
発売日: 2019年8月16日
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、シューゲイズ、ポストパンク、エレクトロニック・ロック
概要
『This Is Not a Safe Place』は、2019年に発表された Ride 再結成後2作目 のアルバムである。
前作『Weather Diaries』(2017)で見事な復活を遂げた彼らは、
本作でさらに“現在の Ride” の姿を深く掘り下げ、
シューゲイズ × ポストパンク × エレクトロニカ を大胆に組み合わせた意欲作を完成させた。
プロデューサーは前作に続き Erol Alkan。
The Chemical Brothers や Late of the Pier のような
エレクトロ/クラブカルチャーとも親和性の高いプロデューサーであり、
Ride の持つ“揺れるギターの美学”に電子的テクスチャを自然に融合させている。
1990年代初頭に確立した Ride の
- 霞んだ音像
- 揺れるコーラス
- 抽象的な歌詞
- メロディの陰影
といった特徴が、
現代の音響感覚と再結びついてアップデートされている のが本作最大の魅力である。
さらに本作はタイトルが示す通り、
「ここは安全ではない」
という不安定な心理状態、社会の緊張、個人の揺らぎなど、
2010年代後半の時代精神を強く反映した作品でもある。
全曲レビュー
1曲目:R.I.D.E.
ノイズ混じりのドラムとポストパンク的リフが交錯する、異様な幕開け。
バンド名を冠したタイトルが象徴するように、“再定義された Ride” を提示する序章。
2曲目:Future Love
本作のリード曲。
爽やかでメロディックだが、うっすらと寂しさが漂う。
90年代Rideらしさが最も自然に顔を覗かせるドリームポップの名曲。
3曲目:Repetition
New Order や The Cure を彷彿とさせるポストパンク的なミニマルビート。
反復の快感と乾いた冷たさが共存し、アルバムの新方向を象徴する。
4曲目:Kill Switch
攻撃的で荒々しいエッジを持つナンバー。
轟音ギターを抑えながらも、緊張感と不穏さが支配する。
5曲目:Clouds of Saint Marie
Ride らしい“晴れと曇りの間”を描いたファン人気曲。
穏やかなメロディに漂う寂しさが心地よい。
6曲目:Eternal Recurrence
タイトル通り“永遠の反復”を想起させる構造。
瞑想的で、浮遊するような質感が魅力のサイケデリックトラック。
7曲目:Fifteen Minutes
アングリーでパンク的な爆発を見せる曲。
Ride の“荒々しいルーツ”が突然顔を出す、緊張感の高い一曲。
9曲目:Shadows Behind the Sun
美しく静謐なドリームポップ。
アルバム後半の陰影を深める、非常に Ride らしい抒情が詰まった曲。
10曲目:Burning
ミニマルなリズムパターンと電子的テクスチャが印象的。
揺らぎと規則性が交互に現れ、アルバムのテーマと響き合う。
11曲目:Dial Up
現代的なエレクトロノイズとギターが混ざり合う実験的曲。
“安全ではない世界” の中を漂うような不安定さを描く。
12曲目:In This Room
荘厳でゆっくりと広がるラスト曲。
Ride の持つ叙情性が静かに、しかし強烈な余韻で締めくくられる。
総評
『This Is Not a Safe Place』は、
Ride がレジェンドとしてではなく、現役のバンドとして“今の音”に向き合った作品
である。
その特徴は、
- 1990年代的シューゲイズの更新
- ポストパンク/ニューウェーブの引用
- 電子的処理やミニマルビートの導入
- 陰影あるメロディの深化
- 社会不安と個人の揺らぎを反映したテーマ性
にある。
特に、
“揺れるギター × エレクトロ的質感 × 現代的ポストパンク”
という組み合わせは、この時期の再結成バンドの中でも最も洗練されている。
『Carnival of Light』『Tarantula』の混乱期を経て、
再結成後の Ride は新しい方向へ落ち着きつつあり、
本作はその “成熟と再生の確かな証拠” といえるだろう。
おすすめアルバム(5枚)
- Ride / Weather Diaries(2017)
現代Rideへの第一歩として必聴。エレクトロ感との融合が美しい。 - Slowdive / Slowdive(2017)
再結成シューゲイズ勢の傑作。現代化したドリームポップの比較対象に最適。 - The Cure / Disintegration
ポストパンク/ゴシック的な陰影のルーツとして。 - New Order / Technique
ミニマルビートとギターの共存という文脈で響き合う。 - DIIV / Deceiver
現代的シューゲイズ × オルタナのアップデートという意味で相性が良い。
歌詞の深読みと文化的背景
本作の歌詞は、
- 不安
- 孤独
- 世界の分断
- 個人的な逃避
- 壊れた安全神話
といったテーマが軸になっている。
タイトルが示す“安全でない場所”とは、
外の世界だけでなく、
心の中の不安定さや揺らぎそのもの でもある。
2010年代後半、世界は政治的混乱・SNS疲労・個人の孤立化などが進み、
音楽にも“安心できない時代の空気”が反映され始めた。
本作はその空気を Ride なりの方法でとらえ、
揺らぎと美しさに変換した作品である。
引用
- アルバム基本情報(2019年発表)
- 公開されているトラックリスト
- シューゲイズ復興期(2010年代後半)の一般的潮流



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