アルバムレビュー:『Wilder Mind』 by Mumford & Sons

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2015年5月4日

ジャンル:Alternative Rock / Indie Rock

概要

2012年のセカンドアルバム Babel で世界的な成功を収めたMumford & Sonsが、約3年を経て発表した3作目である。前2作ではバンジョー、アコースティックギター、アップライトベースなどを前面に出し、フォークやブルーグラスの要素を大規模なロックへ接続していた。しかし Wilder Mind では、その分かりやすい特徴だったバンジョーをほぼ退け、エレクトリックギター、ベース、ドラム、シンセサイザーを中心とするバンドサウンドへ大きく方向転換している。プロデュースを担当したのは、Arctic MonkeysやFoalsなどを手掛けたJames Fordである。

変化したのは楽器だけではない。以前のMumford & Sonsには静かな導入から演奏を段階的に加え、最後には全員で爆発するという曲が多かったが、本作ではヴァースとサビの音量差、ギターの残響、リズム隊の反復によって緊張感を作る場面が増えた。Marcus Mumfordの声も、常に力いっぱい歌うのではなく、低い声で抑える部分と荒々しく声を張る部分を使い分けている。The NationalのAaron Dessnerが制作過程に関わったこともあり、ニューヨークのインディーロックを思わせる暗い空間の使い方が随所に聞こえる。

歌詞では恋愛関係の崩壊や距離、依存、後悔といった題材が繰り返し現れる。ただし、物語を明確に説明するというより、会話の断片や身体的なイメージを置きながら、相手との関係が変化していく瞬間を捉える書き方が中心だ。フォークバンドとして確立した自分たちの型を捨てた作品であり、成功したスタイルを拡張するのではなく、バンドそのものの演奏方法を組み替えたアルバムとしてキャリアの転換点になった。

全曲レビュー

1. 「Tompkins Square Park」

細かく刻むエレクトリックギターと一定の速度を保つドラムから始まり、本作の方向転換を最初の数十秒で示すオープニング曲である。サビではギターが横へ広がるように厚くなるものの、過去作のような急激な加速には頼らない。歌詞では終わりが近いと分かっている関係に、もう一晩だけ留まろうとする語り手が描かれる。ニューヨークの実在する公園を題名に置くことで、抽象的な別れではなく、特定の場所に記憶が残っているような感覚を生んでいる。

2. 「Believe」

低く抑えた歌声と薄いシンセサイザーで始まり、前半では大きな空白を残したアレンジが続く。ところが後半になると歪んだギターと強いドラムが一気に入り、静けさそのものが爆発への準備だったことが分かる。相手の言葉をどこまで信じられるのかという疑問が歌詞の中心にあり、断定よりも問いかけが多い。演奏が巨大になっても不安そのものは解消されず、その食い違いが曲の緊張を保っている。

3. 「The Wolf」

冒頭からギター、ベース、ドラムがほぼ全速力で動き、アルバム前半でも特に直接的なロックナンバーとなっている。ドラムが細かくフィルを挟みながら前へ押し、サビでは複数のギターが重なって音の壁を作るため、フォーク時代とは異なる方法でMumford & Sonsらしい高揚を生み出している。Marcusの歌唱も終盤ほど荒くなり、整然としたスタジオ録音よりライヴバンドとしての勢いを優先したような仕上がりだ。

4. 「Wilder Mind」

タイトル曲ではテンポを落とし、ベースの反復と残響の長いギターを中心に暗い空間を作る。音数を増やして盛り上げるというより、同じパターンを維持しながら少しずつ圧力を強める構成が特徴である。歌詞では親密だった二人の間に距離が生じ、相手が以前とは違う存在になったという認識が語られる。「変わってしまった相手」を責めるだけではなく、語り手自身も関係を維持できない位置にいるように聞こえる曖昧さが残る。

5. 「Just Smoke」

軽く跳ねるドラムと短いギターフレーズによって、ここまでの重い空気をいったん緩める。メロディにはポップソングとしての素直な親しみやすさがあり、Marcusも大声を出すより言葉を滑らかにつないでいく。題名の「煙」は、つかもうとしても消えていくものの比喩として読むことができ、恋愛の記憶や感情を確かな形にできない感覚と重なる。簡潔なアレンジだからこそ、アルバム中盤の小さな呼吸地点として機能している。

6. 「Monster」

ピアノと控えめなギターを土台にした静かな曲で、激しい演奏よりMarcusの低い歌声を中心に据えている。歌詞の語り手は相手の振る舞いを冷静に観察しながら、そこにある欲望や自己防衛を見抜こうとしているように読める。「怪物」という強い題名に反して演奏が抑制されているため、怒りを直接爆発させるのではなく、感情が冷えていく怖さが残る。前半の派手なロックサウンドとは違う形で、本作の暗さを示す一曲だ。

7. 「Snake Eyes」

小さなギターの音と近距離で録られたようなボーカルから、時間をかけてバンド全体が膨らんでいく。後半ではドラムが激しくなり、歪んだギターも広がるが、単純に明るいクライマックスへ向かうわけではない。歌詞には愛情と破綻の予感が同時に存在し、関係を続けたい気持ちそのものが苦しさを増幅させている。旧作で得意とした漸進的な盛り上げ方を、バンジョーではなく電気的なロック編成へ移植した例でもある。

8. 「Broad-Shouldered Beasts」

ピアノを軸にゆっくり進み、ギターは旋律を主張するより背景に陰影を付ける役割を担う。歌詞には街を移動する具体的な風景が現れ、混乱する相手に寄り添おうとする語り手の姿が見えてくるが、その支えが本当に届いているのかは明確ではない。後半で演奏が大きくなってもテンポ自体は落ち着いており、派手な解放感より、感情を抱えたまま歩き続けるような重さを残す。

9. 「Cold Arms」

ほぼ声とギターの親密な配置まで音を減らし、アルバムの中でも特に裸に近い演奏を聞かせる。ここでは新しい電気的サウンドを示す必要がなく、Marcusの声の揺れとコードが変わる瞬間そのものが曲の中心になる。親密さを求めながら同時に冷たさを感じている関係が描かれ、題名にある「冷たい腕」という矛盾したイメージがその状態を端的に表す。大音量の曲が多い本作だからこそ、この小ささが強いコントラストになる。

10. 「Ditmas」

一定のビートに明るく開けたギターを重ね、後半へ向かって自然に速度感を取り戻す。「Ditmas」はブルックリンのDitmas Parkを指し、本作にニューヨークの地理が再び入り込む。歌詞では変わっていく関係を前にした焦りが強く、Marcusの歌も曲が進むにつれて切迫していく。演奏自体には爽快さがあるのに、言葉では喪失への抵抗が続いており、その明暗のずれによって単純なアンセムになることを避けている。

11. 「Only Love」

前半はギターのアルペジオと抑えたボーカルを中心に進み、後半でドラムと歪んだギターが押し寄せる。本作で何度か使われる静から動への構成の中でも落差が大きく、Marcusの歌声もささやきに近い状態から叫びへ変わっていく。愛を求める言葉には救いと執着の両方があり、演奏が大きくなるほど安心するというより切迫感が増す。終盤に置かれたことで、アルバムに蓄積してきた関係の不安が一度まとめて噴き出すように聞こえる。

12. 「Hot Gates」

最後は派手なロックナンバーではなく、ゆっくりしたテンポと広い余白を持つ曲で閉じる。複数の声を重ねたコーラスにはMumford & Sonsが以前から持っていた共同体的な響きが残っている一方、ギターやリズムは最後まで慎重に抑えられている。歌詞は喪失や苦しみを前にした相手へ語りかけるように進み、簡単な解決を示さない。大きなカタルシスで締めず、感情が完全には整理されない状態を残すことで、本作の内向的な側面を静かにまとめている。

総評

Wilder Mind の最大の変化は、「バンジョーをやめてエレクトリックギターを使った」という楽器の交換だけではない。初期2作では速いストロークや足踏みするようなリズムが曲を前へ運んでいたのに対し、本作ではベースとドラムの反復、ギターの残響、シンセサイザーによる背景音などを使い、同じ場所に留まりながら緊張を高める方法が増えている。静かなヴァースから巨大なサビへ進む得意の構成は残っているため、別のバンドになったというより、従来の作曲法を異なる音色へ置き換えた作品と捉える方が実態に近い。

その変化によってMarcus Mumfordのボーカルも違って聞こえる。アコースティック楽器の密集した演奏では声を強く押し出すことが効果的だったが、本作の静かな場面では息遣いや声量の小さな変化まで聞こえる。そこから「The Wolf」や「Only Love」のような大音量へ移ったとき、叫ぶ歌唱にも以前とは違った意味が生まれる。歌詞に関係の不安定さや別れの予感が多いこともあり、静と動の差は単なる盛り上げの技法ではなく、感情を抑えようとして抑えきれなくなる動きとして機能している。

一方で、方向転換した結果として、初期作品にあった一聴してMumford & Sonsだと分かる楽器編成は薄くなった。残響の深いギターや暗いシンセサイザーには2010年代のインディーロックと共有する部分が多く、曲によってはバンド固有の輪郭が見えにくい。しかし「Snake Eyes」の段階的な高揚や「Hot Gates」のコーラスを聞けば、以前からの特徴が消えたわけではないことも分かる。過去の方法を完全に否定するのではなく、それをエレクトリックな編成でどこまで作り直せるかという試みが、このアルバムの面白さである。

結果として Wilder Mind は、デビュー時のスタイルを完成させた作品ではなく、成功によって固定されかけたバンド像から抜け出すための作品になった。曲ごとの個性にはばらつきがあるものの、「Tompkins Square Park」から「Hot Gates」まで抑制と爆発を繰り返す流れには一貫性がある。フォーク・リヴァイヴァルを代表する存在だったMumford & Sonsが、特定の楽器ではなく作曲、歌声、メンバー同士の演奏によって自分たちを成立させようとした点で、その後の活動を理解するうえでも欠かせない転換点である。

おすすめアルバム

Babel by Mumford & Sons

前作であり、バンジョー、アコースティックギター、力強いコーラスを使った初期スタイルの完成形に近い。Wilder Mind と聴き比べると、楽器編成が変わっても静かな導入から大きなサビへ向かう作曲法が残っていることがよく分かる。

Delta by Mumford & Sons

Wilder Mind の次に発表されたアルバム。エレクトリック化をそのまま繰り返すのではなく、電子音、アコースティック楽器、広がりのあるスタジオ処理を混在させている。本作で始まった「決まったバンド像から離れる」という方向をさらに押し進めた作品だ。

Trouble Will Find Me by The National

低い歌声、反復するリズム、残響を生かしたギターによって、派手に動かなくても緊張を維持する2010年代インディーロックの代表例。Aaron Dessnerとの接点も含め、Wilder Mind が近づいた音響的な方向を理解しやすい。

AM by Arctic Monkeys

James Fordがプロデュースした2013年作。音楽性そのものは異なるが、ギターを大量に鳴らすだけでなく、ベースやドラムの反復と音の隙間によってロックを大きく聞かせる点に共通項があり、Fordのプロダクションを別角度から確認できる。

A Rush of Blood to the Head by Coldplay

ピアノやギターの静かなヴァースから、バンド全体が開く大きなサビへ進む構成と、親密な感情を大規模なロックサウンドへ変換する作曲が Wilder Mind とつながる。Mumford & Sonsがフォーク色を薄めた後に向き合った、英国ロックの一つの先例として比較できる。

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