1. 歌詞の概要
「Think About You」は、LFO(Lyte Funkie Ones)のセルフタイトル・デビューアルバム『LFO』(1999年)に収録された、穏やかでメロウなポップ・ナンバーである。タイトルの通り、この曲は誰か特別な存在を思い出し、その人が日常の中でどれほど大きな存在だったかに気づく、ノスタルジックでエモーショナルなラブソングである。
歌詞には明確なストーリーは描かれていないが、「ふとした瞬間に君のことを思い出す」という普遍的な感情が、繰り返し静かに語られている。それは恋愛だけにとどまらず、友情や家族、あるいは過去の自分自身への想いとも重なるような、曖昧で柔らかな感情である。
2. 歌詞のバックグラウンド
LFOは、デビュー時から「Summer Girls」や「Girl on TV」といったキャッチーでユーモラスな楽曲で注目を集めたが、この「Think About You」は一転して内省的なムードを持っている。リッチ・クローニンを中心に、グループが“軽快さ”だけでない音楽性も持ち合わせていることを示す重要な一曲である。
当時のティーンポップ・シーンにおいては、感情の深さを描くバラードやミッドテンポの楽曲が成功の鍵でもあった。98 Degreesや*NSYNC、Backstreet Boysが同時期に同様の方向性を見せていたことからも、この楽曲がそうした流れの中で生まれたことは明白である。
また、LFOの持つ“ポップだけどどこかビターな”世界観が、この楽曲では最も美しく表現されている。リッチなメロディラインと、シンプルだが誠実な言葉選びによって、感情の静かな波紋が広がっていく。
3. 歌詞の抜粋と和訳
I try not to think about you
君のことなんて考えないようにしてるBut sometimes I can’t help myself
でも時々、どうしても思い出してしまうI thought I was doing fine
うまくやれてると思ってたんだBut I still see your face everywhere I go
でもどこへ行っても、君の顔が浮かぶんだよAnd now I know, I miss you more than I knew
そしてようやく気づいたんだ、君を思っていた以上に恋しくてたまらないって
引用元:Genius Lyrics – LFO / Think About You
4. 歌詞の考察
この曲の魅力は、“過ぎ去った時間”への想いと、“現在”との対比にある。恋人と別れた後も、その人の面影が日々の生活にそっと重なり、ふとした瞬間に感情があふれ出す——そうした内面の動きを、静かに、そして率直に描いている。
「I try not to think about you」という出だしのフレーズは、まるで自分に言い聞かせるような自己防衛の言葉でありながら、その直後には「でも思い出してしまう」と打ち明けてしまう。この矛盾こそが、人が恋に落ちたとき、そしてその恋を失ったときの、リアルな心情なのだろう。
また、この曲は派手な演出やドラマティックな展開を避け、淡々とした情感に終始している。それがかえって“日常の中に残る恋の残像”をリアルに映し出し、聴き手の心をそっと揺らすのである。
歌詞にある「miss you more than I knew」という表現も印象的である。別れて初めて、相手がどれほど自分にとって大きな存在だったかに気づく——そんな経験をしたことのある人にとっては、胸が締めつけられるような一節だ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Incomplete” by Backstreet Boys
別れた後も相手を忘れられない、心の空白を歌ったバラード。 - “Why Can’t I?” by Liz Phair
恋に落ちる瞬間の混乱と喜びを繊細に描いたポップソング。 - “She’s in Love with the Boy” by Trisha Yearwood
愛と日常が交差する、美しく物語的なラブソング。 - “Come Home Soon” by SHeDAISY
愛する人への想いと再会を願う切ない歌詞が響く一曲。 - “I’ll Never Break Your Heart” by Backstreet Boys
誓いと優しさに満ちた、90年代ポップバラードの名曲。
6. 特筆すべき事項:派手さではなく、余白で魅せるLFOの静かな一面
「Think About You」は、LFOの持つ音楽的スペクトラムの中でも、最も“静か”で“感傷的”な側面を象徴する楽曲である。派手なサウンドや語呂合わせの面白さをあえて控え、音数も抑えたミニマルなアレンジに徹している。そのおかげで、ひとつひとつの言葉がより強く、まっすぐに心に届く。
この曲を聴くと、「LFO=軽快なサマーチューン」という印象を覆されるかもしれない。それは、彼らが“青春”というものの多面性——喜びもあれば寂しさもあること——を真正面から描こうとした証拠でもある。表現の幅の広さが、LFOというグループの音楽的価値を今なお支えているのだ。
「Think About You」は、そんなLFOの静かな名曲であり、恋を知った誰しもの心に寄り添ってくれる、優しい記憶のような一曲である。
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