
発売日: 2008年12月16日
ジャンル: ポップロック、オルタナティブロック、ポップパンク
- 野心と混沌が交差する—Fall Out Boyの最も実験的なアルバム
- 全曲レビュー
- 1. Disloyal Order of Water Buffaloes
- 2. I Don’t Care
- 3. She’s My Winona
- 4. America’s Suitehearts
- 5. Headfirst Slide Into Cooperstown on a Bad Bet
- 6. The (Shipped) Gold Standard
- 7. (Coffee’s for Closers)
- 8. What a Catch, Donnie
- 9. 27
- 10. Tiffany Blews (feat. Lil Wayne)
- 11. w.a.m.s.
- 12. 20 Dollar Nose Bleed (feat. Brendon Urie)
- 13. West Coast Smoker (feat. Debbie Harry)
- 総評
- おすすめアルバム
野心と混沌が交差する—Fall Out Boyの最も実験的なアルバム
2008年、Fall Out Boyは4thアルバムFolie à Deuxで、新たな音楽的挑戦に踏み出した。本作のタイトルはフランス語で「共有精神病」を意味し、政治、名声、愛、アイデンティティの混乱といったテーマを扱ったコンセプチュアルな作品となっている。
前作Infinity on Highでポップパンクの枠を超えた彼らは、本作でさらに幅広いサウンドを探求し、オルタナティブロックやR&B、クラシカルなアレンジを大胆に取り入れた。ゲストアーティストにはElvis Costello、Lil Wayne、Brendon Urie(Panic! at the Disco)、Debbie Harry(Blondie)らが参加し、ジャンルを超えたコラボレーションが展開されている。
しかし、商業的には前作ほどの成功を収めず、一部のファンからは「複雑すぎる」「実験的すぎる」との評価も受けた。しかしながら、後のエモリバイバルやポップロックの進化に影響を与えたアルバムとして、近年では再評価が進んでいる。
全曲レビュー
1. Disloyal Order of Water Buffaloes
ピアノのイントロから始まり、徐々に壮大なサウンドへと展開するオープニング曲。歌詞には社会的な不安や自己嫌悪が込められ、アルバムのダークなテーマを象徴する。
2. I Don’t Care
リードシングルであり、Fall Out Boy流の反抗的なアンセム。「何も気にしない」と歌うキャッチーなコーラスと、グラムロック的なギターリフが印象的。
3. She’s My Winona
リズミカルなギターとアップビートなメロディが特徴的な楽曲。タイトルは女優Winona Ryderにちなんでおり、愛と混乱の中毒性をテーマにしている。
4. America’s Suitehearts
ポップなメロディとは裏腹に、アメリカのメディア文化と名声の空虚さを皮肉った歌詞が際立つ楽曲。ラジオ向けのシングルとしても機能するが、Fall Out Boyらしいアイロニーに満ちている。
5. Headfirst Slide Into Cooperstown on a Bad Bet
タイトルの長さが象徴するように、Fall Out Boyの実験的な一面が表れた楽曲。ファンクやプログレッシブな要素を取り入れ、Patrick Stumpのソウルフルなヴォーカルが際立つ。
6. The (Shipped) Gold Standard
軽快なビートとファンキーなギターリフが融合した楽曲。皮肉たっぷりのリリックと、洗練されたメロディが特徴的。
7. (Coffee’s for Closers)
ストリングスとピアノが絡み合う壮大な構成の楽曲。Fall Out Boyの持つドラマティックな要素が詰まっており、映画的なスケール感がある。
8. What a Catch, Donnie
Fall Out Boyのバラードの中でも特に感動的な一曲。Elvis CostelloやBrendon Urieらがゲスト参加し、過去のFall Out Boyの楽曲のフレーズを引用することで、バンドの歩みを振り返るような構成になっている。
9. 27
名声とドラッグに溺れるロックスターの姿を描いた楽曲。タイトルは「27クラブ」(若くして亡くなった伝説的ミュージシャンたち)を暗示している。
10. Tiffany Blews (feat. Lil Wayne)
Lil Wayneが参加した異色のトラック。エレクトロポップ的な要素が混じりつつも、Fall Out Boyらしいドラマティックな構成が魅力。
11. w.a.m.s.
グルーヴィーなビートとファンクの要素が融合した楽曲。後半の展開が予測不能で、実験的なサウンドが際立つ。
12. 20 Dollar Nose Bleed (feat. Brendon Urie)
Panic! at the DiscoのBrendon Urieが参加し、ジャジーなアレンジが加えられた楽曲。ブロードウェイ的なエネルギーが詰まっており、アルバムの中でも特に異彩を放っている。
13. West Coast Smoker (feat. Debbie Harry)
アルバムのラストを飾るヘヴィなロックナンバー。BlondieのDebbie Harryが参加し、パンクのスピリットが注入されている。
総評
Folie à Deuxは、Fall Out Boyのキャリアの中でも最も挑戦的で実験的なアルバムである。エモ・ポップパンクから大きく脱却し、オルタナティブロック、ファンク、ソウル、ジャズ、クラシカルな要素を取り入れた作品となっている。
その結果、商業的には前作Infinity on Highほどの成功は収められなかったが、音楽的な多様性や野心的な構成が高く評価され、近年ではFall Out Boyの最高傑作のひとつと再評価されることが増えている。Patrick Stumpのヴォーカル力はさらに向上し、Pete Wentzの歌詞もより文学的かつ社会的なメッセージを含むようになった。
発売当時は賛否が分かれたが、今ではエモとポップロックの境界を押し広げた作品として、多くのミュージシャンに影響を与えている。
おすすめアルバム
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Panic! at the Disco – Pretty. Odd. (2008)
ポップパンクから脱却し、クラシカルなアレンジを取り入れた作品として共通点が多い。 -
My Chemical Romance – Danger Days: The True Lives of the Fabulous Killjoys (2010)
コンセプト性の強い作品で、Fall Out Boyの本作と同じく実験的な要素が多い。 -
The Academy Is… – Fast Times at Barrington High (2008)
エモ・ポップパンクからポップロックへの進化を見せたアルバムで、Fall Out Boyの本作と同じ時期の作品。 -
Green Day – 21st Century Breakdown (2009)
社会的なテーマを扱いながら、音楽性の幅を広げた点で共通している。 -
Paramore – Paramore (2013)
ポップパンクを超えた幅広いサウンドを取り入れた作品で、Fall Out Boyの本作と似た音楽的進化を遂げている。
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