アアルバムレビュー:Yield by Pearl Jam

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1998年2月3日

ジャンル:オルタナティヴ・ロック、グランジ、ハードロック、フォーク・ロック、アメリカン・ロック

概要

Pearl Jamの5作目となるスタジオ・アルバム『Yield』は、1998年に発表された作品であり、1990年代オルタナティヴ・ロックの巨大な潮流の中で、バンドが自らの立ち位置を再確認した重要作である。デビュー作『Ten』によって一躍グランジ/オルタナティヴ・ロックの中心的存在となったPearl Jamは、続く『Vs.』『Vitalogy』で商業的成功と実験性、怒りと内省を同時に拡張していった。しかし、急激な成功はバンドに大きな圧力を与え、チケット販売をめぐる業界との対立、メディア露出への抵抗、ロックスター化への違和感などによって、彼らは1990年代半ば以降、意図的にメインストリームから距離を取る姿勢を強めていた。

その流れの中で発表された『No Code』は、Pearl Jamが自分たちの音楽的自由を取り戻そうとした作品だった。アート・ロック、フォーク、ワールド・ミュージック的な要素、断片的な構成が入り混じり、初期の直線的なハードロックとは異なる方向へ進んだ。しかし『No Code』は、商業的には初期作ほどの爆発力を持たず、バンドのファン層にも賛否を生んだ。『Yield』は、その後に作られたアルバムであり、実験性を完全に捨てるのではなく、よりバンドらしい骨太なロック・サウンドへと再統合した作品である。

タイトルの『Yield』は、「譲る」「道を譲る」「産出する」「身を任せる」など複数の意味を持つ。アルバム・ジャケットにも道路標識のイメージが用いられており、ここにはPearl Jamがそれまで抱えていた抵抗、怒り、拒絶から、ある種の受容や手放しへ向かう姿勢が反映されている。もちろん、それは諦めではない。むしろ、自分たちの進む道を強引に押し通すのではなく、状況を見極め、流れに身を置きながら、それでも自分たちの音を鳴らすという成熟した態度である。

音楽的には、『Yield』はPearl Jamのカタログの中でも特にバンド・アンサンブルのまとまりが強い作品である。Eddie Vedderのヴォーカルは依然として感情の深さを持つが、初期作品のように常に激情を爆発させるのではなく、抑制、観察、諦念、希望を使い分ける。Stone GossardとMike McCreadyのギターは、ハードロック的な厚みとクラシック・ロック的な開放感を併せ持ち、Jeff Amentのベースは曲の重心を支え、Jack Ironsのドラムはバンドに独特の揺れと広がりを与えている。

本作は、Pearl Jamがグランジという時代的なラベルからさらに離れ、より広いアメリカン・ロックの文脈へ入っていった作品でもある。Neil YoungThe WhoLed ZeppelinThe Rolling StonesThe Clash、R.E.M.などからの影響を感じさせながらも、1990年代後半のオルタナティヴ・ロックとしての緊張感を保っている。『Yield』におけるPearl Jamは、単に若者の怒りを代弁するバンドではなく、成長、喪失、信念、社会との距離、人間の自由意志を問うバンドへと変化している。

歌詞の面でも、本作は初期の個人的な苦悩や社会への怒りから、より哲学的で象徴的な方向へ進んでいる。逃避と解放、自己の選択、過去との和解、人生の流れへの向き合い方が繰り返し描かれる。特に「Given to Fly」「Wishlist」「In Hiding」などでは、個人が現実の重さから一度距離を取りながら、それでも世界とつながろうとする姿勢が表現されている。一方で「Do the Evolution」では、進歩を自称する人類の暴力性と傲慢さが強烈な皮肉で描かれる。

『Yield』は、Pearl Jamのキャリアにおいて、初期の爆発的成功と中期以降の安定したバンド活動をつなぐ作品である。『Ten』や『Vs.』のような即効性を求めるリスナーには、やや落ち着いた印象を与えるかもしれない。しかし、アルバム全体を通して聴くと、バンドが自らの過去を否定せず、かつ時代に消費されることも拒みながら、より持続可能なロック・バンドとして再構築されていく過程が見える。1990年代ロックの中でも、成熟というテーマを自然な形で刻んだ作品である。

全曲レビュー

1. Brain of J.

オープニング曲「Brain of J.」は、アルバムの幕開けにふさわしい、鋭く荒々しいロック・ナンバーである。タイトルは、アメリカ大統領ジョン・F・ケネディの脳にまつわる陰謀論的なイメージを想起させるもので、Pearl Jamが持つ政治的・社会的な視点が冒頭から示されている。曲は短く、攻撃的で、過度な装飾を避けた構成になっており、バンドが『No Code』で広げた実験性を、より直接的なロックのエネルギーへ戻していることが分かる。

音楽的には、歪んだギターのリフとタイトなリズムが中心で、初期Pearl Jamのハードな側面を思い出させる。ただし、単なる回帰ではない。サウンドには乾いた緊張感があり、バンド全体が無駄なく曲を押し出している。Eddie Vedderのヴォーカルも、叫びだけではなく、言葉を噛みしめるような切迫感を持つ。

歌詞では、権力、情報、歴史の隠蔽といったテーマが読み取れる。Pearl Jamはここで、個人の感情よりも、アメリカ社会の記憶や政治的な不信感に目を向けている。アルバムの冒頭にこの曲を置くことで、『Yield』が単なる内省的な成熟作ではなく、社会的な苛立ちも含む作品であることが示される。

2. Faithfull

「Faithfull」は、信仰、信頼、忠誠、自己欺瞞といったテーマを扱う楽曲である。タイトルは「忠実な」「信心深い」という意味を持つが、曲の中ではその言葉が単純な肯定ではなく、何を信じるのか、誰に従うのかという問いとして響く。Pearl Jamは、宗教や制度への盲目的な服従を批判的に見つめながら、人間が何かを信じずにはいられない存在であることも同時に描いている。

サウンドは、ミドルテンポの重厚なロックであり、ギターのうねりとリズム隊の安定感が印象的である。曲は派手に爆発するというより、じわじわと熱を帯びていく。Eddie Vedderの歌唱は、怒りを直接的に放出するのではなく、問いを投げかけるように進む。ここには、初期作品の激情とは異なる、成熟した批評性がある。

歌詞において重要なのは、信じることが救いにもなり、危険にもなり得るという二重性である。人は信念を持つことで生きる力を得るが、その信念が固定化されると、他者を排除し、自己を閉じ込めることにもなる。「Faithfull」は、信仰や忠誠の美しさではなく、その曖昧さを描いた曲である。

3. No Way

「No Way」は、アルバムの中でも特に抑制された重さを持つ楽曲である。タイトルは「ありえない」「無理だ」という拒絶を示す言葉であり、歌詞には行き詰まり、距離、諦めの感覚が漂う。Pearl Jamの音楽にはしばしば強い怒りや抵抗があるが、この曲では抵抗する力そのものが削がれているような空気がある。

音楽的には、ギターのリフが反復的に配置され、曲全体に閉塞感を与える。テンポは速くなく、リズムも重心が低い。Eddie Vedderの声は感情を爆発させるのではなく、疲労や諦念を含んでいる。これにより、曲は激しいロックではないにもかかわらず、精神的な重みを持つ。

歌詞では、他者や社会との関係において、もう進めない、これ以上関われないという感覚が示される。これは個人的な人間関係の歌としても、バンドが巨大な音楽産業や社会的期待と向き合う中での疲弊としても読むことができる。『Yield』というアルバム・タイトルが示す「譲る」という姿勢は、必ずしも前向きな受容だけではない。時には、これ以上争わないために距離を取ることでもある。「No Way」はその暗い側面を担う楽曲である。

4. Given to Fly

「Given to Fly」は、『Yield』を代表する楽曲であり、Pearl Jamのキャリア全体の中でも特に重要な一曲である。穏やかなギターのアルペジオから始まり、徐々にスケールを広げ、サビで大きく飛翔する構成は、曲名の通り「飛ぶことを与えられた」人物の物語と強く結びついている。音楽的にも歌詞的にも、解放と超越を象徴する楽曲である。

歌詞は、傷つけられながらも飛び立つ人物を描く寓話的な内容である。この人物は、社会や他者によって痛みを受けるが、それでも憎しみに沈まず、より高い場所へ向かう。そこには、キリスト的な自己犠牲のイメージや、神話的な飛翔のモチーフも感じられる。ただし、Pearl Jamはそれを宗教的な説教としてではなく、人間が苦しみを越えて自由を得ようとする普遍的な物語として描いている。

音楽的には、Led Zeppelin「Going to California」を連想させるようなフォーク・ロック的な始まりを持ちながら、Pearl Jamらしいアリーナ・ロックの広がりへ発展する。Mike McCreadyとStone Gossardのギターは、繊細さと力強さを両立させ、Jack Ironsのドラムは曲に自然な浮遊感を与えている。Eddie Vedderのヴォーカルは、低く語るような部分から、サビで大きく解放される部分まで、曲の物語を身体的に表現している。

「Given to Fly」は、Pearl Jamが怒りだけでなく希望を歌えるバンドであることを示した曲である。90年代ロックがしばしば抱えていた苦悩や不信の中で、この曲は安易な楽観ではない、痛みを経た解放を提示している。

5. Wishlist

「Wishlist」は、本作の中でも最も親しみやすく、静かな美しさを持つ楽曲である。タイトルの通り、歌詞は「自分が何かになれたら」という願いの連なりで構成されている。非常にシンプルな表現でありながら、その中には自己変容、愛、ささやかな幸福、存在の意味への問いが込められている。

音楽的には、ゆったりとしたテンポ、柔らかなギター、控えめなリズムが中心で、Pearl Jamの激しい側面とは対照的である。しかし、この曲の強さは、その控えめさにある。大きなドラマを作るのではなく、日常の中にある小さな願いを並べることで、聴き手に深い余韻を残す。

歌詞では、空になりたい、幸運のお守りになりたい、相手の役に立つものになりたいといった比喩が連なる。ここでの願いは、成功や支配ではなく、誰かや何かとつながることに向かっている。Eddie Vedderの歌唱は非常に抑制されており、感情を押しつけない。そのため、曲は個人的でありながら普遍的な響きを持つ。

「Wishlist」は、『Yield』における受容のテーマを最も穏やかに表現した曲である。自己主張や怒りではなく、別の存在になりたいという願いを通じて、自己と世界の関係を見つめ直している。

6. Pilate

「Pilate」は、Jeff Amentが主導した楽曲であり、アルバムの中でも少し奇妙な構造を持つ。タイトルは、新約聖書に登場するポンティウス・ピラトを想起させるが、曲の中では宗教的な物語が直接語られるわけではない。むしろ、責任、判断、罪、自己認識といったテーマが断片的に浮かび上がる。

音楽的には、ヴァース部分の不思議な浮遊感と、サビの力強い開放感の対比が特徴である。Pearl Jamの楽曲としてはやや異質で、コード進行やメロディの動きに独特の癖がある。これにより、曲全体に不安定な魅力が生まれている。

歌詞には、内面の声や記憶、罪悪感のようなものが入り混じる。Eddie Vedderのヴォーカルは、その不安定な構成の中で感情をつなぎ止める役割を果たす。特にサビでは、曲が一気に開けることで、内面に溜まっていたものが外へ噴き出すような印象を与える。

「Pilate」は、アルバムの中で分かりやすい代表曲ではないが、Pearl Jamが単純なハードロックだけではなく、構造的にひねりのある楽曲も自然に取り込んでいたことを示す。『Yield』の多面性を支える重要な曲である。

7. Do the Evolution

「Do the Evolution」は、『Yield』の中でも最も攻撃的で、皮肉の強い楽曲である。タイトルは「進化をやれ」と訳せるが、ここでの進化は肯定的なものではない。人類が進化していると信じながら、実際には暴力、支配、環境破壊、戦争、搾取を繰り返しているという強烈な風刺が込められている。

音楽的には、鋭いギター・リフと跳ねるようなリズムが特徴で、Pearl Jamのパンク的な側面が前面に出ている。Eddie Vedderのヴォーカルは演劇的で、まるで傲慢な人類そのものを演じているように聞こえる。ここでは彼自身の素直な感情表現というより、風刺的なキャラクターとしての歌唱が重要である。

歌詞では、人類の進歩主義が徹底的に皮肉られる。自分たちが賢く、支配する権利があり、自然や他者を利用して当然だと考える人間の姿が描かれる。これは1990年代末のグローバル資本主義、環境問題、軍事力、科学技術への過信とも響き合う。Pearl Jamはここで、怒りを直接的な抗議ではなく、滑稽で不気味なロック・ソングとして提示している。

「Do the Evolution」は、ミュージック・ビデオも含めて強い印象を残した曲であり、Pearl Jamの社会批評的な側面を代表する楽曲である。アルバム全体の中では、静かな受容や内省に対して、鋭い外向きの批判を担っている。

8. The Color Red

「The Color Red」は、短いインストゥルメンタル的な断片であり、アルバムの中で間奏のような役割を果たす。曲というより、音響的なスケッチに近い。タイトルの「赤」は、血、怒り、危険、生命力、警告など多くのイメージを呼び起こす色である。

音楽的には、パーカッシヴな要素や断片的な音が中心で、アルバムの流れを一度ずらす働きをしている。Pearl Jamは『No Code』以降、こうした小さな音響的断片をアルバムに挿入することがあり、それによって通常のロック・アルバムとは異なる余白や空気を作り出している。

「The Color Red」は、単体で語るべき大きな楽曲ではないが、『Yield』のアルバム構成において重要である。「Do the Evolution」の攻撃性の後に、この短い断片が入ることで、聴き手は一度呼吸を置くことになる。同時に、アルバムが単なる曲の集合ではなく、音の流れとして設計されていることも示している。

9. MFC

「MFC」は、コンパクトで疾走感のあるロック・ナンバーである。タイトルは「Mini Fast Car」の略とされ、車、移動、逃避、自由への欲望がテーマになっている。Pearl Jamの楽曲には、移動や道のイメージがしばしば登場するが、『Yield』全体に道路標識的なモチーフがあることを考えると、この曲はアルバムのコンセプトとも深く結びついている。

音楽的には、短く引き締まった構成で、ギターとリズムが軽快に前へ進む。重苦しいハードロックというより、風を切るようなロックンロールである。Jack Ironsのドラムは、曲に跳ねるような推進力を与え、バンド全体が一体となって走る感覚を生む。

歌詞では、現実から抜け出し、どこかへ向かう感覚が描かれる。車は単なる乗り物ではなく、自由や選択の象徴である。しかし、その自由は完全な解放ではなく、一時的な逃避でもある。Pearl Jamはここで、移動することの快感と、その背後にある不安を同時に描いている。

「MFC」は、アルバム後半に軽快なエネルギーを与える曲であり、『Yield』が重いテーマを扱いながらも、ロック・バンドとしての瞬発力を失っていないことを示している。

10. Low Light

「Low Light」は、Jeff Amentによる楽曲であり、『Yield』の中でも最も静謐で美しい曲のひとつである。タイトルは「薄明かり」「弱い光」を意味し、歌詞にも夜、道、光、内省のイメージが広がる。Pearl Jamのフォーク・ロック的な側面がよく表れた楽曲であり、アルバムの精神的な深みを担っている。

音楽的には、アコースティックな質感が中心で、派手な展開はない。ギターの柔らかな響き、控えめなリズム、温かみのあるベースが、静かな空間を作る。Eddie Vedderのヴォーカルも抑制されており、曲全体が夜明け前のような曖昧な時間を漂う。

歌詞では、完全な暗闇ではなく、かすかな光の中で自分の位置を確認するような感覚が描かれる。これは『Yield』のテーマと深く関係している。バンドはここで、明確な答えや勝利を提示するのではなく、不確かな状況の中で、それでもわずかな光を見つけようとしている。

「Low Light」は、Pearl Jamが大音量のロックだけでなく、静かな情景描写にも優れていることを示す曲である。日本のリスナーにとっても、メロディの穏やかさと歌詞の余白が響きやすい楽曲である。

11. In Hiding

「In Hiding」は、『Yield』の中でも特に内省的で、アルバムのテーマを象徴する楽曲である。タイトルは「隠れている」という意味であり、歌詞では外の世界から距離を置き、自分自身を見つめ直す人物が描かれる。Pearl Jam自身が1990年代半ばにメディアや産業から距離を取り、自分たちのあり方を再構築していたことを考えると、この曲はバンドの状況とも強く重なる。

音楽的には、ミドルテンポの大きなロック・ソングであり、静かな始まりから徐々に広がっていく構成が印象的である。ギターは力強いが、攻撃的というより、内側から膨らんでいくような響きを持つ。Eddie Vedderのヴォーカルは、孤立から解放へ向かう感情の変化を丁寧に表現している。

歌詞では、隠れることが単なる逃避ではなく、自己回復のための時間として描かれる。外部の騒音から離れ、自分の内側に潜ることで、再び世界に向き合う力を得る。このテーマは、Pearl Jamがロックスターとして消費されることを拒み、バンドとしての健全さを保とうとした姿勢ともつながる。

「In Hiding」は、『Yield』の精神的な中心のひとつである。怒りや拒絶ではなく、距離を置くことで自分を守り、そこから再び立ち上がるという成熟した視点がある。

12. Push Me, Pull Me

「Push Me, Pull Me」は、本作の中でも最も実験的な楽曲である。タイトルは「押して、引いて」という意味で、相反する力に引き裂かれる感覚を示している。曲は通常のロック・ソングというより、朗読的なヴォーカル、断片的なリズム、歪んだ音響が組み合わされたコラージュに近い。

音楽的には、Pearl Jamが『No Code』で試みた実験的な方向性の名残を感じさせる。ギターやベースは明確なリフを提示するというより、音の断片として配置される。Eddie Vedderの声も、メロディを歌うのではなく、言葉を投げ出すように扱われる。これにより、曲全体に不安定で神経質な空気が生まれている。

歌詞では、存在、身体、自己、世界との関係が断片的に語られる。押され、引かれ、形を変えられる人間の感覚が、曲の構造そのものに反映されている。これは『Yield』の中で最も抽象的な表現であり、アルバムの終盤に異物感を与える役割を持つ。

「Push Me, Pull Me」は、万人向けの曲ではない。しかし、この曲があることで、『Yield』は単なる安定したロック・アルバムではなく、Pearl Jamの実験精神を保った作品になっている。

13. All Those Yesterdays

ラスト曲「All Those Yesterdays」は、アルバムを静かに締めくくる楽曲である。タイトルは「それらすべての昨日」という意味で、過去、記憶、疲労、休息、和解がテーマになっている。『Yield』全体が、抵抗と受容、逃避と帰還、怒りと成熟の間を行き来する作品であることを考えると、この曲は非常にふさわしい締めくくりである。

音楽的には、穏やかなテンポと柔らかなメロディが中心で、派手なクライマックスではなく、静かな余韻を残す。Eddie Vedderの歌唱には、疲れを認めるような優しさがある。若さゆえの怒りや焦燥ではなく、過去を背負いながら先へ進む人物の声として響く。

歌詞では、過去にとらわれすぎず、休むこと、手放すこと、眠ることの大切さが示される。これは『Yield』というタイトルの意味ともつながる。人生のすべてを力で制御しようとするのではなく、時には流れに身を任せ、過去を過去として受け入れる。その姿勢が、アルバム全体の結論として提示される。

曲の最後には隠しトラック的な要素もあり、Pearl Jamらしい少し不思議な余韻が残る。完全に整理された終わりではなく、まだ何かが続いているような感触がある点も、このアルバムらしい。

総評

『Yield』は、Pearl Jamが1990年代ロックの激しい流れの中で、自分たちの音楽的・精神的な重心を取り戻したアルバムである。デビュー作『Ten』のような劇的な登場感、『Vs.』の荒々しい怒り、『Vitalogy』の混沌、『No Code』の実験性を経て、本作ではそれらの要素がより自然なロック・アルバムとして再編成されている。バンドは過去の自分たちに戻ったわけではない。むしろ、過去を通過した上で、もう一度ギター・ロックの力を信じ直している。

本作の魅力は、バンドとしての一体感にある。Pearl JamはEddie Vedderの強烈な存在感によって語られることが多いが、『Yield』ではメンバー全員の貢献が非常に重要である。Stone GossardとMike McCreadyのギターは、ハードロックの重さとフォーク・ロックの広がりを行き来し、Jeff Amentのベースは楽曲に深い重心を与え、Jack Ironsのドラムは独特の揺れと余白を生む。これにより、本作は単なるヴォーカル中心のアルバムではなく、バンド全体の呼吸が聞こえる作品になっている。

歌詞の面では、『Yield』は成熟と受容のアルバムである。しかし、それは単に穏やかになったという意味ではない。「Brain of J.」や「Do the Evolution」では社会への鋭い批判があり、「No Way」や「In Hiding」では孤立や疲労が描かれる。「Given to Fly」や「Wishlist」では、痛みを越えた解放や、ささやかな願いが歌われる。「All Those Yesterdays」では、過去と和解し、休むことの意味が提示される。怒り、逃避、願い、批判、受容が、アルバム全体の中で有機的につながっている。

『Yield』というタイトルは、Pearl Jamのキャリアにおいて非常に象徴的である。彼らは1990年代前半、ロック・シーンの中心に突然押し上げられ、その巨大な期待や産業構造と激しく対立した。だが本作では、ただ抗うだけではなく、何を受け入れ、何を手放し、何を守るのかを見極めようとしている。これは、ロック・バンドが若さの怒りを失った後にどう生きるかという問いでもある。Pearl Jamはその問いに対して、誠実で、力強く、無理のない答えを出している。

音楽史的に見ると、『Yield』はグランジ以後のPearl Jamを理解するうえで欠かせない作品である。Nirvanaの終焉、Soundgardenの一時解散、Alice in Chainsの活動停滞などによって、1990年代半ば以降のグランジはひとつの時代の終わりを迎えていた。その中でPearl Jamは、グランジという枠に閉じ込められるのではなく、より長く続くアメリカン・ロック・バンドとしての道を選んだ。『Yield』は、その選択が音として結実したアルバムである。

日本のリスナーにとって本作は、Pearl Jamの代表作として語られる『Ten』だけでは見えにくい、バンドの成熟した魅力を知るために適した作品である。「Given to Fly」「Wishlist」「In Hiding」「Low Light」などは、激しいロックに抵抗があるリスナーにも届きやすい一方、「Brain of J.」「Do the Evolution」「MFC」にはバンド本来の鋭さがある。ハードさと叙情性、社会批評と個人的内省がバランスよく配置されているため、アルバムとしての完成度が高い。

『Yield』は、Pearl Jamの最も派手なアルバムではない。しかし、バンドが一時代の象徴から、持続するロック・バンドへと変わっていく過程を捉えた重要作である。若さの爆発だけではなく、時間を重ねたからこそ得られる強さがある。抵抗するだけでなく、時に譲り、受け入れ、そこから再び前へ進む。その姿勢こそが、本作の核心である。

おすすめアルバム

1. Pearl Jam『No Code』

1996年発表の前作であり、『Yield』の背景を理解するうえで重要な作品である。実験的な構成、フォークやワールド・ミュージック的な要素、断片的なサウンドが特徴で、Pearl Jamが初期の成功から距離を取り、自分たちの音楽的自由を探ったアルバムである。『Yield』はこの実験性をよりバンド・サウンドへ統合した作品として聴くことができる。

2. Pearl Jam『Vs.』

1993年発表の2作目。デビュー作『Ten』の成功を受けながら、より荒々しく、直接的で、怒りに満ちたロック・アルバムとして作られた。『Yield』の成熟したサウンドと比較すると、Pearl Jamがどのように若い怒りから広い表現へ進んだかが分かる。バンドの初期衝動を知るうえで欠かせない作品である。

3. Pearl Jam『Binaural』

2000年発表の次作であり、『Yield』後のPearl Jamがさらに内省的で音響的な方向へ進んだ作品である。タイトル通り録音方法にも特徴があり、空間的なサウンドと暗めのムードが印象的である。『Yield』の成熟したロック路線が、より陰影の濃い形へ発展した作品として関連性が高い。

4. Neil Young『Ragged Glory』

1990年発表のアルバムで、Pearl Jamにも大きな影響を与えたNeil Youngのラフで骨太なギター・ロック作品である。長尺のギター、荒々しい演奏、アメリカン・ロックの深い土臭さがあり、『Yield』におけるPearl Jamのクラシック・ロック志向や有機的なバンド感を理解するうえで参考になる。

5. Soundgarden『Superunknown』

1994年発表のアルバムで、シアトル・ロック/グランジの到達点のひとつである。Pearl Jamとは異なり、よりヘヴィでサイケデリック、かつ複雑なリフ構造を持つが、1990年代オルタナティヴ・ロックが単なる若者文化ではなく、重厚なアルバム表現へ発展したことを示す作品である。『Yield』と並べて聴くことで、同時代のシアトル勢がそれぞれ異なる成熟を遂げたことが分かる。

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