
発売日: 2003年7月7日
ジャンル: ブリットポップ、オルタナティブ・ロック、フォークロック
洗練と深化——Ocean Colour Sceneの成熟したメロディセンス
2003年にリリースされたNorth Atlantic Driftは、Ocean Colour Sceneの6作目のスタジオアルバムであり、フォークやブルース、ソウルの要素を融合させた洗練されたサウンドが特徴の作品である。前作Mechanical Wonder(2001年)で見せた落ち着いた雰囲気を引き継ぎつつ、よりメロディアスでポップなアプローチを強めたアルバムとなっている。
ブリットポップのムーブメントが完全に終息した2003年のUKロックシーンにおいて、本作は流行に流されることなく、クラシックなソングライティングと深みのあるアレンジを追求する姿勢を明確に示した作品である。「I Just Need Myself」や「Golden Gate Bridge」のようなキャッチーな楽曲から、「Make the Deal」のようなフォーキーなバラードまで、バンドの持つ多様な音楽性が存分に発揮されている。
本作は派手なロックンロールではなく、リスナーにじっくりと味わわせるようなアルバムとして仕上がっており、Ocean Colour Sceneの円熟味を感じさせる作品となっている。
全曲レビュー
1. I Just Need Myself
アルバムのオープニングを飾る、軽快なリズムと爽やかなメロディが印象的なナンバー。90年代のブリットポップ時代のエネルギーを感じさせる楽曲でありながら、サウンドはより洗練されている。
2. Oh Collector
ブルージーなギターとソウルフルなボーカルが際立つ楽曲。ストリングスのアレンジが加わり、シンプルながらも奥行きのあるサウンドが特徴的。
3. North Atlantic Drift
タイトル曲であり、本作の核となる楽曲。広がりのあるサウンドスケープと、ノスタルジックなメロディが融合し、アルバムのテーマを象徴する一曲となっている。
4. Golden Gate Bridge
本作の中でも特に美しいバラード。アコースティックギターとシンプルなメロディが、静かに心に染みる。バンドの成熟したソングライティングが光る楽曲。
5. Make the Deal
フォークとブルースの要素を取り入れた楽曲で、カントリー的な雰囲気も漂う。ゆったりとしたリズムの中に、バンドの温かみが感じられる。
6. For Every Corner
オルガンとエレクトリックギターが絡み合う、ダイナミックなサウンドの楽曲。曲の後半にかけての展開が壮大で、アルバムの中でも特に印象的な構成となっている。
7. On My Way
グルーヴィーなベースラインが特徴のミディアムテンポのナンバー。リラックスした雰囲気を持ちながらも、キャッチーなメロディが耳に残る。
8. Second Hand Car
シンプルなアコースティックバラード。歌詞は人生の変遷や、過去へのノスタルジアを描いた内容で、アルバムの中でも特に叙情的な楽曲。
9. She’s Been Writing
ソウルやブルースの影響が感じられる楽曲で、ホーンセクションが加わり、華やかな雰囲気を醸し出している。バンドの幅広い音楽性が垣間見える一曲。
10. The Song Goes On
タイトル通り、音楽の持つ力をシンプルに讃えた楽曲。穏やかなメロディと、温かみのあるサウンドが特徴的。
11. When Evil Comes
アルバムのラストを飾る、ダークな雰囲気を持つ楽曲。静かなイントロから徐々に盛り上がり、壮大なフィナーレへと繋がる。
総評
North Atlantic Driftは、Ocean Colour Sceneが90年代のブリットポップ的なサウンドから脱却し、よりオーガニックでフォーキーな方向へとシフトした作品である。過去作と比較すると派手なロックンロールは少なく、より洗練されたメロディとアレンジを重視するスタイルへと進化している。
特に「Golden Gate Bridge」や「Second Hand Car」などのバラードでは、バンドの持つ叙情的な側面が際立ち、「I Just Need Myself」や「Oh Collector」では、彼らのソウルフルなロックの魅力が表現されている。
ブリットポップ全盛期のような派手なサウンドを求めるリスナーには物足りなく感じるかもしれないが、長く聴き続けられるようなアルバムとしての完成度は高い。Ocean Colour Sceneの円熟したサウンドを堪能できる、隠れた名盤といえるだろう。
おすすめアルバム
- Ocean Colour Scene – Mechanical Wonder (2001)
- 本作の前作であり、フォークロックやブルースの要素を強めた作品。
- Paul Weller – Illumination (2002)
- Ocean Colour Sceneとも関係が深いポール・ウェラーの作品。よりアコースティックで落ち着いた雰囲気。
- The Verve – Forth (2008)
- 叙情的なメロディとダイナミックなアレンジが特徴の作品。
- Gomez – Split the Difference (2004)
- フォークとブルースを融合させたUKロックの秀作。
- Travis – 12 Memories (2003)
- 穏やかなメロディと深みのある歌詞が魅力のアルバム。
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