発売日: 2015年5月4日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、インディーロック
Mumford & Sonsの3作目となる『Wilder Mind』は、それまでのバンドの音楽性を一新した挑戦的なアルバムだ。バンジョーやアコースティックギターを主体としたフォークロックから離れ、エレクトリックギターやシンセサイザーを大胆に取り入れたサウンドは、U2やThe National、Coldplayを思わせるスタジアムロックやインディーロックの要素が色濃く表れている。
アルバムのテーマは、愛、喪失、そして孤独感を中心に展開され、バンドの新しい音楽的アプローチとともに、より内省的でメランコリックなトーンが印象的。プロデューサーにはJames Ford(Arctic MonkeysやFlorence + The Machineを手がけた)が起用され、モダンで洗練されたサウンドを実現している。
以下、各トラックの詳細を解説する。
1. Tompkins Square Park
アルバムのオープニングを飾るメランコリックなトラックで、エレクトリックギターとシンプルなビートが特徴。愛の終焉と複雑な感情を描いた歌詞が、アルバム全体のトーンを提示している。
2. Believe
リードシングルとしてリリースされ、バンドの新しい方向性を示した一曲。静かな導入から感情的なクライマックスに向かう構成が特徴的で、失望と希望が交錯する歌詞が印象的。
3. The Wolf
エネルギッシュなギターリフとパワフルなボーカルが際立つ楽曲。アルバムの中でも特に攻撃的でロック色が強い一曲で、ライブでの定番となっている。
4. Wilder Mind
アルバムのタイトル曲で、静かなギターと繊細なボーカルが印象的なバラード。自己探求と感情の複雑さをテーマにした詩的な歌詞が心に響く。
5. Just Smoke
シンプルなアレンジの中に、ほのかな悲しみと切なさが漂う楽曲。破綻した関係性や、その中での葛藤を歌っている。
6. Monster
静謐なイントロから始まり、徐々にエモーショナルな展開を見せる楽曲。内面的な恐れや人間関係の難しさをテーマにしている。
7. Snake Eyes
ドラマチックな構成が特徴のトラックで、控えめな始まりからクライマックスに向かうスリリングな展開が印象的。愛と痛みを描いた歌詞が心に残る。
8. Broad-Shouldered Beasts
ピアノを主体とした叙情的な楽曲で、静と動のダイナミクスが際立つ一曲。切実なボーカルが感情的な深みを与えている。
9. Cold Arms
シンプルなアコースティックギターを基調としたバラードで、アルバムの中でも特に静かな楽曲。孤独と痛みを歌った歌詞が心に染みる。
10. Ditmas
アルバムの中でも特にアップテンポな楽曲で、エレクトリックギターとドラムの疾走感が心地よい。愛の終わりと新たな始まりをテーマにしている。
11. Only Love
静かに始まり、徐々にエネルギーを高めていくドラマチックな楽曲。複雑な感情を歌詞で描きつつ、希望を感じさせる展開が印象的。
12. Hot Gates
アルバムの締めくくりにふさわしい静謐で感動的なトラック。喪失感と希望が織り交ぜられた歌詞と、シンプルなアレンジが余韻を残す。
アルバム総評
『Wilder Mind』は、Mumford & Sonsがフォークロックからスタジアムロックへと大胆に方向転換を図ったアルバムだ。その結果、従来のファンの中には戸惑いを感じた者もいたが、バンドの音楽的進化を示す重要な作品であることは間違いない。洗練されたモダンなサウンドと内省的なテーマが印象的で、これまでにない深みを感じさせる一枚となっている。
特に「Believe」や「The Wolf」のような楽曲は、バンドの新しいスタイルを象徴しており、ライブでも観客を熱狂させるパワーを持つ。『Wilder Mind』は、Mumford & Sonsが新しい領域に挑戦し、進化し続けるバンドであることを証明する作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The National – Trouble Will Find Me
叙情的で内省的な歌詞とモダンなサウンドが、『Wilder Mind』と共通する。
Coldplay – Ghost Stories
エレクトロニックと内省的なテーマを融合させたアルバムで、『Wilder Mind』の静かなトーンに通じる。
Arctic Monkeys – AM
エレクトリックな要素を取り入れた洗練されたサウンドが、『Wilder Mind』の進化を感じさせる。
Kings of Leon – Only by the Night
スタジアムロック的なスケール感とエモーショナルな楽曲が、『Wilder Mind』のファンに響く。
Bon Iver – 22, A Million
大胆にエレクトロニックなアプローチを取り入れたアルバムで、バンドの挑戦的な一面と重なる。
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