発売日: 1992年2月12日
ジャンル: ジャム・バンド、ロック、ファンク、ブルーグラス、プログレッシブ・ロック
Phishの3作目にあたるスタジオアルバム「A Picture of Nectar」は、バンドがメジャーレーベル（エレクトラ・レコード）と契約してリリースした初の作品であり、彼らの音楽的多様性と即興演奏の能力が光る一枚である。ファンク、ブルーグラス、ジャズ、プログレッシブ・ロックといったさまざまなジャンルの要素が詰め込まれており、フィッシュのジャム・バンドとしての魅力を余すところなく堪能できる。アルバムタイトルの「Nectar」は、フィッシュのライブ・ツアーの支援者である「Nectar Rorris」の名前から取られており、彼に捧げられた意味も込められている。ファンにとって重要な楽曲が多数収録されており、フィッシュのエネルギッシュなパフォーマンスと遊び心に満ちた作風が楽しめるアルバムだ。
各曲解説
- Llama
アルバムの幕開けを飾る激しい一曲で、プログレッシブ・ロックとジャズフュージョンの要素が詰まっている。速いテンポと変拍子が続く複雑な構成で、メンバーの技術力が際立つ。 - Eliza
繊細で美しいインストゥルメンタル曲で、ギターとピアノのメロディが心地よい。Llamaのエネルギーから一転し、穏やかなサウンドスケープを提供する。 - Cavern
フィッシュのライブ定番曲の一つで、ファンクが基調となったリズミカルなナンバー。コミカルな歌詞とキャッチーなリフが特徴で、リスナーに楽しい雰囲気を与える。 - Poor Heart
ブルーグラスの影響が色濃く出た短い楽曲で、軽快なテンポとユーモラスな歌詞が魅力。フィッシュの多様な音楽スタイルがうまく反映されている。 - Stash
サイケデリックでジャジーな構成を持つ、ライブでも長尺のジャムを披露する曲。複雑なリズムと変拍子が続き、緊張感のあるムードが特徴。トレイ・アナスタシオのギターとバンド全体の絡みが絶妙で、即興性が存分に発揮される一曲。 - Manteca
ディジー・ガレスピーのカバーで、フィッシュならではのアレンジが加えられている。ラテンジャズのリズムとフィッシュの即興演奏が見事に融合した楽しいナンバー。 - Guelah Papyrus
ストレンジでシアトリカルな要素が強い一曲。ユニークなリズムと不思議な歌詞が特徴的で、エキセントリックな雰囲気が楽しめる。 - Magilla
ジャズ色が強いインストゥルメンタルで、ピアノリフがメイン。メロディとリズムが遊び心に満ち、フィッシュのリズムセクションの一体感が感じられる軽快な曲だ。 - The Landlady
明るくリズミカルなインストゥルメンタルで、ライブでも人気が高い。陽気で軽やかな雰囲気が、リスナーを楽しい気分にさせる。 - Glide
優雅で穏やかな一曲で、フィッシュの多様性が光る。アナスタシオの繊細なギタープレイが特徴的で、聴き手にリラックス感をもたらす。 - Tweezer
フィッシュの代表的なジャムソングで、ファンクとロックが混ざり合ったエネルギッシュな一曲。ライブでは長時間にわたる即興演奏が展開されることが多く、ファンにとっても重要な曲である。 - The Mango Song
コメディタッチの歌詞と陽気なメロディが特徴で、フィッシュのユーモアが感じられる。サウンドはキャッチーながらも変則的で、独特の魅力が光る。 - Chalk Dust Torture
フィッシュのライブで人気の高いロックナンバーで、エネルギッシュなギターリフが特徴。激しいサウンドとボーカルが一体となり、聴く者を熱狂させる。 - Faht
エクスペリメンタルなインストゥルメンタルで、独特な効果音やエコーが印象的。環境音とアコースティックギターが融合し、幻想的な雰囲気を生み出している。 - Catapult
短いながらも、奇妙で実験的な楽曲。フィッシュの遊び心と実験精神が詰まっており、独特のインパクトを持つ。 - Tweezer Reprise
「Tweezer」のリプライズで、アルバムのクライマックスを飾る。重厚なリフが繰り返され、エネルギッシュなエンディングにふさわしい盛り上がりを見せる。
アルバム総評
A Picture of Nectarは、フィッシュの音楽的多様性とユニークな個性が存分に表現されたアルバムであり、バンドがメジャーレーベルに移行してもなお、その自由奔放なスタイルを貫いている。ファンク、ジャズ、ブルーグラス、ラテンなど、さまざまなジャンルの要素が取り入れられており、リスナーは毎曲異なる音楽の冒険を楽しめる。特に「Tweezer」や「Stash」はフィッシュのライブで長時間の即興演奏が繰り広げられる定番曲として人気があり、バンドのファンにとって重要な楽曲である。全体として、フィッシュの音楽的可能性を示しつつ、彼らの遊び心とテクニックが詰まった一枚で、初期のフィッシュを象徴する名盤といえる。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Grateful Dead – American Beauty
アメリカン・ロックとジャムバンドの美学が詰まったアルバム。フィッシュと同様に多様な音楽スタイルを取り入れており、ファンにとって共感できる部分が多い。
Frank Zappa – Apostrophe (‘)
フィッシュに多大な影響を与えたザッパのアルバムで、プログレッシブ・ロックとジャズの要素が楽しめる。ユーモアと実験精神が共通している。
The Allman Brothers Band – Eat a Peach
ジャムバンドの先駆者による名作で、フィッシュの即興演奏に通じるエネルギッシュなサウンドが楽しめる。
Medeski Martin & Wood – Friday Afternoon in the Universe
ジャズとジャムの要素を融合させたサウンドが特徴のアルバム。フィッシュのリズムやジャズの影響が好きなリスナーにおすすめ。
Umphrey’s McGee – Similar Skin
プログレッシブとジャムを融合させたアルバムで、フィッシュの音楽スタイルを好むリスナーにはピッタリ。多彩な音楽ジャンルのクロスオーバーが魅力。
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