発売日: 2021年2月19日
ジャンル: シューゲイザー、カントリーノイズ、スロウコア
I Was Trying to Describe You to Someoneは、ノースカロライナ出身のバンドWednesdayによる2作目のアルバムで、オルタナティブカントリーとシューゲイザーが融合した独特なサウンドが展開されている。情緒的で静謐なカントリーテイストと、轟音のノイズギターが混ざり合うこのアルバムは、ノスタルジックでありながらも強い個性を持つ。リードボーカルのKarly Hartzmanが描くパーソナルで詩的な歌詞は、青春の記憶や愛の儚さ、そして失われたものへの思いを表現しており、叙情的な世界観がリスナーを引き込む。
本作のサウンドプロダクションは、荒々しいノイズギターと繊細なメロディが絡み合うことで、対照的な音のコントラストが生まれている。カントリーノイズとシューゲイザーが織りなすトーンは新鮮であり、ローファイでありながらも独特の美しさが漂っている。Wednesdayは、このアルバムで独自の音楽性を確立し、エモーショナルかつ詩的な一面を前面に押し出している。
トラックごとの解説
1. Fate Is…
アルバムのオープニングを飾るトラックで、シューゲイザー的な轟音のギターが特徴。静かに歌われるボーカルが、曲全体に漂うメランコリックな雰囲気を引き立てている。
2. Billboards
淡々としたリズムと共に進行するトラックで、田舎町の風景や失われた青春を描写した歌詞が心に残る。ノイズギターと抑えたボーカルが絶妙にマッチし、郷愁を誘う。
3. Underneath
重厚なギターリフが支配する一曲で、内面的な葛藤や焦燥感を表現している。サウンドの重たさが、曲の持つ深いテーマを際立たせる。
4. November
カントリー調のギターとノスタルジックなメロディが融合したトラックで、秋の静かな夜を思わせる美しさが漂う。Hartmanの優しい歌声が切なく響く。
5. Maura
激しいノイズと荒々しいギターが特徴の楽曲で、エネルギッシュな一面が表現されている。カントリーとノイズロックの対比が新鮮で印象的。
6. Three Sisters
静かなギターのイントロから始まり、徐々に盛り上がる構成が特徴的。家族や記憶についての歌詞が深く、叙情的な世界観に浸れる一曲。
7. Gary’s
ビートのゆったりしたリズムとカントリーテイストが印象的なトラック。アメリカ南部の田舎の雰囲気が感じられ、彼らのルーツを垣間見せる。
8. Twin Plagues
シューゲイザーの轟音とカントリーテイストが融合した異色のトラックで、タイトル通り双子のように異なるサウンドが一体化している。
9. Love Has No Pride
オリジナル楽曲とは異なり、Bonnie Raittの名曲のカバーで、静かなアレンジと繊細なボーカルが新たな解釈を加えている。切なくも美しいアレンジが心に染みる。
10. Coyote
アルバムのラストを締めくくる、静かでメランコリックなトラック。どこか懐かしいメロディが余韻を残し、Wednesdayの持つ情緒的な側面が全面に表れている。
アルバム総評
I Was Trying to Describe You to Someoneは、Wednesdayがシューゲイザーとオルタナティブカントリーを独自に融合させ、新しい音楽スタイルを作り上げた作品である。彼らの持つエモーショナルな詩的世界は、轟音のギターと繊細なメロディが共存するサウンドによって見事に表現されている。Karly Hartzmanのボーカルは、淡々としつつも深い感情を秘めており、歌詞はアメリカ南部の風景や人々の記憶を描写しながら、普遍的なテーマを探求している。Wednesdayはこのアルバムで、自分たちの音楽的アイデンティティを確立し、シューゲイザーとカントリーの両方のファンにとっても新鮮で独自の作品に仕上がっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Stranger in the Alps by Phoebe Bridgers
感情的な歌詞とオルタナティブカントリーの要素が強く、I Was Trying to Describe You to Someoneの情緒的な雰囲気に共鳴する一枚。
Twin Fantasy by Car Seat Headrest
ローファイでインディーロックのエネルギーが詰まったアルバムで、感情の荒波と青春の葛藤が描かれている。
The Glow Pt. 2 by The Microphones
ローファイとインディーロックが融合した実験的なサウンドで、Wednesdayのノスタルジックなサウンドに通じるものがある。
Alligator by The National
深くエモーショナルな歌詞とメランコリックなメロディが特徴で、Wednesdayの持つ叙情性と相性が良いアルバム。
Attic Abasement by Dancing Is Depressing
ローファイで感傷的なサウンドとリリックが魅力で、I Was Trying to Describe You to Someoneのように内省的なリスナーに響く作品。
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