発売日: 2012年2月7日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブフォーク、ドリームポップ
Sharon Van Ettenの3作目『Tramp』は、彼女の音楽キャリアにおける転換点となった作品であり、よりダイナミックで洗練されたサウンドを特徴としている。本作では、ザ・ナショナルのギタリストであるアーロン・デスナーがプロデューサーを務め、多彩なゲストミュージシャンが参加したことで、これまでのシンプルなフォークスタイルから一歩進んだ、重層的で豊かなアレンジが際立つ内容となっている。
アルバム全体を通じて、恋愛や喪失、自分自身の居場所を探す葛藤がテーマとなっており、シャロンの深い歌詞とエモーショナルなボーカルがリスナーの心に訴えかける。アコースティックとエレクトリックのバランスが絶妙であり、彼女の音楽性が新たな段階へと進化したことを感じさせる作品である。
トラック解説
1. Warsaw
不穏なトーンで幕を開けるトラック。ギターと控えめなドラムが織り成すミニマルなアレンジが、歌詞の緊張感を引き立てている。
2. Give Out
アルバムの中でも特に内省的な楽曲。愛と脆さが交錯する歌詞が印象的で、繊細なギターリフとシャロンのボーカルが心に染み渡る。
3. Serpents
重厚なギターリフと感情的なボーカルが絡み合う、アルバムのハイライトの一つ。怒りと喪失感が込められた歌詞が強烈なインパクトを与える。
4. Kevin’s
静かなイントロから始まり、徐々に盛り上がる構成が特徴的な楽曲。親密さと緊張感を同時に感じさせる。
5. Leonard
キャッチーなメロディが際立つトラック。軽快なリズムの中にも、恋愛における後悔や反省が込められている。
6. In Line
ミニマルなアレンジが際立つ楽曲。シャロンのボーカルが楽曲の中心となり、静けさの中に強い感情が感じられる。
7. All I Can
壮大な雰囲気を持つバラード。ギターとボーカルの絡み合いが美しく、アルバムの中でも特にエモーショナルな一曲。
8. We Are Fine
ザッカリー・コール・スミス(DIIV)とのデュエットが特徴の楽曲。軽快なリズムと親しみやすいメロディが印象的。
9. Magic Chords
エレクトリックギターとシンセサウンドが絡む楽曲。リズムの変化が楽曲にダイナミズムを加えている。
10. Ask
繊細なギターと抑えたボーカルが、楽曲に親密な雰囲気を与えている。控えめながらも深い感情が込められている。
11. I’m Wrong
重厚なアレンジが印象的なトラック。自己疑念と孤独をテーマにした歌詞が、シャロンのボーカルによって力強く表現されている。
12. Joke or a Lie
アルバムを締めくくる静かなバラード。ギターとシンプルなアレンジが、リスナーに深い余韻を残す。
アルバム総評
『Tramp』は、Sharon Van Ettenがフォークシンガーから本格的なインディーロックアーティストへと進化を遂げたアルバムであり、彼女の音楽的な多様性と深みを示している。アーロン・デスナーのプロデュースにより、豊かなアレンジと緻密なプロダクションが加わり、感情的な歌詞とボーカルがさらに際立っている。『Tramp』は、彼女のディスコグラフィの中でも特に重要な作品として、多くのリスナーに感動を与える一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Are We There by Sharon Van Etten
シャロンの4作目で、さらに成熟したアレンジと感情的な深みが楽しめる。『Tramp』の続編ともいえる作品。
High Violet by The National
プロデューサーのアーロン・デスナーが所属するバンドの代表作。緻密なアレンジと感情的な歌詞が共通する。
Stranger in the Alps by Phoebe Bridgers
感情的な歌詞と親密なサウンドが特徴のアルバム。『Tramp』の感情的な深さを好む人におすすめ。
Veckatimest by Grizzly Bear
豊かなアレンジとメロディアスな楽曲が楽しめるアルバム。『Tramp』の洗練されたサウンドに共通点がある。
Trouble Will Find Me by The National
感情的なテーマと洗練されたアレンジが魅力のアルバム。『Tramp』のファンに響く一枚。
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