発売日: 2011年6月17日
ジャンル: インディーフォーク、アートポップ
Bon Iverの2作目『Bon Iver, Bon Iver』は、デビュー作『For Emma, Forever Ago』のローファイで内省的なアプローチから一転し、より広がりのあるプロダクションと多層的なサウンドスケープを特徴としたアルバムである。本作では、アコースティックギターを中心としたフォーク的要素に加えて、シンセサイザー、ホーン、ストリングスなど多彩な楽器が取り入れられ、映画的で壮大な世界観が展開されている。
ジャスティン・ヴァーノンの独特のファルセットボーカルは健在でありながら、サウンド全体のスケールが大きくなり、各楽曲が一つの場所や記憶を象徴しているかのようなコンセプトがアルバム全体を通して感じられる。リスナーを現実と夢の境界線に立たせるような、不思議な魅力を持った作品だ。
トラック解説
1. Perth
ミリタリー風のドラムと広がりのあるギターリフが印象的なオープニングトラック。曲が進むにつれて音の層が増していき、力強いエネルギーを生み出す。
2. Minnesota, WI
エレクトリックギターとシンセサイザーが絡み合う、リズミカルでダイナミックな楽曲。フォークとエレクトロニカの融合が新しいBon Iverの方向性を示している。
3. Holocene
アルバムを代表する美しい楽曲。アコースティックギターと柔らかなボーカルが中心となり、歌詞には自己反省と普遍的なテーマが込められている。穏やかな中に深い感動を与える名曲。
4. Towers
軽快なギターリフとジャスティンの透明感あるボーカルが印象的なトラック。穏やかでありながらもノスタルジックな感情を呼び起こす。
5. Michicant
ミニマルなアレンジが特徴のトラック。ホーンと控えめなリズムセクションが楽曲に深みを与え、儚い美しさが漂う。
6. Hinnom, TX
低音を強調したヴォーカルとアンビエント風のサウンドスケープが独特のムードを作り出している。夢と現実の狭間にいるような不思議な感覚を与える。
7. Wash.
ピアノを主体とした静謐な楽曲。美しいメロディラインが際立ち、アルバム全体の中で一瞬の静けさを提供する。
8. Calgary
浮遊感のあるシンセサウンドとジャスティンのボーカルが融合したトラック。アルバムの中でも特に壮大で感情的な一曲。
9. Lisbon, OH
短いインストゥルメンタルで、アルバム全体の流れをつなぐブリッジ的な役割を果たす。静かなアンビエントサウンドが印象的。
10. Beth/Rest
アルバムを締めくくるトラック。80年代のバラードを思わせるシンセとホーンが特徴的で、アルバム全体のテーマをまとめ上げる壮大なフィナーレとなっている。
アルバム総評
『Bon Iver, Bon Iver』は、Bon Iverの音楽的進化を象徴する作品であり、内省的なデビュー作から、より外向きで広がりのあるサウンドへと展開したアルバムである。豊かなアレンジと繊細なソングライティングが融合し、聴くたびに新たな発見を与える。夢幻的で映画的な音楽体験を求めるリスナーにとって、間違いなく心に残る傑作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
For Emma, Forever Ago by Bon Iver
本作の前作で、ローファイで内省的なフォークサウンドが特徴。『Bon Iver, Bon Iver』のルーツを知ることができる。
High Violet by The National
豊かなアレンジと感情的な歌詞が魅力のアルバム。『Bon Iver, Bon Iver』の壮大なサウンドに通じる。
Carrie & Lowell by Sufjan Stevens
美しく感情的なフォークサウンドが楽しめるアルバム。内省的なテーマが共鳴する。
In Rainbows by Radiohead
複雑なアレンジと繊細なサウンドスケープが特徴。『Bon Iver, Bon Iver』のエクスペリメンタルな一面と似ている。
Fleet Foxes by Fleet Foxes
コーラスワークとアコースティックサウンドが際立つアルバム。『Bon Iver, Bon Iver』のフォーク的な魅力を楽しむ人におすすめ。
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