
1. 歌詞の概要
The WannadiesのHow Does It Feel?は、甘いギター・ポップの顔をしながら、胸の奥ではかなり切実な孤独を抱えた曲である。
タイトルは、どんな気分なんだい、あるいはどんな感じがするんだい、という問いかけだ。
この問いは、相手を責めるためだけの言葉ではない。むしろ、自分自身にも返ってくる。誰かを求めること。愛されたいと思うこと。友達でいたいのに、それだけでは足りなくなること。その複雑な感情を、主人公はどう扱えばいいのかわからずにいる。
歌詞の冒頭では、誰かが足りない、抱きしめてキスをして、それでも友達でいられる相手が必要なのではないか、という感覚が示される。Spotifyの楽曲ページでも、この曲の冒頭歌詞としてその流れが確認できる。Spotify
ここにあるのは、恋愛と友情の境界線である。
ただの友達では足りない。
でも、恋人になればすべてが解決するわけでもない。
相手を近くに置きたい。触れたい。けれど、関係を壊したくない。そんな矛盾が、曲全体をやわらかく締めつけている。
サウンドは、The Wannadiesらしい北欧ギター・ポップの透明感に満ちている。
メロディは明るい。コーラスは大きく開ける。ギターはきらきらしていて、リズムには軽い推進力がある。けれど、その奥にある感情は決して軽くない。
むしろ、曲が明るいからこそ、歌詞の寂しさがよく見える。
晴れた日の午後に、なぜか急にひとり取り残されたような感じ。
楽しいはずの場所で、ふと自分だけが満たされていないことに気づく感じ。
How Does It Feel?は、そうした感情を、泣き崩れるのではなく、ポップソングとして鳴らしている。
The Wannadiesはスウェーデン北部のシェレフテオで結成されたオルタナティヴ・ロック/パワーポップ・バンドで、甘酸っぱいメロディと勢いのあるギター・サウンドを武器にした存在である。彼らのアルバムBe A Girlには、You & Me Song、Might Be Stars、Love In June、そしてHow Does It Feel?が収録されている。Apple Musicやレコチョクでは、How Does It Feel?がBe A Girlの4曲目として掲載されている。Apple Music – Web その並びも重要だ。
You & Me Songのような弾ける青春ポップのあとに、How Does It Feel?が置かれることで、アルバムには少し影が差す。恋のときめきだけではなく、その裏にある不安、距離、報われなさが見えてくるのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
How Does It Feel?は、The Wannadiesの3作目のアルバムBe A Girlに収録された楽曲である。
Be A Girlはスウェーデンでは1994年、国際的には1995年に広く紹介された作品として扱われることが多い。DiscogsではBe A Girlのリリース情報として、How Does It Feel?がアルバム収録曲に含まれていることが確認できる。ディスコグス
また、How Does It Feel?はシングルとしても展開された。DiscogsではHow Does It Feel?のシングルが1995年にリリースされたものとして登録されており、別のページでは1996年2月のヨーロッパ盤やUK盤の情報も確認できる。
このあたりの時期は、The Wannadiesにとって大きな転機だった。
Rolling Stone Japanの2026年の対談記事では、メンバーのPär Wikstenが、1994年にBe A Girlがカンヌの音楽見本市MIDEMでイギリスの業界関係者の耳に留まり、UKでライセンスされることになったと振り返っている。さらに、1995年にYou And Me Songがイギリスでリリースされ、NMEやMelody Makerから評価され、カムデンでのライヴも盛況だったことが語られている。Rolling Stone Japan
つまりHow Does It Feel?は、The Wannadiesがスウェーデン国内の人気バンドから、UKインディー/ブリットポップ周辺の文脈へ接続されていく時期の曲である。
1990年代半ばのイギリスは、ブリットポップの熱気の中にあった。
Oasis、Blur、Pulp、Suedeといったバンドが強い存在感を放ち、ギター・ポップが再びメインストリームの中心に近づいていた。その空気の中で、The Wannadiesの音楽は少し特別な響きを持っていた。
彼らはイギリスのバンドではない。
スウェーデン北部から来たバンドである。
しかし、メロディの明快さ、ギターの勢い、青春の高揚と不安を同時に抱えた歌詞は、90年代UKリスナーの耳にも自然に届いた。The Wannadiesの代表曲You & Me SongはUKチャートで18位まで上がり、映画Romeo + Julietのサウンドトラックにも使われたことでも知られる。lpcdreissues.com
How Does It Feel?は、そのYou & Me Songほど大きな代表曲として語られることは少ないかもしれない。
だが、バンドの魅力を別の角度から伝える曲である。
You & Me Songが恋の爆発なら、How Does It Feel?は恋の余白だ。
走り出したくなる瞬間ではなく、立ち止まって相手の気持ちを測ろうとする瞬間。明るく振る舞いながら、内側では何かが足りないと感じている時間。
その意味で、この曲はThe Wannadiesの甘さと苦さがとてもよく混ざった一曲なのだ。
MusicBrainzのBe A Girl情報では、How Does It Feel?の作曲者としてThe Wannadiesのメンバーたちが記載され、プロデューサー/ミキサーとしてNille Pernedの名前が確認できる。また、録音はMNW StudioやMusic-A-Maticなどで行われたことも記録されている。MusicBrainz
Nille Pernedのプロダクションは、Be A Girl全体の明るく抜けた音像に大きく関わっている。
ギターは分厚すぎず、声は前に出る。ドラムは軽快で、メロディは濁らない。How Does It Feel?でも、その透明感があるからこそ、歌詞の未練や孤独が重たくなりすぎない。
青空の下で失恋しているような曲。
それが、この曲の美しさである。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞全文は配信サービスや歌詞掲載サービスで確認できる。ここでは権利に配慮し、曲の主題を示す短い部分のみを引用する。
So you think there’s someone missing
和訳:
君は、誰かが足りないと思っているんだね
この一行は、How Does It Feel?の核心に近い。
誰かが足りない。
この感覚は、とてもシンプルだ。けれど、実際にはかなり複雑である。
足りないのは恋人なのか。
友達なのか。
自分を理解してくれる人なのか。
それとも、自分自身の中にある空白なのか。
歌詞はそれを断定しない。ただ、missingという言葉によって、心の中にぽっかり空いた場所を示す。
この曲の主人公は、その空白を誰かで埋めようとしているようにも聞こえる。
抱きしめてくれる人。
キスしてくれる人。
それでも友達でいてくれる人。
都合のいい願いにも見える。だが、そこにある弱さはとても人間的だ。
人は、純粋に美しい理由だけで誰かを求めるわけではない。
寂しいから求める。
認められたいから求める。
ひとりではいられないから求める。
How Does It Feel?は、その少しわがままで、でも切実な感情を、責めるのではなく、メロディの中に置いている。
歌詞引用元:Spotify How Does It Feel?
コピーライト:配信上ではThe Wannadiesによる楽曲として扱われ、Be A Girl収録曲として掲載されている。
4. 歌詞の考察
How Does It Feel?の歌詞は、誰かを必要とする気持ちと、その気持ちに対する戸惑いを描いている。
ここで重要なのは、問いかけの形である。
How does it feel?
どんな気分なんだい。
この問いは、相手へ向けられているようであり、自分へも向けられているように聞こえる。
誰かを欲しがることは、どんな感じがするのか。
誰かが足りないと感じることは、どんな気分なのか。
歌うことだけでは足りないと思うことは、どういうことなのか。
この曲には、音楽そのものへの問いも含まれているように思える。
歌っているだけでは足りない。
メロディがあっても、言葉があっても、ギターが鳴っていても、心の空白は完全には埋まらない。
それでも歌う。
その切なさが、How Does It Feel?にはある。
The Wannadiesの魅力は、感情を必要以上に暗くしないところだ。
この曲も、歌詞だけを読めばかなり寂しい。誰かを求める気持ち、友達以上のものを望む気持ち、満たされなさ、自分では制御しきれない欲求。そうしたものが流れている。
けれどサウンドは、沈み込まない。
ギターはきらめき、リズムは前へ進む。メロディは大きく開き、コーラスには胸が持ち上がるような瞬間がある。
この明るさが、逆に残酷でもある。
失恋や孤独は、いつも雨の日にだけ起こるわけではない。
晴れている日にも起こる。
友達と笑っている最中にも、ふと寂しさは来る。
明るい音楽の中に寂しさがあるとき、聴き手はその感情をよりリアルに感じる。なぜなら、現実の心もたいていそうだからだ。悲しみだけでできているわけではなく、楽しい時間の中にぽつんと影がある。
How Does It Feel?は、その影をうまく鳴らしている。
歌詞の中で描かれる関係は、はっきり恋人同士とは言えない。
むしろ、友達でいたい、でもそれ以上も欲しい、という危うい場所にある。
抱きしめたい。
キスしたい。
それでも友達でいたい。
これはかなり難しい願いだ。
親密さは増やしたい。
でも、関係の安全圏は失いたくない。
恋愛の入口で、誰もが一度は立つような場所である。
一歩進めば、何かが変わる。
でも進まなければ、この足りなさは続く。
How Does It Feel?という問いは、その境界線の前で発せられている。
この曲の主人公は、相手に答えを求めているようで、実は自分でも答えがわかっていない。
相手は同じように感じているのか。
自分だけが求めすぎているのか。
この関係は友情なのか、恋なのか、それともただの寂しさの代用品なのか。
その曖昧さが曲の魅力である。
また、サウンド面では、The Wannadies特有の北欧的な透明感がよく出ている。
ブリットポップに近いギターの明快さがありながら、どこか空気が冷たい。メロディは甘いが、湿っぽくない。感情は熱を持っているのに、音像には青い光が差している。
この温度差が、とても美しい。
How Does It Feel?は、熱烈なラブソングではない。
むしろ、熱を持ちきれない恋の歌である。
相手に近づきたいのに、どこかで距離を測っている。言いたいことがあるのに、問いかけの形でしか出せない。欲しいものがあるのに、それを欲しいと言い切るには少し怖い。
その控えめな揺れが、曲全体のムードを作っている。
日本語で言えば、告白する直前の曲というより、告白できないまま帰り道を歩く曲に近い。
言えばよかった。
でも言わなくてよかったのかもしれない。
相手はどう思っていたのだろう。
自分は何を期待していたのだろう。
そんな考えが、頭の中でぐるぐる回る。
それでも、曲は美しいメロディで進む。
この矛盾が、The Wannadiesのポップセンスなのだ。
The Wannadiesは、悲しみを悲しみとして重く置くだけではなく、そこに甘いフックを与える。だから聴き手は、泣きそうになりながらも口ずさめる。
How Does It Feel?は、まさにそういう曲である。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- You & Me Song by The Wannadies
The Wannadiesを代表する楽曲であり、Be A Girlの1曲目に収録されている。Apple Musicでも同アルバムの冒頭曲として掲載されている。Apple Music – Web Player
How Does It Feel?が恋の不安や足りなさを歌う曲だとすれば、You & Me Songは恋の高揚をそのまま走らせた曲である。甘酸っぱいギター、弾けるリズム、声を合わせたくなるサビ。The Wannadiesの明るい側面を知るなら、まず外せない一曲だ。
- Might Be Stars by The Wannadies
Be A Girlの2曲目に収録された楽曲で、The WannadiesのUKでの注目にもつながったシングルである。チャート情報をまとめた資料では、Might Be StarsがUKで51位に入ったことが記録されている。ウィキペディア
How Does It Feel?よりも少し軽快で、星のようにきらめくギター・ポップ感が強い。けれど、そこにもどこか届かないものへの憧れがある。The Wannadiesのメロディの良さを味わうには最適である。
- Love In June by The Wannadies
Be A Girlの3曲目で、How Does It Feel?の直前に置かれている。レコチョクのアルバム情報でも、Love In JuneはBe A Girlの3曲目として掲載されている。レコチョク
タイトルどおり、初夏の恋のような明るさを持つ曲だ。How Does It Feel?の切なさに入る前の、少し眩しい空気がある。アルバムの流れで聴くと、恋の光と影が自然に切り替わっていくのがわかる。
- Female of the Species by Space
90年代UKギター・ポップの少しひねくれた甘さが好きなら、この曲も相性がいい。
The Wannadiesほど北欧的な透明感はないが、ポップなメロディと少し皮肉な空気の混ざり方が近い。How Does It Feel?の明るさの中にある影に惹かれる人なら、Spaceの少し奇妙なポップ感覚にも入っていける。
- Alright by Supergrass
若さの高揚と、その裏側の刹那感を同時に持つ90年代ギター・ポップとしておすすめしたい。
AlrightはHow Does It Feel?よりもずっと陽気に聞こえるが、若さが永遠ではないことをどこかで知っている曲でもある。明るいメロディの奥に少しだけ寂しさがあるという点で、The Wannadiesの感覚と響き合う。
6. 甘酸っぱいポップの奥にある、足りなさの感覚
How Does It Feel?の特筆すべき点は、曲がとてもポップでありながら、中心にある感情が満たされていないことだ。
この曲は、幸せいっぱいの恋愛ソングではない。
でも、真っ暗な失恋ソングでもない。
その中間にある。
誰かが必要。
でも、その誰かが誰なのか、どういう形で必要なのか、はっきりしない。
抱きしめたい。
キスしたい。
でも友達でいたい。
この感情は、言葉にすると少し矛盾している。
けれど、実際の人間関係はいつも矛盾している。友情と恋愛、安心と欲望、自由と所有、近づきたい気持ちと壊したくない気持ち。その全部が同時に存在する。
How Does It Feel?は、その曖昧さを無理に整理しない。
だからリアルなのだ。
The Wannadiesのサウンドは、その曖昧さを軽やかに包む。ギターは明るく、メロディは親しみやすい。聴き手は最初、ただ気持ちのいいギター・ポップとしてこの曲に入っていける。
しかし、何度か聴いていると、だんだん歌詞の寂しさが見えてくる。
この曲は、笑っている人の横顔の歌である。
正面から見れば楽しそうだ。
でも横から見ると、少しだけ目が遠い。
その遠さが、How Does It Feel?の魅力だ。
The Wannadiesが面白いのは、北欧のバンドでありながら、90年代UKギター・ポップの空気とも強く接続していたことである。Be A GirlがUKの業界関係者に発見され、バンドがイギリスで活動の場を広げていったことは、彼らの音が当時のインディー/ブリットポップ文脈と相性がよかったことを示している。Rolling Stone Japan
ただし、The WannadiesにはUKバンドとは少し違う空気がある。
湿気よりも冷たい透明感。
派手な自意識よりも、少し遠くから見ている感じ。
青春を歌っていても、どこか雪解けの水のような清潔さがある。
How Does It Feel?にも、その質感がよく出ている。
熱い曲なのに、冷たい。
甘い曲なのに、少し苦い。
明るい曲なのに、満たされない。
この三つの矛盾が重なって、曲は長く残る。
もしこの曲がただ悲しいだけなら、聴くのに少し疲れたかもしれない。
もしただ明るいだけなら、すぐに通り過ぎてしまったかもしれない。
けれどHow Does It Feel?は、そのどちらにも完全には寄らない。だから、ふとした瞬間に戻りたくなる。
誰かが足りないと感じるとき。
友達以上になりたいけれど、関係を壊したくないとき。
相手の気持ちがわからず、自分の気持ちも少し持て余しているとき。
この曲は、静かにそばに来る。
大げさに励ますわけではない。
答えをくれるわけでもない。
ただ、どんな気分なんだい、と聞いてくる。
その問いは、やさしくもあり、少し残酷でもある。
なぜなら、本当の答えは自分で知っているからだ。
寂しい。
足りない。
誰かが必要。
でも、その言葉を口にするのは怖い。
How Does It Feel?は、その怖さをポップソングにした曲である。
The Wannadiesの曲には、青春のきらめきがある。しかし、そのきらめきはいつも少しだけ切ない。光は強いが、どこかで消えていくことを知っている。
How Does It Feel?は、その消えかけの光を見つめる曲だ。
まだ恋は終わっていない。
でも、うまくいく保証もない。
友情は残っている。
でも、それだけでは足りない。
その宙ぶらりんな場所で、ギターが鳴る。
メロディが広がる。
そして問いが繰り返される。
How does it feel?
その問いの中に、この曲のすべてがある。

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