
発売日:1977年3月17日
ジャンル:プログレッシヴ・ロック、シンフォニック・ロック、クラシカル・ロック、アート・ロック、ジャズ・ロック
概要
Emerson, Lake & Palmerの『Works Volume 1』は、1977年に発表された二枚組アルバムであり、ELPのキャリアの中でも最も野心的で、同時に最も評価が分かれやすい作品のひとつである。1970年代前半のELPは、『Emerson, Lake & Palmer』『Tarkus』『Trilogy』『Brain Salad Surgery』によって、クラシック音楽、ジャズ、ロック、電子楽器、劇的なステージ演出を融合したプログレッシヴ・ロックの代表格となった。Keith Emersonの技巧的で攻撃的なキーボード、Greg Lakeの叙情的なヴォーカルとアコースティックな歌心、Carl Palmerの精密かつパワフルなドラミングは、トリオ編成とは思えない巨大な音楽世界を築いていた。
しかし『Works Volume 1』は、それまでのELPの作品とは構造が大きく異なる。本作は二枚組で、各メンバーがLP片面ずつを担当し、最後の一面でバンドとして再合流するという構成を取っている。第1面はKeith Emersonによるピアノ協奏曲「Piano Concerto No. 1」、第2面はGreg Lakeによるヴォーカル曲集、第3面はCarl Palmerによる器楽曲集、そして第4面にELPとしての楽曲が収録されている。つまり本作は、バンドのアルバムでありながら、同時に3人のソロ作品集でもある。
この構成は、非常にELPらしい大胆さを持っている。1970年代プログレッシヴ・ロックの大きな特徴のひとつは、ロック・バンドがアルバムという形式を使って、クラシック音楽や現代音楽に匹敵する大きな作品を作ろうとした点にある。ELPはその中でも特に、クラシックへの接近を正面から行ったバンドだった。『Works Volume 1』では、Keith Emersonがついに本格的な協奏曲形式へ踏み込み、ロック・キーボード奏者という枠を超えた作曲家としての自己を提示している。
一方で、このアルバムは、ELPというバンドの内部にあった個性の違いをあまりにも明確に見せる作品でもある。Emersonはクラシックと現代音楽へ向かい、Lakeは美しいバラードやポップ・ソングへ向かい、Palmerはジャズ、クラシック、ロックの器楽的な技巧へ向かう。3人の才能はそれぞれ大きいが、それらが常に一つのバンド・サウンドとして統合されているわけではない。『Works Volume 1』は、ELPの力を示すと同時に、その分裂の兆候も示している。
1977年という時代も重要である。この年、英国ではパンク・ロックが大きな文化的勢力となり、Sex PistolsやThe Clashが、プログレッシヴ・ロックの巨大さや技巧主義、大仰なステージ演出を批判する存在として登場していた。ELPのようなバンドは、まさにパンクが攻撃する対象になりやすかった。そんな時期に、二枚組、オーケストラ、協奏曲、長尺作品を含む『Works Volume 1』を発表することは、時代の流れに逆らうような行為でもあった。
ただし、本作を単に「時代遅れの過剰なプログレ」と見るだけでは不十分である。たしかに、1977年のロックの空気から見ると、本作はあまりに豪華で、あまりに自己主張が強く、あまりに巨大である。しかし、ここにはELPというバンドが目指していたものの到達点もある。ロック・ミュージシャンがクラシックの形式に挑むこと、ポップ・ソングをオーケストラ的な情感で包むこと、ドラムを中心に器楽的な構成を組むこと、そしてバンドとしてアーロン・コープランドの「Fanfare for the Common Man」を巨大なロックへ変換すること。これらはすべて、ELPでなければ成立しにくい試みである。
『Works Volume 1』は、完璧に統一された名盤ではない。むしろ、統一されていないことが本作の本質である。三人の才能がそれぞれ別方向へ向かい、それが最後に一応の形でバンドへ戻ってくる。そこには、壮大さ、虚栄、技術、叙情、自己主張、そして時代との摩擦がある。ELPの栄光と問題点が同時に刻まれた、非常に重要な作品である。
全曲レビュー
1. Piano Concerto No. 1: First Movement: Allegro gioioso
アルバムの冒頭を飾るのは、Keith Emersonによる「Piano Concerto No. 1」の第1楽章である。ロック・アルバムの冒頭に、バンド演奏ではなく本格的なピアノ協奏曲を置くという時点で、『Works Volume 1』の異例さは明らかである。Emersonはここで、ロック・キーボード奏者としての派手な即興ではなく、クラシック作曲家としての自分を提示しようとしている。
第1楽章は「Allegro gioioso」、すなわち喜ばしく快活なテンポを示す。オーケストラとピアノの関係は、ロマン派以降の協奏曲の伝統を意識しており、Emersonのピアノは技巧的に動き回る。和声やリズムには、クラシックだけでなく、20世紀音楽やジャズ的な影響も感じられる。ELPの音楽でおなじみのロック的な激しさはここでは直接的には少ないが、音楽の劇的な推進力にはEmersonらしさがある。
この曲をロック・アルバムの一部として聴くと、違和感を覚えるリスナーもいるだろう。しかし、Emersonにとってクラシック音楽は単なる引用元ではなく、自分の音楽的アイデンティティの中心だった。彼はムソルグスキー、バルトーク、ヤナーチェク、コープランドなどをロックの中へ持ち込んできたが、ここではその借用を越え、自分自身の協奏曲を書いている。第1楽章は、その野心の宣言である。
2. Piano Concerto No. 1: Second Movement: Andante molto cantabile
第2楽章「Andante molto cantabile」は、第1楽章の技巧的で快活な性格から一転し、より叙情的で歌うような楽章である。「cantabile」という指定が示す通り、ここではピアノの旋律性が重視される。Emersonは、攻撃的なキーボード奏者として知られる一方で、非常に美しいメロディを書く能力も持っていた。この楽章では、その側面が前に出ている。
オーケストラの響きは穏やかで、ピアノは過度に暴れず、旋律を丁寧に展開する。ELPの楽曲で言えば、「Take a Pebble」や「The Endless Enigma」に見られる叙情的なEmersonの性格が、クラシック形式へ移されたようにも聴こえる。ロック的なリズムの刺激は少ないが、音楽としては内省的な美しさを持つ。
この楽章の重要性は、Emersonが単に速く弾く技巧派ではなかったことを示す点にある。彼のピアノには、強烈なリズム感だけでなく、繊細なタッチと歌心がある。第2楽章は、ELPの大仰なイメージの陰に隠れがちなEmersonの抒情性を確認できる部分である。
3. Piano Concerto No. 1: Third Movement: Toccata con fuoco
第3楽章「Toccata con fuoco」は、協奏曲の終楽章らしく、非常に技巧的で火のようなエネルギーを持つ。タイトルに含まれる「Toccata」は、鍵盤楽器の技巧を示す形式であり、「con fuoco」は情熱的に、火をもって、という意味である。まさにKeith Emersonの演奏家としての個性にふさわしい指定である。
この楽章では、ピアノとオーケストラが鋭くぶつかり合い、音楽はダイナミックに展開する。リズムの切れ味、急速なパッセージ、劇的な和声進行は、Emersonのロック的な攻撃性とクラシック的な構築性を結びつけている。ELPの「Toccata」で見せたような打楽器的な鍵盤感覚も、ここではよりクラシックの文脈で表れている。
ただし、この協奏曲全体については、クラシック音楽として聴くか、ロック・ミュージシャンによるクラシックへの挑戦として聴くかによって評価が変わる。厳密なクラシック作品としては議論の余地があるが、1970年代ロックにおいて、この規模の協奏曲をアルバムの一面に置いた大胆さは特筆すべきである。第3楽章は、その野心を最も劇的に締めくくる部分である。
4. Lend Your Love to Me Tonight
第2面はGreg Lakeの担当であり、その幕開けとなる「Lend Your Love to Me Tonight」は、彼の叙情的なソングライターとしての魅力を示すバラードである。ELPにおけるLakeは、Emersonの技巧とPalmerのリズムの中で、歌とメロディの中心を担ってきた人物である。この曲では、その役割が明確に前面に出る。
サウンドはオーケストラを含む豪華なアレンジで、ロック・バンドの曲というより、クラシカルなポップ・バラードに近い。Lakeの声は温かく、やや哀愁を帯びており、曲にロマンティックな空気を与える。彼の歌唱は、Emersonの派手なキーボードとは対照的に、人間的で柔らかい。
歌詞では、今夜だけでも愛を貸してほしい、という切実な願いが歌われる。永遠の愛ではなく、一夜の慰めや一時的な救いを求めるようなニュアンスがある。Greg Lakeのバラードはしばしば美しいが、その美しさの奥に孤独や寂しさを含む。この曲も、その特徴をよく示している。
5. C’est La Vie
「C’est La Vie」は、Greg Lake面の中でも特に有名な楽曲であり、ELPのバラード系楽曲としても重要な一曲である。フランス語で「それが人生だ」を意味するタイトルは、諦め、受容、少しの皮肉を含んでいる。Lakeの甘く哀愁のある声に非常によく合うテーマである。
アコースティック・ギター、アコーディオン風の響き、オーケストラ的な広がりが組み合わされ、曲にはヨーロッパ的なシャンソン風の雰囲気もある。ELPの作品の中では、ハードなプログレッシヴ・ロックというより、洗練されたポップ・バラードとして聴ける。Lakeのメロディメイカーとしての強みがよく表れている。
歌詞では、愛や人生の不確かさを受け入れる姿勢が描かれる。「それが人生だ」という言葉には、悲しみを完全に解決するのではなく、静かに飲み込む感覚がある。Greg Lakeの歌には、このような成熟した諦念が似合う。「C’est La Vie」は、本作の中でも最も普遍的な魅力を持つ楽曲のひとつである。
6. Hallowed Be Thy Name
「Hallowed Be Thy Name」は、Greg Lake面の中では比較的明るく、風刺的な色合いを持つ楽曲である。タイトルは主の祈りの一節を思わせる宗教的な言葉だが、曲の雰囲気には皮肉や社会的な視線が感じられる。Lakeは美しいバラードだけでなく、時に英国的なユーモアや批評性を持つ曲を書くこともあった。
サウンドは軽快で、前曲「C’est La Vie」のしっとりした雰囲気から変化をつけている。メロディは親しみやすく、曲は過度に重くならない。しかし、歌詞の宗教的な言葉遣いには、単純な敬虔さではなく、社会や権威への距離がある。
歌詞では、宗教的な表現が日常的、あるいは皮肉な文脈で使われる。ELPはしばしば大仰な神話的世界を扱ったが、この曲ではGreg Lakeのより地上的で、少し斜めから見る感覚が出ている。「Hallowed Be Thy Name」は、Lake面に軽さと風刺を加える楽曲である。
7. Nobody Loves You Like I Do
「Nobody Loves You Like I Do」は、Greg Lakeらしいロマンティックなバラードである。タイトルは「私ほど君を愛する者はいない」という非常に直接的な愛の表現であり、Lakeの声の温かさと相性がよい。ELPの中で、こうした素直なラヴ・ソングを担うのはやはりLakeだった。
サウンドは穏やかで、オーケストレーションも歌を引き立てる方向に使われている。Emersonのパートのような技巧的な緊張はなく、ここでは歌のメロディと感情の流れが中心である。Lakeの声には、甘さだけでなく、少しの孤独が含まれているため、曲は過度に甘ったるくならない。
歌詞では、相手への深い愛情が歌われる。ただし、タイトルの言葉には、愛の強さだけでなく、相手を失う不安もにじむ。自分ほど相手を愛する者はいない、と言う時、その裏には相手が離れていく可能性への恐れがある。「Nobody Loves You Like I Do」は、Greg Lakeの叙情的な表現を素直に味わえる楽曲である。
8. Closer to Believing
「Closer to Believing」は、Greg Lake面の締めくくりであり、彼の楽曲の中でも特に壮大なバラードである。タイトルは「信じることに近づく」という意味を持ち、愛、希望、精神的な救いへの願いが込められている。Lakeのバラード作家としての資質が最も大きなスケールで発揮された曲のひとつである。
サウンドはオーケストラを大きく使い、非常にドラマティックである。歌は静かに始まり、徐々にスケールを増していく。Lakeのヴォーカルは誠実で、聴き手に直接語りかけるように響く。ELPの中で、彼が感情的な中心を担っていた理由がよく分かる。
歌詞では、完全な信念や救いにはまだ届いていないが、そこへ少しずつ近づいているという感覚が描かれる。これは恋愛の歌であると同時に、人生全体に対する祈りのようにも響く。「Closer to Believing」は、Greg Lake面を感動的に締めくくる楽曲であり、本作の中でも最も叙情的な瞬間のひとつである。
9. The Enemy God Dances with the Black Spirits
第3面はCarl Palmerの担当であり、その冒頭を飾る「The Enemy God Dances with the Black Spirits」は、セルゲイ・プロコフィエフの作品を基にした器楽曲である。PalmerはELPにおいて、クラシックとジャズを吸収した高度なドラマーとして知られており、この面では彼の器楽的・技巧的な側面が強く表れる。
この曲では、打楽器の鋭さとオーケストラ的な緊張が強く印象に残る。タイトルが示すように、音楽には悪魔的、呪術的な舞踏の雰囲気がある。Palmerのドラムは単なるリズムの支えではなく、曲の劇的な力を生む中心にある。クラシックの題材をロック的なエネルギーへ変換するELPらしいアプローチが、Palmerの視点から行われている。
Keith Emersonのクラシック志向とは異なり、Palmerの場合はよりリズムと身体性が中心になる。クラシックを知的な構築物として扱うだけでなく、激しい打楽器的な衝動として鳴らす。「The Enemy God Dances with the Black Spirits」は、Carl Palmerの技巧と攻撃性をよく示す楽曲である。
10. L.A. Nights
「L.A. Nights」は、Carl Palmer面の中でも特にジャズ・ロック/フュージョン的な性格が強い楽曲である。タイトルが示すように、ロサンゼルスの夜、都会的な明るさ、スタジオ・ミュージシャン的な洗練を感じさせる曲である。ELPの重厚な英国プログレとは異なる、軽快で都会的な表情がある。
サウンドはブラスやジャズ的なアレンジが印象的で、Palmerのドラムもスウィング感やフュージョン的な切れ味を持つ。彼は単にパワフルなロック・ドラマーではなく、ジャズ的な語彙を持つ演奏家であることがよく分かる。曲全体には、1970年代後半のフュージョン的な空気も漂う。
「L.A. Nights」は、ELP本体のイメージからは少し離れているが、Carl Palmerの音楽的関心を知るうえで重要である。技巧的でありながら、重苦しくならず、都会的な軽さを持つ。この曲は、Palmer面における最も聴きやすいハイライトのひとつである。
11. New Orleans
「New Orleans」は、タイトル通りニューオーリンズの音楽文化を意識した楽曲である。Carl Palmerの面は、クラシック、ジャズ、ロック、都市音楽への関心が入り混じっており、この曲ではニューオーリンズ的なリズムや祝祭感がテーマになっている。
サウンドは軽快で、ブラスやリズムの使い方に南部的な雰囲気がある。Palmerのドラムは、ここでも単に拍を刻むだけでなく、曲全体の躍動感を作っている。ELPの壮大なイメージとは異なり、より地上的で、リズムの楽しさを前面に出した曲である。
ニューオーリンズは、ジャズ、R&B、ファンク、ブラスバンド、カーニヴァル文化が交差する音楽都市である。Palmerはこの曲で、そのリズム的な豊かさを自分なりに取り込んでいる。「New Orleans」は、Carl Palmerが持つアメリカ音楽への関心を示す楽曲である。
12. Two Part Invention in D Minor
「Two Part Invention in D Minor」は、バッハのインヴェンションを基にした短い器楽曲である。ELPは初期からクラシック音楽をロックへ取り込んできたが、ここではCarl Palmerの面において、バッハ的な構造が扱われている。短い曲ながら、クラシックの対位法とロック的な演奏感覚の接点を示している。
サウンドはコンパクトで、技巧的である。バッハの曲が持つ明快な構造と、Palmerのリズム的な鋭さが組み合わされることで、知的な小品として機能する。大きな感情を表現する曲ではないが、アルバムの中で器楽的な多様性を示す役割を持つ。
この曲は、ELPというバンドがクラシックを単なる装飾ではなく、演奏技術と構造の素材として扱っていたことを再確認させる。短いながら、プログレッシヴ・ロックのクラシック志向を象徴する一曲である。
13. Food for Your Soul
「Food for Your Soul」は、タイトルからしてソウル、栄養、音楽による精神的な満足を連想させる楽曲である。Carl Palmer面の中では、比較的グルーヴ重視の曲として機能している。技巧だけでなく、音楽の身体的な楽しさを意識した曲である。
サウンドにはファンクやジャズ・ロック的な感触があり、Palmerのドラムは非常にしなやかに動く。ELPの中で彼がしばしば見せた精密なドラミングは、ここではよりリズムの快楽へ向けられている。曲は短く、アルバム全体の流れの中で軽いアクセントになる。
タイトルが示すように、音楽は魂の食べ物であるという考えが背景にある。これは、Greg Lakeの叙情的な精神性とも、Emersonのクラシック的な構築とも異なる、Palmerの身体的な音楽観を示している。「Food for Your Soul」は、Carl Palmerのリズムへの愛情を感じさせる楽曲である。
14. Tank
「Tank」は、ELP初期から知られるCarl Palmerの代表的な器楽曲であり、本作では再録または新たな形で収録されている。ドラム・ソロを中心にした楽曲として、Palmerの技巧とパワーを示す象徴的な存在である。もともとELPのデビュー作にも収録されていた曲であり、ここに置かれることで彼のキャリアを振り返る意味も持つ。
サウンドは力強く、リズムの複雑さとロック的な重量感がある。Palmerのドラムは、速さ、正確さ、ダイナミクスの幅を示し、単なる見せ場を超えて楽曲の中心になる。彼はドラムを伴奏楽器ではなく、主役として扱うドラマーである。
「Tank」は、ELPの中でPalmerが果たしてきた役割を凝縮している。EmersonのキーボードとLakeの歌が注目されがちな中で、Palmerのドラムはバンドの巨大な音楽を支えるエンジンであり、時にそれ自体が前面に出る表現だった。この曲は、その事実を強く示す。
15. Fanfare for the Common Man
第4面で、ついにELPとしてのバンド演奏が本格的に戻ってくる。その冒頭を飾る「Fanfare for the Common Man」は、アーロン・コープランドの同名曲を基にしたもので、本作全体の中でも最も有名な楽曲である。ELPはクラシックや現代音楽の作品をロックへ変換することに長けていたが、この曲はその成功例のひとつである。
原曲は、庶民のためのファンファーレとして、シンプルで力強い管楽器の響きを持つ作品である。ELPはこれをシンセサイザー、ベース、ドラムによって巨大なロック・グルーヴへ変換している。Keith Emersonのシンセサイザーは壮大で、Greg Lakeのベースは重く、Carl Palmerのドラムは力強く反復を支える。トリオ編成でありながら、非常に大きな音楽的スケールが生まれている。
この曲の魅力は、原曲の荘厳さを失わず、ロックの身体性を加えている点にある。ファンファーレの簡潔なテーマが、ELPの演奏によって反復され、拡張され、ほとんど儀式的な高揚へ変わる。『Works Volume 1』の中で、個人面の分裂を経た後に、三人が再び一つのバンドとして鳴る瞬間であり、非常に強い説得力を持つ。
16. Pirates
アルバムの最後を飾る「Pirates」は、ELPによる大規模な楽曲であり、本作の終曲として非常に象徴的である。海賊をテーマにしたシネマティックな作品で、オーケストラとロック・バンドが大きく結びついている。ELPのドラマ性、演劇性、クラシック志向、ロックの力が一つに集約されたような楽曲である。
曲は長く、物語的に展開する。Emersonのキーボードとオーケストラは、海、冒険、戦い、航海のイメージを作り出し、Lakeのヴォーカルは語り部のように物語を運ぶ。Palmerのドラムは、曲の場面転換や高揚を支える。これは単なるロック・ソングではなく、ほとんど音楽劇や映画音楽に近い構成を持つ。
歌詞では、海賊たちの物語が描かれ、自由、暴力、冒険、運命のイメージが交錯する。ELPはここで、ロック・バンドとしての自分たちを、巨大な物語の演奏者として提示している。1977年の時点でこのような大作を発表することは、パンクの時代感覚とは完全に逆行している。しかし、それこそがELPの本質でもある。
「Pirates」は、過剰で、劇的で、時に映画的すぎる。しかし、その過剰さがELPらしい。彼らは小さくまとまるバンドではなかった。大きすぎる構想を、時に無理をしながらも実現しようとするバンドだった。「Pirates」は、『Works Volume 1』の終曲として、ELPの美点と問題点を同時に示す大作である。
総評
『Works Volume 1』は、Emerson, Lake & Palmerのディスコグラフィの中でも、最も野心的で、最も分裂的なアルバムである。各メンバーが一面ずつを担当し、最後にバンドとして再集合するという構成は、非常に大胆であると同時に、ELPというバンドの内部にあった個性の違いを露わにしている。統一感という点では、『Tarkus』や『Brain Salad Surgery』に劣る。しかし、3人それぞれの音楽的関心をここまで明確に提示した作品は他にない。
Keith Emersonの面は、彼のクラシック作曲家としての野心を示している。ロック・アルバムの中で本格的なピアノ協奏曲を提示することは、今聴いても非常に大胆である。もちろん、クラシック音楽としての完成度については評価が分かれるだろう。しかし、ロック・ミュージシャンがこの規模で形式に挑んだ事実は、1970年代プログレッシヴ・ロックの精神を象徴している。
Greg Lakeの面は、アルバムの中で最も歌心に満ちている。彼のバラードは美しく、特に「C’est La Vie」と「Closer to Believing」は、本作の中でも広く受け入れられやすい楽曲である。Lakeの音楽は、Emersonの技巧やPalmerのリズムとは異なり、聴き手の感情へ直接届く。ELPが単なる技巧派バンドに終わらなかった理由は、彼の存在にある。
Carl Palmerの面は、器楽的な多様性とドラマーとしての野心を示している。クラシック、ジャズ、フュージョン、ニューオーリンズ的なリズム、ドラム・ソロが並び、彼が単なるロック・ドラマーではなく、幅広い音楽的背景を持つ演奏家であることが分かる。ただし、アルバム全体の流れの中では、最も断片的に感じられる面でもある。
第4面の「Fanfare for the Common Man」と「Pirates」は、ELPとしての再統合を示す部分である。特に「Fanfare for the Common Man」は、本作の中で最も成功したバンド演奏と言える。コープランドの原曲をロックの巨大なグルーヴへ変換したこの曲は、ELPの強みを非常に分かりやすく示している。一方、「Pirates」は、ELPの大作志向を極限まで押し出した曲であり、聴き手によって評価が分かれるだろう。
本作の問題点は、アルバムとしての統一感の弱さである。各メンバーの個性が強く出ている分、全体を一つの作品として聴くと、かなり分裂している。これは意図された構成でもあるが、ELPというバンドの化学反応を期待するリスナーにとっては、物足りなさにもつながる。三人が一緒に演奏した時の緊張感や爆発力は、第4面に至るまで抑えられている。
しかし、この分裂こそが『Works Volume 1』の歴史的な面白さでもある。バンドが巨大な成功を収めた後、それぞれのメンバーが自分の音楽的願望をどこまで押し出せるのか。その実験がこのアルバムである。成功作であると同時に、過剰な自意識の記録でもある。ELPというバンドが持っていた可能性と限界が、非常に分かりやすく刻まれている。
1977年という時代を考えると、本作はあまりにも巨大で、あまりにも豪華で、あまりにもプログレッシヴ・ロック的である。パンクがシンプルさと怒りを掲げていた時代に、ELPは二枚組、協奏曲、オーケストラ、長尺大作を発表した。これは時代錯誤に見える一方で、ELPが最後まで自分たちの美学を貫いた証でもある。
日本のリスナーにとって本作は、ELPの入門盤としてはやや難しい。最初に聴くなら『Tarkus』『Trilogy』『Brain Salad Surgery』の方が、バンドとしての魅力をつかみやすい。しかし、ELPというグループの内部構造、3人の個性、1970年代プログレッシヴ・ロックの野心と過剰さを深く理解するには、『Works Volume 1』は避けて通れない作品である。
『Works Volume 1』は、完璧にまとまったアルバムではない。だが、ELPの壮大な夢、個々の才能、クラシックへの憧れ、ポップな叙情、器楽的技巧、そして時代との摩擦が詰め込まれている。過剰で、豪華で、不均一で、だからこそ興味深い。プログレッシヴ・ロックというジャンルの栄光と矛盾を、一枚のアルバムの中でここまで露骨に示した作品は少ない。
おすすめアルバム
1. Brain Salad Surgery by Emerson, Lake & Palmer
1973年発表の代表作。ELPの技巧、壮大さ、電子楽器、組曲的構成が最も高い密度で結びついた作品である。「Karn Evil 9」を収録し、バンドとしての三位一体感も強い。『Works Volume 1』の前に、ELPの完成形を知るために重要な一枚である。
2. Trilogy by Emerson, Lake & Palmer
1972年発表のアルバム。クラシック的な構築、Greg Lakeの叙情的な歌、バンドとしてのバランスが非常によくまとまっている。『Works Volume 1』ほど分裂しておらず、ELPの洗練された面を理解するうえで最適な作品である。
3. Tarkus by Emerson, Lake & Palmer
1971年発表のアルバム。タイトル組曲はELPの野心を象徴する代表作であり、変拍子、重厚なキーボード、劇的な構成が強く表れている。『Works Volume 1』の大作志向の原点を知るために欠かせない作品である。
4. Journey to the Centre of the Earth by Rick Wakeman
1974年発表のライヴ・アルバム。Yesのキーボード奏者Rick Wakemanによる、オーケストラとロックを組み合わせた大規模なコンセプト作品である。『Works Volume 1』のクラシック志向や過剰なプログレ美学と比較するうえで非常に関連性が高い。
5. The Six Wives of Henry VIII by Rick Wakeman
1973年発表のソロ・アルバム。クラシック、ロック、キーボード技巧、歴史的テーマを融合した作品であり、Keith Emersonのソロ的志向と比較しやすい。プログレッシヴ・ロックにおけるキーボード奏者の作曲家的野心を理解するために重要な一枚である。

コメント