アルバムレビュー:Unreal Unearth: Unending by Hozier

※本記事は生成AIを活用して作成されています。


発売日:2024年12月6日

ジャンル:オルタナティヴ・ソウル / フォーク・ロック / インディー・ロック / ブルース / ゴスペル / アート・ポップ / シンガーソングライター

概要

Unreal Unearth: Unendingは、Hozierが2023年に発表した3作目のスタジオ・アルバムUnreal Unearthを拡張した決定版的エディションである。オリジナル・アルバムに加え、後続EPとして発表されたUnheard、Unaired、Eat Your Young期の楽曲、さらに追加曲「Hymn to Virgil」などを含み、Unreal Unearthというプロジェクトの全体像をより大きなスケールで提示する作品となっている。

Hozierは、2013年の「Take Me to Church」で世界的に注目されて以降、ブルース、ソウル、フォーク、ゴスペル、ロックを横断しながら、宗教的イメージ、身体性、社会批評、愛と死の主題を結びつけてきたアーティストである。彼の音楽は、単なるフォーク・ソウルやシンガーソングライター作品にとどまらず、文学、神話、歴史、政治、信仰、言語を含む重層的な表現として発展してきた。

Unreal Unearthの中心にあった大きな構造は、ダンテ・アリギエーリの『神曲』、とりわけ「地獄篇」からの着想である。Hozierは、地獄の各圏をそのまま説明するのではなく、下降、喪失、欲望、罪、暴力、記憶、言語、愛、そして再浮上という構造を借りて、現代的な感情と社会の傷を描いた。Unreal Unearth: Unendingでは、その旅がさらに拡張され、未収録曲や周辺曲によって、オリジナル盤では語りきれなかった感情の余白が補われている。

タイトルの“Unending”は、終わらないこと、続いていくことを意味する。これは単に楽曲数が増えた拡張版という意味ではない。Unreal Unearthが描いた地獄巡りや魂の下降は、一度のアルバムで完結するものではなく、記憶、愛、死、歴史、社会的暴力が現在にも続いていることを示している。つまり本作は、Unreal Unearthの補足ではなく、そのテーマがさらに外側へ広がり続けることを示す作品である。

音楽的には、Hozierの持つ多面的な表現がさらに明確になる。アイルランド語を用いた神秘的な楽曲、ブルースに根差したギター、ゴスペル的な合唱、ソウルフルなヴォーカル、穏やかなフォーク・バラード、現代的なポップ・プロダクション、社会批評を含むリズミックな楽曲が並ぶ。特に追加曲群では、オリジナル盤の重厚な文学性に対し、より直接的なポップ性や、親密なバラード性、社会的な怒りが補強されている。

本作において重要なのは、Hozierが愛を単なる個人的感情として扱わない点である。愛は救済であり、危険であり、記憶であり、死者との関係であり、社会的暴力に抗うものでもある。また、彼は言語や土地の問題にも深く向き合う。「Butchered Tongue」に代表されるように、言葉を奪われることは、歴史や共同体の記憶を奪われることでもある。Hozierのラヴソングは常に、個人の身体と歴史の傷が交差する場所で鳴っている。

Unreal Unearth: Unendingは、長大な作品である。そのため、通常のポップ・アルバムのように一気に明快な輪郭をつかむタイプではない。むしろ、複数の章から成る詩集や、神話的な旅の記録のように聴くべき作品である。オリジナル盤の楽曲と追加曲が重なり合うことで、Hozierの世界はより広く、より深く、そして終わらないものとして響く。

全曲レビュー

1. De Selby (Part 1)

「De Selby (Part 1)」は、アルバムの入口として極めて重要な楽曲である。タイトルのDe Selbyは、アイルランドの作家Flann O’Brienの作品に登場する架空の思想家を想起させ、現実と非現実、眠りと覚醒、自己と闇の境界を曖昧にする存在として機能している。

音楽的には、アコースティックな響きと合唱的な重なりが中心で、Hozierの声は静かに沈み込むように響く。英語とアイルランド語が交差することで、個人的な愛の歌であると同時に、土地や言語の記憶を呼び起こす歌にもなっている。

歌詞では、暗闇の中で自己が溶け、愛する相手の存在の中へ沈んでいく感覚が描かれる。ここでの愛は、明るい出会いではなく、地下へ降りていくような変容である。Unreal Unearthの旅が、光ではなく闇から始まることを示す導入曲である。

2. De Selby (Part 2)

「De Selby (Part 2)」は、前曲の静謐な空気から一転し、リズムとグルーヴを持った楽曲として展開する。Part 1が闇の中へ沈む精神的な導入だとすれば、Part 2はその闇の中で身体が動き始める場面である。

音楽的には、ベースとドラムが推進力を生み、Hozierの声もより肉体的になる。ブルース、ソウル、ロックの要素が混ざり、Hozierの持つグルーヴ感が明確に表れる。幻想的でありながら、足元にはしっかりとしたリズムがある点が重要である。

歌詞では、闇の中で相手と自分の境界が失われていく。愛は自己確認であると同時に、自己喪失でもある。この二面性は、Hozierのラヴソングの核心であり、本作全体を貫く主題でもある。

3. First Time

「First Time」は、比較的明るく温かな響きを持つ楽曲である。タイトルは「初めて」を意味するが、ここで描かれるのは単純な初恋ではなく、誰かによって世界が再び新しく見える瞬間である。

Hozierは、愛をしばしば自然や死、腐敗、再生のイメージと結びつける。この曲でも、相手の存在によって自分が生き返るような感覚が描かれる。生命は清潔な場所からだけではなく、土や死の中からも芽吹く。その有機的な感覚がHozierらしい。

音楽的には、軽やかなメロディと温かいバンド・サウンドが印象的で、重厚なアルバムの中に柔らかな光を差し込む。ポップに聴きやすい楽曲でありながら、歌詞には死と再生の循環が深く埋め込まれている。

4. Francesca

「Francesca」は、ダンテ『神曲』の「地獄篇」に登場するフランチェスカ・ダ・リミニから着想を得た楽曲である。不義の愛によって罰を受ける彼女の物語を、Hozierは罪や罰ではなく、愛の選択として再解釈している。

歌詞の中心には、どれほど苦しみが待っていても、同じ愛をもう一度選ぶという姿勢がある。社会や宗教が罪と呼ぶものでも、当事者にとっては生の真実である。この視点は、Hozierがデビュー時から扱ってきた制度と身体、信仰と愛の緊張関係とつながっている。

音楽的には、力強いロック・アンセムとして展開する。ドラムとギターが感情を押し上げ、サビではHozierの声が大きく開く。文学的題材を現代的なロックの高揚へ変換した、本作屈指の代表曲である。

5. I, Carrion (Icarian)

「I, Carrion (Icarian)」は、ギリシャ神話のイカロスを想起させる楽曲である。イカロスは翼で空へ飛び、太陽に近づきすぎて墜落した人物である。タイトルに含まれる“Carrion”は腐肉を意味し、飛翔と落下、理想と死が強く結びついている。

歌詞では、愛によって空へ持ち上げられるような感覚と、その結果として避けられない墜落が描かれる。Hozierにとって愛は安全な避難所ではない。愛は人を高く飛ばし、同時に壊す力でもある。

音楽的には、穏やかなフォーク・バラードに近く、声とメロディが柔らかく配置されている。しかし、その美しさの中には死のイメージが含まれており、単なる甘美なラヴソングでは終わらない。浮遊感と重力が同時に存在する楽曲である。

6. Eat Your Young

「Eat Your Young」は、本作の中でも特に社会批評性が強い楽曲である。タイトルは「若者を食らう」という意味を持ち、世代間搾取、戦争、資本主義、貪欲な政治構造を鋭く批判している。

音楽的には、ダークで官能的なグルーヴが中心である。ベースは粘り、リズムは誘惑的で、Hozierの声には皮肉な響きがある。この曲が優れているのは、社会悪を単に外側から非難するのではなく、その悪が持つ快楽や魅惑を音楽の中に取り込んでいる点である。

歌詞では、未来を担う若者が、現在の権力や利益のために消費される構造が描かれる。食べること、消費すること、犠牲にすることが重なり、社会全体が巨大な捕食装置として浮かび上がる。Hozierの政治的視点が、最も直接的に表れた楽曲の一つである。

7. Damage Gets Done feat. Brandi Carlile

「Damage Gets Done」は、Brandi Carlileを迎えた楽曲であり、アルバムの中でも明るくノスタルジックな響きを持つ。二人の声はどちらも物語性が強く、若さ、無謀さ、貧しさ、自由、そして不可避の傷を豊かに描き出す。

歌詞では、若い頃の無計画な日々が回想される。そこには損なわれること、傷つくことが含まれているが、それでもその時間は確かに生きられたものとして肯定される。タイトルの「Damage Gets Done」は、人生において傷は避けられないという現実を示しながら、それを完全な否定にはしない。

音楽的には、80年代的なポップ・ロックの開放感もあり、重厚なアルバムの中で人間的な温度を与える。神話的な地獄巡りの中に、青春の記憶が差し込まれることで、作品全体の感情の幅が広がっている。

8. Who We Are

「Who We Are」は、自分たちが何者であるかを問う大きなバラードである。Hozierの作品では、自己は固定されたものではなく、愛、歴史、土地、傷、記憶によって形作られる。この曲は、その問いを非常に大きなスケールで扱っている。

音楽的には、ピアノやストリングス的な広がりがあり、サビではHozierのヴォーカルが劇的に立ち上がる。感情の波を大きく作る構成は、彼のゴスペル的な影響とも結びついている。

歌詞では、苦しみを通じて自分たちが何者かを知る感覚が描かれる。人は幸福だけでなく、喪失や痛みによっても定義される。Hozierはそこに絶望だけではなく、人間の尊厳を見出している。

9. Son of Nyx

「Son of Nyx」は、インストゥルメンタルに近い間奏的な楽曲であり、アルバムの構造上重要な役割を持つ。Nyxはギリシャ神話の夜の女神であり、死、眠り、運命といった存在にもつながる神話的な源である。

この曲では、言葉よりも音響空間が重要になる。ストリングスやアンビエント的な響きが、暗い地下世界のような空間を作る。Hozierはここで、歌詞による説明を一度止め、聴き手を純粋な音の深みに沈める。

Unreal Unearthが単なる楽曲集ではなく、神話的な旅として構成されていることを示す重要な間奏である。

10. All Things End

「All Things End」は、「すべてのものは終わる」という明確な主題を持つ楽曲である。別れ、死、関係の終焉、有限性が扱われるが、曲全体は単なる絶望ではない。終わるからこそ、愛することに意味があるという視点がある。

音楽的には、ゴスペル的なコーラスが非常に印象的である。Hozierの声が合唱と重なることで、個人的な悲しみが共同体的な祈りへ変わる。死や終わりを歌いながら、曲には温かい高揚がある。

歌詞では、すべてが有限であることが受け入れられる。しかし有限性は愛の否定ではない。むしろ、終わりがあるからこそ愛は切実になる。この曲は、Hozierの宗教的イメージと人間的な喪失感が美しく結びついた名曲である。

11. To Someone from a Warm Climate (Uiscefhuaraithe)

「To Someone from a Warm Climate (Uiscefhuaraithe)」は、親密で繊細なバラードである。暖かい気候から来た誰かに、寒さや冷たさを説明するという設定が、非常にHozierらしい感覚的なラヴソングになっている。

副題の“Uiscefhuaraithe”はアイルランド語の響きを持ち、冷たい水や冷却された感覚を連想させる。ここでの寒さは単なる気温ではなく、身体感覚、土地の記憶、他者との違いを象徴する。

歌詞では、異なる背景を持つ二人が、互いの感覚を理解しようとする親密さが描かれる。愛とは、相手が知らない寒さを説明し、相手の知らない世界へ触れてもらうことでもある。静かながら、非常に深い楽曲である。

12. Butchered Tongue

「Butchered Tongue」は、本作の中でも特に歴史的・政治的な重みを持つ楽曲である。タイトルは「切り刻まれた舌」を意味し、言語の破壊、植民地主義、文化の抑圧、土地の記憶を強く想起させる。

Hozierはここで、言葉を奪われることが単なるコミュニケーションの問題ではなく、歴史や共同体の記憶を奪われることでもあると歌う。地名、発音、母語、移民、土地への帰属が、静かで深い怒りとともに描かれる。

音楽的には、非常に抑制されており、歌詞の重みを支えるように進む。叫ぶのではなく、弔うように歌われる点が重要である。Hozierの社会的視点とアイルランド的な歴史意識が最も明確に表れた楽曲の一つである。

13. Anything But

「Anything But」は、アルバム後半の中で比較的軽やかな楽曲である。タイトルは「何でもいい、ただしそれ以外で」という否定を含み、変身願望や自己からの逃避を感じさせる。

歌詞では、自分ではない何かになりたいという感覚が、ユーモラスかつ詩的に描かれる。重い神話的・歴史的な楽曲が多い本作の中で、この曲は少し風通しのよい位置を占めている。

音楽的には、リズムが軽快で、メロディにも親しみやすさがある。しかしその軽さの奥には、自己から離れたいという切実な願いが隠れている。Hozierの言葉遊びとメロディメイカーとしての柔軟さが表れた楽曲である。

14. Abstract (Psychopomp)

「Abstract (Psychopomp)」は、死者の魂を導く存在である“psychopomp”を副題に持つ楽曲である。死、記憶、目撃、救済が重なり合う、アルバム終盤の重要曲である。

歌詞では、傷ついた動物や死にゆく存在を目撃する場面が描かれる。その具体的な光景が、やがて抽象的な記憶へ変わっていく。Hozierは、日常の中の死を、神話的・宗教的な意味へ変換する。

音楽的には、静かな導入から大きく広がる構成を持つ。悲しみと美しさが混ざり合い、死をただの終わりではなく、記憶されるものとして描く。Hozierの作詞能力が高い水準で発揮された楽曲である。

15. Unknown / Nth

「Unknown / Nth」は、親密さの限界を扱う内省的な楽曲である。どれほど近くにいても、人は他者を完全には知ることができない。その痛みと諦めが、この曲の中心にある。

音楽的には、抑制されたギターと声が中心で、派手な装飾は少ない。その分、Hozierの言葉と声の重みが際立つ。彼の歌唱は、怒りではなく、静かな絶望と受容を帯びている。

歌詞では、愛する相手を知ろうとする欲望と、最終的には知り尽くせないという事実が描かれる。Hozierのラヴソングの中でも、特に成熟した視点を持つ楽曲である。

16. First Light

「First Light」は、オリジナル盤の終曲であり、長い闇の後に差し込む最初の光を描く。アルバム全体が下降、地獄、死、喪失を通過してきた後、この曲は再浮上の瞬間として機能する。

歌詞では、光が戻ること、世界が再び見えること、生が続くことが描かれる。ただし、ここでの光は単純な救済ではない。闇を通過した後の光であり、以前と同じ無垢な明るさではない。

音楽的には、徐々に広がる構成が美しく、Hozierの声も解放感を帯びる。Unreal Unearthという旅を締めくくるにふさわしい、静かなカタルシスを持つ楽曲である。

17. Too Sweet

「Too Sweet」は、拡張版を象徴する追加曲の中でも最も大きな存在感を持つ楽曲である。ブルージーなベースラインと抑制されたグルーヴが印象的で、Hozierの低く滑らかなヴォーカルが曲全体を支配している。

歌詞では、生活感や価値観の違う二人の関係が描かれる。相手は甘く、整っていて、健やかな生活を送る存在であり、語り手は夜更かし、酒、煙、暗さに親しむ存在である。ここでの“too sweet”は、相手が魅力的であると同時に、自分にはまぶしすぎるという距離感を示している。

音楽的には、Hozierのブルース/ソウル的な側面が非常に洗練された形で出ている。派手なサビで爆発するのではなく、低く反復するグルーヴの中で魅力を増していく。追加曲でありながら、Hozierの代表曲の一つといえる完成度を持つ。

18. Wildflower and Barley feat. Allison Russell

「Wildflower and Barley」は、Allison Russellを迎えた穏やかで美しい楽曲である。野花と大麦というタイトルが示すように、土地、季節、自然、生活の営みが中心にある。

歌詞では、春の訪れや自然の再生が描かれるが、それは単なる牧歌ではない。Hozierの作品において自然は、しばしば死と再生、労働と記憶を含む。この曲でも、柔らかな響きの奥に、時間が巡り続ける感覚がある。

Allison Russellの声は、Hozierの低く深い声と美しく調和する。二人のヴォーカルが重なることで、曲には共同体的な温かさが生まれる。Unreal Unearth本編の重厚な地獄巡りに対して、この曲は地上の光と土の匂いを運び込むような役割を果たしている。

19. Empire Now

「Empire Now」は、社会的・歴史的な視点が強い楽曲である。タイトルは「帝国はいま」という意味を持ち、帝国主義の遺産、現代社会に残る権力構造、歴史の継続性を示唆する。

Hozierはここで、過去の帝国が終わったように見えても、その支配の構造や言語、経済、暴力は現在にも残っていることを描く。これは「Butchered Tongue」とも強くつながるテーマである。言葉、土地、歴史、支配は、Hozierの作品において重要な軸である。

音楽的には、スケール感のあるアレンジと力強いヴォーカルが印象的である。過去と現在を結びつけるような大きな時間感覚があり、追加曲でありながらアルバム全体の政治的側面を補強している。

20. Fare Well

「Fare Well」は、タイトル通り別れと祈りを含む楽曲である。ただし、重苦しい終別の歌というより、傷や困難を抱えながらも、相手がどうかうまく生きていけるよう願う温かさがある。

音楽的には、比較的軽やかで、どこかフォーク的な親しみやすさがある。Hozierの声も過剰に劇的ではなく、穏やかに響く。アルバム全体の深い闇の中で、この曲は人間的な優しさを担う。

歌詞では、完全な救済ではなく、小さな願いが歌われる。人生は壊れやすく、世界は不完全だが、それでも誰かの無事を願うことはできる。この静かな倫理が、Hozierの音楽の根底にある。

21. Through Me (The Flood)

「Through Me (The Flood)」は、Unreal Unearth周辺期の中でも重要な楽曲であり、水、洪水、喪失、通過のイメージが強い。タイトルの“Through Me”は、自分の中を何かが通り抜ける感覚を示し、“The Flood”は圧倒的な感情や災厄を象徴する。

歌詞では、大きな喪失や破壊を前にした人間の小ささが描かれる。水はすべてを押し流すが、同時に人間の中を通過し、何かを変えていく。Hozierは自然災害的なイメージを、感情や歴史の比喩として用いている。

音楽的には、力強いリズムとスケール感があり、Hozierの声が波のように広がる。本編から外れた楽曲でありながら、Unreal Unearthの下降と通過のテーマに非常によく合っている。

22. Swan Upon Leda

「Swan Upon Leda」は、ギリシャ神話のレダと白鳥の物語を参照しながら、女性の身体、暴力、政治的支配、神話の中に隠された権力関係を描く楽曲である。Hozierの社会的・神話的な作詞が非常に鋭く表れた作品である。

神話では、ゼウスが白鳥の姿でレダに近づく。この物語はしばしば美的・象徴的に語られてきたが、Hozierはそこにある暴力性を見逃さない。神話的な美の背後に、身体への侵害と権力の構造があることを示す。

音楽的には、静かで緊張感があり、歌詞の重さを支える抑制されたアレンジが印象的である。Hozierの声は、怒りを叫ぶのではなく、静かに告発するように響く。Unreal Unearth: Unendingの中でも、彼の倫理的視点を示す重要曲である。

23. Nobody’s Soldier

「Nobody’s Soldier」は、戦争、国家、従属、個人の自由を扱う楽曲である。タイトルは「誰の兵士でもない」という意味を持ち、国家や権力に利用されることへの拒否を明確に示している。

音楽的には、力強いリズムとロック的な推進力があり、Hozierの声も非常に鋭い。社会的メッセージを持つ楽曲でありながら、単なるプロテスト・フォークではなく、現代的なロック・ソウルとして鳴っている。

歌詞では、誰かの戦争、誰かの利益、誰かの命令のために自分の身体を差し出すことへの拒否が歌われる。Hozierは個人の倫理を重視し、権力の言葉に従わない姿勢を示す。この曲は、彼の政治的な側面を最も直接的に表した追加曲の一つである。

24. July

「July」は、夏の季節感を持つタイトルながら、単純な明るい季節の歌ではない。Hozierの作品では、季節は感情や記憶の器として機能することが多く、この曲でも夏の光の中に、どこか儚さや距離が感じられる。

音楽的には、穏やかで親密な響きがあり、Hozierの声も柔らかい。アルバムの重厚な社会批評や神話的な曲に比べると、より個人的な空間を作る楽曲である。

歌詞では、ある季節に結びついた記憶、相手との距離、時間の流れが描かれる。夏は明るいが、永遠ではない。その一時性が、曲に静かな哀愁を与えている。

25. That You Are feat. Bedouine

「That You Are」は、Bedouineを迎えた美しいデュエット曲である。タイトルは「あなたがそうであること」という存在の肯定を示し、相手を変えようとするのではなく、そのまま見つめるような静かな親密さがある。

Bedouineの柔らかくフォーキーな声は、Hozierの深い声とよく調和する。二人の声の組み合わせによって、曲には控えめで温かな響きが生まれる。大きなドラマではなく、小さな確かさを大切にする楽曲である。

歌詞では、愛する相手の存在そのものを受け入れる感覚が描かれる。Hozierの重い宗教的・神話的な愛の表現とは異なり、この曲ではより日常的で穏やかな愛が表れている。拡張版の中で、柔らかな余韻をもたらす重要な曲である。

26. Hymn to Virgil

「Hymn to Virgil」は、Unreal Unearth: Unendingを象徴する追加曲である。Virgil、すなわちウェルギリウスは、ダンテ『神曲』において地獄と煉獄を導く案内人である。Hozierがこの人物に捧げる賛歌を追加したことは、Unreal Unearthというプロジェクトの文学的構造を改めて明確にする。

歌詞では、導く者、共に闇を歩む者、完全な救済までは与えられなくても道を示す存在への感謝が感じられる。ウェルギリウスは天国までは導けないが、地獄を通り抜けるためには不可欠な存在である。この限界を持った導き手というイメージは、Hozierの世界に非常によく合う。

音楽的には、賛歌というタイトルにふさわしく、厳かで広がりのある響きを持つ。アルバム全体の地獄巡りを締めくくる補助線として、非常に重要な役割を果たす楽曲である。Unendingという副題の通り、旅は完全には終わらず、導きと記憶は続いていく。

総評

Unreal Unearth: Unendingは、HozierのUnreal Unearthプロジェクトを総括し、さらに拡張する大作である。オリジナル盤だけでも文学的・神話的な構造を持つ重厚なアルバムだったが、本作では追加曲群によって、その世界がより多面的になっている。愛、死、欲望、社会的暴力、言語、帝国、記憶、季節、別れ、導きが、長大な作品の中で絡み合う。

オリジナル盤の核にあるのは、ダンテ的な下降と再浮上の構造である。闇へ沈み、地獄を通り、愛や罪や死を見つめ、最後に「First Light」へ至る。その流れは、本作でも維持されている。しかしUnendingでは、そこに「Too Sweet」のようなブルージーなポップ・ソング、「Nobody’s Soldier」のような政治的拒否の歌、「Swan Upon Leda」のような神話と身体の暴力を扱う歌、「Hymn to Virgil」のような文学的な補助線が加わることで、作品の意味がさらに広がっている。

音楽的には、Hozierの持つ幅広い基盤がよく分かる。ブルース、ソウル、フォーク、ゴスペル、ロック、アイルランドの言語的・文化的要素、現代的なポップ・プロダクションが混ざり合いながらも、すべてがHozierの声によって統一されている。彼の声は、深く、温かく、時に荒々しく、時に祈りのように響く。長大な作品であっても聴き手を引き留める最大の力は、この声にある。

歌詞の面では、Hozierの作家性が非常に高い水準にある。彼は愛を甘美な感情としてだけではなく、罪、歴史、死、言語、身体、権力と結びつける。たとえば「Francesca」では罪とされる愛を肯定し、「Butchered Tongue」では言語の喪失を弔い、「Eat Your Young」では若者を犠牲にする社会構造を批判し、「Swan Upon Leda」では神話の中に隠れた暴力を照らす。個人の感情と歴史的な傷が切り離されない点が、Hozierの重要性である。

追加曲の中でも「Too Sweet」は、Hozierのポップ・センスが最も分かりやすく表れた楽曲である。低く粘るグルーヴ、生活観の違いを描く歌詞、抑えたヴォーカルの魅力によって、彼のブルース/ソウル的な強みが現代的に整理されている。一方で「Hymn to Virgil」は、アルバム全体の文学的な文脈を補強し、Unendingが単なるデラックス版ではなく、コンセプトの拡張であることを示す。

長大であるため、全体を一度で受け止めるには重い作品でもある。楽曲数が多く、テーマも濃密であるため、ポップ・アルバムとしての軽快さよりも、詩集や神話的な旅を読むような集中力を求める。しかし、その重さこそが本作の価値でもある。Hozierは、現代のメインストリームに近い場所で活動しながら、ここまで文学的・歴史的・倫理的な射程を持つアルバムを作る稀有なアーティストである。

日本のリスナーにとって本作は、Hozierを「Take Me to Church」や「Too Sweet」のヒット曲で知っている場合、彼の表現の奥行きを知る決定的な作品となる。英語詞、アイルランド語、ダンテ、ギリシャ神話、植民地主義、ゴスペルやブルースの文脈を知るほど、作品はさらに深く聴こえる。一方で、背景知識がなくても、声、メロディ、グルーヴ、祈りのような音楽性だけで十分に強く響く。

総合的に見て、Unreal Unearth: Unendingは、Hozierのキャリアにおける最重要プロジェクトの集大成である。Unreal Unearthの地獄巡りは、ここで終わるのではなく、より広い歴史と現在へ開かれる。終わらない愛、終わらない記憶、終わらない暴力、そして終わらない歌。そのすべてを抱えた、現代シンガーソングライター作品の中でも非常に野心的な大作である。

おすすめアルバム

1. Hozier — Unreal Unearth

本作の核となるオリジナル・アルバム。ダンテ『神曲』を参照しながら、愛、罪、死、言語、歴史をめぐる旅を描いた作品であり、Unendingを理解するうえで基準点となる。

2. Hozier — Wasteland, Baby!

2019年発表のセカンド・アルバム。終末的な世界観と恋愛、社会不安を結びつけた作品で、Unreal Unearthへ至るHozierの思想的・音楽的発展を確認できる。

3. Hozier — Hozier

2014年のデビュー・アルバム。「Take Me to Church」を収録し、宗教的言語、身体性、ブルース/ソウル的な歌唱、社会批評の原点を示す作品である。

4. Florence + The Machine — Ceremonials

宗教的イメージ、巨大なドラム、ゴスペル的高揚、愛と死のテーマを強く持つ作品。Hozierの神話的・儀式的な側面に近い感覚を持つアルバムである。

5. Leonard Cohen — Songs of Love and Hate

愛、信仰、罪、欲望を詩的に扱ったシンガーソングライター作品の古典。Hozierの文学的な歌詞世界や、宗教的言語を使ったラヴソングの系譜を理解するうえで重要な一枚である。

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