発売日: 2014年9月22日
ジャンル: インディー・ロック, アート・ロック, エクスペリメンタル・ロック
Alt-Jの2作目『This Is All Yours』は、デビューアルバム『An Awesome Wave』での成功に続き、さらに進化したサウンドを披露している。フォーク、エレクトロニカ、そして実験音楽の要素を融合させたこのアルバムは、より広大でドリーミーなサウンドスケープを探求し、バンドの独創的なスタイルを確立した。静と動、そして複雑なアレンジとミニマルな要素が交互に現れ、リスナーを深い音の旅に誘う。アルバム全体を通して、日本の文化からの影響や象徴的なイメージが散りばめられており、Alt-Jのサウンドに新しいエッジを加えている。
各曲ごとの解説:
- Intro
アルバムを象徴するような壮大なイントロ。パーカッションとシンセサウンドが織りなすダイナミックな展開が印象的で、次第にビルドアップしていく。複雑なリズムとジョー・ニューマンのかすれたヴォーカルが、Alt-Jらしい独特の雰囲気を作り出す。 - Arrival in Nara
静かなアコースティックギターと柔らかなヴォーカルが印象的なバラード。日本の奈良を舞台にした楽曲で、穏やかで感傷的なトーンが特徴。シンプルなメロディが、異国情緒あふれる情景を描き出している。 - Nara
「Arrival in Nara」から続く曲で、より壮大なアレンジが加わる。シンセサウンドとストリングスが重なり合い、クライマックスに向かってビルドアップしていく。日本文化へのオマージュを感じさせる静かな敬意が流れる。 - Every Other Freckle
エロティシズムと愛情をテーマにしたこの曲は、独特のリズムと変拍子が特徴。ミニマルなビートの上に、繊細なヴォーカルと印象的なギターリフが重なり、独特の緊張感を生み出している。歌詞には大胆な表現が多く含まれており、バンドの遊び心が感じられる。 - Left Hand Free
このアルバムの中でも異質なトラックで、よりストレートなロックサウンドが特徴。シンプルでキャッチーなギターフックとアップテンポなリズムが、他の曲とは異なるエネルギーを放っている。バンドにとっては珍しいアメリカ南部風のサウンドが魅力。 - Garden of England
短いインストゥルメンタルで、イギリスの自然や風景を描写した曲。フルートを中心にしたアコースティックなサウンドが、アルバムの中で穏やかなインタールードの役割を果たしている。 - Choice Kingdom
ゆっくりとしたビートと空間的なシンセが特徴のトラックで、ミステリアスな雰囲気が漂う。歌詞には不安や迷いが感じられ、静かな緊張感が全体を包み込む。静と動の対比が見事に表現されている。 - Hunger of the Pine
サンプルとして使われているのは、マイリー・サイラスの「I’m a Female Rebel」のフレーズ。低音のシンセベースと強調されたドラムが、不安定さと力強さを兼ね備えたサウンドを作り上げている。孤独と渇望をテーマにした歌詞が深い印象を残す。 - Warm Foothills
心地よいアコースティックギターと穏やかなコーラスが特徴のトラック。歌詞は自然の美しさと、穏やかな愛の瞬間を描いており、耳に優しく響くメロディが心を癒してくれる。アルバムの中でも特にリラックスした雰囲気の一曲。 - The Gospel of John Hurt
映画『エイリアン』にインスパイアされた曲で、不安と緊張がサウンド全体に漂う。繊細なギターリフと暗示的な歌詞が、物語的なサウンドスケープを描き出している。曲が進むにつれてビートが加わり、劇的なクライマックスに到達する。 - Pusher
穏やかなギターとニューマンのソフトなヴォーカルが主役のトラック。抑制されたアレンジが、歌詞の深い感情を引き立てており、物静かでありながらも感情豊かな一曲だ。 - Bloodflood Pt. II
1作目に収録された「Bloodflood」の続編。オリジナルのメロディを織り交ぜながらも、より壮大で重厚なアレンジが特徴。クライマックスに向かう緊張感の高まりが見事で、アルバム全体のハイライトとなっている。 - Leaving Nara
アルバムを締めくくるインストゥルメンタルで、奈良をテーマにした楽曲の一連の流れを完結させる。穏やかで感情的なトーンが、アルバム全体を優しく包み込むように終わる。
アルバム総評:
『This Is All Yours』は、Alt-Jがそのサウンドをさらに進化させた作品であり、デビュー作以上に実験的で豊かな表現力が発揮されている。フォークとエレクトロニカ、アートロックの要素を巧みに織り交ぜ、詩的で幻想的な世界観を作り出している。特に「Nara」シリーズや「Hunger of the Pine」など、アルバム全体を通して一貫したテーマとトーンが感じられ、深い感情と象徴的なイメージが重なり合う。このアルバムは、Alt-Jが持つ多様な音楽性と独自のクリエイティブなビジョンを余すところなく表現しており、バンドのさらなる進化を期待させる作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Shields by Grizzly Bear
豊かなアレンジと繊細なメロディが特徴のアルバム。Alt-Jの複雑なサウンドを楽しめるリスナーには、同じく多層的なアプローチのGrizzly Bearがぴったり。 - Veckatimest by Grizzly Bear
フォークとアートロックを融合させた、緻密に作り込まれたサウンドが魅力。Alt-Jの多層的なサウンドに共通する部分が多い。 - Bon Iver by Bon Iver
フォークとエレクトロニカを融合させた美しい作品。Alt-Jの静謐なサウンドと感情の深さを好むリスナーには、このアルバムも響くだろう。 - The King of Limbs by Radiohead
エレクトロニカとオーガニックなサウンドを組み合わせたRadioheadの作品は、Alt-Jの実験的なサウンドを愛するファンにおすすめ。 - Total Life Forever by Foals
ダンスロックとエクスペリメンタルな要素を併せ持つアルバムで、Alt-Jのリズム感や独自のアレンジを楽しめるリスナーに最適。
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