The Queen Is Dead by The Smiths

発売日: 1986年6月16日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、インディー・ロック

The Queen Is Deadは、ザ・スミスの3枚目のスタジオアルバムであり、彼らの音楽キャリアの中でも最も重要な作品のひとつである。モリッシーの詩的な歌詞とジョニー・マーの洗練されたギターワークが、繊細さと激しさを共存させた独特のサウンドを作り上げている。このアルバムは、イギリスの階級社会、政治、愛と喪失といったテーマを扱いながら、ユーモアと皮肉を交えた深みのあるリリックが印象的で、ザ・スミスの独特なアプローチを示している。

各曲ごとの解説:

1. The Queen Is Dead
   　アルバムのタイトル曲であり、ロック的な疾走感と強烈な批判精神を持つナンバー。イギリスの王室を皮肉った歌詞は、モリッシーの社会的な不満を反映している。ジョニー・マーの特徴的なギターリフが疾走感を与え、ドラムとベースが曲全体をしっかりと支える。序盤からアルバムのテーマが鮮明に打ち出されている。
2. Frankly, Mr. Shankly
   　この曲では、モリッシーが自身のレコード会社や業界への不満をユーモラスに表現している。明るいメロディと皮肉の効いた歌詞が対照的で、ザ・スミスらしい軽快さを感じさせるトラックだ。キャッチーなリズムとシンプルなギターラインが印象に残る。
3. I Know It’s Over
   　ゆっくりとしたバラードで、深い孤独感と絶望が漂う。モリッシーの歌声は、失恋や自己憐憫をテーマにした歌詞と共に聴く者の心に訴えかける。感情的な歌詞とマーの繊細なギターが、この曲をアルバムの中でも特に感動的なものにしている。
4. Never Had No One Ever
   　沈鬱なトーンが支配的なトラックで、モリッシーの「孤独なアウトサイダー」としての自己認識が反映されている。重たいベースラインと幻想的なギターサウンドが不穏な雰囲気を作り出し、曲全体にメランコリックなムードを漂わせている。
5. Cemetry Gates
   　軽快なリズムと明るいギターサウンドが特徴のこの曲は、モリッシーが文学と死に関する思索を皮肉交じりに展開する。文化的な引用を織り交ぜつつ、死と記憶について考えさせられるトラックでありながら、聴き心地の良いポップな雰囲気が魅力的だ。
6. Bigmouth Strikes Again
   　アルバムの中でも最もエネルギッシュな曲のひとつで、マーのエレキギターが鋭く響く。モリッシーの口数が多く、しばしば誤解を招く自身の性格に対する自己風刺的な歌詞が特徴的。急速なテンポと力強いボーカルが、曲全体を強烈なものにしている。
7. The Boy with the Thorn in His Side
   　愛と拒絶のテーマを繊細に描いた一曲。モリッシーの柔らかい歌声とマーの美しいギターラインが、この曲に優雅さを与えている。ザ・スミスのメロディックな側面が光るポップなトラックでありながら、歌詞には深い痛みが含まれている。
8. Vicar in a Tutu
   　アップビートなリズムと風変わりな歌詞が組み合わさった、このアルバムの中でも異色のトラック。ユーモアたっぷりに教会や社会の慣習を揶揄する内容で、シンプルだがリズミカルな演奏が特徴的だ。聴いていて楽しくなる楽曲だ。
9. There Is a Light That Never Goes Out
   　アルバムのハイライトともいえるバラードで、死と逃避について歌われた歌詞が深い印象を残す。モリッシーの切ないボーカルとマーの繊細なアレンジが見事に融合し、ザ・スミスの代表曲としても知られている。圧倒的な美しさを持つトラックだ。
10. Some Girls Are Bigger Than Others
    　アルバムの締めくくりにふさわしい、風変わりで軽妙なナンバー。タイトルからはユーモラスな内容がうかがえるが、実際には儚いメロディとともに、物事の不条理さを淡々と描く。ギターの美しいアルペジオが楽曲に独特の雰囲気を与えている。

アルバム総評:

The Queen Is Deadは、ザ・スミスの音楽的および詩的な成熟を示す作品であり、彼らのディスコグラフィの中でも特に重要な位置を占める。モリッシーの社会風刺や個人的なテーマに対する深い洞察、ジョニー・マーの卓越したギターワーク、そしてリズムセクションの堅実なサポートが一体となり、バンドのピークを感じさせるアルバムである。特に「There Is a Light That Never Goes Out」や「Bigmouth Strikes Again」など、感情豊かな楽曲が聴き手に強い印象を与える。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Meat Is Murder by The Smiths
   ザ・スミスの2枚目のアルバムで、政治的メッセージと個人的なテーマが交差する。独特のギターワークとモリッシーの詩的な歌詞が特徴で、ザ・スミスのスタイルをより深く知ることができる。
2. The Joshua Tree by U2
   同時代のバンドによる傑作で、広がりのあるギターサウンドと社会的メッセージが共通している。ザ・スミスのファンには、U2のエッジの効いたサウンドとリリシズムが響くはずだ。
3. Ocean Rain by Echo & the Bunnymen
   メランコリックなメロディと独特のギターサウンドが印象的なアルバム。ザ・スミスの美しいアレンジと感情豊かな歌詞を好むリスナーにおすすめ。
4. Hatful of Hollow by The Smiths
   ザ・スミスの初期のシングルとラジオセッションを集めたコンピレーション。彼らの原点ともいえる楽曲群が揃っており、より粗削りながらも強烈な印象を与える。
5. Disintegration by The Cure
   暗く感情的な雰囲気が、ザ・スミスのメランコリックなトラックと通じる。ロバート・スミスのボーカルと耽美的なサウンドが、深く心に残る体験を提供するだろう。