アルバムレビュー:Rio by Duran Duran

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1982年5月10日

ジャンル:ニュー・ロマンティック、シンセポップ、ニューウェイヴ、ダンス・ロック、ファンク・ポップ、アート・ポップ

概要

Duran Duranの2作目にあたる『Rio』は、1980年代前半の英国ニュー・ロマンティック/シンセポップを象徴するアルバムであり、バンドを国際的なポップ・アイコンへ押し上げた代表作である。1981年のデビュー作『Duran Duran』で、彼らはポスト・パンク以後の鋭さ、ディスコやファンクのリズム、シンセサイザーの光沢、ファッション性を兼ね備えた新世代のバンドとして登場した。その方向性は『Rio』でさらに洗練され、音楽、映像、ファッション、都市的イメージ、リゾート的な異国趣味が一体化した、1980年代ポップ・カルチャーのひとつの完成形となった。

Duran Duranは、Simon Le Bon、Nick Rhodes、John Taylor、Roger Taylor、Andy Taylorという5人編成で活動していた。彼らの音楽的特徴は、シンセサイザーを中心にした未来的な質感と、ベースとドラムによる肉体的なグルーヴの共存にある。Nick Rhodesのシンセサイザーは、冷たく人工的でありながら華やかで、楽曲に映画的な色彩を与える。John Taylorのベースは、Duran Duranの音楽における最も重要な要素のひとつであり、ファンクやディスコの影響を受けた流動的なラインによって、曲を単なるシンセポップではなく、強い身体性を持つダンス・ロックへ引き上げている。Roger Taylorのドラムはタイトで、Andy Taylorのギターはロック的なエッジとニューウェイヴ的な切れ味を与える。Simon Le Bonのヴォーカルは、物語性のある歌詞をやや演劇的に歌い、バンドの華やかなイメージを決定づけた。

『Rio』が重要なのは、単にヒット曲を多く含む作品だからではない。本作は、1980年代初頭における音楽と映像の関係を大きく変えた作品でもある。MTVの時代が本格化する中で、「Rio」「Hungry Like the Wolf」「Save a Prayer」などのミュージック・ビデオは、Duran Duranのイメージを世界中に拡散した。ヨット、海、熱帯、白いスーツ、美しい風景、映画のような編集は、楽曲を単なる音源ではなく、視覚的なライフスタイルとして提示した。Duran Duranは、音楽そのものと同じくらい、映像的な自己演出によって1980年代のポップ・スター像を更新したバンドである。

ただし、『Rio』の本質を視覚的な華やかさだけに限定するべきではない。アルバム全体を聴くと、そこには非常に緻密なリズム設計、ポスト・パンクから引き継がれた硬質なアンサンブル、ファンクの低音感覚、シンセサイザーによる空間構築、そして都市的な不安や欲望を含む歌詞が存在する。表面的には明るく豪華である一方、楽曲の中には追跡、欲望、逃避、孤独、記憶、夜の不安といったテーマが流れている。Duran Duranの音楽は、快楽的であると同時に、どこか冷たい距離感を持つ。

ニュー・ロマンティックという文脈においても、本作は非常に重要である。1970年代末のパンク以後、英国の若いアーティストたちは、粗削りな反抗だけでなく、ファッション、クラブ・カルチャー、電子音、グラム・ロック的な演劇性を取り込み、新しいポップの形式を作っていった。Duran Duranはその中でも、最も商業的に成功し、かつ音楽的にも高度な完成度を示したグループのひとつである。Spandau BalletJapanUltravox、ABC、The Human Leagueなどと同時代にありながら、Duran Duranはより外向的で、映像的で、国際的なポップ感覚を持っていた。

『Rio』は、1980年代ポップの明るい表面を象徴するアルバムであると同時に、その背後にある欲望、消費、異国趣味、都市的な焦燥を映し出す作品でもある。ファッション性と演奏力、商業性と音楽的洗練、映像的イメージと楽曲の強度が高い水準で結びついた、Duran Duranの決定的な代表作である。

全曲レビュー

1. Rio

アルバム冒頭を飾る「Rio」は、Duran Duranを象徴する楽曲であり、1980年代ポップの華やかさを凝縮した代表曲である。イントロから、流れるようなシンセサイザー、鋭いギター、そしてJohn Taylorの躍動的なベースが絡み合い、曲は一気に鮮烈な色彩を放つ。タイトルの「Rio」は、ブラジルの都市リオデジャネイロを直接想起させるが、楽曲におけるRioは特定の都市というより、異国的な魅力、自由、欲望、華やかな逃避の象徴として機能している。

音楽的には、ベースラインの存在感が非常に大きい。John Taylorのベースは、単にコードのルートを支えるのではなく、曲全体を牽引する旋律的な役割を担う。ファンクやディスコの影響を受けた流動的なベースが、シンセポップの人工的な質感に肉体的なグルーヴを与えている。Roger Taylorのドラムはタイトで、曲を軽快に進める一方、Andy Taylorのギターはロック的な鋭さを加える。Nick Rhodesのシンセサイザーは、全体に光沢と近未来的な雰囲気を与える。

Simon Le Bonの歌詞は、Rioという女性像を中心に展開する。彼女は実在の人物というより、魅力的でつかみどころのないイメージそのものとして描かれる。踊るように動き、川のように流れ、南国的な光をまとった存在である。ここには、1980年代ポップにおける異国趣味と女性像の結びつきが見られるが、同時にRioは単なる恋愛対象ではなく、欲望と幻想の投影として機能している。

「Rio」は、Duran Duranが音楽と映像を一体化させた代表例でもある。リゾート地を舞台にしたミュージック・ビデオは、楽曲のイメージを強く補強し、Duran Duranを視覚的なポップ・スターとして世界的に印象づけた。だが、映像の華やかさに隠れがちな楽曲の演奏面も非常に優れている。複数の楽器が精密に絡み合いながら、軽やかで高揚感のあるポップ・ソングとして成立している。

アルバムの冒頭曲として「Rio」は完璧に機能している。華やかで、速く、洗練され、少し過剰で、逃避的である。『Rio』というアルバムの美学を最初の一曲で明確に提示する、Duran Duranの代表的な名曲である。

2. My Own Way

「My Own Way」は、タイトルが示す通り、自分自身の道を進むことをテーマにした楽曲である。前曲「Rio」の華やかなイメージから続きつつ、よりダンス・ポップ色の強いリズムと、ストリングス風のシンセサイザーが印象的である。初期Duran Duranの持つディスコ的な感覚と、ニューウェイヴ的な冷たい音像が結びついた曲といえる。

音楽的には、テンポが速く、リズムは非常に軽快である。ベースはここでも重要な役割を果たし、曲に推進力を与える。ドラムはタイトで、ギターは細かく切り込み、シンセサイザーは華やかな上昇感を作る。アレンジはポップでありながら、音の輪郭は鋭く、単なるダンス・ミュージックにはならない。

歌詞では、自分の道を進むこと、外部からの制約や期待に従わないことが歌われる。ただし、この自己主張はパンク的な反抗とは異なる。Duran Duranの場合、反抗は怒号や破壊ではなく、スタイル、速度、移動、洗練された自己演出として表現される。自分の道を行くことは、社会への直接的な対決ではなく、都市の中を軽やかにすり抜けるような感覚を持つ。

Simon Le Bonの歌唱は、強く叫ぶのではなく、流れるように言葉を乗せていく。彼の声には、どこか距離感があり、そのため歌詞の自己主張も熱血的ではなく、クールに響く。この冷静な自己主張が、Duran Duranのニュー・ロマンティック的な美学と結びついている。

「My Own Way」は、「Rio」ほどの象徴性を持つ曲ではないが、アルバム序盤の勢いを保ち、Duran Duranが持つダンス・ロックとしての魅力をよく示している。ファッション性だけでなく、リズム隊の強靭さとアレンジの緻密さが際立つ楽曲である。

3. Lonely in Your Nightmare

「Lonely in Your Nightmare」は、アルバム前半における陰影の強い楽曲である。タイトルは「君の悪夢の中で孤独」という意味を持ち、前2曲の華やかで外向的な空気から一歩離れ、夢、不安、孤独、救済への呼びかけを感じさせる。Duran Duranはしばしば明るく享楽的なバンドとして語られるが、この曲には彼らのメランコリックな側面がよく表れている。

音楽的には、テンポはやや落ち着き、シンセサイザーが広い空間を作る。ギターとベースは控えめながらも、曲に柔らかなグルーヴを与える。特にベースの動きは、派手ではないが曲の感情的な流れを支えている。Nick Rhodesのシンセサイザーは、夢の中のような浮遊感を作り、曲全体に幻想的な色彩を与える。

歌詞は、苦しみや孤独の中にいる相手へ向けた言葉として読める。悪夢というイメージは、内面的な不安や精神的な閉塞を示している。語り手は相手を救おうとしているようにも、遠くから見守っているようにも聞こえる。Duran Duranの歌詞はしばしば明確な物語を提示するより、映像的な断片を並べる傾向があるが、この曲でも悪夢、孤独、呼びかけといったイメージが緩やかに結びつく。

Simon Le Bonの歌唱は、ここでは比較的柔らかく、曲の内省的な空気によく合っている。彼の声は完全に感情を露出するのではなく、少し距離を置いて響くため、夢の中で誰かに呼びかけるような感覚が生まれる。

「Lonely in Your Nightmare」は、『Rio』の中で重要なバランスを担う楽曲である。アルバムが単に華やかなダンス・ポップだけで構成されていないことを示し、Duran Duranの音楽に潜む孤独や不安を浮かび上がらせている。

4. Hungry Like the Wolf

「Hungry Like the Wolf」は、Duran Duranを国際的にブレイクさせた代表曲のひとつであり、アルバムの中でも最も即効性のある楽曲である。タイトルは「狼のように飢えている」という意味を持ち、欲望、追跡、本能的な衝動をストレートに表現している。曲全体には、獲物を追うような緊張と、ダンス・ロックとしての快楽が同居している。

イントロの笑い声やシンセサイザーのフレーズは非常に印象的で、曲の冒険的で少し危険な雰囲気を作る。ギターは鋭くリズムを刻み、ベースは躍動的に動き、ドラムはタイトに曲を支える。Duran Duranのリズム隊の強さが非常によく表れた曲であり、シンセポップでありながら、身体的なロック・バンドの力もはっきり感じられる。

歌詞は、欲望の対象を追い求める語り手の視点で進む。狼という比喩は、文明的な洗練の下にある野生、本能、性への衝動を示す。Duran Duranのイメージはしばしば都会的で洗練されているが、この曲ではその表面の下にある獣性が前面に出る。ただし、表現は重く泥臭いものではなく、非常にスタイリッシュで映像的である。

ミュージック・ビデオもまた、この曲の成功に大きく貢献した。ジャングルや追跡劇を思わせる映像は、歌詞の冒険的なイメージを視覚化し、MTV時代におけるDuran Duranの存在感を決定づけた。ここでは音楽、映像、ファッション、欲望の物語が一体化している。

「Hungry Like the Wolf」は、Duran Duranの商業的成功を象徴する曲であると同時に、彼らの音楽的強みを凝縮している。鋭いリズム、強いベース、シンセサイザーの華やかさ、ロック的なギター、印象的な歌詞と映像性。1980年代ポップのエネルギーを代表する楽曲である。

5. Hold Back the Rain

「Hold Back the Rain」は、アルバム中盤において力強い推進力を持つ楽曲である。タイトルは「雨を食い止めろ」という意味で、危機や崩壊を前にして踏みとどまる感覚を含んでいる。前曲「Hungry Like the Wolf」の本能的な欲望に続き、この曲ではよりバンド内部の結束や前進する意志が感じられる。

音楽的には、アップテンポでリズムが強く、ライヴ映えする曲である。ベースは跳ねるように動き、ドラムは曲を直線的に前へ押し出す。ギターは鋭く、シンセサイザーは全体に明るい光沢を加える。Duran Duranの楽曲の中でも、バンドとしてのアンサンブルの勢いが前面に出ている。

歌詞は、雨という自然現象を比喩として用いている。雨は困難、崩壊、涙、混乱を示すことができる。それを食い止めるという表現には、危機を回避しようとする意志が込められている。Duran Duranの歌詞はしばしば抽象的で映像的だが、この曲では比較的直接的に、逆境に対する抵抗が感じられる。

この曲は、バンドのツアー生活や成功に伴う混乱への応答としても聴くことができる。急速に注目を集める中で、バンドは自分たちを保ち、前進し続ける必要があった。「Hold Back the Rain」という言葉は、外から降りかかる圧力に対して、自分たちの勢いを失わないための合言葉のように響く。

「Hold Back the Rain」は、『Rio』の中で非常に重要なエネルギー源となっている。シングル曲ほど一般的に知られていない場合もあるが、アルバム全体の流れにおいては、Duran Duranが単なる映像的ポップ・グループではなく、強いバンド・サウンドを持っていたことを示す楽曲である。

6. New Religion

「New Religion」は、『Rio』の中でも特に複雑で、内省的な楽曲である。タイトルは「新しい宗教」を意味し、信仰、アイデンティティ、対立する声、精神的な分裂といったテーマを連想させる。曲の構成も他のポップな楽曲に比べてやや複雑で、Duran Duranのアート・ポップ的な側面が強く出ている。

音楽的には、ベースとドラムが作る緊張感のあるグルーヴの上に、ギターとシンセサイザーが絡む。曲は単純なヴァース/コーラスの反復だけではなく、複数の声やフレーズが交錯するように進む。特にヴォーカルの重なりは印象的で、内面の対話や葛藤を表しているように聞こえる。

歌詞では、新しい信仰や価値観を求める感覚と、それに対する疑念が同居している。1980年代初頭は、消費文化、メディア、ファッション、音楽産業が新しい「信仰」のように機能し始めた時代でもある。Duran Duran自身もその中心にいたバンドであり、この曲には華やかなポップの世界に身を置きながら、その価値観に完全には身を委ねられない緊張が感じられる。

Simon Le Bonの歌唱は、ここでは非常に演劇的である。複数の視点や心理が曲の中に混在し、語り手が一枚岩ではないことが示される。これは、Duran Duranの歌詞が単なるロマンティックな表現にとどまらず、時に精神的な分裂や自己探求を扱っていることを示す。

「New Religion」は、『Rio』の中で最も過小評価されやすいが、非常に重要な楽曲である。商業的なシングル曲の華やかさの背後で、Duran Duranがより複雑な音楽的・精神的領域を探っていたことが分かる。アルバムに深みを与える中核的な曲である。

7. Last Chance on the Stairway

「Last Chance on the Stairway」は、アルバムの中でもやや軽快でロマンティックな雰囲気を持つ楽曲である。タイトルは「階段での最後のチャンス」という意味で、夜のパーティー、すれ違い、恋愛の一瞬の機会を連想させる。Duran Duranらしい都市的で映像的な場面設定が印象的である。

音楽的には、ベースラインが非常に滑らかで、曲にダンス的な流れを与えている。ギターはリズミカルに刻まれ、シンセサイザーは華やかな背景を作る。曲全体は軽やかだが、メロディには少し切なさがあり、単なる明るいポップ・ソングにはならない。

歌詞では、階段という場所が重要である。階段は上と下、内と外、パーティー会場と個人的な空間をつなぐ場所であり、出会いや別れの一瞬が起こりやすい中間的な空間である。そこでの「最後のチャンス」は、恋愛における一瞬の決断や、言葉をかけるかどうかの緊張を示している。

Simon Le Bonの歌唱は、ここでは比較的軽やかで、曲のロマンティックな空気に合っている。だが、歌詞の背後には、機会を逃すことへの不安がある。華やかな夜の中で、誰かとつながる可能性は一瞬だけ訪れ、すぐに消えてしまう。この刹那性が、曲にほのかなメランコリーを与えている。

「Last Chance on the Stairway」は、『Rio』の中では大きな代表曲ではないが、アルバムの持つ夜の社交性、都市的なロマンス、軽やかな不安をよく表している。Duran Duranのポップ・センスが自然に発揮された佳曲である。

8. Save a Prayer

「Save a Prayer」は、『Rio』の中でも特に叙情的で、Duran Duranの代表的なバラードのひとつである。タイトルは「祈りを残しておいてくれ」という意味を持ち、恋愛、夜、儚い出会い、後悔、救済への願いが重ねられている。派手なダンス・ナンバーが多いアルバムの中で、この曲は静かな感情の中心を担っている。

音楽的には、Nick Rhodesのシンセサイザーが作る幻想的なイントロが非常に印象的である。柔らかく波打つような音色は、夜の空気や遠い場所への憧れを感じさせる。リズムはゆったりとしており、ベースとドラムは曲を穏やかに支える。ギターは控えめに配置され、全体の空間を壊さない。

歌詞では、一夜の出会い、過ぎ去る時間、祈りという宗教的な言葉が結びつく。ここでの祈りは、厳格な信仰というより、失われるものへの小さな願い、あるいは罪悪感を和らげるための言葉として響く。恋愛は永続的な約束ではなく、一時的で、儚く、だからこそ強く記憶に残るものとして描かれる。

Simon Le Bonの歌唱は、非常に抑制されており、曲の切なさをよく引き出している。彼は感情を大げさに爆発させず、少し距離を置いた声で歌う。そのため、曲には甘さだけでなく、冷たい余韻が残る。これはDuran Duranのバラード表現の特徴であり、過度に感傷的にならない洗練がある。

「Save a Prayer」は、Duran Duranが単なる派手なニュー・ロマンティック・バンドではなく、繊細な情緒を持つポップ・ソングを作る能力を持っていたことを示す名曲である。『Rio』の中でも、最も時代を超えて響く楽曲のひとつである。

9. The Chauffeur

アルバムを締めくくる「The Chauffeur」は、『Rio』の中でも最も異色で、実験的な楽曲である。タイトルは「運転手」を意味し、歌詞は映画的で、暗く、幻想的なイメージに満ちている。アルバムがここまで華やかなリゾート、欲望、都市的なロマンスを描いてきたとすれば、この終曲では夜の奥深く、より抽象的で不穏な世界へ入っていく。

音楽的には、シンセサイザーが中心であり、リズムはミニマルで冷たい。ギターやベースのロック的な存在感は抑えられ、Nick Rhodesの電子音が曲全体の空間を支配する。サウンドは非常に映像的で、夜の道を車が走るような感覚、あるいはモノクロームの映画を見ているような感覚を与える。

歌詞は非常に詩的で、明確な物語を示すというより、断片的なイメージを並べる。運転手、車、女性、夜、風景、視線といった要素が、どこか官能的で不安な空気を作る。Duran Duranの歌詞にしばしば見られる映像性が、この曲では最も抽象的な形で表れている。

Simon Le Bonの歌唱は、抑制され、ほとんど語りに近い部分もある。彼の声は楽曲の中心でありながら、シンセサイザーの冷たい空間に溶け込んでいる。ここではポップ・スターとしての華やかさよりも、アート・ポップ的な実験性が前面に出ている。

「The Chauffeur」は、『Rio』を単なるヒット・アルバム以上の作品にしている重要な終曲である。アルバムの最後にこのような暗くミニマルな曲を置くことで、Duran Duranは自分たちの音楽が享楽的なポップだけではなく、映画的で不穏な芸術性を持つことを示している。『Rio』の華やかな表面の奥にある冷たさ、孤独、夜の感覚を象徴する楽曲である。

総評

『Rio』は、Duran Duranの代表作であると同時に、1980年代ポップ・ミュージックの象徴的なアルバムである。華やかなファッション性、MTV時代の映像戦略、洗練されたプロダクション、ダンス可能なリズム、印象的なメロディが結びつき、アルバム全体がひとつの鮮やかなイメージとして成立している。だが、その価値は単なる時代の記号にとどまらない。楽曲の構造、演奏、アレンジ、歌詞を細かく聴くと、非常に高度な音楽的完成度がある。

本作の最大の強みは、シンセポップとバンド・グルーヴの融合である。1980年代のシンセポップには、電子音の冷たさや機械的なリズムを前面に出す作品が多かった。一方でDuran Duranは、シンセサイザーを大きく使いながらも、John Taylorのベース、Roger Taylorのドラム、Andy Taylorのギターによって、肉体的なダンス感覚を保っている。そのため『Rio』は、人工的でありながら生々しく、未来的でありながらファンク的でもある。

また、Nick Rhodesのシンセサイザーは本作の色彩設計に大きく貢献している。彼の音色は、単に流行の電子音ではなく、楽曲ごとに異なる空間を作るために使われている。「Rio」では光沢あるリゾート的な華やかさを、「Lonely in Your Nightmare」では夢のような浮遊感を、「Save a Prayer」では夜の祈りのような叙情性を、「The Chauffeur」では冷たい映画的空間を生み出している。アルバムのタイトル通り、本作は色彩豊かな音の映像集でもある。

歌詞面では、Duran Duranの映像的な作詞が際立つ。明確なメッセージや物語を直線的に伝えるのではなく、場面、人物、欲望、夜、旅、追跡、祈りといったイメージを配置することで、聴き手に視覚的な印象を与える。これはMTV時代のバンドとして非常に重要な資質であり、音楽が映像と結びつく前から、楽曲自体がすでに映像的だったことを示している。

『Rio』はしばしば「80年代的な華やかさ」の象徴として語られるが、アルバムには不安や孤独も含まれている。「Hungry Like the Wolf」の欲望は軽快であると同時に捕食的であり、「Lonely in Your Nightmare」には精神的な孤独がある。「Save a Prayer」は一夜のロマンスを美しく描きながら、その儚さを強調する。「The Chauffeur」はアルバムの最後に、華やかな世界の裏側にある冷たく孤独な夜を提示する。こうした陰影があるからこそ、本作は単なる軽薄なポップではなく、長く聴かれる作品になっている。

音楽史的には、『Rio』はニュー・ロマンティックの商業的成功を決定づけたアルバムのひとつである。パンク以後の英国ロックが、怒りや簡素さだけでなく、ファッション、クラブ文化、電子音、映像、国際的なポップ感覚を取り込んでいく過程で、Duran Duranは最も成功した存在となった。本作は、ロック・バンドが映像メディアと結びつき、グローバルなポップ・ブランドとして機能する時代の先駆的な作品でもある。

一方で、Duran Duranは単にイメージだけで成立したバンドではない。『Rio』を支えているのは、非常に強い演奏力である。特にJohn Taylorのベースは、1980年代ポップの中でも屈指の存在感を持つ。彼のラインは曲を踊らせるだけでなく、メロディックな魅力を与え、シンセサイザーの上品な音像にファンク的な躍動を加えている。これにより、Duran Duranの音楽は単なる電子ポップではなく、バンドとしての強度を保っている。

日本のリスナーにとって『Rio』は、1980年代洋楽ポップを理解するうえで欠かせないアルバムである。シンセサイザーの華やかさ、ベースのグルーヴ、MTV的な映像感覚、ニュー・ロマンティックのファッション性が一体となっているため、当時のポップ・カルチャーの空気を非常に分かりやすく伝えている。同時に、アルバム全体を丁寧に聴くと、楽曲ごとの陰影や構成の巧みさも見えてくる。

『Rio』は、享楽的で、洗練され、映像的でありながら、その奥に冷たさと孤独を宿したアルバムである。Duran Duranは本作によって、1980年代ポップの表面を最も美しく輝かせると同時に、その表面の下にある欲望と不安も音楽化した。ニュー・ロマンティックの象徴であり、MTV時代の決定的な名盤であり、今なお強い色彩を放つポップ・アルバムである。

おすすめアルバム

1. Duran Duran — Duran Duran(1981年)

Duran Duranのデビュー作であり、『Rio』へつながるニューウェイヴ/シンセポップの基盤を示した作品。「Girls on Film」「Planet Earth」など、クラブ感覚、ポスト・パンク的な鋭さ、ファッション性がすでに明確に表れている。『Rio』の洗練された完成形と比較することで、バンドの成長がよく分かる。

2. Duran Duran — Seven and the Ragged Tiger(1983年)

『Rio』の次作であり、世界的成功の後に制作されたアルバム。サウンドはより豪華で、プロダクションも大規模になっている。「The Reflex」「Union of the Snake」など、ポップ性と実験的なアレンジが共存する。『Rio』の成功がどのように拡張されたかを知るうえで重要である。

3. Spandau Ballet — True(1983年)

Duran Duranと同じニュー・ロマンティックの文脈に位置する代表作。よりソウル/ソフィスティ・ポップ寄りの滑らかな音像を持ち、表題曲「True」は1980年代英国ポップを象徴するバラードである。『Rio』の華やかなダンス・ロックとは異なる、ニュー・ロマンティックの洗練された側面を理解できる。

4. Japan — Tin Drum(1981年)

Duran Duranよりも内省的でアート志向の強い英国ニューウェイヴの重要作。シンセサイザー、ファンク的なベース、異国趣味、David Sylvianの冷たい歌唱が特徴である。『Rio』における映像的な異国趣味やベース主導のアンサンブルを、より実験的な方向から理解するうえで関連性が高い。

5. ABC — The Lexicon of Love(1982年)

『Rio』と同じ1982年に発表された英国ポップの名盤。華麗なストリングス、ファンク、ディスコ、ニューウェイヴ、洗練されたプロダクションが結びつき、1980年代初頭の英国ポップの豊かさを示している。Duran Duranの映像的な華やかさとは異なる、都会的でドラマティックなポップの完成形である。

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