発売日: 2024年6月21日
ジャンル: オルタナティブポップ、ソウル、R&B
アルバム全体の印象
ロンドン出身のシンガーソングライター、ローラ・ヤングのセカンドアルバムThis Wasn’t Meant For You Anywayは、彼女の音楽的才能と感情表現の深さを余すところなく披露した作品だ。このアルバムは、彼女の内面世界を率直に描き出し、愛、喪失、自己発見といったテーマを探求している。
プロデューサーには、ソウルフルで大胆なアプローチが得意なソロモノフォニック(Jared Solomon)を迎え、モダンなR&Bとクラシックなソウルの融合が巧みに表現されている。ローラの力強くも繊細なボーカルと詩的な歌詞が、リスナーを感情の旅へと誘う。アルバム全体を通して、ローラの自己肯定感や内面的な葛藤が深く掘り下げられ、聴く者に強い共感を与える作品となっている。
各曲ごとの解説
1. Good Books
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、持続するコードと熱狂的なパーカッションが特徴的で、ローラの力強いボーカルが印象に残る。歌詞には「記憶の中で良い面だけを選び取る」というテーマが込められている。
2. Wish You Were Dead
豊かなストリングスと繊細なピアノ伴奏がローラの感情的なボーカルを引き立てるバラード。失恋の苦しさと相手に対する複雑な感情が鮮やかに表現されている。
3. Big Brown Eyes
軽快なリズムとダークなギターリフが印象的な楽曲で、ローラのボーカルが曲にエネルギーを与える。「大きな瞳」というタイトルが象徴する思い出への執着が切なく響く。
4. Conceited
ダークでスモーキーな雰囲気を持つトラック。自己愛と自意識の葛藤を描いた歌詞が鋭く、シンセとベースの組み合わせが楽曲のムードを際立たせている。
5. Messy
恋愛における矛盾や曖昧さを描いたこの楽曲は、ポップなメロディが親しみやすい。特にサビ部分の高揚感が、アルバム全体の中でも異彩を放つ。
6. Walk On By
軽快なテンポと明るいギターサウンドが特徴のトラック。タイトル通り「立ち去る」ことで得られる解放感と、その裏にある寂しさがテーマとなっている。
7. You Noticed
アコースティックギターが中心となった親密なトラックで、歌詞の中でローラが「誰にも気づかれない孤独」を語る。彼女のボーカルが感情的な深みを引き出している。
8. Crush
恋愛初期のドキドキ感や切なさを描いた一曲。軽やかなメロディと甘い歌詞が、アルバムにフレッシュなエネルギーを加えている。
9. Fuck
ストレートなタイトルが示す通り、感情の爆発を描いた曲。重厚なビートと力強いボーカルが印象的で、アルバムの中でも最もパワフルなトラックの一つ。
10. Intrusive Thoughts
ローラの内面的な葛藤が描かれた楽曲。繊細なピアノとストリングスが、彼女の静かなボーカルを支えている。感情的なリリックがリスナーの心に刺さる。
11. Outro
アルバムの締めくくりとして、静かで感動的なトラック。短いながらも感情的な余韻を残し、アルバム全体のテーマを再確認するような役割を果たしている。
特筆すべきテーマ:自己発見と再生
This Wasn’t Meant For You Anywayは、自己発見と感情的な再生をテーマにしたアルバムだ。ローラ・ヤングの詩的な歌詞と感情的なボーカルが、彼女自身の旅路を鮮やかに描き出し、リスナーに深い共感を与える。
アルバム総評
ローラ・ヤングのThis Wasn’t Meant For You Anywayは、感情の多層性と音楽的な洗練を兼ね備えた傑作だ。彼女の歌詞は率直でありながら詩的で、サウンドスケープはクラシックなソウルとモダンなR&Bが融合した独特のもの。アルバム全体を通して、彼女の成熟と自己表現の深化が感じられる。この作品は、彼女のキャリアにおける重要な一歩となるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Back to Black by Amy Winehouse
ソウルフルなボーカルと深い感情を込めた歌詞が共通しており、ローラのアルバムに通じる雰囲気を持つ。
Ctrl by SZA
現代的なR&Bと自己探求をテーマにした楽曲が多く、ローラ・ヤングファンにとっても共感できる作品。
Punisher by Phoebe Bridgers
内省的な歌詞と親密なサウンドスケープが似ており、感情的な旅を提供してくれるアルバム。
Let It Die by Feist
ソウルフルで繊細なアレンジと、詩的な歌詞が共通点を持つ。ローラのアルバムと同じく、感情の奥深さを描いている。
When We All Fall Asleep, Where Do We Go? by Billie Eilish
実験的なサウンドと親密な歌詞が共通しており、モダンな感性を楽しめる一枚。
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