
- イントロダクション:Tower of Powerという“ホーンの王国”
- アーティストの背景と歴史:オークランドで生まれた“East Bay Grease”
- 音楽スタイルと影響:ファンクを切り裂くホーン、身体を揺らすリズム
- 代表曲の楽曲解説
- アルバムごとの進化
- East Bay Grease:オークランド・ファンクの誕生
- Bump City:全国区へ向かうソウルとファンク
- Tower of Power:黄金期の決定打
- Back to Oakland:地元への帰還と成熟
- Urban Renewal:社会性とファンクの交差点
- In the Slot:職人芸としてのファンク
- Oakland Zone以降:長寿バンドとしての継続と更新
- 50 Years of Funk & Soul: Live at the Fox Theater:半世紀の祝祭
- 黄金のホーンセクション:Tower of Power Hornsの影響力
- 影響を受けたアーティストと音楽
- 影響を与えたアーティストと音楽シーン
- 同時代バンドとの比較:Earth, Wind & Fire、Chicago、Slyとの違い
- ライブバンドとしての魅力:ステージで完成するファンク
- ファンと批評家の評価:職人集団としての尊敬
- Tower of Powerの魅力:タイトさと人間臭さの共存
- まとめ:Tower of Powerはファンクの建築物である
- 関連レビュー
イントロダクション:Tower of Powerという“ホーンの王国”
Tower of Powerは、1968年にカリフォルニア州オークランドで結成されたファンク/ソウル/R&Bバンドである。創設メンバーのEmilio CastilloとStephen “Doc” Kupkaを中心に、半世紀以上にわたり活動を続けてきた。彼らを語るうえで欠かせないのは、やはりホーンセクションだ。鋭く、分厚く、正確で、しかも熱い。Tower of Powerのホーンは、単なる伴奏ではない。曲の心臓であり、街の叫びであり、ファンクそのものの推進装置である。
Tower of Powerの音楽には、オークランドの空気が濃く刻まれている。サンフランシスコのサイケデリックな理想主義とは少し違う、もっと地に足のついたソウル、汗、グルーヴ、労働者の街のリズムがある。ベースは深く沈み、ドラムは鋭く跳ね、ギターは細かく刻み、そこへホーンが稲妻のように差し込む。まるで街角で突然、巨大な金管のエンジンが始動するような音だ。
代表曲「What Is Hip?」、「So Very Hard to Go」、「You’re Still a Young Man」、「Soul Vaccination」などは、ファンク史、ソウル史、そしてホーンアレンジの歴史において重要な楽曲である。彼らはBillboard Hot 100にも複数曲を送り込み、「So Very Hard to Go」は1973年に全米17位、「You’re Still a Young Man」は1972年に全米29位を記録した。(en.wikipedia.org)
Tower of Powerは、バンドであると同時に“サウンド”である。誰かが「Tower of Powerっぽいホーン」と言えば、多くのミュージシャンはすぐに理解する。タイトで、切れ味があり、低音のバリトンサックスが土台を支え、トランペットとテナーが鋭く空を切る、あの音である。彼らはファンクとソウルの巨人であり、黄金のホーンセクションを持つ不滅のバンドだ。
アーティストの背景と歴史:オークランドで生まれた“East Bay Grease”
Tower of Powerの物語は、1968年、Emilio CastilloとStephen “Doc” Kupkaの出会いから始まる。公式サイトや関連プロフィールでは、CastilloがKupkaと出会い、彼のバリトンサックスの音に惹かれてバンドへ迎え入れたことが、Tower of Powerの原点として語られている。(soultracks.com)
当初のバンド名はThe Motownsだった。名前からも分かるように、彼らの出発点にはソウルミュージックへの強い愛があった。しかし、彼らは単にMotown風の音を再現するバンドではなかった。オークランドという土地の多民族的でタフな空気、ベイエリアのカウンターカルチャー、R&B、ジャズ、ラテン、ファンクが混ざり合い、独自の音へと育っていく。
1970年、彼らはデビューアルバムEast Bay Greaseを発表する。タイトルにある“East Bay”は、オークランドを含むサンフランシスコ湾東岸地域を指す。つまりこの作品は、Tower of Powerが自分たちの音を地元の名前と結びつけた宣言だった。NAMMの50周年記事でも、Tower of Powerは1970年のEast Bay Grease以来、21枚のスタジオアルバムを発表してきたと紹介されている。(ww1.namm.org)
1972年のBump Cityで、Tower of Powerは全国的な注目を得る。「You’re Still a Young Man」がヒットし、彼らのバラード表現とホーンアレンジの豊かさが広く知られた。1973年のセルフタイトル作Tower of Powerでは、Lenny Williamsをリードボーカルに迎え、「So Very Hard to Go」、「What Is Hip?」などの代表曲を生み出す。ここでTower of Powerは、ファンク、ソウル、R&B、ジャズ的な精密さを兼ね備えた、唯一無二のバンドとして確立された。
音楽スタイルと影響:ファンクを切り裂くホーン、身体を揺らすリズム
Tower of Powerの音楽スタイルは、ファンク、ソウル、R&B、ジャズファンクを基盤としている。だが、彼らの本質はジャンル名だけでは説明できない。Tower of Powerの音楽には、ホーンセクションとリズム隊が完全に噛み合った時にしか生まれない、特別な推進力がある。
まず重要なのは、Stephen “Doc” Kupkaのバリトンサックスだ。Tower of Powerのホーンサウンドは、きらびやかなトランペットだけで成立しているわけではない。Kupkaのバリトンが低音の柱として存在することで、ホーン全体に厚みと重量が生まれる。公式プロフィールでもKupkaは、Emilio Castillo、David Garibaldi、Rocco Prestiaとの関係に触れながら、「Towerのリズム」とタイトなホーン演奏の重要性を語っている。(towerofpower.com)
リズム隊もまた、Tower of Powerの音楽の核である。特にベーシストFrancis “Rocco” PrestiaとドラマーDavid Garibaldiの組み合わせは、ファンク史上屈指の名コンビとして知られる。Roccoのベースは、一般的なロックベースのように大きく伸ばすのではなく、短く切る。音を詰め込みながらも、隙間を残す。その細かいゴーストノートとミュート感が、Tower of Powerのグルーヴを独特なものにした。
Garibaldiのドラムは、直線的なビートではない。スネア、ハイハット、ゴーストノート、シンコペーションが緻密に絡み合い、まるで歯車のように動く。しかし、機械的ではない。そこには人間の汗と粘りがある。Tower of Powerのファンクは、身体を動かすだけでなく、演奏者を驚かせるほど精密なのだ。
代表曲の楽曲解説
「You’re Still a Young Man」
「You’re Still a Young Man」は、Tower of Powerの初期を代表するソウルバラードである。1972年のアルバムBump Cityに収録され、Billboard Hot 100で29位を記録した。(en.wikipedia.org)
この曲の魅力は、若さと恋愛の痛みを、ホーンとボーカルで壮大に描いている点にある。ファンクバンドとしてのTower of Powerは、速く鋭い曲で語られがちだが、この曲を聴くと、彼らがいかに深いソウルバラードを作れるバンドだったかが分かる。
ホーンは叫びすぎない。むしろ、主人公の胸の奥で膨らむ感情を、ゆっくりと持ち上げる。若さゆえに届かない恋、経験の差、切なさ、諦め。そのすべてが、暖かいブラスの響きに包まれる。Tower of Powerのホーンは、ここでは炎ではなく、夕暮れの光のように響く。
「So Very Hard to Go」
「So Very Hard to Go」は、Tower of Power最大級のヒット曲のひとつである。1973年のアルバムTower of Powerに収録され、Billboard Hot 100で17位を記録した。(en.wikipedia.org)
この曲は、別れを決意しながらも去ることの難しさを歌ったソウルバラードである。Lenny Williamsのボーカルが素晴らしい。彼の声は、甘く、強く、そして壊れそうだ。愛しているからこそ離れなければならない。その矛盾を、声の微妙な震えで表現している。
ホーンアレンジも見事である。歌の隙間に入るフレーズは、感情を説明しすぎない。だが、ここぞという瞬間に広がるブラスは、抑えていた涙が一気にあふれるような効果を生む。Tower of Powerはファンクのバンドであると同時に、極上のバラードバンドでもある。この曲はその証明だ。
「What Is Hip?」
「What Is Hip?」は、Tower of Powerを象徴するファンクの名曲である。1973年のアルバムTower of Powerに収録され、彼らのホーン、ベース、ドラム、ボーカル、歌詞の切れ味がすべて詰まった楽曲だ。
この曲のテーマは、タイトル通り「何がヒップなのか」である。流行を追いかけ、自分をかっこよく見せようとする人間の姿を、皮肉とユーモアを込めて描く。だが、説教臭さはない。なぜなら、曲そのものがあまりにもヒップだからだ。
Rocco Prestiaのベースラインは細かく跳ね、David Garibaldiのドラムは複雑に絡む。そこへホーンが鋭く入り、曲全体を何度も持ち上げる。「What Is Hip?」は、ファンクの教材としても語られる曲である。グルーヴとは何か、シンコペーションとは何か、ホーンセクションがバンドをどう駆動するのか。その答えが、この曲の中にある。
「Soul Vaccination」
「Soul Vaccination」は、Tower of Powerのファンク精神をタイトルからして体現する楽曲である。ソウルを注射する、あるいは魂にワクチンを打つ。そんなユーモラスで力強い発想が、彼ららしい。
この曲では、ホーンとリズム隊の一体感が特に際立つ。リフは短く、鋭く、繰り返されるたびに身体へ入り込む。Tower of Powerのファンクは、頭で理解する前に足が動く。だが、演奏を細かく聴くと、各パートが驚くほど精密に組み上げられていることに気づく。
「Don’t Change Horses (in the Middle of a Stream)」
「Don’t Change Horses (in the Middle of a Stream)」は、1974年のヒット曲で、Billboard Hot 100で26位を記録した。(en.wikipedia.org)
タイトルは「川の真ん中で馬を替えるな」ということわざ的な表現で、途中で方針を変えることへの警告を意味する。Tower of Powerらしいのは、この教訓めいたテーマを、重々しくではなく、軽快で粘りのあるファンクとして鳴らしている点だ。
曲には、人生の知恵とダンスフロアの楽しさが同居している。Tower of Powerの歌詞は、しばしばユーモアや日常感覚を持つ。社会的でありながら、説教ではない。身体を揺らしながら、少しだけ賢くなるようなファンクである。
「Only So Much Oil in the Ground」
「Only So Much Oil in the Ground」は、1970年代の社会状況を反映した楽曲である。タイトルが示すように、地球上の石油資源には限りがあるというテーマを扱っている。1970年代のオイルショックや環境意識の高まりと重なる曲であり、Tower of Powerが単に恋愛やパーティーだけを歌うバンドではなかったことを示している。
この曲のすごさは、社会的なメッセージをファンクのグルーヴに乗せていることだ。重いテーマであっても、音楽は重苦しくならない。むしろ、リズムとホーンの力によって、メッセージはより鮮やかに伝わる。Tower of Powerのファンクには、社会を見つめる目もあったのである。
アルバムごとの進化
East Bay Grease:オークランド・ファンクの誕生
1970年のEast Bay Greaseは、Tower of Powerのデビューアルバムである。このタイトルは、彼らの出自と音楽性をそのまま表している。East Bay、つまりオークランドを含むベイエリア東部。そしてGrease、つまり油のように粘るグルーヴ。まさにTower of Powerの原点だ。
このアルバムには、後年の洗練されたTower of Powerとは違う荒々しさがある。ホーンはすでに強力だが、音全体には若いバンド特有の熱がある。ファンク、ソウル、ジャズ、ロックがまだ完全には整理されず、渦を巻いている。その混ざり具合が魅力である。
East Bay Greaseは、Tower of Powerが地元の音を世界へ持ち出す最初の一歩だった。オークランドという街の名前を、ファンクの文脈に刻んだ作品である。
Bump City:全国区へ向かうソウルとファンク
1972年のBump Cityは、Tower of Powerが全国的な注目を得るきっかけとなったアルバムである。「You’re Still a Young Man」の成功によって、彼らは単なるローカルなファンクバンドではなく、ソウルチャート、ポップチャートでも存在感を示すバンドとなった。
この作品では、ホーンアレンジの完成度が大きく上がっている。ファンクの鋭さと、ソウルバラードの甘さが共存している。Tower of Powerは、踊らせるだけでなく、泣かせることもできるバンドだった。Bump Cityは、その二面性を確立した重要作である。
Tower of Power:黄金期の決定打
1973年のセルフタイトル作Tower of Powerは、彼らの代表作であり、黄金期の決定打と言えるアルバムである。Lenny Williamsのボーカル、Rocco PrestiaとDavid Garibaldiのリズム、Emilio CastilloとDoc Kupkaを中心とするホーンセクションが、最高のバランスで結びついている。
「What Is Hip?」、「So Very Hard to Go」、「This Time It’s Real」など、名曲が並ぶ。ファンクの鋭さ、ソウルの情感、R&Bの親しみやすさが、ほぼ完璧な形で同居している。
このアルバムのTower of Powerは、バンド全体が巨大なひとつの生き物のように動いている。ベースが跳ねればドラムが返し、ホーンが突き刺さればボーカルが応える。すべての音が会話している。ファンクバンドとしてのTower of Powerを知るなら、まずこの作品を避けて通ることはできない。
Back to Oakland:地元への帰還と成熟
1974年のBack to Oaklandは、タイトル通り、Tower of Powerが自分たちの原点であるオークランドへ意識を向けた作品である。商業的な成功を経たあとでも、彼らの音楽の核は地元にある。そのことを再確認するようなアルバムだ。
この作品には、「Don’t Change Horses (in the Middle of a Stream)」や「Time Will Tell」などが収録されている。ファンクの切れ味はそのままに、アレンジにはより落ち着きと深みがある。バンドが単に勢いだけでなく、構成力や演奏の余裕を身につけていることが分かる。
Back to Oaklandは、Tower of Powerにとって単なる地元礼賛ではない。オークランドという土地に根ざしながら、全国的なファンク/ソウルバンドとして成熟した姿を示す作品である。
Urban Renewal:社会性とファンクの交差点
1974年のUrban Renewalは、Tower of Powerの社会的なまなざしが表れた作品である。「Only So Much Oil in the Ground」に代表されるように、資源、都市、生活、社会の変化といったテーマが音楽の中に入り込んでいる。
この時期のTower of Powerは、単なるパーティーファンクを超えていた。もちろんグルーヴは強烈で、踊れる音楽である。しかし、その背景には、1970年代アメリカの都市問題、経済不安、エネルギー危機がある。Tower of Powerは、社会の現実を無視せず、それをファンクの中に取り込んだ。
In the Slot:職人芸としてのファンク
1975年のIn the Slotは、Tower of Powerの演奏力とバンドアンサンブルがさらに職人的な領域へ進んだ作品である。タイトルの“in the slot”は、グルーヴがぴったりはまっている状態を思わせる言葉だ。まさにこの時期のTower of Powerは、バンドとしての一体感が極まっていた。
このアルバムでは、ホーン、ベース、ドラム、ギター、ボーカルが、それぞれ出すぎず、しかし確実に役割を果たす。ファンクは個人技だけでは成立しない。全員が同じポケットに入り、同じ呼吸で鳴る必要がある。In the Slotは、その“ポケット”の美学を示した作品である。
Oakland Zone以降:長寿バンドとしての継続と更新
Tower of Powerは、1970年代の成功後も活動を続け、メンバーチェンジを重ねながらも、バンドの核となるサウンドを守ってきた。公式サイトでは2026年現在もツアー日程が掲載されており、ロンドン、オランダなどでの公演予定も確認できる。(towerofpower.com)
長寿バンドにとって難しいのは、過去の再現に留まらず、同時に自分たちの本質を失わないことである。Tower of Powerは、ボーカリストやリズム隊が変わっても、ホーンの美学とファンクの精神を保ち続けてきた。Doc Kupkaが語るように、「Towerのリズム」とタイトなホーン、優れたボーカルがあればTower of Powerは大丈夫だという考え方は、このバンドの継続性をよく表している。(towerofpower.com)
50 Years of Funk & Soul: Live at the Fox Theater:半世紀の祝祭
2021年には、50 Years of Funk & Soul: Live at the Fox Theater, Oakland, CA, June 2018がリリースされた。Apple Musicでは、同作が2021年2月26日リリース、22曲、約1時間53分のライブアルバムとして掲載されている。(music.apple.com)
このライブは、2018年6月にオークランドのFox Theaterで行われた50周年記念公演を収録したものである。Mack Avenueの紹介では、Tower of Powerが自分たちを生んだ街オークランドへ戻り、50周年を祝った特別なライブとして説明されている。(mackavenue.com)
この作品の意味は大きい。Tower of Powerの音楽は、スタジオ録音でも素晴らしいが、本質はライブにある。ホーンが空気を震わせ、ベースとドラムが客席の身体を揺らし、ボーカルが会場全体を巻き込む。その場でしか生まれない熱こそが、Tower of Powerの生命線である。50年を経てもなお、その熱が失われていないことを示した作品だ。
黄金のホーンセクション:Tower of Power Hornsの影響力
Tower of Powerはバンドとしてだけでなく、ホーンセクション単体としても非常に大きな影響力を持つ。Tower of Power Hornsは、多くのアーティストの録音やライブに参加してきた。リストには、Santana、Elton John、Aerosmith、Bonnie Raitt、Huey Lewis、Little Feat、Heart、Rod Stewart、Phish、Totoなど、ジャンルを超えた名前が並ぶ。(en.wikipedia.org)
これは、Tower of Powerのホーンがひとつのブランドになっていることを意味する。金管を入れれば華やかになる、という単純な話ではない。Tower of Powerのホーンは、曲に筋肉を与える。リズムを押し、フレーズに角度をつけ、サビを爆発させる。だからロック、ポップ、R&B、ファンク、ジャズ、ラテンなど、多様な音楽で求められてきた。
ホーンアレンジにおいて重要なのは、音数ではない。どこで入るか、どこで切るか、どれだけタイトに鳴らすかである。Tower of Power Hornsは、その判断が抜群に優れている。短い一撃で曲の景色を変える。そこに彼らの凄みがある。
影響を受けたアーティストと音楽
Tower of Powerのルーツには、James Brown、Otis Redding、Wilson Pickett、Stax、Motown、Sly & The Family Stone、ジャズ、ブルース、ラテン音楽がある。Emilio Castilloがソウルバンドとして出発したことからも分かるように、彼らの根底にはブラックミュージックへの深い敬意がある。
特にJames Brown的なファンクの切れ味は重要である。短いリフ、反復、シンコペーション、リズムの隙間。Tower of Powerはその語法を学びながら、そこに大編成ホーンの厚みと西海岸的な洗練を加えた。
また、Sly & The Family Stoneのようなベイエリアの多文化的なファンク感覚も、Tower of Powerと近い場所にある。人種、ジャンル、都市の境界が混ざり合うベイエリアだからこそ、Tower of Powerの音楽は生まれた。オークランドのファンクは、南部ソウルとも東海岸R&Bとも違う、独特の硬さと粘りを持っている。
影響を与えたアーティストと音楽シーン
Tower of Powerが後続に与えた影響は非常に大きい。ファンクバンド、ソウルバンド、ブラスロック、ジャズファンク、フュージョン、さらにはポップスやロックのホーンアレンジに至るまで、彼らの影響は広範囲に及ぶ。
特にベーシストとドラマーへの影響は計り知れない。Rocco Prestiaの細かく刻むベースラインと、David Garibaldiの複雑なドラムパターンは、多くのファンク系ミュージシャンにとって教科書のような存在である。Tower of Powerをコピーすることは、単に曲を覚えることではない。グルーヴの仕組みを身体で学ぶことに近い。
ホーンプレイヤーにとっても、Tower of Powerは避けて通れない。バリトンサックスの重要性、セクション全体のタイミング、アタックの揃え方、短いフレーズの切れ味。これらは、Tower of Powerの楽曲を通じて学ばれてきた。
同時代バンドとの比較:Earth, Wind & Fire、Chicago、Slyとの違い
Tower of Powerを同時代のバンドと比較すると、その個性がより明確になる。
Earth, Wind & Fireは、より壮大で宇宙的なファンク/ソウルを作った。彼らの音楽には、スピリチュアルな高揚感、ディスコ的な華やかさ、ポップスとしての洗練がある。一方、Tower of Powerはもっと地上的だ。泥臭く、タイトで、オークランドの道路の上で鳴っているようなファンクである。
Chicagoは、ロックとホーンを融合したブラスロックの代表格である。彼らのホーンはメロディックで、ロックバンドの中に大きな管楽器の響きを持ち込んだ。一方、Tower of Powerのホーンは、よりR&B的で、よりリズムに密着している。華やかさよりも、グルーヴを切り刻む力が強い。
Sly & The Family Stoneと比べると、Tower of Powerはより職人的で、よりアンサンブル志向である。Slyは時代の空気を革命的に変えたカリスマだった。Tower of Powerは、そのベイエリアのファンク感覚を、緻密な演奏集団として鍛え上げた存在だと言える。
ライブバンドとしての魅力:ステージで完成するファンク
Tower of Powerの本領はライブにある。ホーンセクションの一撃は、録音でも十分に強烈だが、ライブではさらに身体に来る。音圧、タイミング、観客の反応、メンバー同士の呼吸。そのすべてが合わさると、Tower of Powerのファンクは単なる音楽ではなく、会場全体を動かす力になる。
2026年現在も公式サイトには多数の公演予定が掲載されており、ロンドンやヨーロッパでの公演も予定されている。(towerofpower.com) これは驚くべきことだ。1968年に始まったバンドが、いまも世界中で観客を踊らせている。ファンクが一時代の流行ではなく、身体に根ざした普遍的な音楽であることを示している。
Tower of Powerのライブでは、観客もまたグルーヴの一部になる。ホーンが鳴れば歓声が上がり、ベースが跳ねれば足が動き、ボーカルが煽れば会場が応える。これは、録音物だけでは完結しない音楽だ。ステージで、空気の中で、身体を通して完成するファンクである。
ファンと批評家の評価:職人集団としての尊敬
Tower of Powerは、商業的な大ヒットを連発したバンドというより、ミュージシャンから深く尊敬される職人集団として評価されてきた。もちろん「So Very Hard to Go」や「You’re Still a Young Man」のようなヒット曲もある。しかし彼らの本当の影響力は、チャート成績だけでは測れない。
多くの演奏家にとって、Tower of Powerは“うまいバンド”の代名詞である。ホーンの精度、リズム隊の緻密さ、ボーカルのソウル、アレンジの切れ味。どれも高い水準にある。NAMMの50周年記事でも、50年の間に少なくとも60人以上のミュージシャンがバンドに関わりながら、創設メンバーのCastilloとKupkaが一貫して存在してきたことが紹介されている。(ww1.namm.org)
つまりTower of Powerは、個人のスター性だけでなく、バンドサウンドそのものを継承してきた集団である。メンバーが入れ替わっても、“Tower of Powerの音”は続く。この継承力こそ、彼らが巨人であり続ける理由だ。
Tower of Powerの魅力:タイトさと人間臭さの共存
Tower of Powerの最大の魅力は、タイトさと人間臭さが共存していることだ。演奏は驚くほど正確である。ホーンのアタックは揃い、リズムは緻密で、アレンジには無駄がない。だが、音楽は冷たくならない。むしろ、非常に熱い。
この熱は、ソウルから来ている。Tower of Powerのファンクは、単なる演奏技術の見本ではない。恋愛の痛み、街の空気、社会への視線、パーティーの喜び、人生の苦味。そのすべてが音に入っている。だから彼らの音楽は、ミュージシャンが分析しても楽しいし、何も考えずに踊っても楽しい。
ホーンが鳴る。ベースが跳ねる。ドラムが細かく刻む。ボーカルが叫ぶ。その瞬間、Tower of Powerの音楽は理屈を超える。身体が先に反応する。ファンクとは本来そういう音楽である。
まとめ:Tower of Powerはファンクの建築物である
Tower of Powerは、ファンクとソウルの巨人であり、黄金のホーンセクションを持つ不滅のバンドである。1968年にオークランドで始まり、East Bay Greaseで地元の音を宣言し、Bump Cityで全国的な注目を集め、Tower of Powerで黄金期を築き、Back to OaklandやUrban Renewalで成熟と社会性を示した。
「You’re Still a Young Man」では若さと恋の痛みを歌い、「So Very Hard to Go」ではソウルバラードの深みを見せ、「What Is Hip?」ではファンクの切れ味を極め、「Soul Vaccination」では身体を揺らすグルーヴを注入した。彼らの楽曲は、ホーン、ベース、ドラム、ボーカルが一体となった、精密で熱い音楽の建築物である。
Tower of Powerの音楽は、半世紀以上を経ても古びない。なぜなら、彼らが鳴らしているのは流行ではなく、グルーヴそのものだからだ。金管が空気を切り裂き、リズム隊が地面を揺らし、歌が魂を引き上げる。その瞬間、ファンクは現在形になる。
Tower of Powerは、オークランドから世界へ広がったソウルの火柱である。そのホーンは、今も鳴り続けている。

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