Split Enz(スプリット・エンズ):奇抜さと緻密さの交差点、アートとポップが舞う南半球の魔法

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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イントロダクション:ニュージーランドから飛び出した異色のアートポップ集団

Split Enz(スプリット・エンズ)は、ニュージーランド出身のロックバンドであり、1970年代から1980年代にかけて、アートロック、ニューウェーブ、ポップ、プログレッシブロックを独自に融合させた異色の存在である。彼らの音楽は、ひとことで説明するのが難しい。奇抜な衣装、演劇的なステージ、変則的な曲構成、ひねりの効いたメロディ、そして一度聴いたら忘れられないポップセンス。そのすべてが混ざり合い、Split Enzという不思議な音楽世界を作り上げている。

Split Enzの魅力は、芸術的な実験性と親しみやすいメロディが共存している点にある。初期の彼らは、まるで美術学校からそのままステージに飛び出してきたような演劇的アートロックを鳴らしていた。だが、やがてNeil Finnの加入によって、より洗練されたポップ感覚が加わり、I Got Youのような世界的ヒットへとつながっていく。

彼らは、イギリスやアメリカのロックシーンの中心から生まれたバンドではない。南半球のニュージーランドという距離感が、むしろ彼らの個性を際立たせた。主流の流行をなぞるのではなく、少し斜めから、少し芝居がかった視線でポップミュージックを再構築する。その独自性こそが、Split Enzを現在も語る価値のあるバンドにしている。

アーティストの背景と歴史:Tim FinnからNeil Finnへ受け継がれた創造力

Split Enzは、1970年代初頭にニュージーランドで結成された。中心人物はTim FinnとPhil Juddである。結成当初のバンド名はSplit Endsだったが、ニュージーランドらしさを示すために「Ends」を「Enz」と綴るようになった。この表記には、バンドの遊び心と自意識がよく表れている。単なるロックバンドではなく、自分たちの出自や視点を音楽の中に組み込もうとしたのだ。

初期のSplit Enzは、フォーク、プログレッシブロック、キャバレー、クラシック音楽、演劇的な要素を混ぜ合わせた独特のサウンドを持っていた。曲はしばしば複雑で、メロディは曲がりくねり、ステージ上では奇抜な髪型やメイク、カラフルで幾何学的な衣装が視覚的なインパクトを放った。彼らは音楽だけでなく、見た目や動きも含めてひとつの表現として考えていた。

1970年代半ば、Split Enzはオーストラリアへ活動拠点を広げ、さらにイギリスにも挑戦する。だが、最初から大成功したわけではない。初期の作品は批評家から注目されながらも、一般的なヒットにはなかなか結びつかなかった。アート性が高く、ポップとしては少し難解だったためである。

大きな転機となったのが、Tim Finnの弟であるNeil Finnの加入である。Neil Finnは、兄Timとは異なるタイプのメロディメーカーだった。彼の書く曲には、複雑さよりも、耳にすっと入る美しい旋律と感情の明快さがあった。このNeilの才能が、Split Enzをより大きなポップの舞台へ押し上げることになる。

1980年、アルバムTrue ColoursとシングルI Got Youの成功によって、Split Enzは国際的な注目を浴びる。奇抜なアートロック集団だった彼らは、ニューウェーブ時代の鮮やかなポップバンドとして再評価されるようになった。その後もWaiata、Time and Tide、Conflicting Emotionsなどの作品を通じて、彼らはアート性とポップ性のバランスを探り続けた。

音楽スタイルと特徴:アートロックからニューウェーブ・ポップへ

Split Enzの音楽は、時期によって大きく表情を変える。初期はプログレッシブロックやアートロックの色が濃く、曲構成も複雑で、演劇的な要素が強かった。一方、後期にはニューウェーブやギターポップの要素が前面に出て、よりコンパクトで洗練された楽曲が増えていく。

初期の楽曲には、ピアノ、アコースティックギター、変則的なリズム、複雑なコーラス、急激なテンポ変化が多く登場する。まるで舞台の場面転換のように、曲の表情が次々に変わる。普通のロックバンドのようにギターリフで押し切るのではなく、楽曲そのものが小さな劇場のように構成されている。

一方、1980年代に入ると、Split Enzはニューウェーブ的な鋭さとポップなメロディを強めていく。シンセサイザーやタイトなドラム、短く印象的なギター、明快なサビが前面に出るようになる。だが、彼らのポップソングは単純ではない。どこか不安定なコード進行、少しねじれたメロディ、皮肉や孤独を含んだ歌詞が、曲に独特の影を与えている。

Split Enzのサウンドを特徴づける重要な要素は、奇抜さの中にある緻密さである。彼らは見た目こそ派手で風変わりだが、楽曲の作りは非常に丁寧だ。メロディの運び、コーラスの重ね方、楽器の配置、曲の展開には、職人的な計算がある。だからこそ、彼らの音楽は単なる変わり者の音楽では終わらない。奇抜さの奥に、ポップソングとしての芯がしっかり通っている。

代表曲の解説:不思議な感情を鮮やかなメロディに変えた楽曲たち

I Got You

I Got Youは、Split Enz最大の代表曲であり、彼らを世界的に知らしめた楽曲である。Neil Finnによる作曲で、鋭いニューウェーブ的なサウンドと、哀愁を帯びたメロディが見事に結びついている。

この曲の魅力は、明るいポップソングのようでいて、どこか不安を抱えているところにある。サビは非常にキャッチーで、一度聴けば耳に残る。しかし、全体には神経質な緊張感が漂っている。ギターやキーボードの音色は少し冷たく、ボーカルには恋愛の高揚だけでなく、相手に依存するような危うさも感じられる。

I Got Youは、Split Enzがアートロックの複雑さをポップソングの形に凝縮できるようになった瞬間を示している。奇抜な衣装や映像表現とともに語られることも多いが、楽曲そのものの完成度が非常に高い。ニューウェーブ時代の名曲として、今なお色あせない輝きを持っている。

Six Months in a Leaky Boat

Six Months in a Leaky Boatは、Split Enzの中でも特に物語性の強い楽曲である。タイトルからして印象的で、古い船で不安定な航海を続けるようなイメージが広がる。曲調は明るさを含みながらも、どこか漂流感がある。

この曲には、ニュージーランドや南半球の海洋的な感覚がよく表れている。広い海、長い旅、不安定な船、希望と不安が入り混じる心情。Split Enzはこの曲で、自分たちの地理的な背景をポップソングの中に自然に取り込んだ。

メロディは親しみやすいが、アレンジには彼ららしいひねりがある。軽やかなリズムの中に、航海の危うさや人生の不安定さがにじむ。明るく歌っているのに、足元の床板が少しずつ水を吸っているような感覚がある。この二面性が、Split Enzの魅力である。

Message to My Girl

Message to My Girlは、Neil Finnのメロディメーカーとしての才能が美しく表れたバラードである。Split Enzの奇抜で演劇的なイメージとは少し異なり、ここでは非常に素直で、感情に寄り添うようなポップソングが展開される。

この曲の美しさは、過剰な装飾ではなく、メロディと歌の誠実さにある。恋人への思いを伝える内容でありながら、甘すぎず、どこか内省的である。Neil Finnの後のCrowded Houseでの作風にもつながる、温かく繊細なメロディ感覚がすでに完成されている。

Split Enzの中にあったポップの核心を知るには、Message to My Girlは重要な一曲である。彼らが単なる奇抜なニューウェーブバンドではなく、深い情感を持つソングライター集団だったことを示している。

One Step Ahead

One Step Aheadは、Split Enzの洗練されたニューウェーブ・ポップを代表する楽曲である。軽快でスマートなリズム、印象的なメロディ、少し影のあるボーカルが、1980年代初頭の空気を鮮やかに伝えている。

この曲には、追いつかれそうで追いつかれない、常に一歩先へ進もうとする緊張感がある。タイトル通り、楽曲全体が前へ前へと進む感覚を持っている。だが、そこには完全な自信ではなく、不安を抱えながら走っているようなニュアンスもある。

Split Enzのポップソングには、しばしばこのような神経の細さがある。明るく洗練されているが、どこか落ち着かない。きれいな紙で包まれた箱の中に、少し奇妙な機械が入っているような印象だ。

History Never Repeats

History Never Repeatsは、Split Enzの代表的なポップロック曲のひとつである。タイトルの通り、過去は繰り返さないというメッセージを持ちながら、楽曲自体は非常に印象的で、前向きな推進力を備えている。

この曲の魅力は、シンプルな言葉の中に人生の実感があるところだ。人は過去の失敗や後悔に縛られがちだが、それでも時間は進み続ける。Split Enzはその感覚を、説教臭くではなく、軽やかなポップソングとして届けている。

ギターやキーボードのアレンジも無駄がなく、曲全体に引き締まった魅力がある。アートロック的な複雑さを経たバンドだからこそ、こうしたコンパクトな楽曲にも細やかな工夫が感じられる。

I See Red

I See Redは、初期から中期にかけてのSplit Enzの激しい側面を象徴する楽曲である。スピード感があり、パンクやニューウェーブ的な鋭さを持ち、Tim Finnの神経質で演劇的なボーカルが強烈な印象を残す。

この曲には、怒りや焦燥が凝縮されている。だが、ただ荒っぽいだけではない。リズムや展開には緻密な計算があり、勢いの中にもSplit Enzらしい構築性がある。感情が暴れているのに、楽曲はきちんと設計されている。この矛盾が非常に面白い。

I See Redは、Split Enzがポップなヒット曲へ向かう前に持っていた、鋭く過剰なエネルギーを伝える重要な曲である。

アルバムごとの進化

Mental Notes:演劇的アートロックの出発点

1975年のMental Notesは、Split Enzの初期衝動が詰まったアルバムである。フォーク、プログレ、キャバレー、クラシック的なアレンジが混ざり合い、非常に個性的な作品となっている。

この時期のSplit Enzは、まだポップバンドというより、音楽劇団に近い印象がある。曲は一筋縄では進まず、急にテンポが変わったり、奇妙なコーラスが現れたり、幻想的な雰囲気から不気味な展開へ移ったりする。聴き手は、普通のロックアルバムを聴いているというより、奇妙な舞台を観ているような気分になる。

Mental Notesには、のちの洗練されたSplit Enzとは違う荒削りな魅力がある。完成度よりも発想の奔放さが前面に出ており、若いアーティストたちが自分たちだけの世界を作ろうとしている熱が感じられる。

Second Thoughts:イギリスへの挑戦と音の再構築

Second Thoughtsは、初期曲の再録や再構成を含み、Split Enzが国際的な舞台へ向かう過程で重要な意味を持つ作品である。プロデュース面でもサウンドが整理され、初期の奇抜さをより明確な形に整えようとする意図が感じられる。

このアルバムでは、彼らの演劇性がより洗練されている。混沌としたアイデアが少し整理され、アートロックとしての輪郭がはっきりしてきた。とはいえ、一般的なポップアルバムから見れば、まだかなり風変わりである。

Split Enzがイギリスのロックシーンへ挑戦しようとしていた時期の緊張感も、この作品には漂っている。ニュージーランド発の奇妙なバンドが、世界の音楽地図の中で自分たちの居場所を探している。その不安と野心が音に刻まれている。

Dizrythmia:不安定さを美学に変えた過渡期

1977年のDizrythmiaは、タイトルからしてSplit Enzらしい作品である。「リズムの乱れ」を思わせる言葉通り、このアルバムには不安定でねじれた魅力がある。

この時期のバンドは、初期のアートロック性を保ちながら、よりタイトな曲作りへ向かっていた。奇抜さは残っているが、楽曲としての焦点が少しずつ定まってきている。Tim Finnの表現力も際立っており、演劇的な歌唱とポップなメロディが独自のバランスを見せる。

Dizrythmiaは、Split Enzが単なる実験集団から、より強い楽曲を作るバンドへ変化していく過渡期の作品である。まだ完全にはポップへ振り切っていないが、その不安定さこそが魅力になっている。

Frenzy:パンク/ニューウェーブ時代への反応

1979年のFrenzyは、Split Enzがパンクやニューウェーブの時代に反応した作品である。初期の複雑なアートロックに比べると、より短く、鋭く、勢いのある楽曲が増えている。

このアルバムでは、Tim Finnの神経質なエネルギーが前面に出ている。I See Redのような楽曲には、怒りと焦燥が詰まっており、当時の音楽シーンの変化に対するバンドの反応が感じられる。

ただし、Split Enzはパンクをそのまま模倣したわけではない。彼らの音楽には、相変わらず変則的なメロディや演劇性がある。勢いを取り入れながらも、自分たちの奇妙な美学を失わない。その姿勢が、このアルバムの面白さである。

True Colours:アートポップが世界へ届いた決定的作品

1980年のTrue Coloursは、Split Enzの転機となったアルバムである。Neil Finn作のI Got Youが大ヒットし、バンドは国際的な知名度を獲得した。

このアルバムでは、奇抜なアート性とニューウェーブ・ポップの明快さが見事に結びついている。音はカラフルで、曲はコンパクトになり、メロディはより耳に残る。しかし、Split Enzらしい不穏さやひねりは失われていない。

True Coloursというタイトルも象徴的である。彼らはここで、単なる変わり者バンドではなく、本当の意味で優れたポップバンドであることを示した。色彩豊かなサウンド、独特の視覚イメージ、鋭いニューウェーブ感覚が一体となり、Split Enzの代表作となった。

Waiata:洗練されたポップと南半球の感覚

1981年のWaiataは、True Coloursの成功を受けて制作されたアルバムである。タイトルはマオリ語で「歌」を意味し、ニュージーランド出身のバンドとしての意識も感じられる。

この作品では、より洗練されたニューウェーブ・ポップが展開される。One Step AheadやHistory Never Repeatsなど、印象的な楽曲が収録されており、バンドのポップセンスがさらに磨かれている。

Waiataには、前作の鮮烈な突破力とは違う、落ち着いた完成度がある。奇抜さは少し抑えられ、楽曲そのものの質が前面に出ている。Split Enzが一時的なヒットではなく、優れたソングライティングを持つバンドであることを示した作品だ。

Time and Tide:成熟と陰影が深まった名作

1982年のTime and Tideは、Split Enzの中でも特に評価の高いアルバムである。ポップな親しみやすさを持ちながら、より深い感情や陰影が加わっている。

Six Months in a Leaky Boatは、このアルバムを象徴する楽曲である。航海のイメージ、南半球的な視点、人生の不安定さが美しく結びついている。また、アルバム全体にも、時間や変化、心の揺れを見つめるような雰囲気がある。

Time and Tideは、Split Enzがアートロックの奇抜さとポップソングの完成度を、成熟した形で融合させた作品である。派手さだけではなく、深みがある。彼らのキャリアの中でも、非常に重要な一枚だ。

Conflicting Emotions:内面の揺れとバンドの変化

1983年のConflicting Emotionsは、タイトル通り、複雑な感情が漂うアルバムである。Tim FinnとNeil Finnのバランス、バンド内の変化、音楽的方向性の模索が感じられる。

この時期のSplit Enzは、すでに成熟したポップバンドでありながら、同時にどこへ進むべきかを探していた。Message to My Girlのような美しい楽曲は、Neil Finnの作曲家としての成長を強く示している。一方で、バンド全体には少し揺らぎもある。

Conflicting Emotionsは、Split Enzの終盤を理解するうえで重要な作品である。表面的には洗練されたポップアルバムだが、その奥には、バンドが新しい段階へ向かう前の不安や迷いが見える。

See Ya ’Round:終幕と次なる物語への橋渡し

1984年のSee Ya ’Roundは、Split Enzのラストアルバムとして位置づけられる作品である。Tim Finnが離れ、Neil Finnがより中心的な役割を担う中で制作された。

この作品には、Split Enzの終わりと、後にNeil Finnが結成するCrowded Houseへの予感が同時にある。奇抜さや演劇性は薄れ、より自然体のポップソングへ向かう感覚が強まっている。

Split Enzとしての魔法は少しずつ静かになっていくが、その中には次の時代への種がある。See Ya ’Roundは、終幕でありながら、Neil Finnのソングライターとしての未来を感じさせる作品である。

影響を受けたアーティストと音楽

Split Enzの音楽には、さまざまな影響が混ざり合っている。初期の彼らには、The Beatles以降の英国ポップの実験性、GenesisやYesなどのプログレッシブロック、さらにミュージックホールやキャバレー的な演劇性が感じられる。

The Beatlesの影響は、単にメロディが美しいという点だけではない。スタジオを実験の場として使い、ポップソングの中に奇妙な音や構成を入れる感覚に通じている。Split Enzもまた、ポップソングを普通の形に閉じ込めず、ひねりや色彩を加えていった。

プログレッシブロックの影響は、初期の複雑な曲構成や変則的な展開に表れている。ただし、Split Enzは大仰な超絶技巧よりも、奇妙なメロディや演劇的な雰囲気を重視した。彼らのプログレ性は、巨大な建築物というより、仕掛けの多い人形劇のようである。

また、1970年代後半以降は、パンクやニューウェーブの影響も吸収していった。短く鋭い曲、シンセサイザーの使用、タイトなリズム、カラフルなビジュアル表現は、時代の空気と響き合っている。Split Enzは流行に飲み込まれるのではなく、流行を自分たちの奇妙な器に注ぎ込んだ。

影響を与えたアーティストと音楽シーン

Split Enzは、ニュージーランドやオーストラリアの音楽シーンに大きな影響を与えた。南半球のバンドが国際的な舞台で独自性を示せることを証明した点で、彼らの存在は非常に重要である。

特にNeil Finnが後に結成するCrowded Houseへのつながりは大きい。Crowded Houseは、Split Enzの奇抜さを少し抑えつつ、Neil Finnのメロディセンスをより普遍的なポップロックへ発展させたバンドである。Don’t Dream It’s Overのような名曲には、Split Enzで培われたソングライティングの土台がある。

また、Split Enzのアートとポップを融合する姿勢は、後のニューウェーブ、インディーポップ、アートポップ系のアーティストにも通じる。奇抜なビジュアルと高い楽曲性を両立させるあり方は、単なる一発芸ではなく、ポップミュージックにおける重要な方法論である。

彼らは、中心地から遠く離れた場所にいても、独自の視点を持てば世界へ届く音楽を作れることを示した。これは、ニュージーランドやオーストラリアの後続アーティストにとって大きな意味を持つ。

Tim FinnとNeil Finn:兄弟が生んだ二つの個性

Split Enzを語るうえで、Tim FinnとNeil Finnの関係は欠かせない。兄Timは、バンド初期の演劇性、奇抜さ、神経質なエネルギーを象徴する存在である。彼の歌には、舞台俳優のような表情の豊かさがあり、感情が誇張され、ねじれ、時に滑稽に、時に切実に響く。

一方、弟Neilは、より自然で普遍的なメロディを書く才能を持っていた。彼の楽曲は、複雑な装飾をしなくても人の心に届く。I Got You、Message to My Girl、後のCrowded Houseの楽曲を聴くと、Neil Finnが持つメロディの透明感がよくわかる。

Split Enzの面白さは、この二つの個性が交差したところにある。Timの演劇性とNeilのポップ感覚。奇抜さと親しみやすさ。緊張と温かさ。この兄弟の対比が、バンドに独特の奥行きを与えた。

Timだけであれば、Split Enzはよりアートロック寄りのカルトな存在に留まったかもしれない。Neilだけであれば、より早く普遍的なポップへ向かったかもしれない。二人が同じバンドにいたからこそ、Split Enzは奇妙でありながら美しい、独自のバランスを獲得したのである。

ビジュアルとステージ:音楽を超えた総合芸術としてのSplit Enz

Split Enzの特徴として、ビジュアル面の強烈さも重要である。彼らは奇抜な髪型、カラフルな衣装、メイク、演劇的な身振りを用い、ステージ全体を視覚的な作品として作り上げた。

初期のSplit Enzの姿は、普通のロックバンドというより、未来的な道化師、あるいは不思議な人形劇団のようである。角ばった衣装、鮮やかな色彩、幾何学的なデザインは、彼らの音楽が持つねじれた美しさとよく合っていた。

この視覚表現は、単なる装飾ではない。Split Enzにとって、見た目も音楽の一部だった。楽曲の奇妙な展開、演劇的なボーカル、カラフルなアレンジは、衣装やステージングと結びつくことで、より強い印象を生んだ。

1980年代のMTV時代に入ると、彼らのビジュアルセンスはさらに有利に働いた。I Got Youのような楽曲は、映像時代のニューウェーブ感覚とも相性が良かった。Split Enzは、音楽と視覚表現が結びつく時代を先取りしていたバンドとも言える。

同時代のアーティストとの比較:Split Enzのユニークさ

Split Enzと同時代には、アートロックやニューウェーブを担う個性的なバンドが多く存在した。Talking Heads、XTC、Roxy MusicSparksGenesis、The Carsなどがその代表である。

Talking Headsが知的で都会的なニューウェーブを作り上げたのに対し、Split Enzはより演劇的で色彩豊かなアートポップを展開した。XTCと比べると、両者にはひねくれたポップセンスという共通点があるが、Split Enzのほうがより舞台的で、視覚的な奇抜さが強い。

Sparksとの比較も興味深い。Sparksもまた、演劇性、皮肉、奇妙なメロディを持つバンドである。だが、Split Enzには南半球的な開放感や海洋的なイメージがあり、Sparksの都会的な冷笑とは異なる温度がある。

Roxy Musicが洗練されたアートロックの美学を追求したのに対し、Split Enzはもっと手作り感があり、少し不器用で、親しみやすい奇妙さを持っていた。そこが彼らの魅力である。完璧に冷たい美学ではなく、どこか人間味のある奇抜さなのだ。

ファンと批評家からの評価:カルト性とポップ性のあいだで

Split Enzは、地域によって評価のされ方が異なるバンドでもある。ニュージーランドやオーストラリアでは非常に重要な存在として認識されており、彼らの楽曲は国民的な記憶に近い位置を占めている。一方、世界的にはI Got Youのヒットで知られるバンドという印象も強い。

しかし、彼らの本当の魅力は一曲だけでは測れない。初期のアートロック作品から、1980年代の洗練されたポップアルバムまでをたどると、Split Enzがいかに多面的なバンドだったかが見えてくる。

批評的には、彼らはしばしば「過小評価されたバンド」として語られる。特に、複雑な作曲能力、独自の視覚表現、Finn兄弟のソングライティングの質を考えると、もっと広く評価されてもよい存在である。

ファンにとってSplit Enzは、単なる懐かしのニューウェーブバンドではない。少し変わっていて、少し不安定で、それでも美しいメロディを届けてくれる特別な存在である。彼らの音楽には、奇妙なものを愛する人、普通のポップでは物足りない人、しかし難解すぎる音楽ではなく心に残るメロディを求める人に届く力がある。

Split Enzの魅力:奇抜さの奥にある心の震え

Split Enzの音楽は、第一印象では「変わっている」と感じるかもしれない。衣装は派手で、曲はひねくれていて、ボーカルも時に芝居がかっている。しかし、聴き込むうちに、その奇抜さの奥に非常に繊細な感情があることに気づく。

彼らのポップソングには、喜びだけでなく、不安、孤独、焦り、希望、未練が混ざっている。I Got Youのキャッチーなサビにも、Six Months in a Leaky Boatの軽やかな航海感にも、Message to My Girlの甘いメロディにも、どこか胸を締めつける影がある。

Split Enzは、奇抜なことをするためだけに奇抜だったのではない。普通の感情を、普通ではない形で表現したかったのだと思える。人の心は、いつもまっすぐではない。嬉しいのに不安だったり、愛しているのに疑ったり、前に進みたいのに過去を振り返ったりする。Split Enzの音楽は、そうした心のねじれを、カラフルなポップとして描き出す。

彼らの音楽は、南半球から届いた不思議な手紙のようである。封筒は派手で、文字は少し踊っていて、内容は思ったより切実だ。だからこそ、時代を越えて聴く価値がある。

まとめ:Split Enzはアートとポップの境界で踊り続ける魔法だった

Split Enz(スプリット・エンズ)は、ニュージーランドから登場し、アートロック、プログレッシブロック、ニューウェーブ、ポップを独自に融合させた異色のバンドである。彼らの音楽は、奇抜でありながら緻密で、演劇的でありながら深いメロディを持っている。

Mental Notesでは演劇的アートロックの原型を示し、DizrythmiaやFrenzyではパンク/ニューウェーブ時代の緊張感を取り込み、True ColoursではI Got Youによって世界へ届くポップの輝きを手にした。Waiataでは洗練されたソングライティングを示し、Time and Tideでは成熟と陰影を深め、終盤の作品ではNeil Finnの次なる音楽的展開を予感させた。

Split Enzの核心には、Tim Finnの演劇的な創造力と、Neil Finnの普遍的なメロディセンスがある。この二つの才能が交差したことで、彼らは単なるアートバンドでも、単なるポップバンドでもない、独自の立ち位置を獲得した。

彼らの音楽は、きれいに整った一直線の道ではない。曲がりくねった小道、派手な看板、不思議な劇場、海風の吹く港町、そして心の奥に残る寂しさ。そのすべてがSplit Enzの世界にはある。

ポップミュージックは、わかりやすくある必要がある。しかし、わかりやすいだけでは忘れられてしまうこともある。Split Enzは、わかりやすさの中に奇妙さを、奇妙さの中に美しいメロディを忍ばせた。だからこそ、彼らの楽曲は今も不思議な鮮度を保っている。

Split Enzは、アートとポップが舞う南半球の魔法である。少し歪んでいて、少し芝居がかっていて、けれど最後には胸に残る。その魔法は、今も音楽好きの心の中で静かに鳴り続けている。

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