アルバムレビュー：Volcano by Temples

発売日: 2017年3月3日
ジャンル: サイケデリックポップ、ネオサイケデリア

Templesのセカンドアルバム「Volcano」は、デビュー作「Sun Structures」からさらに進化し、よりポップで実験的な要素が強調された作品である。前作のサイケデリックなサウンドを引き継ぎながらも、シンセサイザーを多用したポップなアプローチが際立ち、バンドの音楽的な幅が広がっている。キャッチーなメロディと幻想的なアレンジが融合し、全体的に明るくカラフルなサウンドスケープを作り上げている一方、歌詞には内省的なテーマが多く含まれており、複雑な感情の旅が展開されるアルバムとなっている。

各曲ごとの解説:

Certainty
　「Certainty」は、シンセサイザーの力強いリフで始まる、キャッチーでポップなトラック。フックが強く、すぐに耳に残るメロディが特徴的。歌詞は不確実な未来に対する不安と、それに対処する個人の葛藤を描いており、カラフルなサウンドに反して深いテーマを持っている。
All Join In
　テンポの速いリズムと浮遊感のあるメロディが特徴の「All Join In」は、エレクトロニックな要素が際立つ。コーラスはシンプルだが力強く、バンド全体のエネルギーが感じられる。リスナーを包み込むようなサウンドが、アルバムの中でも明るい瞬間を提供する。
(I Want to Be Your) Mirror
　この曲は、恋愛と自我をテーマにした歌詞が印象的。アコースティックギターとシンセサイザーが融合し、どこか幻想的で落ち着いた雰囲気を醸し出している。前作のサイケデリックな要素を残しながらも、より内向的なトーンが強調されている。
Oh the Saviour
　「Oh the Saviour」は、煌びやかなギターリフと広がりのあるサウンドが特徴的。宗教的なイメージが浮かぶタイトルとともに、救済や希望をテーマにしているが、どこか不穏さを感じさせるアレンジが魅力的だ。
Born into the Sunset
　タイトル通り、日没を思わせる美しいメロディと、穏やかなリズムが心地よい一曲。ギターとシンセサイザーが交互に絡み合い、トロピカルな雰囲気も感じさせる。希望に満ちた歌詞と音楽が見事に調和している。
How Would You Like to Go?
　リズミカルで不思議な雰囲気を持つトラックで、シンセサイザーと重厚なビートが際立つ。曲全体に流れる奇妙で幻想的なムードが、リスナーを異世界へと引き込む。歌詞は死後の世界や超越的なテーマに触れており、哲学的な側面を持つ。
Open Air
　「Open Air」は、軽快で明るいポップなトラック。タイトルの通り、開放的なサウンドが広がり、シンセサイザーのエフェクトが曲にエネルギーを与えている。前向きで楽観的なトーンが、アルバムの中でも際立っている。
In My Pocket
　この曲は、よりリズミカルでファンキーなエッセンスを持ち、軽やかなサウンドが特徴。ベースラインが楽曲の核となり、キャッチーなコーラスがポップで楽しい雰囲気を作り出している。
Celebration
　「Celebration」は、祝祭のような華やかなムードを持ちながらも、歌詞はより内省的で複雑なテーマに触れている。シンセサイザーとエレクトロニックな要素が曲全体を支え、サウンドは一貫して明るくカラフル。
Mystery of Pop
　この曲では、Templesのポップな一面がさらに強調されている。タイトルが示す通り、ポップミュージックそのものの魔法と謎をテーマにしており、軽快なメロディとハーモニーが魅力的。
Roman Godlike Man
　ミステリアスなイントロから始まり、壮大なサウンドスケープが広がる。「Roman Godlike Man」は、過去の偉大さと人間の内なる神性を探るテーマを持ち、壮大なギターサウンドが印象的だ。
Strange or Be Forgotten
　アルバムのフィナーレを飾るこの曲は、個性の尊重と、自分が忘れ去られないためにどう生きるかというテーマを描いている。美しいメロディと内省的な歌詞が融合し、心に残るエモーショナルな終わり方をする。シンセサイザーの壮大なサウンドとドラマチックな構成が特に印象的。

アルバム総評:

「Volcano」は、Templesが前作からさらに進化し、サイケデリックな要素にポップとエレクトロニックな要素を加えた実験的な作品である。キャッチーなメロディとカラフルなサウンドスケープが全体を通して流れており、デビュー作「Sun Structures」よりもポップに寄ったアプローチが印象的である。一方で、歌詞には個人的で内省的なテーマが多く含まれており、音楽と歌詞のコントラストが聴きごたえを生んでいる。「Certainty」や「Strange or Be Forgotten」などのトラックがアルバムのハイライトであり、Templesのクリエイティブな進化が強く感じられる一枚だ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

Currents by Tame Impala
サイケデリックな要素に加え、エレクトロニックなビートやポップなメロディを融合させたアルバムで、「Volcano」と共通する進化が感じられる。
Oracular Spectacular by MGMT
エレクトロポップとサイケデリックなサウンドが融合した作品で、キャッチーなメロディと実験的なアプローチが「Volcano」に通じる。
Congratulations by MGMT
より実験的でサイケデリックなサウンドに寄ったアルバム。異世界的な雰囲気が「Volcano」と似ている。
Let It Happen by Pond
エネルギッシュで多彩なサウンドが特徴のサイケデリックアルバムで、ポップと実験性がうまく融合している。
Superorganism by Superorganism
現代的なエレクトロポップとサイケデリックなサウンドが融合し、カラフルでユニークなアプローチが「Volcano」に通じる作品。