
発売日:1995年7月15日
ジャンル:オルタナティヴ・ロック/シューゲイズ/サイケデリック・ロック/ノイズ・ロック/インディー・ロック
概要
Swervedriverの3作目『Ejector Seat Reservation』は、1990年代前半の英国シューゲイズから出発したバンドが、その典型的な「音の壁」からさらに離れ、サイケデリック・ロック、アメリカン・オルタナティヴ、ハード・ロック、ロード・ムーヴィー的な疾走感を独自の形で融合した作品である。
Swervedriverはオックスフォード出身で、Adam FranklinとJimmy Hartridgeを中心に活動した。Ride、Slowdive、Chapterhouseなどと同時代に登場したことからシューゲイズの一員として語られることが多いが、音楽性は最初からかなり異なっていた。
My Bloody Valentine型の霞んだギター。
The Stooges的な推進力。
Hüsker DüやDinosaur Jr.に通じるアメリカン・オルタナティヴ。
The Jimi Hendrix ExperienceやCream由来のサイケデリックなギター。
さらに車、道路、速度、移動といったモチーフ。
これらがSwervedriver独自の音楽を作った。
1991年の『Raise』では、ギター・ノイズと速度感を前面に出した。
1993年の『Mezcal Head』では、代表曲「Duel」を含め、より骨太でアメリカンなロック・サウンドへ発展した。
そして『Ejector Seat Reservation』では、さらに曲の構造が複雑になり、ギターの音色も多彩になる。
つまり、本作は「シューゲイズ・バンドとしてのSwervedriver」の完成形というより、シューゲイズという出自を超えて独自のロック・バンドへ変化した作品と考えるほうが適切である。
アルバム・タイトルの「Ejector Seat Reservation」は、直訳すれば「射出座席の予約」。
非常に奇妙な言葉だ。
通常、射出座席は戦闘機が危険な状態になったとき、乗員が脱出するために使う。
そこに“Reservation=予約”という日常的な言葉が付く。
まるで「自分はいつかこの場所から脱出することを最初から予定している」と言っているようにも聞こえる。
この言葉は、本作全体にある移動と離脱の感覚に重なる。
車。
道路。
飛行。
都市。
別の場所。
Swervedriverの音楽では、常に「ここではないどこか」へ向かう欲望がある。
しかし、その移動は必ずしも自由や幸福につながるわけではない。
逃げる。
離れる。
速度を上げる。
それでも自分自身から完全には逃れられない。
『Ejector Seat Reservation』では、その感覚が以前より内省的に描かれる。
また、本作は1995年という英国ロック史上非常に象徴的な年に発表された。
Britpopが巨大な文化現象となり、Oasis、Blur、Pulp、Supergrassなどが英国の音楽メディアを支配していた。
その中でSwervedriverは、英国的な生活描写や1960年代ポップへの明快な回帰より、アメリカの道路、ノイズ、サイケデリア、重いギターへ向かっていた。
そのため、同時代のBritpopの中心からは距離があった。
しかし後から振り返ると、この非同調性こそが本作の大きな価値である。
1995年の「英国らしいロック」を作るのではなく、自分たちにしか作れないサイケデリックなロード・ロックを完成させていたからである。
全曲レビュー
1. Single Finger Salute
「Single Finger Salute」は、アルバム冒頭から反抗的な態度を明確にする。
タイトルの「一本指の敬礼」は、実質的には中指を立てるジェスチャーを意味する。
つまり、礼儀正しい“salute”という言葉を使いながら、その実態は侮辱。
この皮肉がSwervedriverらしい。
音楽は重いギターで始まり、初期のシューゲイズ的な霞みより、もっと直接的なロックの圧力が強い。
しかし単純なハード・ロックではない。
ギターは複数の層を作り、コードの周辺にノイズやフィードバックが残る。
リズムも直線的に疾走するだけではなく、少し引っかかる。
この「進みたいのに完全には滑らかではない」感覚が、本作の心理的な不安定さとよく合う。
歌詞では、他人や環境への拒絶が感じられる。
しかし、単純な若者の反抗ではない。
むしろ長く活動してきたバンドが、外部から期待されるカテゴリーに対して距離を取るような態度にも聞こえる。
シューゲイズ。
Britpop。
インディー。
そうしたラベルに対して「自分たちはそこだけには収まらない」と言うようなオープニングである。
2. Bring Me the Head of the Fortune Teller
「Bring Me the Head of the Fortune Teller」は、本作でも特に印象的なタイトルを持つ。
「占い師の首を持ってこい」。
これは暴力的でありながら、ブラック・ユーモアのようでもある。
未来を予言する人物。
しかし、その予言が外れた。
あるいは、未来を知ること自体が役に立たない。
だから占い師を罰する。
この発想には、運命への不信がある。
Swervedriverの音楽では、未来は常に開けているようで不透明だ。
道路は前へ続く。
しかしどこへ行くかは分からない。
車は走る。
しかし目的地が幸福とは限らない。
この曲のタイトルは、その未来への懐疑を象徴する。
音楽はギター・リフが強く、厚い。
しかし、ギター同士は同じことをしていない。
一方がコードを支え、もう一方がノイズや旋律を重ねる。
Adam FranklinとJimmy Hartridgeによる二本のギターが、Swervedriverの音像を立体的にする。
その結果、曲にはハード・ロックの重さと、サイケデリック・ロックの奥行きが同時に生まれる。
3. The Other Jesus
「The Other Jesus」は、宗教的イメージを使いながら、アイデンティティや理想像の問題へ広がる楽曲である。
タイトルは「もう一人のイエス」。
唯一であるはずの救世主に「もう一人」がいる。
この時点で、宗教的な絶対性が少し崩れる。
本物は誰なのか。
誰が救世主なのか。
あるいは、誰かを理想化しすぎているだけなのか。
Swervedriverは宗教的教義を直接論じるバンドではないが、こうした言葉を使って人間の期待や幻想を揺らす。
音楽は本作の中でも比較的メロディックだ。
ギターの広がりは大きいが、中心には明確な歌がある。
ここが重要である。
Swervedriverはノイズを使う。
しかしノイズのために曲を壊さない。
常にメロディがある。
このバランスが彼らを単なる実験的ギター・バンドから区別している。
「The Other Jesus」では、そのポップ・センスが特に明確だ。
4. Son of Jaguar ‘E’
「Son of Jaguar ‘E’」は、タイトルからして車、速度、機械へのSwervedriverらしい執着を感じさせる。
Jaguarという名前は英国の高級車ブランドを連想させる。
“Son of”という言い回しによって、機械に血統や家族関係のようなイメージを与える。
これはSwervedriverの世界観によく合う。
彼らの曲に出てくる車は、単なる移動手段ではない。
人格を持つ。
欲望を持つ。
逃走の象徴になる。
車の中にいることで、人間は一時的に別の自分になれる。
速度を上げれば、過去から離れたような気持ちになる。
しかし車から降りれば、現実は戻る。
音楽も非常にドライヴ感が強い。
ベースとドラムが一定の運動を作り、その上をギターが滑る。
この「リズム隊が道路、ギターが風景」という構造はSwervedriverの典型である。
5. I Am Superman
「I Am Superman」は、自信と虚勢の境界を扱うようなタイトルを持つ。
「自分はスーパーマンだ」。
これは無敵の宣言。
しかし人が本当に強いとき、わざわざ「自分は無敵だ」と言う必要はない。
だから、この言葉には逆に不安がある。
強く見せたい。
傷つかないようにしたい。
失敗を認めたくない。
その心理がタイトルに隠れている。
1990年代オルタナティヴ・ロックには、この「強さの仮面」というテーマが頻繁に現れた。
グランジ以後、男性的なロックの力強さはそのまま肯定されず、むしろ脆さや自己嫌悪と結びつくようになった。
Swervedriverも同じ時代の空気を共有している。
音楽は力強いが、勝利のアンセムではない。
ギターは厚く、ヴォーカルも前へ出る。
それでも曲全体には少し陰がある。
その陰によって、「I Am Superman」という言葉が完全には信じられない。
6. Bubbling Up
「Bubbling Up」は、感情や記憶が内側から少しずつ浮上してくる感覚をタイトルにしている。
“bubble up”は、水中から泡が上がるように、抑えられていたものが表面へ出てくることを意味する。
怒り。
記憶。
不安。
欲望。
それらが突然爆発するのではなく、少しずつ上がってくる。
音楽もその構造に近い。
最初から最大音量で突進するのではなく、ギターの層が徐々に厚くなり、曲の内部に圧力が蓄積していく。
Swervedriverのギターは、単に歪ませるのではなく、空間を積み重ねる。
そのため音量が上がると、壁というより風景が拡大するように感じられる。
歌詞の心理的な浮上と、音の拡大が一致した楽曲である。
7. Ejector Seat Reservation
タイトル曲「Ejector Seat Reservation」は、アルバムの中心的なコンセプトを最も明確に示す。
射出座席。
予約。
危険な状況から脱出するための装置を、最初から予約しておく。
つまり、「いつかここから逃げることを前提にしている」という考え方だ。
これは恋愛にも、バンドにも、人生にも置き換えられる。
関係を始める。
しかし心のどこかでは、終わるときの出口を考えている。
仕事をする。
しかし逃げ道を残している。
旅へ出る。
しかし帰る場所を考える。
この二重性が非常に現代的である。
完全に何かへ身を委ねるのではなく、常に脱出可能性を確保する。
それは自由でもある。
同時に、何かへ深くコミットできない不安でもある。
音楽は本作の中でもサイケデリックな広がりが強い。
ギターのフィードバックや持続音が、まるで空中へ射出される感覚を作る。
しかしリズムは地上に残る。
飛びたい。
しかし身体はまだここにある。
この上下方向の緊張が、タイトル曲の魅力である。
8. How Does It Feel to Look Like Candy?
「How Does It Feel to Look Like Candy?」は、本作の中でも特に甘く、奇妙で、少し意地悪なタイトルを持つ。
「キャンディのように見えるって、どんな気分?」
外見が甘い。
魅力的。
食べたくなる。
しかしキャンディは表面的な快楽でもある。
色。
砂糖。
包装。
このタイトルには、誰かの外見を欲望の対象として見る感覚と、その表面的な価値観への皮肉が同時にある。
Swervedriverの歌詞は、完全に説明的ではない。
だから、この曲でも対象人物が誰なのか、どのような関係なのかは一つに固定されない。
重要なのは「見ること」と「見られること」だ。
人間は外見によって判断される。
魅力的に見える。
しかし、その中身は別かもしれない。
音楽はタイトルの甘さに対して、ギターがかなり強い。
つまり「Candy」という言葉に対して、サウンドは砂糖菓子のようにはならない。
このズレが面白い。
9. Last Day on Earth
「Last Day on Earth」は、「地球最後の日」という極端なタイトルを持つ。
しかしSwervedriverは、それを壮大な終末メタルにはしない。
むしろ、世界が終わるなら何をするかという個人的な感覚へ引き寄せる。
誰といるか。
どこへ行くか。
何を思い出すか。
最後の一日になると分かっていたら、普段の優先順位は崩れる。
仕事。
金。
評判。
そうしたものの意味が薄くなる。
残るのは、誰かとの関係や、移動したい場所、聞きたい音楽かもしれない。
このテーマは、本作全体の「脱出」ともつながる。
射出座席で逃げる。
道路を走る。
しかし地球そのものが終わるなら、逃げる場所はない。
そこで初めて、「移動すること」では解決できない問題に直面する。
音楽は広がりを持ち、アルバム終盤にふさわしいスケールがある。
しかし感傷的にしすぎない。
この抑制がSwervedriverらしい。
10. The Birds
アルバムを締めくくる「The Birds」は、タイトルだけなら自然や自由を連想させる。
鳥。
飛ぶ。
空。
移動。
これは『Ejector Seat Reservation』全体の移動モチーフを、最も純粋な形へ変えるイメージである。
車は道路が必要。
飛行機は機械。
射出座席は危険からの脱出装置。
しかし鳥は自分の身体で飛ぶ。
つまり、機械を使わずに移動できる存在である。
この違いは重要だ。
アルバム全体で人間は機械によって脱出しようとしてきた。
最後に鳥が現れる。
それは、より自然な自由の象徴に見える。
ただしSwervedriverは、完全な救済や幸福を明確には描かない。
鳥は飛ぶ。
しかし人間は地上に残る。
その距離が余韻になる。
サウンドも巨大な終幕を作るより、少し開かれたまま終わる。
結論ではなく、視界が遠くへ続くようなクロージングである。
総評
『Ejector Seat Reservation』は、Swervedriverが最も「Swervedriverらしい」場所へ到達した作品のひとつである。
それはシューゲイズでもある。
しかし、シューゲイズだけではない。
オルタナティヴ・ロック。
サイケデリック・ロック。
ハード・ロック。
ノイズ・ロック。
アメリカン・ルーツ的な広がり。
それらが一つに混ざる。
このジャンル的な曖昧さが、本作の最大の強みである。
Swervedriverは、RideやSlowdiveと同じ時代に登場した。
しかし彼らの音楽には、最初から「道路」があった。
多くのシューゲイズが内向きだったのに対し、Swervedriverは外へ向かう。
部屋。
夢。
内面。
そこへ沈むのではなく、車に乗る。
街を出る。
道路を進む。
そのため音楽にも速度がある。
この違いが彼らを独特な存在にした。
『Ejector Seat Reservation』では、その道路感覚がさらに抽象化される。
単に車の曲を書くのではない。
「移動すること」と「逃げること」の違いがテーマになる。
これは重要だ。
自由になりたい。
だから移動する。
しかし、場所を変えれば自由になれるとは限らない。
自分自身はついてくる。
記憶もついてくる。
過去も消えない。
タイトル曲の「射出座席」は、その限界を象徴している。
危険から脱出する。
しかし、その先にどこへ着地するかは分からない。
つまり、脱出は解決ではない。
ただ危機から離れるだけだ。
この不安が、本作の音楽にある。
ギターはその心理を非常によく表現している。
Swervedriverのギターは、一般的なシューゲイズの「一枚の壁」と少し違う。
複数の線がある。
一つのギターがリフを弾く。
もう一つが旋律を弾く。
その上にノイズがある。
フィードバックが残る。
そのため、音は厚いが、内部に動きがある。
これは道路を走りながら風景が変わる感覚に似ている。
同じ方向へ進んでいる。
しかし窓の外は常に変化する。
この音響設計が、Swervedriverの最大の個性である。
Adam Franklinのヴォーカルも重要だ。
彼は典型的なロック・シンガーのように大きく叫ばない。
しかしHope Sandoval型の囁きでもない。
少し低く。
少し距離がある。
ギターの中に埋もれる。
この歌唱によって、曲は感情的すぎなくなる。
怒っている。
不安。
逃げたい。
しかし、その感情を完全には外へ出さない。
この抑制が、1990年代オルタナティヴ・ロックの冷たさとよく合う。
1995年という時代背景も本作を理解するうえで極めて重要だ。
英国ではBritpopが最大の文化現象となっていた。
Oasisは『(What’s the Story) Morning Glory?』を発表。
Blurは『The Great Escape』。
Pulpは『Different Class』。
Supergrassも大きく注目された。
この時代の英国ロックは、「英国らしさ」を強く意識する傾向があった。
街。
階級。
パブ。
日常生活。
1960年代英国ポップ。
Swervedriverはそこからかなり離れている。
彼らの音楽はむしろアメリカを向いている。
高速道路。
砂漠。
ノイズ。
サイケデリア。
ガレージ。
オルタナティヴ。
そのためBritpopの物語には入りにくかった。
しかし今から見ると、それは欠点ではない。
むしろ時間に耐える要因になった。
流行に強く結びついた音楽は、その時代を象徴する。
一方で、流行から少し外れた音楽は、後の時代に別の意味を持つことがある。
『Ejector Seat Reservation』はまさにそのタイプである。
また、本作はシューゲイズの「終わり」以後を考えるうえでも重要だ。
1991年前後に大きく注目されたシューゲイズは、1993〜94年頃には英国音楽メディアで急速に勢いを失った。
Britpopが新しい中心になる。
多くのシューゲイズ系バンドは解散したり、スタイルを変えたりした。
Swervedriverもその流れの中にいた。
しかし彼らはシューゲイズを捨ててBritpopへ行かなかった。
代わりに、シューゲイズのギター感覚をアメリカン・オルタナティヴとサイケデリック・ロックへ接続した。
これが『Ejector Seat Reservation』の歴史的な重要性である。
この方向性は、後の90年代後半から2000年代のオルタナティヴ・ロックへ自然につながる。
Hum。
Shiner。
後年のNothingやDIIVなど。
シューゲイズの質感を、もっと骨太なロック構造へ組み込むバンドにとって、Swervedriverは重要な先例になった。
特に、シューゲイズとエモ/スペース・ロック/オルタナティヴ・メタルの境界で活動する後続バンドにとって、その影響は大きい。
本作の歌詞には、以前より抽象性が増している。
『Raise』や『Mezcal Head』では、車や道路のイメージがより直接的だった。
『Ejector Seat Reservation』では、同じ移動のテーマが心理へ入る。
「Bring Me the Head of the Fortune Teller」では未来。
「I Am Superman」では自己像。
「Bubbling Up」では内側から上がる感情。
「Ejector Seat Reservation」では脱出。
「Last Day on Earth」では終末。
つまり、物理的な道路が精神的な道路へ変わっている。
これが本作の成熟である。
また、タイトルのユーモアも見逃せない。
「Single Finger Salute」。
「Bring Me the Head of the Fortune Teller」。
「How Does It Feel to Look Like Candy?」。
どれも少し映画的で、奇妙で、長い。
Swervedriverは歌詞を日記のようには書かない。
むしろタイトルだけで短編映画のポスターを作る。
その言葉から風景を想像させる。
この方法は彼らの音楽に非常によく合う。
なぜなら音楽そのものも、具体的な物語より「走っている映像」を作るからだ。
視覚的。
映画的。
道路的。
この三つがSwervedriverの特徴である。
音響面では、本作は前作『Mezcal Head』より少し曖昧で、少しサイケデリックだ。
『Mezcal Head』には「Duel」のような明快なロック・アンセムがある。
それに対して『Ejector Seat Reservation』は、曲の内部により多くの影がある。
リフだけで押し切らない。
展開が少し予想しにくい。
ギターの音色も一定ではない。
この複雑さによって、本作は初聴では少し掴みにくい。
しかし、繰り返し聴くと曲ごとの差が見えてくる。
つまり即効性より持続性のある作品である。
「The Other Jesus」のメロディ。
「Son of Jaguar ‘E’」の移動感。
「Bubbling Up」の蓄積。
タイトル曲の浮遊。
「Last Day on Earth」の終末感。
それぞれが別の角度から同じ世界を作る。
そして「The Birds」で終わる。
人間は車や機械に頼って移動する。
しかし鳥は飛ぶ。
この終わり方は、本作のタイトルにある「射出座席」と対照的だ。
射出座席は人工的な緊急脱出。
鳥の飛行は自然な移動。
人間は危機から逃げるために機械を作る。
鳥は最初から空を飛べる。
この差が、アルバムの最後に静かな余韻を残す。
『Ejector Seat Reservation』は、Swervedriverのディスコグラフィーの中でも最も過渡期的であり、同時に最も独自性の高い作品のひとつである。
初期のシューゲイズ。
アメリカン・オルタナティヴ。
サイケデリア。
ロード・ロック。
それらが完全に分離せず、ひとつの音楽言語になっている。
1995年の英国で、Britpopの中心へ行かなかったこと。
シューゲイズの過去へ戻らなかったこと。
その二つの選択によって、Swervedriverは自分たちだけの場所へ進んだ。
その意味で『Ejector Seat Reservation』は、脱出のアルバムである。
あるジャンルから。
ある時代から。
ある期待から。
射出座席を使うように飛び出す。
しかし、どこへ着地するかは決まっていない。
その不確実性こそが、本作のサウンドを現在まで新鮮に保っている。
おすすめアルバム
1. Swervedriver – Mezcal Head(1993)
Swervedriverの代表作であり、「Duel」「Last Train to Satansville」などを収録。『Ejector Seat Reservation』より即効性が高く、ギター・ノイズと疾走するロックの融合が最も明快に表れている。本作へ至る進化を理解するうえで最重要の一枚である。
2. Ride – Going Blank Again(1992)
同じオックスフォード周辺のシューゲイズ・シーンから登場したRideの代表作。ギターの層、疾走感、ポップなメロディという点でSwervedriverと共通するが、Rideのほうがより英国的で明るい。両者を比較するとSwervedriverのアメリカン・ロック志向が際立つ。
3. Dinosaur Jr. – Where You Been(1993)
巨大なギター・サウンド、メロディックなソングライティング、倦怠感のあるヴォーカルを融合したアメリカン・オルタナティヴの重要作。Swervedriverのギターの重量感とサイケデリックな展開を理解するうえで高い関連性を持つ。
4. Hüsker Dü – Warehouse: Songs and Stories(1987)
ハードコアの速度を、メロディックで感情的なオルタナティヴ・ロックへ拡張した作品。Swervedriverの「ギターは激しいが、中心には歌がある」という方法論の重要な先行例として位置づけられる。
5. Hum – You’d Prefer an Astronaut(1995)
『Ejector Seat Reservation』と同じ1995年に発表されたアメリカのオルタナティヴ/スペース・ロック作品。分厚いギター、宇宙的な広がり、内省的なヴォーカルを組み合わせており、シューゲイズの音響をより重量感のある90年代オルタナティヴへ接続した点でSwervedriverと強く共鳴する。

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