
1. 歌詞の概要
「The Underside of Power」は、アメリカのポストパンク/ソウルバンド Algiers が2017年にリリースした同名のアルバム『The Underside of Power』のタイトルトラックであり、彼らの音楽的・政治的メッセージを象徴する楽曲の一つです。
この楽曲のテーマは、抑圧への抵抗、権力の裏側に潜む暴力、そして希望を求める戦いです。タイトル「The Underside of Power(権力の裏側)」が示すように、歌詞では権力が生み出す抑圧のシステムと、それに立ち向かう者たちの視点が描かれています。
リードボーカルのフランクリン・フィッシャー(Franklin James Fisher)のソウルフルなシャウトと、バンドの持つポストパンクのエネルギー、ゴスペル的な要素が融合し、圧倒的な緊張感と激情を伴う楽曲となっています。歌詞は社会的不正義、歴史的抑圧、人種差別への怒りを強く反映しており、まるで現代のプロテストソング(抗議の歌)のようなメッセージ性を持っています。
2. 歌詞のバックグラウンド
Algiers は、ポストパンク、ゴスペル、インダストリアル、ソウル、エレクトロの要素を融合させた独自のスタイルを持つバンドであり、特に政治的なメッセージを前面に押し出した楽曲が多いことで知られています。
この楽曲が収録されたアルバム『The Underside of Power』は、2017年のリリース当時、アメリカや世界の政治的不安定さ、人種差別の問題、社会的不正義といったテーマを扱い、それに対する強い怒りと抵抗のメッセージを込めた作品として大きな注目を集めました。
また、フランクリン・フィッシャー自身がアフリカ系アメリカ人であることもあり、彼の経験と歴史的な背景が歌詞に深く反映されているのも特徴です。「The Underside of Power」は、単なるロックソングではなく、歴史的な抑圧とその克服を訴える強いメッセージを持った楽曲として位置づけられています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、楽曲の印象的な部分の歌詞を抜粋し、英語の原文とその日本語訳を掲載します。
I’ve seen the underside of power
It’s just a game that can’t go on
「俺は権力の裏側を見てきた」
「それはもう続けられないゲームだ」
→ ここでは、権力が実際にどのように機能しているのかを見てきた主人公が、それがいずれ崩壊するべきものであることを語っています。「ゲーム」という言葉は、権力者たちが社会を操作し続けることが、単なる政治的な駆け引きでしかないことを示唆しています。
I see the fire in the streets
It’s just a line we’ve been pushed beyond
「俺は街の炎を見た」
「それは、俺たちが押しやられた境界線の向こうにあるものだ」
→ 街に燃え広がる炎は、社会の怒りの象徴であり、デモや抗議運動の映像を彷彿とさせるものです。「押しやられた境界線」とは、社会的な抑圧の限界を示しており、すでに我慢の限界を超えていることを示唆しています。
I’m no longer here to dance
I’m here to rage
「俺はもう踊るためにここにいるんじゃない」
「怒りをぶつけるためにいるんだ」
→ ここでは、単なる娯楽や享楽ではなく、社会の不正義に対して立ち上がる覚悟を示しています。「怒り(rage)」は、この楽曲全体を貫く感情であり、Algiers の音楽が単なるエンターテイメントではなく、社会的メッセージを持つアートであることを強く訴えています。
※ 歌詞の全文は Lyrics.com などで参照可能です。
4. 歌詞の考察
「The Underside of Power」は、単なる反抗の歌ではなく、社会の現状に対する鋭い批評と、それに対する抵抗の意志を込めた楽曲です。
この曲の中で描かれる「権力の裏側」とは、支配階級が持つ抑圧の構造、人種差別や格差、暴力による支配などを指していると考えられます。歌詞の中では、抗議運動や社会の怒りが爆発する様子が描かれており、それは歴史的な背景と現代の政治状況の両方を反映しています。
また、「I’m here to rage(俺は怒りをぶつけるためにいる)」というフレーズが示すように、この楽曲は単なる不満ではなく、行動を求めるメッセージが込められています。
音楽的にも、ポストパンクの不穏なサウンドと、ゴスペルのようなボーカルスタイルが融合し、まるで教会での説教と革命的なデモンストレーションが合わさったような感覚を生み出しています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Blood” by Algiers
→ 彼らのデビューアルバムからの代表曲で、ゴスペルとポストパンクの融合が特徴。 - “Killing in the Name” by Rage Against the Machine
→ 反権力のメッセージを持つ楽曲で、「The Underside of Power」と共通する怒りのテーマがある。 - “This Land” by Gary Clark Jr.
→ 人種差別への怒りと抵抗を歌った、強烈なメッセージを持つ楽曲。 - “God’s Gonna Cut You Down” by Johnny Cash
→ 罪と正義、権力の腐敗を歌ったダークな楽曲で、Algiers の精神性と通じる部分がある。
6. Algiersのプロテストソングとしての「The Underside of Power」
「The Underside of Power」は、現代のプロテストソングの中でも特に力強いメッセージを持つ楽曲であり、ポストパンクとゴスペルの要素を融合させた独自のスタイルが、楽曲の持つ怒りと希望のコントラストを際立たせている。
この曲は、単なる音楽ではなく、社会へのメッセージであり、リスナーに行動を促すアンセムとなっている。Algiers の音楽が持つ政治的・文化的意義を象徴する一曲として、今後も語り継がれる作品となるだろう。
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