
1. 歌詞の概要
Try Everythingは、Republicaが1998年に発表したセカンドアルバムSpeed Balladsに収録された楽曲である。
Republicaといえば、1996年のReady to GoやDrop Dead Gorgeousで知られるバンドだ。
エレクトロニックなビート、ロックギター、クラブカルチャーの硬質な光、そしてSaffronの鋭く跳ねるボーカル。
90年代後半のUKロックとダンスミュージックの境界線で、彼らは非常に鮮やかな存在感を放っていた。
Try Everythingは、そのRepublicaらしさを持ちながら、単なるハイテンションなダンスロックでは終わらない曲である。
タイトルのTry Everythingは、直訳すればすべてを試してみるという意味だ。
しかし、この曲で鳴っているのは、明るく前向きな挑戦のスローガンだけではない。
むしろ、もっと切羽詰まっている。
生まれて、生きて、やがて死ぬ。
人生は一度きり。
だから、自分はあらゆることを試してきた。
そういう感覚が、歌の中心にある。
ここでのtry everythingは、自己啓発的なきれいな言葉ではない。
夢に向かってチャレンジしよう、という爽やかなメッセージでもない。
もっとざらついていて、少し投げやりで、それでも前へ行こうとする言葉である。
試した。
失敗した。
傷ついた。
誰かと一緒にいた。
離れた。
自分が正しいのか間違っているのかもわからなくなった。
でも、それでも、何もしないよりはましだったのだ。
Try Everythingの歌詞には、会話の断片のような言葉が多い。
Jimmyという人物が登場し、胸の内を吐き出すような場面がある。
食べろ、幽霊みたいだぞ、なぜ愛する人ほど傷つけてしまうのか。
そんなふうに、生活の隙間からこぼれ落ちたような言葉が並ぶ。
物語ははっきり整理されていない。
けれど、そこにある疲労感と切実さは伝わってくる。
これは、人生をきれいに説明する曲ではない。
むしろ、説明できないまま走っている人の曲である。
Republicaの音は、もともと都市的だ。
きらびやかなポップスというより、深夜の道路標識、クラブの照明、濡れたアスファルト、テレビの砂嵐のような質感がある。
Try Everythingにも、その空気がある。
ギターは硬く、ビートは前へ押し出す。
サウンドは明るすぎず、どこか冷えている。
しかしSaffronの声が入ると、その冷たさに人間の体温が差し込む。
彼女の声は、泣き崩れる声ではない。
むしろ、涙を許さない声だ。
傷ついているのに、立っている。
疲れているのに、まだ言葉を投げ返す。
だからTry Everythingは、挫折の歌でありながら、負けの歌ではない。
試した結果、すべてがうまくいったわけではない。
むしろ、かなり壊れている。
でも、その壊れ方ごと肯定している。
人生は一度きり。
ならば、何もしないまま終わるより、試して壊れたほうがいい。
そんな乱暴な美学が、この曲にはある。
2. 歌詞のバックグラウンド
Try Everythingが収録されたSpeed Balladsは、Republicaのセカンドアルバムである。
1998年にリリースされ、デビューアルバムRepublicaの成功を受けた作品として位置づけられる。
ファーストアルバムのRepublicaは、Ready to Goの強烈なヒットによって広く知られるようになった。
あの曲は、まさに90年代のエネルギーを閉じ込めたような一曲だった。
ギターとブレイクビーツ。
スポーツ番組やCMにも似合う即効性。
そして、今すぐ走り出せと言わんばかりのフック。
Ready to Goは、Republicaの名前を一気に押し上げた。
そのあとに作られたSpeed Balladsは、同じ路線をただ繰り返す作品ではない。
より暗く、より硬く、よりアルバム全体としての陰影が濃い。
Try Everythingは、その中でも重要な位置にある曲である。
アルバムでは3曲目に配置され、冒頭のFrom Rush Hour With Love、Fading of the Manに続いて登場する。
この並びが示すように、Speed Balladsは最初からかなり速度がある。
しかし、その速度は単純な快楽だけではない。
どこか焦りが混じっている。
90年代後半のUK音楽シーンは、非常に変化の激しい時代だった。
ブリットポップの熱がまだ残る一方で、ビッグビート、テクノ、ドラムンベース、エレクトロニックロックが一気に広がっていた。
The Prodigy、Garbage、Skunk Anansie、Curve、Placebo、そしてRepublicaのようなバンドは、ロックの形を変えながら、クラブ以降の時代の音を鳴らしていた。
Republicaは、その中でも特にポップなフックを持っていた。
だが、同時にサウンドは鋭かった。
単なる踊れるロックではなく、都市の神経質な空気を抱え込んでいた。
Try Everythingにも、その二面性がある。
サビの言葉は覚えやすい。
タイトルも非常に強い。
一度聴けば、Just try everythingという感覚が頭に残る。
しかし、歌詞の内側は明るいだけではない。
登場人物たちは疲れている。
愛する人を傷つけ、傷つけられ、自分の体も心もすり減っている。
それでも、曲は止まらない。
ここがRepublicaらしい。
彼らの音楽は、暗さの中に沈み込まない。
むしろ暗さをビートに変える。
不安をギターのリフに変える。
疲労をシンセの光に変える。
Try Everythingは、その変換がよく表れた曲である。
また、この曲はRepublicaのキャリアにおいて、少し不運な時期の楽曲でもある。
Speed Balladsは英国ではリリースされたが、所属レーベルDeconstruction Recordsの混乱もあり、アメリカでは当初十分な形で展開されなかった。
Try Everythingもシングルとして展開される予定があったものの、限定的なリリースにとどまったとされる。
この背景は、曲の印象と妙に重なる。
試した。
しかし、すべてが開けたわけではない。
勢いはあった。
けれど、状況は噛み合わなかった。
Try Everythingというタイトルは、結果的にRepublica自身のキャリアにも響く言葉になっている。
90年代後半の音楽シーンで、ロックでもあり、ダンスでもあり、ポップでもあり、パンク的でもある音を鳴らしたこと。
ジャンルの中間地帯で、自分たちの場所を探したこと。
その姿勢自体が、try everythingだったのかもしれない。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞の全文引用は避け、権利を侵害しない範囲で短いフレーズのみを扱う。
Try everything
すべてを試してみる。
この短いフレーズが、曲の核である。
ただし、ここでのtry everythingは、明るい冒険の合図だけではない。
もっと追い詰められた響きがある。
選択肢がありすぎる時代。
何者にでもなれそうで、実際には何者にもなれないような時代。
その中で、立ち止まるよりも、何かに手を伸ばすしかない。
この曲のtry everythingには、そんな切迫感がある。
you get one try
チャンスは一度きり。
この言葉は、非常に重い。
人生は繰り返せない。
やり直しがきく部分もあるが、完全に同じ時間は戻らない。
誰かを傷つけた瞬間も、何かを逃した瞬間も、あとからなかったことにはできない。
だからこそ、試すことにはリスクがある。
Try Everythingは、失敗を恐れずに挑戦しようという単純な歌ではない。
むしろ、失敗することを知ったうえで、それでも試した人の歌である。
don’t say anything
何も言わないで。
この言葉には、疲れ切った関係の空気がある。
言葉が役に立たない瞬間がある。
何を言っても言い訳になる。
何を言っても相手をさらに傷つける。
だから、もう何も言わないでほしい。
Republicaの音は派手に聴こえるが、歌詞のこうした断片にはかなり痛みがある。
踊れるビートの裏側に、会話の失敗がある。
強い声の裏側に、沈黙への欲望がある。
この落差が、Try Everythingをただのパーティートラックにしない。
just try everything
ただ、すべてを試してみる。
曲の終盤でこの感覚が繰り返されるとき、それは説得というより呪文に近い。
何を試せばいいのか。
どこへ行けばいいのか。
誰を信じればいいのか。
答えはない。
それでも、止まるな。
何かを試せ。
全部試せ。
この反復は、励ましでもあり、強迫でもある。
そこがいい。
Try Everythingは、前向きさと不安が同じリズムで走っている曲なのだ。
歌詞引用元:各公式配信サービス掲載歌詞、歌詞データベース掲載情報
著作権表記:Try Everything / Written by Saffron, Tim Dorney, Johnny Maleほか。歌詞の権利は各権利者に帰属する。
4. 歌詞の考察
Try Everythingの歌詞を読むと、まず感じるのは断片性である。
物語が一本の線で進むわけではない。
Jimmyという人物が現れ、胸の内を話し、食べろ、幽霊みたいだ、と言う。
そのあとに、関係の破綻や、自分の正しさと間違い、恐怖に飲まれるなという言葉が続く。
まるで、深夜の会話をところどころ録音したような歌詞である。
全部は聞き取れない。
話の前後もわからない。
でも、そこにいる人たちが壊れかけていることはわかる。
この感覚が非常に90年代的だ。
90年代後半のロックやエレクトロニックミュージックには、しばしば情報過多の感覚がある。
テレビ、広告、クラブ、ドラッグ、都市、メディア、雑誌、ファッション、夜の移動。
すべてが高速で流れていく。
Try Everythingも、その速度の中にある。
歌詞は日記のようであり、電話口の会話のようであり、誰かの酔った告白のようでもある。
整理されないまま、感情の断片だけが飛び交う。
そして、その混乱の上に、try everythingという非常に単純なフレーズが乗る。
この単純さが効いている。
複雑な人生に対して、複雑な答えを出すのではない。
むしろ、ものすごく単純な言葉で押し返す。
全部試せ。
それは乱暴だ。
だが、乱暴だからこそ届くことがある。
人は、迷っているときに丁寧な分析を聞きたいとは限らない。
むしろ、体を動かすための短い合図がほしいときがある。
Try Everythingは、その合図の曲である。
ただし、この曲の合図は、きれいな成功へ向かっているわけではない。
歌詞には、失敗の匂いが濃い。
人間関係はうまくいっていない。
誰かは傷つき、誰かは言葉を間違え、誰かは自分の体調すら崩している。
食べろ、幽霊みたいだぞ、というような言葉には、かなり具体的な疲弊がある。
精神的な問題だけではなく、身体が削られている感じがする。
この身体性は重要だ。
Republicaの音楽は、機械的なビートやエレクトロニックな質感を持っている。
しかし、そこにSaffronの声が乗ると、一気に身体が戻ってくる。
Try Everythingでも、声は冷たい機械の上を走っているのではない。
むしろ、機械の速度に身体を引きずられながら、それでも叫んでいるように聴こえる。
この曲の主人公は、強い人間ではないのかもしれない。
強く見せているだけかもしれない。
あるいは、強くならなければならなかっただけかもしれない。
ここでの強さは、落ち込まないことではない。
傷つかないことでもない。
壊れたあとに、まだ何かを試そうとすることだ。
その意味で、Try Everythingはかなり切実なサバイバルソングである。
人生は一度きり。
だから、失敗したくない。
でも、失敗を避けるために何もしないまま終わることのほうが怖い。
この矛盾が曲全体を動かしている。
try everythingという言葉には、希望がある。
同時に、焦りもある。
もっと良い場所があるはずだ。
もっと良い自分になれるはずだ。
でも、どうすればいいのかわからない。
だから、全部試してみるしかない。
これは、若さの歌でもある。
けれど、若者だけの歌ではない。
人生のどの時期にも、人は行き詰まる。
仕事、人間関係、恋愛、創作、生活、健康。
何かがうまくいかなくなったとき、人は急に自分の選択肢を数え始める。
このままでいいのか。
変えるべきなのか。
逃げるべきなのか。
戦うべきなのか。
何を試せばいいのか。
Try Everythingは、その答えを教えない。
ただ、立ち止まるなと鳴る。
この突き放し方が、Republicaらしい。
優しく包み込むのではない。
手を取って導くのでもない。
背中を押すというより、背後で警報のように鳴る。
その音に急かされて、聴き手は一歩動く。
サウンド面でも、この曲は非常に面白い。
Ready to Goに比べると、Try Everythingは少し陰りがある。
Ready to Goは、タイトル通り準備完了の爆発だった。
広告的で、スポーツ的で、瞬発力のあるアンセムだった。
一方、Try Everythingは、もっと後ろを引きずっている。
ビートは前へ進むが、気分は晴れきらない。
ギターは勢いがあるが、どこか硬い。
ボーカルは強いが、余裕ではなく緊張から生まれた強さに聞こえる。
この緊張感が、Speed Balladsというアルバムの性格にも合っている。
アルバムタイトルのSpeed Balladsという言葉自体が矛盾している。
速いバラード。
スピードと感傷。
疾走と傷。
Try Everythingは、その矛盾をよく体現している。
速い。
でも、軽くない。
前へ進む。
でも、痛みを置き去りにしない。
この曲を踊れるロックとして聴くこともできる。
しかし、歌詞を追うと、そのダンスの足元にはかなり暗い影がある。
それがRepublicaの魅力なのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Ready to Go by Republica
Republicaの代表曲であり、彼らの魅力を最もわかりやすく伝える一曲である。
Try Everythingの前へ進む感覚が好きなら、Ready to Goの爆発力は外せない。
こちらはより明るく、より即効性があり、サビの強さも圧倒的だ。
エレクトロニックロックが90年代のポップカルチャーと接続した瞬間を、そのまま浴びられる。
- From Rush Hour With Love by Republica
Speed Balladsの冒頭を飾る曲で、Try Everythingと同じ時期のRepublicaのサウンドを知るうえで重要である。
都市的なスピード感と、少し映画的なムードが混ざっている。
Try Everythingが人生の一度きり感を歌う曲だとすれば、こちらはラッシュアワーの速度の中で感情が燃えていくような曲だ。
アルバム全体の入口としても非常に強い。
- Push It by Garbage
Republicaと同じく、90年代後半のロックとエレクトロニックな質感を混ぜたバンドサウンドを代表する曲である。
Shirley Mansonのボーカルには、Saffronと同じく、強さと危うさが同居している。
Try Everythingの硬質なビート感や、壊れかけた感情をポップに鳴らす感覚に惹かれる人にはよく合う。
都市の夜に響くロックとしての親和性が高い。
- Hedonism by Skunk Anansie
Try Everythingにある痛みと強さの同居を、よりソウルフルで感情的に味わいたいならこの曲が合う。
Skinのボーカルは、傷ついた感情をそのまま巨大な声に変える。
Republicaよりもロックの重心は深く、歌詞も恋愛の痛みに近いが、90年代UKオルタナティブの空気は共通している。
強い女性ボーカルの表現として並べて聴きたい。
- Connection by Elastica
90年代UKロックのクールで乾いた側面を楽しみたい人に合う曲である。
Republicaほどエレクトロニックではないが、反復するリフ、短く鋭いフック、感情を見せすぎないボーカルの距離感に通じるものがある。
Try Everythingの都市的な硬さが好きなら、Connectionのミニマルなかっこよさも刺さるはずだ。
無駄を削ったギターロックの魅力がある。
6. すべてを試したあとに残るもの
Try Everythingは、Republicaの代表曲として最初に語られることは少ないかもしれない。
多くの人にとって、RepublicaといえばReady to Goだろう。
あの曲のインパクトは大きい。
90年代のスポーツ映像、ゲーム、CM、都市のスピード感と結びついた、非常に強いアンセムだった。
しかし、Try Everythingには別の深みがある。
Ready to Goが出発の曲だとすれば、Try Everythingは走り出したあとに見えてくる疲れの曲である。
準備はできた。
飛び出した。
いろいろ試した。
その結果、どうなったのか。
この曲は、その問いの中にいる。
すべてを試すことは、自由に見える。
だが同時に、すべてを試さなければならないという焦りにもなる。
現代的な感覚で言えば、選択肢が多すぎる時代の歌でもある。
何でもできる。
どこへでも行ける。
誰にでもなれる。
そう言われるほど、人は逆に苦しくなることがある。
何を選べばいいのか。
何を試せば正解なのか。
そもそも正解などあるのか。
Try Everythingは、その不安を抱えたまま、前へ進む。
ここが美しい。
この曲は、成功した人の余裕ある回想ではない。
全部試したらうまくいきました、という話ではない。
むしろ、全部試してもまだ答えがない人の歌だ。
でも、答えがないからこそ、また試す。
この繰り返しの中に、人生のリアルがある。
人は一度の挑戦で変わることもある。
だが、多くの場合はそうではない。
試して、失敗して、少し学んで、また別のことを試す。
その過程で、誰かを傷つけたり、自分が傷ついたりもする。
Try Everythingの歌詞に出てくる人間関係の痛みは、まさにその過程の傷だ。
愛する人ほど傷つけてしまう。
自分を立て直そうとすると、関係が壊れる。
言葉を尽くしても、真実と嘘が混ざってしまう。
それでも、曲は悲劇に沈まない。
ここで大きいのがSaffronの声である。
彼女の声には、甘く寄り添う感じがあまりない。
むしろ、聴き手と一定の距離を取りながら、強く突き放す。
その突き放しが、逆に救いになる。
泣きたいなら泣け、でも止まるな。
傷ついているなら、それを認めろ、でも黙って沈むな。
そんな感じだ。
Republicaの音楽は、感情を露骨に説明しすぎない。
その代わり、ビートと声の圧力で感情を運ぶ。
Try Everythingも、歌詞だけを見ると断片的で、意味がつかみにくい部分がある。
しかし、音で聴くとわかる。
これは、生き延びるための曲だ。
世界はやさしくない。
人間関係は面倒だ。
自分は正しくないかもしれない。
何をしても、どこかで間違えるかもしれない。
それでも、試せ。
その一語に曲は戻ってくる。
この曲のサウンドには、90年代後半の終末感も少しある。
1998年という年は、20世紀の終わりが近づいていた時期である。
ミレニアム前夜の空気。
テクノロジーへの期待。
都市の速度。
同時に、どこか落ち着かない不安。
Republicaの音は、その空気にとても合っていた。
ギターだけのロックでは、もう足りなかった。
クラブビートだけでも、まだ足りなかった。
両方が必要だった。
身体を動かすリズムと、怒りを鳴らすギター。
デジタルな光と、人間の声。
Try Everythingは、その混合体として鳴っている。
そして今聴くと、この曲は単なる90年代の音ではなく、かなり普遍的な感情を持っていることがわかる。
人生は一度きり。
この言葉は、古くならない。
ただし、この曲はその事実をロマンチックに飾らない。
一度きりだから美しい、というだけではない。
一度きりだから怖い。
一度きりだから失敗が痛い。
一度きりだから、迷っている時間すらも取り戻せない。
だから、試すしかない。
この結論は乱暴だが、力がある。
何を試してもいい。
仕事でも、恋愛でも、逃避でも、創作でも、別れでも、謝罪でも、沈黙でもいい。
とにかく何かを試す。
自分の人生が止まってしまわないように。
Try Everythingは、そのためのビートをくれる。
曲の終盤で、just try everythingという感覚が繰り返されるとき、それはだんだん意味を失っていく。
意味を失う代わりに、リズムになる。
言葉ではなく、体の動きになる。
そこが音楽の強さだ。
同じ言葉を何度も繰り返すことで、言葉は説明から解放される。
そして、身体に入ってくる。
Try Everythingを聴いていると、頭の中で考えすぎていたことが少しだけ単純になる。
正解かどうかはわからない。
でも、何かをするしかない。
この単純化は、雑ではある。
しかし、ときには必要だ。
Republicaはこの曲で、人生の複雑さを解決していない。
ただ、その複雑さの中を突っ切るためのエンジンを鳴らしている。
だからTry Everythingは、明るい応援歌ではない。
でも、確かに人を動かす曲である。
聴き終わったあとに、すべてが晴れるわけではない。
問題は残る。
関係の痛みも残る。
自分の中の不安も残る。
それでも、少しだけ前に出る感じがある。
それがこの曲の効き方だ。
RepublicaのTry Everythingは、成功のための歌ではなく、停滞しないための歌である。
勝つためではなく、生き延びるために試す。
正解を見つけるためではなく、自分がまだ動けることを確かめるために試す。
その意味で、この曲はとても人間的だ。
機械的なビートの上で、非常に人間的な焦りが歌われている。
硬いサウンドの中に、柔らかく傷ついた心が見え隠れする。
そこに、Republicaというバンドの魅力がある。
Try Everythingは、90年代後半のエレクトロロックの一曲でありながら、今聴いても十分に刺さる。
なぜなら、私たちは今も同じように迷っているからだ。
選択肢は増えた。
情報も増えた。
でも、人生が一度きりであることは変わらない。
だから、この曲の言葉はまだ鳴る。
すべてを試してみる。
たとえ間違っても。
たとえ傷ついても。
たとえ答えが出なくても。
その荒っぽい前進感こそが、Try Everythingのいちばん美しいところなのだ。
7. 参照情報
RepublicaのTry Everythingは、1998年のアルバムSpeed Balladsに収録されており、Apple Musicでは同作の3曲目、演奏時間4分01秒の楽曲として掲載されている。Speed Balladsは1998年にリリースされたRepublicaのセカンドアルバムで、英国アルバムチャートで37位を記録した作品として紹介されている。また、DiscogsではTry Everythingのリリース情報が確認でき、Shazamでも同曲のミュージックビデオ情報が確認できる。Spotify上でも同曲の配信と歌詞掲載が確認できる。

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