発売日: 1989年11月1日
ジャンル: グランジ、オルタナティブロック
Mudhoneyは、シアトルのグランジシーンを象徴するバンドMudhoneyのセルフタイトルによるデビューアルバムである。Mudhoneyは、この作品で彼らの特徴的なサウンドを確立し、シアトル特有の荒々しく不穏な音楽スタイルを見事に体現した。前作のEPSuperfuzz Bigmuffで見せた粗削りでエネルギッシュなサウンドを引き継ぎつつも、よりダイナミックでリッチな音楽性を追加している。Mudhoneyのざらついたギター、マーク・アームのシャウトするボーカル、重厚なリズムセクションは、彼らのグランジサウンドの象徴であり、このアルバムはニルヴァーナやパール・ジャムなど多くのバンドに影響を与えた。
プロデューサーのジャック・エンディーノは、シンプルでありながらも生々しいサウンドを引き出し、シアトルの暗く湿った空気感を見事に表現している。「Here Comes Sickness」や「Touch Me I’m Sick」の再録音版など、スラッジとパンクの影響を受けたトラックが並び、Mudhoneyの不穏でエネルギッシュなサウンドが楽しめる。
トラックごとの解説
1. This Gift
アルバムの幕開けを飾るアップテンポな曲で、鋭いギターリフとアームのボーカルが炸裂する。シンプルな構成ながらも、Mudhoneyの生々しさと力強さが詰まった一曲。
2. Flat Out Fucked
荒々しく攻撃的なトラックで、ダークなリフと激しいドラムが曲を引き立てる。ボーカルとギターの叫びが不安や怒りを表現しており、アルバムの中でも特に印象的。
3. Get Into Yours
エネルギッシュなロックナンバーで、キャッチーなメロディが特徴的。パンキッシュなノリと力強いサウンドがMudhoneyらしさを感じさせる。
4. You Got It (Keep It Outta My Face)
ポストパンク的な雰囲気とグランジの重厚さが混じり合った一曲。シンプルなビートとギターリフが絡み合い、ノイジーでありながらもどこかキャッチーなサウンドが楽しめる。
5. Magnolia Caboose Babyshit
インストゥルメンタルのトラックで、重低音とノイズの融合が生み出す独特の雰囲気が漂う。短いながらも、アルバムに緩急をつける役割を果たしている。
6. Come to Mind
メロディックで少し落ち着いた雰囲気を持つトラック。荒々しい中にも一種の感傷が感じられ、Mudhoneyの多面的な音楽性が垣間見える。
7. Here Comes Sickness
ヘビーなギターと怒りに満ちたボーカルが特徴の曲で、不穏なリフとダークな雰囲気が一体となっている。バンドのエネルギッシュなサウンドが際立つ一曲。
8. Running Loaded
ブルージーなリフとファズの効いたギターが印象的なトラック。リズムがシンプルながらも、荒削りな演奏とダーティな音色が際立っている。
9. The Farther I Go
どこか陰鬱で内省的な雰囲気を持つ曲で、スローなテンポと深いリリックが印象的。アルバムの中で異色の存在感を放つ。
10. By Her Own Hand
ノイジーでパワフルなギターが印象的なトラックで、Mudhoneyの持つ原始的なエネルギーが感じられる。ドラムのビートが心地よく、ダイナミックな演奏が楽しめる。
11. When Tomorrow Hits
Spacemen 3のカバーで、Mudhoney流にアレンジされ、重く幻想的なサウンドが展開される。ダークでサイケデリックな雰囲気が特徴的な一曲。
12. Dead Love
アルバムのラストを飾る曲で、静かに始まりつつも次第にエネルギーを高める構成が秀逸。エンディングにふさわしいドラマティックな展開が印象的。
アルバム総評
Mudhoneyは、シアトルのグランジムーブメントの基盤を築いた重要な作品であり、バンドの特徴である荒々しいサウンドとエネルギッシュな演奏が詰まっている。パンクやハードロックの影響を受けたノイジーなギター、怒りと皮肉が込められたボーカル、そして重厚なリズムセクションが絶妙に組み合わさり、Mudhoneyらしい独自のスタイルを確立している。Superfuzz Bigmuffに比べると洗練されているが、泥臭さと攻撃性が色濃く残っており、バンドのエネルギーが存分に発揮された一枚だ。グランジファンやオルタナティブロックのファンにとっては必聴の作品である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bleach by Nirvana
ニルヴァーナのデビューアルバムで、荒々しいサウンドとダークな雰囲気が特徴。Mudhoneyのファンにも響く作品。
Dry as a Bone by Green River
Mudhoneyのメンバーがかつて在籍していたバンドで、グランジのルーツが感じられる。パンクとロックが融合したサウンドが楽しめる。
Facelift by Alice in Chains
シアトルを代表するヘヴィなサウンドが特徴のアルバムで、ダークで重厚なトーンがMudhoneyと共通する。
Louder Than Love by Soundgarden
ヘビーなギターリフとエモーショナルなボーカルが特徴の作品で、グランジとハードロックの中間に位置する一枚。
Gluey Porch Treatments by Melvins
スラッジメタルとグランジの交差点とも言える作品で、重くゆったりとしたリズムとノイズが魅力。Mudhoneyのダークでラウドなサウンドが好きな人におすすめ。
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