
- イントロダクション:ギターの未来を一瞬で塗り替えた爆音の祝祭
- バンドの背景と歴史:オランダ系移民兄弟からLAクラブシーンの覇者へ
- 音楽スタイル:ブラウンサウンド、タッピング、ポップな爆発力
- 代表曲の解説:Van Halenの楽曲世界
- アルバムごとの進化
- Van Halen:すべてを変えたデビュー作
- Van Halen II:陽気なカリフォルニア・ロックの完成
- Women and Children First:より荒く、よりヘヴィに
- Fair Warning:ダークで硬質なファン人気作
- Diver Down:カバーと遊び心のアルバム
- 1984:ギターとシンセが出会った商業的頂点
- 5150:Sammy Hagar期の華々しい始まり
- OU812:メロディックな成熟
- For Unlawful Carnal Knowledge:重さとメッセージの再強化
- Balance:不安定さを抱えた後期Hagar期
- Van Halen III:Gary Cherone期の異色作
- A Different Kind of Truth:Roth復帰後の最後のスタジオ作
- Eddie Van Halenの革新性:ギタリストではなく、発明家だった
- David Lee Rothの役割:ロックをサーカスに変えたフロントマン
- Sammy Hagarの役割:メロディと安定感をもたらした第二の黄金期
- Alex Van HalenとMichael Anthony:バンドを支えた骨格
- 影響を受けた音楽:クラシック、ブルース、ハードロック、ポップ
- 影響を与えたアーティストとロックシーン
- 他アーティストとの比較:Led Zeppelin、Aerosmith、KISS、Queenとの違い
- 近年の再評価:Eddieの死、Alexの回想録、そして永遠の兄弟の物語
- まとめ:Van Halenは、ロックを速く、明るく、自由にした革命的バンドである
イントロダクション:ギターの未来を一瞬で塗り替えた爆音の祝祭
Van Halen(ヴァン・ヘイレン)は、ハードロック、ヘヴィメタル、アリーナロック、ポップロックの歴史を根本から変えた伝説的バンドである。1970年代末、ロサンゼルスのクラブシーンから登場した彼らは、Eddie Van Halenの革命的なギター、Alex Van Halenの豪快でしなやかなドラム、Michael Anthonyの高いコーラスと堅実なベース、David Lee Rothの派手でユーモラスなフロントマン性によって、ロックの音と見た目を一気に更新した。
1978年のデビュー・アルバム Van Halen は、まさに衝撃だった。Runnin’ with the Devil の不穏な幕開け、Eruption の常識外れのギターソロ、The Kinksのカバー You Really Got Me の爆発力。Eddie Van Halenのタッピング、ワーミーバー、ハーモニクス、スピード、明るく抜けるブラウンサウンドは、ギターキッズの世界を変えた。Rock & Roll Hall of Fameは、Eddieがエレクトリック・ギターの語彙を永遠に変え、両手タッピングや劇的なアーム奏法などで新しい可能性を切り開いた人物として紹介している。(rockhall.com)
Van Halenのすごさは、技術だけではない。彼らの音楽には、圧倒的な陽性のエネルギーがある。暗く重いだけのハードロックではなく、パーティー、笑い、身体性、スピード、セクシーさ、ポップなメロディが同居している。Ain’t Talkin’ ’bout Love の鋭さ、Dance the Night Away の軽やかさ、Unchained の重さ、Panama の疾走、Hot for Teacher の狂騒、そして Jump の巨大なシンセ・リフ。彼らはロックを難しいものにせず、巨大な遊園地のようにした。
1985年にDavid Lee Rothが脱退した後、Sammy Hagarが加入し、バンドは“Van Hagar”とも呼ばれる第二期へ進む。5150、OU812、For Unlawful Carnal Knowledge、Balance では、よりメロディアスで成熟したアリーナロックを展開し、Why Can’t This Be Love、Dreams、Love Walks In、Right Now などを生み出した。David Lee Roth期が爆発する青春のロックなら、Sammy Hagar期は巨大な会場を包むメロディック・ロックである。
2007年にはRock & Roll Hall of Fameに殿堂入りした。さらにEddie Van Halenの死後、2024年には兄Alex Van Halenが回想録 Brothers を発表し、Eddieとの兄弟関係、移民家族としての歩み、Van Halenの成功と葛藤を語った。The Guardianは、同書がEddieへの深い喪失感と兄弟の絆を描く回想録であると報じている。(theguardian.com)
Van Halenは、ロック史に革命を起こしたバンドである。Eddieのギターが変えたのは奏法だけではない。ロックギターはもっと速く、もっと明るく、もっと遊べるものだと証明した。そしてVan Halenというバンド全体が、ハードロックを恐怖や怒りだけでなく、笑顔と歓声と身体の高揚へ変えたのである。
バンドの背景と歴史:オランダ系移民兄弟からLAクラブシーンの覇者へ
Van Halenの核にいるのは、Eddie Van HalenとAlex Van Halenの兄弟である。二人はオランダで生まれ、幼少期に家族でアメリカへ移住した。父Jan Van Halenはミュージシャンであり、兄弟は幼い頃から音楽に囲まれて育った。最初、Eddieはドラム、Alexはギターを弾いていたが、やがて楽器を交換するように、Eddieがギター、Alexがドラムへと向かう。結果的に、この入れ替わりがロック史を変えた。
1970年代初頭、兄弟はカリフォルニア州パサデナ周辺でバンド活動を始める。そこにベーシストのMichael Anthony、ボーカリストのDavid Lee Rothが加わり、Van Halenの黄金ラインナップが完成した。Rothは単なる歌手ではなかった。彼はジャンプし、笑い、叫び、観客を煽り、ステージをサーカスに変えるエンターテイナーだった。
LAのクラブシーンで評判を高めた彼らは、Warner Bros.と契約し、1978年にデビュー・アルバム Van Halen を発表する。これが爆発的な衝撃を与えた。ハードロックはすでにLed Zeppelin、Black Sabbath、Aerosmith、KISSなどによって巨大なジャンルになっていたが、Van Halenはそこに新しい明るさと運動能力を持ち込んだ。
1979年の Van Halen II、1980年の Women and Children First、1981年の Fair Warning、1982年の Diver Down と、彼らは短期間で作品を重ねる。ツアーも精力的に行い、アメリカン・ハードロックの新王者となっていった。そして1984年、アルバム 1984 で商業的ピークへ到達する。Jump はBillboard Hot 100で1位を獲得し、Van Halen唯一の全米No.1シングルとなった。1984 はBillboard 200で2位を記録し、Jump、Panama、I’ll Wait、Hot for Teacher などを含む代表作として知られる。(en.wikipedia.org)
しかし成功の絶頂で、David Lee Rothは脱退する。バンドはSammy Hagarを迎え、1986年の 5150 で再始動する。驚くべきことに、この変化は失敗ではなく、新たな黄金期を生んだ。Roth時代とは違うメロディックで大きなサウンドによって、Van Halenはさらに幅広いリスナーへ届くようになった。
その後、Gary Cherone期、Roth復帰、Wolfgang Van Halenの加入など、バンドは複雑な変遷をたどる。だが、中心にあったのは常にEddieとAlexの兄弟の音だった。2020年10月6日、Eddie Van Halenが亡くなり、Van Halenという物語は大きな節目を迎えた。だが、その音は今もロックの中で鳴り続けている。
音楽スタイル:ブラウンサウンド、タッピング、ポップな爆発力
Van Halenの音楽スタイルを語るうえで、まずEddie Van Halenのギターは避けられない。彼のサウンドはしばしば「ブラウンサウンド」と呼ばれる。これは、硬すぎず、柔らかすぎず、歪んでいるのに温かく、アタックが鋭いのに丸みもある、独特のギター音である。
Eddieの奏法で最も有名なのが両手タッピングである。もちろん、タッピング自体を完全に発明したわけではない。しかし、彼はそれをロックギターの中心的な語彙にまで押し上げた。Eruption を聴いた多くのギタリストは、何が起きているのか分からなかった。右手と左手がネック上を駆け回り、ピアノのように音が連なり、ギターがまるで別の楽器のように鳴った。
Lemelson-MIT Programも、Eddie Van Halenをロック史上最も偉大なギタープレイヤーの一人とし、両手のフレットボード・タッピングで独自のサウンドを生み出した人物として紹介している。(lemelson.mit.edu)
だが、Van Halenの音楽はギターだけではない。Alex Van Halenのドラムは、ハードロックの重さとスウィング感を併せ持つ。彼のリズムは、ただ直線的に叩きつけるのではなく、曲を跳ねさせる。Michael Anthonyのベースと高音コーラスは、バンドのポップ性を支えた。特にコーラスは、Van Halenの明るさに欠かせない。
David Lee Roth期の音楽は、ハードロック、ブギー、ブルース、パーティーロック、ポップ、ショーマンシップが混ざる。Sammy Hagar期になると、シンセサイザー、メロディアスなバラード、アリーナロック的な大きなサビが増える。つまりVan Halenは、単に“速弾きギターのバンド”ではない。ポップソングを書く能力、会場全体を巻き込む力、そしてロックを楽しいものにするセンスがあった。
代表曲の解説:Van Halenの楽曲世界
Runnin’ with the Devil
Runnin’ with the Devil は、デビュー・アルバムの幕開けを飾る代表曲である。サイレンのような音から始まり、重いリフと余裕のあるテンポがバンドの存在を印象づける。
この曲のすごさは、速さではなく“構え”にある。Van Halenは最初から全速力で突っ走るのではなく、巨大な獣がゆっくり歩き出すように曲を始める。David Lee Rothの声は、悪魔と走っているというより、悪魔と遊んでいるようだ。この遊び心がVan Halenらしい。
Eruption
Eruption は、ロックギター史を変えたインストゥルメンタルである。2分にも満たない短いソロだが、その衝撃は計り知れない。Eddie Van Halenの両手タッピング、スピード、音色、フレーズ感が凝縮されている。
この曲以前にも優れたギターソロは数多くあった。しかし Eruption は、ギターの可能性そのものを変えてしまった。聴き手は、ギターがここまで飛翔できるのかと驚く。まるで花火が連続して爆発するような音である。
You Really Got Me
You Really Got Me は、The Kinksの名曲をVan Halen流にカバーした楽曲である。原曲の鋭いリフを、よりハードで派手なアリーナロックへ変換した。
このカバーは、Van Halenのセンスをよく示している。彼らはロックの古典を尊重しながら、自分たちの身体能力で再発明する。Rothの挑発的なボーカルとEddieのギターが、曲を1970年代末の新しいロックとして蘇らせた。
Ain’t Talkin’ ’bout Love
Ain’t Talkin’ ’bout Love は、Van Halenの中でも特に鋭い曲である。リフはシンプルだが、非常に印象的で、少し不穏なマイナー感がある。
タイトルは「愛の話なんかしていない」。これは、当時のハードロック的なセクシュアリティと冷めたユーモアを同時に感じさせる。曲は重すぎず、軽すぎない。リフの強さ、コーラスのキャッチーさ、Rothの演技性が完璧に噛み合っている。
Jamie’s Cryin’
Jamie’s Cryin’ は、ポップなメロディとロックの軽快さが混ざった曲である。Van Halenは、ヘヴィなだけでなく、こうした親しみやすい曲を書くのもうまかった。
曲の中には、恋愛のドラマと少しコミカルな距離感がある。Van Halenの楽曲は、深刻になりすぎない。感情はあるが、常にどこかに笑いと陽気さが残る。
Dance the Night Away
Dance the Night Away は、Van Halen II を代表する楽曲であり、バンドのポップな側面がよく出ている。タイトル通り、夜を踊り明かすような明るさがある。
この曲では、Eddieのギターは技巧を見せつけるより、曲全体を輝かせる役割を果たしている。Michael Anthonyのコーラスも印象的で、Van Halenが単なるギターヒーローのバンドではなく、優れたポップロックバンドだったことが分かる。
Beautiful Girls
Beautiful Girls は、Roth時代の陽気で少し不良っぽいVan Halenを象徴する曲である。肩の力が抜けたグルーヴと、夏の夕方のような空気がある。
この曲には、初期Van Halenの“カリフォルニア感”が詰まっている。青空、車、ビーチ、女の子、笑い声。ハードロックでありながら、太陽の匂いがするところが彼らの独自性である。
And the Cradle Will Rock…
And the Cradle Will Rock… は、Women and Children First の代表曲である。キーボードをギターアンプに通したような音が印象的で、Eddieの実験精神が表れている。
この曲では、ロックの反抗性と、Van Halenらしい遊び心が同居している。子どもたちは揺りかごからロックする。つまり、ロックは若者の本能として鳴る。そんなイメージがある。
Everybody Wants Some!!
Everybody Wants Some!! は、ジャングルのようなドラムから始まる、Roth時代のライブ感あふれる曲である。Alex Van Halenのリズムが強く、曲全体に野性的な雰囲気がある。
David Lee Rothの語りや叫びも含め、これはほとんどロックの寸劇である。欲望、笑い、原始的なビート。Van Halenがステージ上でどれほどエンターテインメント性を持っていたかがよく分かる。
Unchained
Unchained は、Fair Warning を代表する重い曲である。Eddieのギターリフは非常に強烈で、フランジャーのような揺れる音色が曲に独特の推進力を与える。
この曲では、Van Halenのダークでヘヴィな側面が前に出ている。Rothの声もいつもより荒々しく、バンド全体が鎖を引きちぎるように鳴る。Fair Warning は商業的には他作ほど巨大ではないが、ファンの間で評価が高い理由がこの曲にある。
Mean Street
Mean Street は、Eddieのギターイントロが印象的な楽曲である。タッピングやハーモニクスを使ったリズミックな導入部は、ギターという楽器を打楽器のようにも扱っている。
曲自体はストリートの荒さを感じさせるが、Van Halenらしいしなやかさもある。彼らの“ワルさ”は、陰鬱な暴力ではなく、どこか漫画的で派手なエネルギーを持っている。
Pretty Woman
Pretty Woman は、Roy Orbisonの名曲をカバーした楽曲である。Diver Down に収録され、Van Halenのカバーセンスを再び示した。
彼らのカバーは、原曲を壊すというより、Van Halen印のロックショーに変える。古典的なポップソングを、ギターとリズムとRothのキャラクターで派手に再構成する。ここにも彼らのポップ感覚がある。
Jump
Jump は、Van Halen最大のヒット曲であり、1980年代ロックを象徴する一曲である。Eddieのシンセサイザー・リフが中心にあり、従来のギターバンドとしてのVan Halen像を大きく広げた。
この曲が重要なのは、Van Halenがギターだけに縛られなかったことだ。Eddieはキーボードでも、ギターと同じように強烈なリフを作った。Jump はBillboard Hot 100で1位となり、バンド唯一の全米No.1シングルとなった。(en.wikipedia.org)
歌詞もシンプルで力強い。飛べ。危険を取れ。迷うより跳べ。Van Halenの陽性の哲学が凝縮された曲である。
Panama
Panama は、Van Halenのロックンロール的な疾走感を完璧に表した曲である。車、スピード、熱気、叫び。Roth時代のVan Halenの魅力が詰まっている。
Eddieのリフは鋭く、Alexのドラムは豪快で、Rothは完全にショーマンとして曲を支配する。曲中のエンジン音のような演出も含め、これは音で作られた高速道路である。
Hot for Teacher
Hot for Teacher は、Van Halenのユーモア、技巧、スピード、映像時代の感覚が一体になった名曲である。Alex Van Halenのドラムイントロは、まるでエンジンが暴走するように始まる。
歌詞はいたずらっぽく、ミュージックビデオも非常に有名である。だが、演奏は異常に高度だ。軽薄に見せながら、実はとんでもない技術で支えられている。これがVan Halenの真骨頂である。
I’ll Wait
I’ll Wait は、1984 に収録されたシンセ主体の楽曲である。Jump ほど明るくはなく、よりメランコリックで都会的な雰囲気を持つ。
この曲は、Van Halenがシンセサイザーを単なる流行としてではなく、メロディとムードを作る道具として使えることを示した。Roth期の中でも、少し大人びた曲である。
Why Can’t This Be Love
Why Can’t This Be Love は、Sammy Hagar加入後の第一弾ヒットであり、新生Van Halenの始まりを告げる曲である。シンセとギター、メロディアスなボーカルが組み合わさり、Roth時代とは違うロマンティックな感触がある。
この曲で重要なのは、バンドが単にボーカリストを変えただけでなく、音楽性も変えたことだ。Hagarの声はRothよりもストレートでメロディックで、ラブソングにも強い。Van Halenはここから、よりアリーナロック的な大きなメロディへ向かう。
Dreams
Dreams は、Hagar期の代表曲であり、Van Halenの中でも特に高揚感のある楽曲である。Sammy Hagarの高音ボーカルが大きく広がり、Eddieのギターとシンセが空へ伸びる。
この曲には、Roth時代のストリート感とは違う、空を飛ぶようなロマンがある。夢を追う、上昇する、限界を越える。Van Halenの陽性の精神はそのままに、より壮大な形になっている。
Love Walks In
Love Walks In は、Hagar期のロマンティックな側面を代表するバラードである。シンセの幻想的な響きと、Hagarのまっすぐな歌唱が印象的だ。
この曲には、Eddieのメロディメーカーとしての才能がよく出ている。彼は速弾きの人である前に、非常に優れた作曲家だった。Love Walks In は、そのことを教えてくれる曲である。
Best of Both Worlds
Best of Both Worlds は、Hagar期のバンドの自信を象徴する楽曲である。タイトル通り、二つの世界の良いところを手に入れるという感覚がある。
実際、Hagar期のVan Halenは、ハードロックの演奏力とポップなメロディ、ギターとシンセ、ロックの力強さとラジオ向けの親しみやすさを両立させた。この曲は、その姿勢をよく表している。
When It’s Love
When It’s Love は、1988年の OU812 を代表するバラードである。Hagar期のVan Halenが、愛をテーマにした大きなメロディックロックで成功したことを示す曲である。
Roth時代にはあまり見られなかった、素直で大きな感情表現がある。Sammy Hagarの声は、こうした曲で非常に強い。Eddieのギターも、技巧より感情の広がりを重視している。
Right Now
Right Now は、1991年の For Unlawful Carnal Knowledge を代表する名曲である。ピアノの印象的なフレーズから始まり、「今」を生きることを訴えるメッセージが込められている。
この曲は、Van Halenの中でも特に社会的・哲学的な響きを持つ。ミュージックビデオも強いメッセージ性を持ち、1990年代のMTV時代に深く刻まれた。Hagar期の成熟を象徴する曲である。
Poundcake
Poundcake は、Eddieが電動ドリルをギターに当てて独特の音を出したことで知られる曲である。ここにも彼の発明家気質が表れている。
曲自体は重く、グルーヴィーで、Hagar期のハードロックとして非常に強い。Eddieは常にギターを普通に弾くだけでは満足しなかった。音を発明し、道具を改造し、演奏の方法そのものを変えようとした。
Can’t Stop Lovin’ You
Can’t Stop Lovin’ You は、1995年の Balance を代表するメロディックな楽曲である。タイトル通り、愛を止められないという王道のテーマを、Van Halenらしい大きなサウンドで聴かせる。
この曲には、Hagar期後半の成熟したポップロック感がある。派手さよりも、メロディの安定感とバンドの大きな音が前に出る。
Humans Being
Humans Being は、映画 Twister のサウンドトラックに提供された楽曲であり、Hagar期末期の重要曲である。重く、暗く、緊張感がある。
この曲には、バンド内部の摩擦も反映されているように聞こえる。明るいパーティーバンドとしてのVan Halenとは違い、より硬く、重いサウンドだ。Hagar期の終盤を象徴する一曲である。
Tattoo
Tattoo は、2012年の A Different Kind of Truth からのシングルであり、David Lee Roth復帰後のVan Halenを象徴する曲である。Wolfgang Van Halenがベースで参加している時期の作品でもある。
この曲には、初期Van Halenの遊び心を現代に持ち込もうとする意志がある。往年の爆発力そのままとはいかないが、EddieのギターとRothの語り口が再び並ぶこと自体に大きな意味があった。
アルバムごとの進化
Van Halen:すべてを変えたデビュー作
1978年の Van Halen は、ロック史上最も衝撃的なデビュー・アルバムのひとつである。Runnin’ with the Devil、Eruption、You Really Got Me、Ain’t Talkin’ ’bout Love、Jamie’s Cryin’ などを収録し、バンドの魅力が一気に提示された。
このアルバムの音は、今聴いても生々しい。ギターは鋭く、ドラムは大きく、ボーカルは挑発的で、曲は短くキャッチーだ。Eddieのギター革命ばかり語られがちだが、アルバム全体としても非常に完成度が高い。
Van Halen II:陽気なカリフォルニア・ロックの完成
1979年の Van Halen II は、デビュー作の勢いを保ちながら、より軽快でポップな魅力を見せた作品である。Dance the Night Away、Beautiful Girls などに、バンドの明るい側面がよく出ている。
このアルバムでは、Van Halenが単なるギターショックのバンドではなく、楽しさと親しみやすさを持つロックバンドであることがはっきりする。
Women and Children First:より荒く、よりヘヴィに
1980年の Women and Children First は、バンドの荒々しさが増した作品である。And the Cradle Will Rock…、Everybody Wants Some!! など、ライブ感と野性味が強い。
ここでは、ポップな軽さよりも、バンドがステージで暴れるようなエネルギーが前面に出る。Van Halenのショーマンシップと演奏力が、より肉体的な形で記録されている。
Fair Warning:ダークで硬質なファン人気作
1981年の Fair Warning は、Van Halenの中でも最もダークで硬質な作品として評価されることが多い。Mean Street、Unchained など、重く鋭い曲が多い。
商業的には他の代表作ほど派手ではないが、Eddieのギターの実験性とバンドの緊張感が非常に強い。ファンの間で人気が高いのも納得できる作品である。
Diver Down:カバーと遊び心のアルバム
1982年の Diver Down は、カバー曲が多い異色作である。Pretty Woman などを収録し、バンドの遊び心が前面に出ている。
このアルバムは、オリジナル大作というより、Van Halenがロック、ポップ、古典曲を自分たちなりに料理する作品である。軽く見られがちだが、バンドの雑食性を知るうえで重要だ。
1984:ギターとシンセが出会った商業的頂点
1984年の 1984 は、Van Halenの商業的ピークである。Jump、Panama、Hot for Teacher、I’ll Wait を収録し、ギターとシンセサイザーの融合によってバンドの音を拡張した。
Jump は全米1位となり、Van Halenをハードロックの枠を越えたポップスターへ押し上げた。(en.wikipedia.org) しかし、この大成功の後にRothが脱退する。つまり 1984 は、Roth期の頂点であると同時に終章でもある。
5150:Sammy Hagar期の華々しい始まり
1986年の 5150 は、Sammy Hagar加入後初のアルバムである。Why Can’t This Be Love、Dreams、Love Walks In、Best of Both Worlds などを収録し、新生Van Halenの成功を決定づけた。
このアルバムでは、シンセサイザーとメロディックなボーカルが大きく前に出る。Roth期の軽薄な楽しさとは違い、より大人びたアリーナロックになっている。
OU812:メロディックな成熟
1988年の OU812 は、Hagar期の音楽性をさらに進めた作品である。When It’s Love などのバラードが印象的で、Van Halenがポップロックとして広い層へ届いたことを示す。
この作品では、Eddieのギターは派手な見せ場だけでなく、曲全体のメロディと空間を作る役割を担っている。バンドがソングライティング面で成熟した時期である。
For Unlawful Carnal Knowledge:重さとメッセージの再強化
1991年の For Unlawful Carnal Knowledge は、Hagar期の中でもギター色が強く、重い作品である。Poundcake、Right Now などを収録し、グラミー賞Best Hard Rock Performance with Vocalを受賞したことでも知られる。
Right Now のメッセージ性、Poundcake の実験的なギター音など、バンドは1990年代にもなお新しい見せ場を作っていた。
Balance:不安定さを抱えた後期Hagar期
1995年の Balance は、Hagar期最後のスタジオ・アルバムである。Can’t Stop Lovin’ You などを収録し、メロディアスな面と暗い緊張感が同居している。
タイトルの「Balance」は均衡を意味するが、実際にはバンド内部のバランスが崩れ始めていた時期でもある。音楽には成熟がある一方、どこか不穏な空気も漂う。
Van Halen III:Gary Cherone期の異色作
1998年の Van Halen III は、ExtremeのGary Cheroneをボーカルに迎えた唯一のアルバムである。評価は分かれ、商業的にも苦戦した。
しかし、この作品はバンドが新しい方向を探そうとした記録でもある。成功したとは言いにくいが、Van Halenが同じ形に留まろうとしなかったことは分かる。
A Different Kind of Truth:Roth復帰後の最後のスタジオ作
2012年の A Different Kind of Truth は、David Lee Roth復帰後に発表されたスタジオ・アルバムであり、Wolfgang Van Halenがベースを担当した。Tattoo などを収録し、初期の未発表アイデアを含む形で、クラシックなVan Halenの感覚を現代に蘇らせようとした作品である。
これが結果的に、Van Halen最後のスタジオ・アルバムとなった。完璧な復活作というより、長い物語の最終章として重要である。
Eddie Van Halenの革新性:ギタリストではなく、発明家だった
Eddie Van Halenは、単なる速弾きギタリストではない。彼は発明家だった。奏法を発明し、音を発明し、ギターを改造し、アンプを調整し、ピックアップを交換し、自分の理想の音を追い続けた。
彼の有名なフランケンストラットは、その象徴である。市販のギターに満足せず、自分で組み合わせ、塗装し、改造し、まったく新しいロックギターのイメージを作った。赤、白、黒のストライプは、楽器を超えてロックのアイコンになった。
Lemelson-MIT Programは、Eddieが立ったまま両手を自由に使って演奏するためのギター支持装置を発明したことにも触れている。(lemelson.mit.edu) これは、彼が演奏者であると同時に、楽器の使い方そのものを考える人物だったことを示している。
Eddieの影響は、80年代のギタリスト全体に及んだ。彼以後、ロックギターはもっと速く、もっと派手に、もっと技術的になった。だが、彼の本当の魅力はテクニックだけではない。Jump のようなシンセリフ、Dance the Night Away のポップなコード、Right Now のピアノ、Panama のリフ。彼は優れた作曲家でもあった。
David Lee Rothの役割:ロックをサーカスに変えたフロントマン
David Lee Rothは、Van Halenの初期成功に欠かせない存在である。彼は完璧な歌唱力のシンガーというより、観客を巻き込むショーマンだった。彼の叫び、笑い、喋り、身体能力、派手な衣装、少し下品なユーモア。それらが、Van Halenの音楽を巨大なパーティーにした。
Rothの魅力は、ロックを深刻にしすぎないところにある。彼はステージ上でロックスターを演じることの馬鹿馬鹿しさも知っている。そのうえで、全力でロックスターをやる。そこに彼の美学がある。
Jump、Panama、Hot for Teacher のような曲は、Rothなしでは成立しない。Eddieのギターが空を飛ぶなら、Rothはその下で観客を笑わせ、踊らせ、叫ばせる司会者だった。
Sammy Hagarの役割:メロディと安定感をもたらした第二の黄金期
Sammy Hagarの加入は、大きな賭けだった。David Lee Rothのキャラクターが強すぎたため、誰が後任になっても比較される運命にあった。しかしHagarは、Rothを真似なかった。彼は自分の強みであるメロディックな歌唱、ギターも弾けるミュージシャン性、アリーナロック向きの大きな声を持ち込んだ。
Hagar期のVan Halenは、より大人びたバンドになった。Dreams、Love Walks In、When It’s Love、Right Now などでは、Roth期にはなかった感情の広がりがある。
Roth期を好むファンとHagar期を好むファンの議論は長く続いている。しかし、両方の時代が成功したこと自体がVan Halenの強さである。彼らは一つの形だけに依存しなかった。
Alex Van HalenとMichael Anthony:バンドを支えた骨格
Van Halenの中心にはEddieがいたが、バンドの土台を作ったのはAlex Van HalenとMichael Anthonyである。Alexのドラムは、Eddieのギターと兄弟の会話をするように鳴る。リズムは豪快だが、ただ重いだけではない。スウィングし、跳ね、曲を前へ押す。
Michael Anthonyの役割も非常に大きい。彼のベースは堅実で、Eddieの自由なギターを支えた。そして何より、彼の高音コーラスはVan Halenのポップ性に欠かせない。あの明るく抜けるコーラスがなければ、Van Halenのサウンドはもっと荒く、暗くなっていただろう。
2007年以降、Wolfgang Van Halenがベースを担当する時期もある。彼はEddieの息子として大きな期待と重圧の中でバンドに加わり、後にMammoth WVHとして自分の音楽を展開する。Van Halenの物語は、家族の物語でもある。
影響を受けた音楽:クラシック、ブルース、ハードロック、ポップ
Van Halenの背景には、多様な音楽がある。EddieとAlexはクラシック音楽の教育を受けており、Eddieのメロディ感覚や構成力にはクラシック的な要素もある。一方で、Led Zeppelin、Cream、Jimi Hendrix、Eric Clapton、Black Sabbath、The Kinks、ZZ Top、Aerosmith、Montroseなどの影響も大きい。
David Lee Rothは、ブルース、R&B、ショービジネス、ジャズ的なスウィング感も持ち込んだ。Van Halenのロックが重いだけでなく跳ねるのは、この混ざり方があるからだ。
彼らはハードロックのバンドだが、実はポップセンスも非常に強い。Jump、Dance the Night Away、Why Can’t This Be Love のような曲を聴けば、Van Halenがメロディのバンドでもあったことが分かる。
影響を与えたアーティストとロックシーン
Van Halenの影響は計り知れない。Eddie以後、80年代のギタリストたちは一斉にタッピング、速弾き、改造ギター、派手なソロへ向かった。Randy Rhoads、George Lynch、Steve Vai、Joe Satriani、Nuno Bettencourt、Paul Gilbert、Dimebag Darrell、Zakk Wylde、多くのLAメタル/ハードロック系ギタリストが、直接的・間接的にEddieの影響を受けている。
また、Van Halenはヘアメタル、LAメタル、アリーナロック、ポップメタルの原型を作った。Mötley Crüe、Ratt、Poison、Bon Jovi、Def Leppard以降の多くのバンドに、Van Halen的な明るさ、ギターの派手さ、パーティー感覚が受け継がれている。
ただし、Van Halen自体は単なるヘアメタルではない。彼らはその流行が完全に形になる前に、すでに完成していた。つまり、Van Halenは多くの後続バンドの手本でありながら、後続よりもずっと独自で、ずっと演奏力が高かった。
他アーティストとの比較:Led Zeppelin、Aerosmith、KISS、Queenとの違い
Van Halenは、Led Zeppelin、Aerosmith、KISS、Queen、AC/DC、Mötley Crüeなどと比較できる。
Led Zeppelinと比べると、Van Halenはより明るく、よりアメリカ西海岸的で、より運動能力が高い。Zeppelinが神秘とブルースの深い森なら、Van Halenは太陽の下の爆音サーカスである。
Aerosmithと比べると、どちらもアメリカン・ハードロックの肉体性を持つが、Aerosmithがブルースと猥雑さを強く持つのに対し、Van Halenはより技巧的で、ポップで、派手だ。
KISSと比べると、KISSが視覚的なキャラクターとショーでロックを巨大化したのに対し、Van Halenは圧倒的な演奏力と自然な陽気さで同じことを成し遂げた。
Queenと比べると、どちらも劇場性と技巧を持つが、Queenが構築されたオペラ的ロックなら、Van Halenはもっと即興的で、ストリートのパーティーに近い。
近年の再評価:Eddieの死、Alexの回想録、そして永遠の兄弟の物語
Eddie Van Halenは2020年10月6日に亡くなった。彼の死は、ロック界に大きな喪失をもたらした。Eddieは単なるギターヒーローではなく、音そのものを変えた人物だったからである。
2024年、Alex Van Halenは回想録 Brothers を発表した。Billboardは同書について、231ページにわたりAlexがEddieとの個人的・音楽的な強い絆を語る内容だと報じている。(billboard.com) The Guardianの記事でも、AlexがEddieへの喪失感を抱え続けながら、兄弟の家族史、音楽、成功、苦悩を語ったことが紹介されている。(theguardian.com)
この回想録によって、Van Halenは単なる派手なロックバンドではなく、移民家族の兄弟が音楽で世界を変えた物語としても見直されている。EddieとAlexの関係は、バンドの心臓だった。ギターとドラムの会話は、兄弟の会話でもあった。
まとめ:Van Halenは、ロックを速く、明るく、自由にした革命的バンドである
Van Halenは、ロック史に革命を起こした伝説のバンドである。1978年のデビュー作 Van Halen で、Runnin’ with the Devil、Eruption、You Really Got Me、Ain’t Talkin’ ’bout Love を鳴らし、Eddie Van Halenはエレクトリック・ギターの可能性を一気に広げた。Rock & Roll Hall of Fameが述べるように、彼はギターの語彙を変えた存在である。(rockhall.com)
David Lee Roth期には、Dance the Night Away、Unchained、Jump、Panama、Hot for Teacher などを通じて、ハードロックを巨大なパーティーへ変えた。1984 ではシンセサイザーを大胆に取り入れ、Jump で全米1位を獲得した。(en.wikipedia.org)
Sammy Hagar期には、Why Can’t This Be Love、Dreams、Love Walks In、When It’s Love、Right Now などを生み出し、よりメロディックで成熟したアリーナロックへ進化した。Roth期とHagar期は違う魅力を持つが、どちらもVan Halenの重要な顔である。
Eddie Van Halenはギタリストであり、作曲家であり、発明家だった。Alex Van Halenはその音を支える兄弟の鼓動であり、Michael Anthonyはコーラスとベースでバンドの明るさを支えた。David Lee Rothはロックをサーカスにし、Sammy Hagarはメロディと安定感をもたらした。
Van Halenの音楽には、技術と楽しさが同時にある。難しいことをしているのに、難しそうに見せない。革命的なのに、聴けば笑顔になる。そこが彼らの特別なところだ。
Van Halenは、ロックを速くした。ギターを自由にした。ステージを巨大な遊び場にした。そして何より、ハードロックは重く暗いだけではなく、明るく、セクシーで、笑えて、誰もが叫べるものだと証明した。ロック史における彼らの革命は、今もアンプの向こうで鳴り続けている。

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