アルバムレビュー:B-Sides, Rarities and Demos by Current Joys

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 2024年4月12日(Bandcampにて)
ジャンル: ローファイ、インディー・ロック、ホームレコーディング、オルタナティブ


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概要

『B-Sides, Rarities and Demos』は、Current Joysカレント・ジョイズことニック・ラスプーリが、
これまでの制作活動で生み出してきた未発表曲、デモ音源、B面トラックを集めたコンピレーション作品である。

アルバムタイトルの通り、これは「新作」ではない。
だが、それゆえにこそ、**ニックというアーティストの「裏面」や「素顔」**が覗けるような作品となっている。

収録されている楽曲は、彼の過去作『Wild Heart』や『Me Oh My Mirror』『A Different Age』期に書かれたものが中心であり、
ローファイでざらついた質感、個人的な録音環境、即興性の高さがそのままパッケージされている。

特筆すべきは、これらの曲が単なる“お蔵出し”ではなく、あくまで彼の“作品の一部”として機能する完成された断片であること。
それはまるで、スケッチブックに描かれた走り書きが、完成品以上のリアリティを持って語りかけてくるような体験に近い。


全曲レビュー(抜粋)

1. “Blue October (Demo)”

荒い録音のギターとリバーブたっぷりのボーカルが、秋の終わりに感じる感情の消え際を描写。
タイトルの“Blue”は哀しみでもあり、空の色でもある。
デモながら、感情の輪郭はむしろ完成版以上に明確。

3. “Wasted Youth (Home Recording)”

“無駄にした若さ”というストレートな表現が突き刺さる。
一発録りのようなギターと、途中でミスを含んだまま進む展開に、
“編集されない本音”の価値が宿る。

5. “She Only Wants to Dance (B-Side)”

『Me Oh My Mirror』期に作られたと思われるポップ・ナンバー。
ドラムマシンと軽快なリズムが印象的だが、
歌詞にはすれ違いと諦念がにじむ。
ダンス=逃避という象徴的構造が透けて見える。

7. “Video Girl (Cassette Rip)”

カセットで録られたままの音源で、ノイズやテープのヨレもそのまま。
“ビデオガール”という言葉には、過去の記憶とスクリーン越しの恋が込められている。
もはや懐かしさすら超えて、“記録された幻”のような聴き心地がある。

10. “Untitled #3”

タイトルすら与えられていない楽曲。
シンプルなギターと環境音の中に、
無名のまま残された感情の残響が広がっていく。
アルバム全体の“儚さ”を象徴するような小品。


総評

『B-Sides, Rarities and Demos』は、Current Joysというプロジェクトの「断片集」であると同時に、
“完成された感情よりも、揺れている最中の感情”のほうが真実に近いのではないか
という問いでもある。

どのトラックも音質は決して良くない。
だが、その“粗さ”こそが、**ニックの音楽が本来持っていた“居場所のなさ”や“日常の隙間でふと現れる自己”**を再認識させてくれる。

これはファン向けのアイテムではあるが、
同時に、“感情とは何か”を見つめ直したいリスナーにとっても、
記憶と喪失、愛と不安、そして声にならない心音を保存した、ひとつのアーカイブと呼ぶにふさわしい作品なのだ。


おすすめアルバム(5枚)

  1. Elliott Smith – New Moon (2007)
     デモ音源集ながら、むしろ本音が露出する名盤。傷つきやすさと誠実さが響き合う。

  2. Alex G – Rules (2012)
     宅録ならではのラフさと、旋律の妙。『B-Sides〜』との親和性が高い。

  3. Mount Eerie – Pre-Human Ideas (2013)
     別バージョンや再構築を通して、感情の再定義を試みた作品。

  4. Sparklehorse – Dreamt for Light Years in the Belly of a Mountain (2006)
     断片、夢、ノイズの美しさ。現実と幻想のあいだを描く姿勢が近い。

  5. Neutral Milk Hotel – Ferris Wheel on Fire (2011)
     未発表曲を通じて見える世界観の深度。ファンアイテムでありながら文学的でもある。

歌詞の深読みと文化的背景

このアルバムに収められた歌詞群は、自己確認、失われた記憶、そして名もなき感情が主軸をなしている。
完成されたアルバムでは捨てられてしまうような、不完全な言葉たちが、
ここではそのままの状態で“本物の心の声”として息づいている

また、録音の方法—カセット、iPhone、ガレージバンド—といった選択そのものが、
Z世代以降の“ドキュメントとしての音楽”という新たな価値観と直結している。
“プロダクト”ではなく“プロセス”を愛でるという、リスナーとアーティストの新しい関係性が提示されているとも言える。

『B-Sides, Rarities and Demos』は、音楽の“未完成”にしか宿らない輝きを記録した、
静かで誠実なアーカイブなのである。

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