
1. 歌詞の概要
Twin Killersは、Deerhoofの奇妙なポップ感覚と、バンドとしての爆発力が一気に噴き出す短編ロックである。
曲の長さはわずか2分16秒。Apple MusicでもThe Runners Fourの2曲目として、2分16秒の楽曲として掲載されている。アルバム自体は2005年の作品で、20曲入り、全体で56分の大作である。Apple Music – Web Player
歌詞は短い。
けれど、その短さの中に、裏切り、双子、かわいらしさ、嘘、破壊、殺し屋、二つの頭、欺きといった、不穏な言葉がぎゅっと詰め込まれている。
タイトルはTwin Killers。
直訳すれば、双子の殺し屋、あるいは二人組の殺し屋。
しかしDeerhoofの歌詞は、物語をまっすぐ説明するタイプではない。ここでも、双子の姉妹らしき存在が出てくるが、彼女たちが何者なのかは明確にされない。かわいらしく、美しく、輝いているように見える。けれど、その裏には嘘と破壊がある。
一見すると、子どもの絵本のような単純な言葉が並んでいる。
Pretty pretty twin sisters。
響きだけなら、甘くて、軽くて、ほとんど童謡のようだ。
しかし、その直後にtraitorsやkillersといった言葉が現れることで、かわいらしさは一気に不気味になる。お菓子の包み紙を開けたら、中に小さなナイフが入っていたような感じである。
このギャップこそ、Deerhoofらしさだ。
Satomi Matsuzakiのボーカルは、過度にドラマチックではない。声は軽く、少し無邪気で、発音の輪郭も独特だ。だからこそ、歌詞の中の殺し屋や裏切り者という言葉が、ホラー映画のように暗くならない。
むしろ、漫画的で、いたずらっぽくて、でもどこか本当に危ない。
Twin Killersは、かわいい顔をした危険な曲なのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
Twin Killersは、DeerhoofのアルバムThe Runners Fourに収録された楽曲である。
Bandcampの公式ページでは、The Runners Fourは2005年10月11日リリースと記載され、Twin Killersは2曲目に配置されている。また、同曲の歌詞とクレジットも公式に掲載されている。
The Runners Fourは、Deerhoofのキャリアの中でも特に重要な作品のひとつである。
このアルバムの時点でのメンバーは、Satomi Matsuzaki、Greg Saunier、John Dieterich、Chris Cohen。Discogsや各種データベースでも、Twin KillersはThe Runners Fourの2曲目として確認できる。ディスコグス
Deerhoofは、サンフランシスコで結成された実験的ロックバンドである。ノイズ、インディーロック、アートポップ、パンク、プログレッシヴな展開、童謡のようなメロディを、ひとつの鍋に入れてかき混ぜるような音楽性を持つ。
だが、面白いのは、Deerhoofがただ難解なバンドではないことだ。
彼らの曲には、ちゃんとポップの芯がある。メロディは口ずさめる。リズムは身体を動かす。ギターは変な形に曲がっているのに、なぜかキャッチーだ。
Twin Killersは、その魅力がとてもわかりやすく出ている。
PopMattersはThe Runners Fourのレビューで、Twin Killersについて、ニューウェイヴ的なグルーヴとポストパンク的なフックの間を行き来する曲だと評している。さらに、Deerhoofはラジオを襲撃して、ラジオ向きではない音楽を作る、といった趣旨の表現でそのひねくれたポップ性を捉えている。PopMatters
この言い方はかなり的確である。
Twin Killersは、たしかにポップソングとしての瞬発力がある。イントロからリフが立っていて、曲が始まった瞬間に耳をつかむ。けれど、普通のロックソングのようにまっすぐ進まない。拍の取り方、ギターの噛み合い方、ドラムの突っ込み方が、常に少しずれている。
そのずれが気持ちいい。
Treble Zineは、Twin Killersについて、よりブルージーな音を持ち、The Jon Spencer Blues Explosionを思わせるところがあると評している。Treble Zine
たしかに、この曲にはガレージロック的な土っぽさもある。
Deerhoofというと、変拍子や実験性に目が行きがちだが、Twin Killersではギターのざらつきとドラムの打撃がかなり前に出ている。頭で聴く前に、まず身体が反応する曲である。
The Runners Four全体の中でも、Twin Killersは入口として重要だ。
1曲目のChatterboxesが不思議な前口上のように始まり、その直後にTwin Killersが飛び込んでくる。ここでアルバムは一気に走り出す。The Runners Fourという長い旅の序盤に、Deerhoofはまずこの曲で聴き手の足元を崩すのだ。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞全文は、Deerhoofの公式Bandcampページで確認できる。ここでは権利に配慮し、曲の核心を示す短い部分のみを引用する。
Pretty pretty twin sisters
和訳:
とてもかわいい双子の姉妹
この短いフレーズは、Twin Killersの不穏なかわいさを象徴している。
言葉だけを見ると、とても単純だ。
かわいい双子の姉妹。
その響きには、子どもの絵本のような明るさがある。二人で同じ服を着て、同じ顔で笑っているような、少し古い写真のようなイメージも浮かぶ。
しかし、曲のタイトルはTwin Killersである。
かわいい姉妹は、同時に殺し屋でもあるかもしれない。あるいは、かわいらしさそのものが、何かを欺くための仮面なのかもしれない。
この一行のすぐ近くには、traitors、lies、destroyers、killers、deceiversといった言葉が並ぶ。公式Bandcampの歌詞でも、双子の姉妹は単に無垢な存在としてではなく、裏切りや破壊と結びついている。Deerhoof
つまり、この曲の双子は二重性の象徴なのだ。
かわいい。
でも危ない。
美しい。
でも嘘をつく。
光っている。
でも壊す。
Deerhoofは、その矛盾を短い言葉の反復と、ギターのねじれで描いている。
歌詞引用元:Deerhoof公式Bandcamp Twin Killers
コピーライト:Bandcamp上ではall rights reservedと記載。The Runners Fourは2005年10月11日リリースとして掲載されている。Deerhoof
4. 歌詞の考察
Twin Killersの歌詞は、非常に短く、断片的である。
しかし、その断片の配置はかなり鋭い。
まず目立つのは、双子というモチーフだ。
双子は、ポップカルチャーの中でしばしば不思議な存在として描かれる。同じ顔、同じ声、同じ動き。かわいらしくもあり、不気味でもある。自分と同じ存在がもう一人いるという感覚は、親密さと恐怖を同時に呼び起こす。
Twin Killersでは、その双子性が、裏切りや欺きと結びつく。
二人でひとつのように見える存在。
だが、その統一感は信頼ではなく、共犯性として響く。
Pretty pretty twin sistersという甘い響きのあとに、wicked destroyersやkillersのような言葉が続くことで、聴き手は見た目のかわいさを信じられなくなる。
この曲は、外見と内面のズレを歌っているとも言える。
やさしそうに見えたものが、実は嘘だった。
無邪気に見えたものが、破壊的だった。
味方だと思って背中を見せたら、裏切られた。
この感情は、歌詞の中で細かく説明されない。けれど、Showed my back and so longという流れからは、背を向けた瞬間に何かが終わったような感覚がある。
信頼した相手に背を向ける。
その背中が、最も無防備な場所になる。
そして、別れが来る。
Twin Killersの短さは、この裏切りの瞬間にとても合っている。
長く語らない。
説明しない。
一瞬で刺す。
曲そのものが、小さな刃物のように動く。
サウンド面でも、この歌詞の二重性は強く表れている。
イントロからギターは乾いている。リフはシンプルに聞こえるが、どこかまっすぐではない。ドラムは強く打ち込まれるが、安定したロックの土台というより、足元を揺さぶる装置のようだ。
Satomi Matsuzakiの声は、攻撃的に叫ぶわけではない。
むしろ、平熱に近い。
この声が不思議である。
歌詞には殺し屋や裏切り者が出てくるのに、声は過剰に恐怖を演出しない。まるで、怖い話を子どもの歌のように歌っているように聞こえる。
ここにDeerhoofの魔法がある。
もし同じ歌詞を、重いメタルバンドが低い声で歌ったら、かなりわかりやすいホラーになるだろう。だがDeerhoofはそうしない。かわいい声と歪んだギターを並べ、聴き手の感覚をずらす。
かわいいのか、怖いのか。
楽しいのか、不穏なのか。
踊ればいいのか、身構えればいいのか。
その判断を保留させる。
Twin Killersは、まさにその保留の曲である。
Cokemachineglowのレビューでは、Twin Killersが別世界のDear Prudenceのように始まり、そこから70年代ファンクのグルーヴへ潜ると評されている。また、Satomiの歌詞に見られる鏡像や二重性への関心が、この曲では特に明白だとも指摘されている。Cokemachineglow
この鏡像や二重性という視点は、とても重要だ。
双子は、鏡のような存在である。
自分と同じ顔をした他者。
同じように見えて、完全には同じではない存在。
Twin Killersの歌詞では、双子の姉妹が単に二人いるというより、ひとつの人格が二つに割れているようにも感じられる。かわいらしさと邪悪さ。無垢と暴力。信頼と裏切り。その二つが、同じ顔で立っている。
これは人間関係の歌としても読める。
ある人の中に、優しさと残酷さが同居している。
ある関係の中に、愛情と裏切りが同居している。
ある記憶の中に、輝きと嘘が同居している。
歌詞に出てくるSo fine, so shine what we hadという感覚は、過去に美しいものがあったことを示しているようにも聞こえる。すべてが最初から悪かったわけではない。むしろ、何か輝くものがあった。
だからこそ、裏切りは痛い。
最初から敵なら、傷は浅い。
信じていたから、背中を見せた。
輝いて見えたから、近づいた。
その結果、破壊された。
Twin Killersのポップさの裏には、この小さな悲劇が潜んでいる。
ただし、Deerhoofはそれを重く泣き崩れるようには描かない。
むしろ、曲は走る。
ドラムは止まらない。
ギターは跳ねる。
声は短い言葉を投げる。
このスピードによって、裏切りの痛みは感傷ではなく、奇妙なアクションへ変わる。
泣くより先に、走る。
理解するより先に、リフが鳴る。
この瞬発力がTwin Killersの魅力である。
また、曲の中にはブルース的なざらつきもある。Treble Zineが指摘したように、The Jon Spencer Blues Explosion的な感触を想起させる部分があるのも納得できる。Treble Zine
だが、Deerhoofのブルースは伝統的なブルースではない。
壊れたおもちゃのブルースである。
リズムは跳ねるが、どこか関節が変な方向に曲がっている。ギターは泥臭いが、同時に漫画的でもある。歌はかわいらしいが、言葉は毒を持つ。
Twin Killersは、ロックの基本的な快感を持ちながら、その快感を少しずつズラしていく曲なのだ。
このズレが、2005年当時のThe Runners Fourの評価にもつながっていた。
Pitchforkは2005年の年間ベストアルバム企画でThe Runners Fourを高く評価し、Deerhoofについて、ポップバンドとしては扱いにくい奇妙な混合体でありながら、独自の魅力を持つバンドとして紹介している。Pitchfork
Twin Killersは、その扱いにくさと魅力が凝縮された曲である。
ポップだが、変。
短いが、濃い。
かわいいが、危ない。
シンプルだが、聴くたびに違う角度が見える。
たった2分少しの中で、Deerhoofはロックソングを小さな迷路に変えている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Running Thoughts by Deerhoof
The Runners Fourの3曲目に収録された楽曲で、Twin Killersの直後に続く流れとして聴くと、アルバム序盤の設計がよく見える。Apple MusicでもTwin Killersの次の曲として掲載されている。Apple Music – Web Player
Twin Killersが短く鋭いナイフのような曲なら、Running Thoughtsはもう少し広がりのある思考の迷路である。ギターの絡み方、リズムの変化、曲が途中で景色を変える感覚に、Deerhoofの構築力がよく出ている。
- The Perfect Me by Deerhoof
2007年のFriend Opportunityに収録された、Deerhoofの代表的な爆発曲のひとつである。Twin Killersの跳ねるリズムや、奇妙なポップ感覚が好きなら、この曲の破裂するようなドラムとメロディにもすぐ反応できるはずだ。
Satomiの声のかわいらしさと、バンドの演奏の暴れ方が見事に噛み合っている。Deerhoofがなぜライブバンドとしても強いのかを体感できる曲である。
- Wrong Time Capsule by Deerhoof
The Runners Fourに収録された楽曲で、Billboardは同アルバムの中でTwin KillersやSpirit Ditties of No Toneと並び、比較的ストレートなロッカーとして言及している。ビルボード
Twin Killersのような即効性を持ちながら、こちらはよりメロディの輪郭がくっきりしている。Deerhoofの変さに慣れつつ、ポップソングとしての魅力も味わいたい人に合う。
- Atlas by Battles
Twin Killersのねじれたリズム感や、ロックを身体的なパズルのように組み立てる感覚が好きなら、BattlesのAtlasは相性がいい。
Deerhoofよりも機械的で、反復の快感が強いが、ドラムとギターが奇妙な建築物を作っていく感覚は近い。かわいい声と変なリズムが共存する点でも、Twin Killersの別の親戚のように聴ける。
- Sugarcube by Yo La Tengo
Twin Killersほど不規則ではないが、インディーロックの中に甘いメロディとざらついたギターを共存させる感覚が好きならおすすめである。
Yo La TengoはDeerhoofほど解体的ではないが、ノイズとポップの距離感が近い。Twin Killersの奥にある、かわいさと歪みの同居に惹かれる人なら、Sugarcubeの甘酸っぱさにも自然に入っていける。
6. かわいさと暴力が同じ顔で笑う、Deerhoofの小さな怪物
Twin Killersは、Deerhoofというバンドの魅力を短時間で伝える曲である。
まず、リフが強い。
曲が始まった瞬間に、耳がぐっと引っ張られる。ギターはシンプルなようで、妙にいびつだ。まっすぐなロックの形をしているのに、どこか角が合わないパズルのように聞こえる。
そしてドラムがすごい。
Greg Saunierのドラムは、単なるビートキープではない。曲の骨格を作りながら、同時に曲を壊している。叩くたびに、曲の重心が少しずつずれる。そのずれにギターと声が乗ることで、Twin Killersは小さな爆発を何度も起こす。
Satomi Matsuzakiのボーカルは、曲の暴力性を中和するのではなく、逆に不気味にする。
かわいい声が、かわいい言葉を歌う。
しかし、その歌の中には殺し屋がいる。
この組み合わせは、Deerhoofでなければ成立しにくい。普通なら、かわいさと暴力は対立する。けれどDeerhoofの世界では、両者は同じ顔をしている。
まさに双子なのだ。
かわいさの双子。
暴力の双子。
嘘と光の双子。
Twin Killersというタイトルは、曲の主題だけでなく、Deerhoofの音楽そのものを表しているようにも思える。
Deerhoofの音楽には、いつも二つの力がある。
- ポップでありたい力
- ポップを壊したい力
- 子どものように無邪気な力
- どこか残酷で冷たい力
- 演奏の精密さ
- 即興的な爆発
- かわいいメロディ
- 破裂するノイズ
Twin Killersでは、その二つの力が、双子のように並んでいる。
どちらか一方ではない。
二つが同時にいる。
だから、この曲は短いのに豊かに感じられる。
歌詞の物語を完全に理解しようとすると、少し逃げられる。双子の姉妹とは誰なのか。なぜ殺し屋なのか。誰が裏切ったのか。何があったのか。はっきりした答えはない。
しかし、曲を聴けば感情はわかる。
信じたものが嘘だった感覚。
かわいさの奥に危険を見つけた瞬間。
背中を見せたあとで、もう遅いと気づく感じ。
その感情が、短い歌詞と鋭い演奏の中に詰まっている。
The Runners Fourというアルバムは、20曲入りの長い作品でありながら、散漫ではない。むしろ、Deerhoofのいろいろな顔が連続して現れる万華鏡のようなアルバムである。Twin Killersは、その序盤で聴き手に強く印象を残す一曲だ。
この曲が2曲目にあることも大きい。
アルバムの扉を開けてすぐ、Deerhoofは聴き手にこう言っているように聞こえる。
ここでは、かわいいものを信用しすぎてはいけない。
でも、怖がりすぎてもいけない。
奇妙なものほど踊れる。
壊れたものほど光る。
その宣言として、Twin Killersは完璧に機能している。
Deerhoofの音楽は、しばしば難しい、変わっている、実験的と言われる。
それは間違っていない。
しかしTwin Killersを聴くと、彼らがただ頭でっかちなバンドではないことがよくわかる。曲は短く、リズムは強く、メロディは残る。ライブで鳴れば、説明より先に身体が動く。
そのうえで、歌詞や構造には奇妙な影がある。
この両立が、Deerhoofの魅力である。
Twin Killersは、きれいに整ったポップソングではない。
けれど、強烈にポップである。
ラジオ向きではないかもしれない。
けれど、一度耳に入ると忘れにくい。
かわいくないかもしれない。
でも、奇妙なかわいさがある。
危険な曲なのに、何度も聴きたくなる。
まるで、こちらを見つめる双子の姉妹のようだ。笑っている。美しい。光っている。でも、目の奥には何か別のものがある。
Twin Killersは、その目の奥を2分16秒だけ覗かせる。
そして、曲が終わったあとも、その視線だけが耳の中に残る。

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