発売日: 1997年8月11日
ジャンル: ブリットポップ、オルタナティブ・ロック
ブリットポップの頂点へ——ロックンロールのスピリットを受け継ぐ力作
1997年にリリースされたMarchin’ Alreadyは、Ocean Colour Sceneのサードアルバムであり、前作Moseley Shoals（1996年）の成功を受けて制作された。本作は、リリース直後にUKアルバムチャートで1位を獲得し、オアシスのBe Here Nowを押しのける形でブリットポップの最前線に躍り出た。
本作では、前作の60〜70年代ロックへの憧憬を引き継ぎながらも、より洗練された楽曲構成と多彩なアレンジが施されており、バンドの成長を感じさせる作品となっている。ポール・ウェラー（The Jam）がゲスト参加するなど、モッズ・ロックの精神を継承しつつ、ソウルやフォーク、ブルースの要素を取り入れた音楽性が際立つ。
本作のシングル「Hundred Mile High City」は、映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のサウンドトラックにも使用され、バンドの人気をさらに押し上げた。また、「Travellers Tune」や「Better Day」などの楽曲もUKチャートでヒットを記録し、Ocean Colour Sceneの名声を決定づける作品となった。
全曲レビュー
1. Hundred Mile High City
アルバムの幕開けを飾る、激しいギターリフと疾走感あふれるロックナンバー。映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のサウンドトラックに使用され、バンドの代表曲のひとつとなった。スティーヴ・クラドックのギターが炸裂し、サイモン・ファウラーのシャウト気味のヴォーカルがパワフル。
2. Better Day
前曲の勢いを受け継ぎつつも、よりメロディアスな要素を前面に出した楽曲。ストリングスが加えられ、ドラマティックな展開が特徴的。歌詞は希望に満ちたメッセージを持ち、アルバムの中でも特に印象的な楽曲のひとつ。
3. Travellers Tune
ポール・ウェラーがバックコーラスで参加した、ソウルフルなモッズ・ロックナンバー。オルガンとホーンセクションが加わり、60年代の影響が色濃く表れている。キャッチーなメロディとノスタルジックな雰囲気が心地よい。
4. Big Star
ダイナミックなギターリフとグルーヴィーなベースが際立つロックンロールナンバー。タイトル通り、ロックスターへの憧れと現実のギャップを歌った楽曲であり、バンドの等身大の視点が感じられる。
5. Debris Road
アコースティックギターを基調とした楽曲で、フォークやカントリーの影響が感じられる。シンプルなコード進行ながらも、サウンドの広がりがあり、リラックスした雰囲気を持つナンバー。
6. Spark and Cindy
アルバムの中でも異色の楽曲で、ストリングスやコーラスワークが強調されたバラード風の曲調。オーガニックなアレンジが美しく、アルバム全体の流れにおいて印象的なアクセントとなっている。
7. Half a Dream Away
ブルースとR&Bの要素を取り入れた、グルーヴィーなミディアムテンポのナンバー。ヴォーカルのハーモニーが心地よく、ライブ映えする楽曲。
8. Get Blown Away
静かに始まり、徐々に盛り上がるダイナミックな構成を持つ楽曲。フォークロック的なアプローチと、エモーショナルなヴォーカルが際立つ。
9. Tele He’s Not Talking
ビートルズ的なポップなメロディと、オルガンが心地よく響く楽曲。リズムの展開が面白く、バンドの遊び心が感じられる。
10. Foxy’s Folk Faced
フォークロックのテイストが強い、アコースティック中心の楽曲。バンドのルーツを感じさせるシンプルなアレンジが特徴。
11. All Up
アグレッシブなギターと、力強いヴォーカルが際立つナンバー。オルガンが絡み合い、70年代のロックの影響が色濃く出ている。
12. Rolling Over
アルバムの締めくくりにふさわしい、エネルギッシュなロックナンバー。サイケデリックなギターサウンドと、激しいドラムが印象的なラストトラック。
総評
Marchin’ Alreadyは、Ocean Colour Sceneがブリットポップの頂点に立った作品であり、60年代ロックの精神を受け継ぎながら、90年代のブリットポップとして昇華させたアルバムである。
特に「Hundred Mile High City」や「Travellers Tune」は、バンドの代表曲として今なお愛されており、シンプルながらも熱量の高い演奏と、洗練されたアレンジが光る作品となっている。ブリットポップという枠を超え、クラシックロックの魅力を90年代の感覚で再解釈した本作は、今聴いても新鮮な魅力を放っている。
Moseley Shoalsと並ぶバンドの最高傑作であり、UKロックの名盤として語り継がれるべき作品である。
おすすめアルバム
- Ocean Colour Scene – Moseley Shoals (1996)
- バンドの代表作であり、60年代ロックとブリットポップを融合させた傑作。
- Paul Weller – Heavy Soul (1997)
- OCSとも交流が深いポール・ウェラーによる、ブルースやソウルの影響が色濃いロックアルバム。
- Oasis – Be Here Now (1997)
- 90年代UKロックを象徴する一枚。壮大なサウンドが特徴的。
- The Verve – Urban Hymns (1997)
- オーガニックなロックサウンドと壮大な楽曲が詰まった名作。「Bitter Sweet Symphony」収録。
- Cast – Mother Nature Calls (1997)
- Oasisとも比較されるブリットポップバンド、Castによるメロディアスなロックアルバム。
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