アルバムレビュー:『Treat Myself』 by Meghan Trainor

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2020年1月31日

ジャンル:ポップ、ダンス・ポップ、R&Bポップ、ファンク・ポップ、エレクトロ・ポップ、ドゥーワップ・ポップ、アダルト・コンテンポラリー

概要

Meghan Trainorの3作目のメジャー・スタジオ・アルバム『Treat Myself』は、彼女がデビュー作『Title』で確立したレトロ・ポップ路線から一歩外へ出て、より現代的なポップ、R&B、ダンス・ポップへ接近した作品である。2014年の「All About That Bass」によって、Meghan Trainorは身体肯定、ドゥーワップ風のコーラス、明快なフックを持つアーティストとして広く認知された。続く『Thank You』では「NO」「Me Too」などを通じて、よりダンス・ポップ寄りの自己主張を打ち出したが、『Treat Myself』ではその方向性をさらに広げ、自己愛、恋愛、結婚、メンタルヘルス、承認欲求、ポップ・スターとしての再調整をテーマにしている。

本作は、発表までに複数回の延期を経たアルバムとしても知られる。Meghan Trainorは当初、2018年頃から本作のリリースを予定していたが、収録曲や方向性の調整を重ねた結果、正式発売は2020年初頭となった。そのため『Treat Myself』には、単一の短期間で作られたアルバムというより、彼女が数年にわたって模索したポップ表現が集められている印象がある。レトロ・ポップ、現代的なR&B、EDM以後の軽いダンス・ビート、ファンク調のベース、バラード、ゲスト参加曲が混在しており、アルバム全体は多面的である。

タイトルの『Treat Myself』は、「自分を大切にする」「自分にご褒美を与える」という意味を持つ。これはMeghan Trainorのキャリア全体に通じる自己肯定のテーマを引き継ぐ言葉である。ただし、本作における自己肯定は、デビュー時の「自分の身体を好きになろう」というシンプルなメッセージから少し変化している。ここでは、外見、恋愛、成功、結婚、周囲からの期待、精神的な疲れなど、より多くの要素が絡み合う。彼女は明るいポップ・ソングの中で、自分自身を守ること、楽しむこと、愛されること、自信を回復することを歌っている。

音楽的には、『Title』で強かった1950〜60年代風のドゥーワップやガール・グループ的な要素は残りつつも、全体としてはより2020年前後のメインストリーム・ポップへ近づいている。シンセ・ベース、トラップ以後の軽いリズム、R&B風のヴォーカル処理、クラブ・ポップ的なビート、ファンク・ポップの明るさが多く使われている。そのため、『Title』の統一されたレトロ感に比べると、本作はジャンルの振れ幅が大きい。

本作には、Nicki Minaj、Pussycat Dolls、AJ Mitchell、Sasha Sloan、Lennon Stella、Mike Sabathなどが参加しており、ゲストの多さも特徴である。特に「Nice to Meet Ya」はNicki Minajのラップを迎え、Meghan Trainorのポップ・キャラクターをより現代的なヒップホップ寄りの文脈へ接続している。「Genetics」ではPussycat Dollsを迎え、身体性とパフォーマンス性を強調する。「After You」や「Workin’ on It」では、バラードや内省的なポップの方向性も見せる。

『Treat Myself』の大きなテーマは、自己肯定の再構築である。Meghan Trainorはすでに「自信を持つ女性」というイメージを持つアーティストだったが、そのイメージは時に本人を縛るものにもなり得る。常に明るく、常に自信に満ち、常に自分を肯定しているように見せることは、ポップ・スターとしての役割である一方、現実の人間としては負担にもなる。本作には、その明るい自己肯定の裏にある不安や疲れが時折にじむ。「Workin’ on It」はその代表であり、自分を愛することが簡単ではなく、継続的な努力であることを示している。

歌詞の面では、恋愛と自己愛が強く結びついている。「Wave」では恋愛感情を波のような高揚と沈降として描き、「Ashes」では過去の関係からの解放を歌う。「Evil Twin」では自分の中にある別人格的な衝動をユーモラスに扱い、「Blink」では人生の短さと今を楽しむことが歌われる。「Babygirl」では愛されることへの甘さが、「Here to Stay」では関係の安定が描かれる。Meghan Trainorらしく、歌詞は基本的に分かりやすく、直接的である。

一方で、本作は批評的には評価が分かれやすい作品でもある。『Title』のような明確なレトロ・ポップ路線に比べると、『Treat Myself』は方向性がやや分散している。自己肯定、恋愛、R&B、ダンス・ポップ、バラード、ファンク風ポップが並び、曲ごとの魅力はあるが、アルバム全体としての統一された世界観はやや弱い。しかし、その分、Meghan Trainorが自分の初期イメージを超えて、どのように現代ポップの中で生き残ろうとしたかが見える作品でもある。

日本のリスナーにとって『Treat Myself』は、Meghan Trainorのキャリアにおける過渡期を理解するうえで重要なアルバムである。『Title』のレトロな楽しさや、『Takin’ It Back』の原点回帰に比べると、本作はより現代的で、実験的で、やや不均一である。しかし、そこにはポップ・アーティストが一つの成功イメージから脱却しようとする試行錯誤が刻まれている。明るい曲の中にも不安があり、自己肯定の中にも迷いがある。その点が、本作を単なる軽いポップ作品以上のものにしている。

全曲レビュー

1. Wave feat. Mike Sabath

アルバム冒頭の「Wave」は、Mike Sabathを迎えた楽曲であり、『Treat Myself』の中でも特に現代的なエレクトロ・ポップ/R&Bの質感を持つ。タイトルの「Wave」は波を意味し、恋愛感情の高まり、沈み込み、制御できない揺れを象徴している。

サウンドは、静かな導入から大きなサビへ広がる構成を持つ。低音は深く、ヴォーカルには空間的な処理が施されている。『Title』期の手拍子やドゥーワップ風コーラスとは異なり、ここではよりダークで流動的なポップ・サウンドが中心である。Meghan Trainorの声も、明るく弾むというより、やや抑制され、感情の波に身を任せるように響く。

歌詞では、相手への感情に飲み込まれていく感覚が描かれる。波は美しくも危険なものであり、乗りこなすこともできれば、飲み込まれることもある。この曲の恋愛は、軽快な遊びではなく、感情の強い上下動として表現されている。

Mike Sabathの参加により、楽曲にはデュエット的な奥行きが生まれている。二人の声は、関係の中で引き寄せ合い、離れ、再び重なるように配置される。「Wave」は、アルバム冒頭として、Meghan Trainorが従来のレトロ・ポップだけではない新しい表情を見せる楽曲である。

2. Nice to Meet Ya feat. Nicki Minaj

「Nice to Meet Ya」は、Nicki Minajを迎えたシングル曲であり、本作の中でも最も現代的なポップ/ヒップホップ寄りの楽曲である。タイトルは「はじめまして」という意味だが、ここでは新しい自分を提示する挨拶のようにも機能している。Meghan Trainorが、初期のレトロ・ポップ・イメージから離れ、よりクールで自信に満ちた姿を見せようとする曲である。

サウンドは、軽いトラップ以後のビートとポップなフックを組み合わせている。リズムはシンプルだが、低音はしっかりしており、Meghanのヴォーカルは明るさよりも少し鋭い態度を持つ。『Title』のようなドゥーワップ的な無邪気さは薄く、より現代の女性ポップ・アンセムとしての性格が強い。

歌詞では、自分の魅力、自信、独立した態度が歌われる。相手に気に入られるために自分を小さくするのではなく、自分の価値を分かったうえで登場する。Nicki Minajのラップは、この自己演出をさらに強める役割を果たしている。Nickiの存在によって、曲は単なるポップ・ソングから、よりヒップホップ的な強気のキャラクターを持つ楽曲になる。

「Nice to Meet Ya」は、『Treat Myself』の中で商業的な現代性を最も意識した楽曲である。Meghan Trainorが自分のブランドを新しく見せようとした試みとして重要であり、アルバム全体の方向性の広がりを象徴している。

3. Funk

「Funk」は、タイトル通りファンク的なリズムと明るいグルーヴを前面に出した楽曲である。Meghan Trainorの声とファンク・ポップは相性がよく、この曲では彼女の軽快で少しコミカルなキャラクターが自然に活かされている。

サウンドは、ベースラインとリズムの跳ねが中心で、全体にダンサブルな感覚がある。伝統的なファンクの生々しさというより、現代ポップ向けに整理されたファンク風のサウンドである。Bruno MarsやMark Ronson以降のレトロ・ファンク再評価とも近い文脈で聴くことができる。

歌詞では、相手に対する魅力、踊ること、気分を上げることが中心にある。深刻な内容ではなく、音楽そのものの楽しさを伝える曲である。Meghanのヴォーカルは、ここでは力強く歌い上げるよりも、リズムに乗って言葉を弾ませることを重視している。

「Funk」は、アルバムの中で明るい身体性を担う楽曲である。『Treat Myself』は現代的なR&Bやバラードも多いが、この曲ではMeghan Trainorのポップな明るさとダンス感覚が前面に出ている。レトロ要素と現代的なポップ感覚をつなぐ一曲である。

4. Babygirl

「Babygirl」は、甘く親密な恋愛感情をテーマにした楽曲である。タイトルの「Babygirl」は、相手から愛情を込めて呼ばれるような言葉であり、曲全体には恋愛の中で大切にされる感覚、甘え、安心感が含まれている。

サウンドはR&Bポップ寄りで、滑らかなビートと柔らかなメロディが中心である。『Title』のようなレトロな手拍子ポップではなく、より現代的で、少しメロウな質感がある。Meghanの声も、ここでは明るい自己主張より、柔らかい愛情表現に向いている。

歌詞では、相手との親密な関係の中で、自分が特別に扱われる喜びが歌われる。自己肯定が一人で完結するのではなく、愛される経験によって補強される。Meghan Trainorの楽曲には、強い女性像と同時に、愛されたい、守られたいという感情も共存している。この曲はその柔らかい側面を示す。

「Babygirl」は、アルバムの中で派手な代表曲ではないが、Meghan Trainorのロマンティックな一面を伝える楽曲である。R&Bポップ的な滑らかさと、彼女らしい親しみやすさが同居している。

5. Workin’ on It feat. Lennon Stella & Sasha Sloan

「Workin’ on It」は、Lennon StellaとSasha Sloanを迎えた、アルバムの中でも特に内省的な楽曲である。タイトルは「それに取り組んでいる」という意味で、自分を愛すること、自信を持つこと、心の不安と向き合うことが、簡単な宣言ではなく継続的な努力であると歌われる。

Meghan Trainorはしばしば自己肯定のアーティストとして語られるが、この曲ではその自己肯定の裏側が描かれる。周囲からは自信に満ちているように見えても、実際には自分の外見や価値に不安を抱え、完璧に自分を愛せるわけではない。これは、彼女のキャリアにおいて非常に重要な自己認識である。

サウンドは抑制され、アコースティック寄りのポップと現代的なヴォーカル処理が組み合わされている。Lennon StellaとSasha Sloanの声は、Meghanの声とは異なる繊細さを加え、曲に共同体的な感覚を与える。複数の女性の声が重なることで、この不安が個人だけのものではなく、多くの人が共有するものとして響く。

「Workin’ on It」は、『Treat Myself』の中で最も誠実な楽曲の一つである。自己愛をスローガンとしてではなく、日々の課題として描くことで、Meghan Trainorの音楽に深みを与えている。

6. Ashes

「Ashes」は、過去の恋愛や傷ついた関係から解放されることをテーマにした楽曲である。タイトルの「Ashes」は灰を意味し、燃え尽きた関係、終わった愛、そこから残ったものを象徴している。過去を振り返りながらも、そこにとどまらず前へ進む姿勢が描かれる。

サウンドは、ややダークなポップ・バラード調で、ビートは控えめながらも重さがある。Meghanの声は、怒りよりも決意を含んでいる。彼女はここで、失恋に打ちのめされる人物ではなく、燃え尽きたものを見つめたうえで、自分を取り戻す人物として歌う。

歌詞では、相手との関係が終わり、残された灰の中から立ち上がるような感覚が描かれる。これは、ポップ・ミュージックでよく使われる再生のテーマであるが、Meghanらしく、過度に暗くなりすぎず、最終的には自己回復へ向かう。

「Ashes」は、アルバムに感情的な陰影を与える曲である。明るい自己肯定やダンス・ポップだけでなく、過去の痛みから距離を取ることも、本作の「自分を大切にする」というテーマに含まれている。

7. Lie to Me

「Lie to Me」は、恋愛における嘘、自己欺瞞、相手への依存をテーマにした楽曲である。タイトルは「私に嘘をついて」という意味で、相手の言葉が真実でないと分かっていても、なおその言葉を求めてしまう複雑な心理が描かれる。

Meghan Trainorの多くの楽曲では、不誠実な相手を軽快に切り捨てる姿勢が見られるが、この曲ではより弱く、揺れやすい感情が表れている。嘘を拒否するのではなく、むしろ一時的な安心のために嘘を求めてしまう。この矛盾が曲の中心である。

サウンドは、R&Bポップ的で、やや暗い雰囲気を持つ。ビートは滑らかで、Meghanの声は抑え気味に響く。明るいフックで押し切るのではなく、感情の曖昧さを保つ構成になっている。

「Lie to Me」は、『Treat Myself』の中で恋愛の脆さを示す楽曲である。自分を大切にすると言いながらも、人は時に傷つく関係に戻りたくなる。その弱さを描くことで、アルバムの自己肯定テーマはより現実的になる。

8. Here to Stay

「Here to Stay」は、関係の安定と持続をテーマにした温かい楽曲である。タイトルは「ここにとどまる」「ずっといる」という意味で、恋愛や結婚における安心感、相手との長期的な絆が歌われる。

Meghan Trainorは結婚を経て、この時期の作品で愛の安定をより多く歌うようになった。『Title』の「Dear Future Husband」では未来の夫への条件をコミカルに歌っていたが、「Here to Stay」では、実際にそばにいる相手との確かさが中心になっている。恋愛の理想から、関係の持続へと視点が変化している。

サウンドは柔らかく、アダルト・ポップ寄りの温かい質感がある。派手なダンス曲ではなく、メロディと声を中心にした構成で、聴き手に安心感を与える。Meghanの声も穏やかで、親密な感情を伝える。

「Here to Stay」は、本作の家庭的で安定した側面を示す曲である。自己肯定の先に、信頼できる関係の中で自分を保つというテーマが置かれている。

9. Blink

「Blink」は、人生の短さと今を楽しむことをテーマにした楽曲である。タイトルは「まばたき」を意味し、人生はまばたきするほど一瞬で過ぎてしまうという感覚が中心にある。Meghan Trainorらしく、このテーマは重い人生論ではなく、明るく前向きなポップ・ソングとして表現される。

歌詞では、時間はすぐに過ぎてしまうから、自分を抑えすぎず、楽しみ、踊り、今を生きるべきだと歌われる。これは『Treat Myself』というタイトルとも深く関係している。自分に厳しくしすぎず、人生の喜びを受け取ることが、自己愛の一部として描かれている。

サウンドは軽快で、ダンス・ポップ的な明るさを持つ。リズムは弾み、コーラスは覚えやすい。Meghanの声は、聴き手を励ますように前向きである。深刻なメッセージを軽いポップに変換する彼女の得意な手法がよく出ている。

「Blink」は、アルバムの中でポジティブなエネルギーを担う楽曲である。人生の有限性を、恐怖ではなく楽しむ理由へ変えている点がMeghan Trainorらしい。

10. Genetics feat. Pussycat Dolls

「Genetics」は、身体的な魅力や自信をテーマにした楽曲であり、Pussycat Dollsを迎えたバージョンでは、パフォーマンス性とセクシュアルな自信がさらに強調されている。タイトルの「Genetics」は遺伝を意味し、自分の外見や魅力を生まれ持ったものとして誇る内容になっている。

サウンドは、ダンス・ポップとファンク・ポップの中間にあり、ベースとリズムが強く前に出る。曲全体にショー的な華やかさがあり、Pussycat Dollsの参加によって、よりグループ・パフォーマンス的な雰囲気が生まれる。

歌詞では、自分のスタイルや身体への自信がユーモラスに歌われる。これは「All About That Bass」以来のMeghan Trainorのテーマと直結しているが、「Genetics」ではよりファッショナブルで、ショーアップされた形になっている。身体肯定というより、身体的魅力を見せるパフォーマンスに近い。

「Genetics」は、本作の中で最もエンターテインメント性の強い曲の一つである。自己肯定、ダンス、セクシュアリティ、ポップ・ショーの要素が結びついており、Meghan Trainorの明るい自信を象徴している。

11. Evil Twin

「Evil Twin」は、自分の中にいるもう一人の悪い自分をテーマにした楽曲である。タイトルの「Evil Twin」は「邪悪な双子」を意味し、普段の自分とは違う衝動的で大胆な人格をユーモラスに描く。Meghan Trainorの演劇的でコミカルなキャラクター性がよく表れている。

歌詞では、普段ならしないような行動や発言をしてしまう自分を、「悪い双子」のせいにする。これは責任逃れのようでいて、実際には人間の中にある二面性を軽く扱った曲である。真面目な自分と、衝動的な自分。理性と遊び心。その対比が楽しく表現される。

サウンドは、少し怪しげで、遊び心のあるポップになっている。リズムは軽快だが、メロディには少し影があり、タイトルの雰囲気に合っている。Meghanの歌唱も、まるで芝居をするように表情を変える。

「Evil Twin」は、『Treat Myself』の中でユーモアと自己分析が結びついた曲である。自分の弱さや衝動を深刻に責めるのではなく、キャラクター化して笑う。この方法はMeghan Trainorらしい自己受容の一形態である。

12. After You feat. AJ Mitchell

「After You」は、AJ Mitchellを迎えたバラードであり、愛する相手を失った後の空白をテーマにしている。タイトルは「あなたの後で」という意味で、相手がいなくなった後にどう生きるのかという不安が中心にある。

歌詞では、相手なしの未来を想像できないほど深い愛が描かれる。これは「Like I’m Gonna Lose You」にも通じるテーマであり、愛の価値を喪失の可能性から見つめる曲である。Meghan Trainorのポップな明るさとは異なる、切実でロマンティックな側面が表れている。

AJ Mitchellの声は若く柔らかく、Meghanの声と自然に重なる。二人のデュエットは、過度に劇的ではなく、穏やかな感情の交換として響く。サウンドはピアノやストリングスを中心にしたアダルト・ポップ寄りのバラードである。

「After You」は、アルバムの中で愛の深さと脆さを示す楽曲である。自己愛をテーマにした作品の中に、他者への強い依存や喪失の恐れを含めることで、感情の幅を広げている。

13. Another Opinion

「Another Opinion」は、他人の意見に振り回されることへの反発をテーマにした楽曲である。タイトルは「また別の意見」という意味で、周囲から次々に投げかけられる批評や助言、評価に対して、自分の軸を保とうとする姿勢が歌われる。

Meghan Trainorは、デビュー以来、身体、歌詞、ジェンダー観、音楽性について多くの評価や批判を受けてきたアーティストである。この曲では、そのような外部の声に対して、必要以上に従わない姿勢が示される。自分の人生や選択に対して、他人は常に意見を持つが、それをすべて受け入れる必要はない。

サウンドは軽快で、ポップなリズムを持つ。歌詞の反発は強いが、曲調は明るく、重くなりすぎない。Meghanの声は、少し皮肉を含みながらも親しみやすい。

「Another Opinion」は、本作の自己防衛的な側面を示す曲である。自己肯定とは、ただ自分を好きだと言うことではなく、他人の評価に飲み込まれないことでもある。このテーマは、Meghan Trainorのキャリアを考える上で重要である。

14. No Excuses

「No Excuses」は、本作の中でも特に明るく、レトロ・ポップ色の強い楽曲である。2018年に先行シングルとして発表された曲で、Meghan Trainorの初期スタイルを思わせる手拍子、跳ねるリズム、強気な歌詞が特徴である。

歌詞では、失礼な態度を取る相手に対して、それを許さない姿勢が歌われる。タイトルの「No Excuses」は「言い訳はなし」という意味で、相手の不誠実さや無礼を軽快に拒否する。Meghan Trainorらしい、明るいがはっきりした境界線の引き方が表れている。

サウンドは非常にキャッチーで、『Title』期のファンにも馴染みやすい。ドゥーワップやソウル・ポップ的な軽さを残しながら、ミックスは現代的で、ラジオ向けの即効性がある。Meghanの声も、ここでは最も自然に弾んでいる。

「No Excuses」は、『Treat Myself』の中で原点回帰的な役割を果たす曲である。現代的なR&Bやバラードが多い本作の中で、Meghan Trainorらしいレトロな自己主張ポップとして際立っている。

15. Have You Now

「Have You Now」は、アルバム終盤に配置されたロマンティックな楽曲であり、愛する相手を今そばに持っていることの喜びが歌われる。タイトルは「今あなたがいる」という意味で、過去の不安や孤独を越えて、現在の愛を確認する内容になっている。

サウンドは穏やかで、バラードとミッドテンポ・ポップの中間に位置する。Meghanの声は柔らかく、関係の安定や感謝を表現している。派手なフックよりも、温かい感情の持続が重視されている。

歌詞では、相手がそばにいることがどれほど大切かが歌われる。これは「Here to Stay」や「After You」とも関連するテーマであり、本作における結婚後のMeghan Trainorの視点を示している。恋愛は追いかけるものから、守りたい関係へと変わっている。

「Have You Now」は、大きなシングル向けの楽曲ではないが、アルバムの終盤に温かい余韻を与える曲である。自己肯定と恋愛の安定が結びつく、本作らしい楽曲である。

総評

『Treat Myself』は、Meghan Trainorが自身の初期イメージを保ちながら、より現代的なポップ、R&B、ダンス・ポップへ広がろうとした過渡期のアルバムである。『Title』のように明確なレトロ・ポップの統一感を持つ作品ではなく、曲ごとに方向性が大きく異なる。だが、その分、彼女がポップ・アーティストとしてどのような可能性を探っていたかが見える作品である。

本作の中心テーマは、自己愛である。ただし、それは単純に「自分を好きになろう」という明るいスローガンだけではない。「Workin’ on It」では、自分を愛することが簡単ではなく、努力が必要であることが歌われる。「Another Opinion」では、他人の評価に振り回されない姿勢が示される。「No Excuses」では、相手の無礼を拒否する境界線が描かれる。「Treat Myself」というタイトルは、自分を甘やかすというより、自分を守り、労わり、価値ある存在として扱うことを意味している。

恋愛面では、デビュー時のコミカルな恋愛観から、より安定した関係や結婚後の視点へ変化している。「Here to Stay」「Have You Now」では、相手がそばにいることの安心感が歌われ、「After You」では喪失への恐れが描かれる。一方で、「Wave」「Lie to Me」「Ashes」では、恋愛の不安定さや過去の痛みも扱われる。これにより、本作の恋愛観は、単なる理想や駆け引きではなく、より感情の幅を持つものになっている。

音楽的には、アルバムは多様だが、その多様性は統一感の弱さにもつながっている。「Nice to Meet Ya」の現代的なポップ・ヒップホップ、「Funk」のファンク・ポップ、「Workin’ on It」の内省的な女性ポップ、「Genetics」のショー的なダンス・ポップ、「No Excuses」のレトロ・ポップ、「After You」のバラードが並ぶため、アルバム全体としてはやや散漫に感じられる部分がある。しかし、それは制作期間の長さと、Meghan Trainorが自分の次の方向性を模索していたことの反映でもある。

本作で最も興味深いのは、Meghan Trainorの「自信あるポップ・スター」というイメージが少し揺らいでいる点である。彼女は自己肯定を歌い続けているが、その自己肯定はもはや完全無欠ではない。自分を愛するために努力している途中であり、他人の評価に傷つき、恋愛に不安を覚え、時には嘘でも安心を求める。その人間的な揺れが、本作に深みを与えている。

ヴォーカル面では、Meghan Trainorは曲ごとに異なる表情を見せている。明るいアップテンポでは言葉をリズミカルに弾ませ、バラードでは比較的素直にメロディを届ける。圧倒的な歌唱技巧を誇示するタイプではないが、キャラクターを伝える声としては非常に分かりやすい。特に「Workin’ on It」や「After You」では、彼女の素直な歌唱が楽曲のメッセージに合っている。

ゲストの存在も本作の特徴である。Nicki Minajは「Nice to Meet Ya」に強気な現代性を加え、Pussycat Dollsは「Genetics」にパフォーマンス性を与える。Lennon StellaとSasha Sloanは「Workin’ on It」に繊細な共同体感を加え、AJ Mitchellは「After You」に若いデュエットの柔らかさを与える。こうしたゲスト起用は、Meghan Trainorが自分一人のレトロ・ポップ世界から、より広いポップ・シーンへ接続しようとしていたことを示している。

批評的には、『Treat Myself』はMeghan Trainorの最高傑作とは言いにくい。『Title』の明快なデビュー・ステートメントや、『Takin’ It Back』の原点回帰に比べると、本作は方向性が定まりきらない印象を残す。しかし、その不均一さは、キャリアの中で重要な意味を持つ。成功したスタイルを繰り返すのではなく、新しい音、より大人のテーマ、現代的なポップの文脈へ進もうとした結果だからである。

日本のリスナーにとって『Treat Myself』は、Meghan Trainorの明るい代表曲だけを知る段階から、彼女の模索や内面を理解する段階へ進むためのアルバムである。レトロ・ポップの統一感を求めるなら『Title』や『Takin’ It Back』の方が聴きやすいが、彼女が2010年代後半から2020年にかけてどのように自分を再定義しようとしていたかを知るには、本作が重要である。

『Treat Myself』は、自己肯定のポップ・アルバムであると同時に、自己肯定が簡単ではないことを示す作品である。明るさ、迷い、恋愛、結婚、ダンス、ファンク、R&B、バラードが混ざり合い、時に散漫でありながら、Meghan Trainorというアーティストの過渡期を率直に記録している。完成された原点回帰ではなく、次の自分を探すためのポップ・アルバムである。

おすすめアルバム

1. Title by Meghan Trainor

2015年発表のメジャー・デビュー・アルバム。「All About That Bass」「Lips Are Movin」「Dear Future Husband」を収録し、Meghan Trainorのレトロ・ポップ、身体肯定、ユーモラスな恋愛観を決定づけた作品である。『Treat Myself』で変化した部分を理解するには、まずこの原点が重要である。

2. Thank You by Meghan Trainor

2016年発表の2作目。「NO」「Me Too」を収録し、『Title』のレトロ感からよりダンス・ポップ、R&B、現代的な自己主張へ移行した作品である。『Treat Myself』のサウンド面の前段階として聴くと、彼女がどのようにポップの幅を広げようとしていたかが分かる。

3. Takin’ It Back by Meghan Trainor

2022年発表のアルバムで、『Title』期のドゥーワップ風レトロ・ポップへ意識的に回帰した作品。「Made You Look」を収録し、『Treat Myself』での試行錯誤を経て、自分の強みを再確認した作品として位置づけられる。

4. Doo-Wops & Hooligans by Bruno Mars

Bruno Marsの2010年作。レトロ・ポップ、ソウル、R&B、現代的なポップ・プロダクションを組み合わせたアルバムであり、Meghan Trainorの音楽と共通する「過去のポップ語法を現代向けに再構築する」感覚を理解するのに適している。

5. Future Nostalgia by Dua Lipa

2020年発表のダンス・ポップ作品。ファンク、ディスコ、80年代ポップの要素を現代的な音で再構築したアルバムであり、『Treat Myself』と同時期のポップにおけるレトロ再解釈の成功例として比較できる。Meghan Trainorよりもクラブ志向が強いが、過去の音楽を現代ポップへ更新する方法を考えるうえで関連性が高い。

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