every Night

不眠と自己反省、焦燥感をテーマにしたニールのナンバー。
メロディとリズムに緊張感があり、ポップソングでありながら神経症的な感覚が宿る
ニール・フィンの作家性が極めて鮮明に現れた楽曲。

9. Conflicting Emotions

アルバムタイトル曲にふさわしく、揺れ動く内面を音で可視化したようなサウンド構成
シンセとギターが絡み合い、曲全体が「結論を持たない葛藤」を表現している。
Split Enzの“分裂する心”がそのまま刻まれた楽曲。

10. Bon Voyage

アルバムを締めくくる静かな別れの曲。
“良い旅を”というフレーズが、Split Enz自身の終焉を暗示しているかのような哀しみと優しさを漂わせる。
ピアノとシンセの柔らかな波が、余韻として心に残る。

総評

『Conflicting Emotions』は、Split Enzの音楽史において最も複雑で、解釈と評価が分かれる“静かな問題作”である。
ニール・フィンの台頭とティム・フィンの距離感、そしてデジタル化するサウンドと感情の肉体性――
それらすべてが“一体化せずに同居するという矛盾”そのものを記録している

だからこそ、この作品は魅力的でもある。
人間の創作が常に滑らかであるとは限らず、むしろ“ずれ”や“緊張”こそが真実を浮かび上がらせるということを、このアルバムは教えてくれる。

すべてがうまくいっていたわけではない。
だが、それでもSplit Enzは音楽を通して“そのときの感情”を刻んだ。
それが『Conflicting Emotions』というアルバムの核心であり、美しさと崩壊の狭間で揺れる、最後のロマンティシズムなのだ。

おすすめアルバム(5枚)

  • Crowded House / Crowded House
     ニール・フィンによるポスト-Enz作品。『Conflicting Emotions』の感性を引き継ぐ完成形。
  • Talk Talk / It’s My Life
     ポップと内省、デジタルと感情のバランスが共鳴するニューウェイヴ後期の名作。
  • Japan / Tin Drum
     バンド内の緊張を創作の源泉に変えた、実験的かつ詩的なアルバム。
  • Prefab Sprout / Protest Songs
     繊細な感情とポップの狭間で葛藤する音楽。ニールの叙情性と近い質感。
  • The The / Soul Mining
     心の混沌と冷ややかなサウンドが交差する、1980年代の精神的ポップの傑作。

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