1. 歌詞の概要
「Green Honda（グリーン・ホンダ）」は、BENEE（ベニー）が2023年にリリースしたシングルであり、失恋後の“怒り”と“決別の快感”を、豪快で直情的なビートに乗せて吐き出すカタルシス系ブレイクアップ・アンセムである。
この曲の語り手は、別れた相手に対して一切の未練を残さず、自分の強さとプライドを堂々と宣言する。
タイトルにある「Green Honda」は、まさにその象徴的アイテム。元恋人に借りていた車——つまり、かつての繋がりを示す“物理的な記憶”を返却することで、
「私の人生にあなたはもう必要ない」と叫ぶ、自己解放のアクションへと昇華されている。
これまでのBENEEに見られた繊細さや自省的な語りとは一線を画し、
「Green Honda」は彼女の中の怒りとパワーを全面に押し出した、“感情の爆発”としてのポップソングとなっている。
2. 歌詞のバックグラウンド
BENEEはこの曲について、「これまでの私の楽曲のなかでも一番アグレッシブなもの」と語っており、
実際、「Supalonely」や「Doesn’t Matter」のような内向的でメランコリックなトーンとは異なり、“ブチ切れ”とも言えるような直接的な語彙とサウンドが特徴的である。
プロデューサーには、BENEEと長年タッグを組んでいるJosh Fountainと、世界的ヒットを生んできたGreg Kurstinが参加。
パンク、オルタナ、インディーポップの要素を大胆に混ぜ合わせたサウンドデザインは、怒りの感情と爽快感を同時に刺激し、まさに「破壊的な自由」を感じさせる一曲に仕上がっている。
また、MVでもBENEEは文字通り“ホンダを返しに行く”という行動を描きながら、自分自身を取り戻していく過程をビジュアル化しており、感情の再獲得＝物理的な行動という構造が鮮やかに提示されている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
I don’t need your green Honda
I don’t need your damn flowers
あなたの“グリーンのホンダ”なんていらない
あんたのクソみたいな花束もいらない
I’m not sad, I’m better
And you’re just bitter
私は悲しんでなんかない、前よりずっとマシ
なのにあんたは、ただ嫉妬してるだけでしょ？
I’m moving on, I’m thriving
You should see me driving
私は前に進んでるし、絶好調よ
私が運転してる姿でも見せてあげたいくらい
Get your stuff out my place
You can keep your damn taste
私の部屋からあんたの荷物は全部出して
あんたの趣味は、そのまま持ってってくれていいから
歌詞引用元：Genius – BENEE “Green Honda”
4. 歌詞の考察
「Green Honda」は、関係の終焉に対して“哀しみ”や“感傷”ではなく、“怒り”と“決別”を選ぶことの正当性を高らかに歌い上げた楽曲である。
特に冒頭の「I don’t need your green Honda（あんたのホンダなんていらない）」というラインは、
感情的な結びつきよりも“物”を象徴として提示し、それをバッサリと切り捨てることで、感情のリセットを物理的に表現する鮮やかさがある。
この楽曲の語り手は、泣きもしないし、悔やまない。むしろ、「あんたのセンスなんてもう興味ない」と言い放ち、
さらに「今の私は前よりもずっと良い状態」と自己肯定感を全開にしてくる。
その姿勢は、過去の失敗や恋愛によって自己価値を下げない、“自尊心の回復”そのものなのだ。
「You should see me driving（私が運転してる姿でも見てみなよ）」というラインには、単なる字義以上に、
自分の人生のハンドルを“取り戻した”というメタファーが込められており、それがこの楽曲を単なる“失恋の歌”ではなく、“再起動の讃歌”へと押し上げている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Good 4 U by Olivia Rodrigo
別れた相手への怒りと皮肉をポップパンクに乗せて爆発させた、現代の失恋アンセム。 - you should see me in a crown by Billie Eilish
復讐心と自己支配をクールに表現した、ダークで力強いフェミニズム・ポップ。 - Dead To Me by Kali Uchis
感情を断ち切る決意をソウルフルに歌う、美しく冷たいブレイクアップソング。 -
IDGAF by Dua Lipa
未練を断ち切り、完全な自立を宣言する強気な別れの歌。 -
Shut Up and Let Me Go by The Ting Tings
軽快で痛快な、別れ際の“もう放っておいて”を叫ぶポップ・ロックナンバー。
6. “さよなら”の次にくる、自分のスピードで走るということ
「Green Honda」は、過去の関係性から自由になることが“新しいドライブ”の始まりであるという、痛快でリアルなポップソングである。
BENEEはこの曲で、「傷ついた」とは言わない。その代わりに、「もういらない」と言う。
それは、感情の回復ではなく、**“感情を自分の手に取り戻す行為”**としてのサウンドなのだ。
「Green Honda」は、“別れること”をポジティブに再定義する新世代の解放ソングである。
あなたが運転席に戻るその瞬間に、この曲が流れていたら、
それはもう、次の物語が始まっている証拠だ。
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