
1. 歌詞の概要
BeabadoobeeのTalkは、勢いで電話をかけ、勢いで夜へ飛び出し、勢いで誰かとぶつかってしまう、その一瞬の熱をギターで鳴らした楽曲である。
タイトルはTalk。
話す。
でも、この曲の中の「話す」は、落ち着いた対話ではない。
深夜の電話。
火曜日の夜。
少しだけ羽目を外したい気分。
気まずい関係なのに、また連絡してしまう衝動。
言葉にすればシンプルだが、実際にはかなり複雑な感情でできている。
歌詞の冒頭では、火曜日に電話をかける。何気なく「元気?」と声をかける。でも、もう遅い。相手との関係はすでに面倒で、簡単には戻れない。それでも、連絡してしまう。
この曲は、そういう「わかっているのにやめられない」瞬間の歌である。
Dorkの歌詞ページでも、火曜日に電話をかけること、相手が複雑すぎること、何かを見つけるたびにまた壊してしまうような感覚が確認できる。TalkはBeabadoobeeの2022年のアルバムBeatopiaからの先行シングルとして発表された。
この曲の主人公は、完全に冷静ではない。
むしろ、冷静でいたくない。
火曜日という中途半端な曜日が象徴的だ。週末ほど派手ではない。月曜ほど重くもない。日常の真ん中にある、少しだけズレた夜。そのズレが、曲のテンションにぴったり合っている。
Beabadoobee本人は、Talkの冒頭にある「火曜日に電話する」というラインについて、火曜日が出かけるのにちょうどいい夜だと感じていた、混沌が多すぎず、でも楽しむには十分だったという趣旨の発言をしている。mancunion.com
つまりTalkは、金曜の大騒ぎの曲ではない。
火曜日の、少しだけおかしな衝動の曲だ。
明日もある。
でも、今夜くらいは何かを壊してもいい気がする。
その軽さと危なさが、曲全体を走らせている。
サウンドは、Fake It Flowers期の90年代オルタナティヴ・ロックへの憧れを受け継ぎつつ、Beatopiaらしいカラフルさへ向かっている。ギターはざらつき、ドラムは前へ出る。声は柔らかいのに、曲はかなり勢いがある。
Beabadoobeeの魅力は、かわいい声と歪んだギターの間にある。
Talkでは、その組み合わせが特に軽快だ。
悲しい。
でも踊れる。
未練がある。
でも笑っている。
相手に連絡するべきではないとわかっている。
でも電話してしまう。
Talkは、そのどうしようもなさを、明るいギター・ロックに変えた曲なのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
Talkは、BeabadoobeeのセカンドアルバムBeatopiaからの先行シングルとして2022年3月23日にリリースされた。Dorkは、TalkがBeatopiaからの最初の楽曲であり、アルバムは2022年7月15日にDirty Hitからリリース予定だったと報じている。Readdork
Beatopiaは、BeabadoobeeことBeatrice Lausが子どもの頃に作った空想世界の名前に由来するアルバムである。
この設定はとても重要だ。
Beatopiaは、単なるアルバムタイトルではない。
逃げ場所であり、記憶であり、子どもの頃の自分と再会するための場所である。
Kerrang!のインタビューでは、Beabadoobeeが幼い頃に作った空想の国Beatopiaが、アルバムの発想源になっていることが語られている。そこには、自分が属していないように感じる人たちへ向けた希望や安心感も込められている。Kerrang!
Fake It Flowersが、10代の痛み、トラウマ、友情、恋愛の壊れ方を90年代風ギターで描いたアルバムだったとすれば、Beatopiaはもっと広い。
ギター・ロックもある。
ドリームポップもある。
フォーク的な柔らかさもある。
サイケデリックな浮遊感もある。
そして、子どもの頃の想像力と、大人になってからの傷が同じ場所で混ざっている。
Talkは、その入り口として非常にふさわしい曲である。
なぜなら、この曲は重すぎないからだ。
アルバムの世界へ入るために、まず身体を動かす。
考え込む前に、ギターが鳴る。
夜へ出る。
電話をかける。
面倒な相手にまた引き寄せられる。
その勢いが、Beatopiaの扉を開ける。
音楽的には、TalkはBeabadoobeeの得意なインディーロックの直線的な魅力を持っている。
しかし、Fake It Flowersの一部楽曲にあった暗いグランジ感よりも、もう少しポップで、開けている。リフは軽快で、サビはすぐに耳に残る。歌詞は混乱しているが、曲は前へ進む。
Beatopiaは2022年7月15日にリリースされ、インディーロック、インディーポップ、オルタナティヴ・ロック、ドリームポップなどを横断する作品として紹介されている。アルバムにはTalkのほか、See You Soon、Lovesong、10:36などが収録された。
Talkは、その中でも最も即効性のある曲のひとつだ。
アルバム全体が夢や記憶の中を歩くような作品だとすれば、Talkはその中で突然ネオンが点く場面である。
火曜日の夜。
電話。
混乱。
ギター。
「話そう」と言いながら、実際にはまともに話せていない。
この空回りが、曲をとても人間らしくしている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
歌詞全文は各種歌詞掲載サイトで確認できる。ここでは権利に配慮し、曲の主題を示す短い部分のみを引用する。
Call you up on Tuesday
和訳:
火曜日にあなたへ電話をかける
この一行は、Talkの世界を一気に作る。
なぜ火曜日なのか。
普通、夜遊びや衝動的な電話の歌なら、金曜日や土曜日が選ばれそうだ。けれどBeabadoobeeは火曜日を選ぶ。
この少し外した曜日感が、とてもいい。
火曜日は中途半端だ。
週の始まりの疲れがまだ残っている。
でも、週末までは遠い。
そんな日に電話をかけるから、曲には「ちゃんとしていない」感じが出る。
計画された夜ではない。
正しいタイミングでもない。
ただ、気分がそうなった。
その感じが、Talkの衝動をよく表している。
Beabadoobee本人も、火曜日を出かける夜として気に入っていたと語っており、混沌が多すぎず、楽しむには十分な夜だったというニュアンスが紹介されている。mancunion.com
もうひとつ、曲の関係性を示す短い部分がある。
Why’d you have to be so complicated?
和訳:
どうしてそんなに面倒にしなきゃいけなかったの?
このフレーズには、恋愛や曖昧な関係の疲れが詰まっている。
相手が複雑なのか。
関係そのものが複雑なのか。
自分もその複雑さを作っているのか。
曲はそこをはっきり分けない。
だからリアルだ。
人間関係では、相手だけが悪いわけでも、自分だけが悪いわけでもないことが多い。
ただ、話せば話すほどややこしくなる。
簡単にしたいのに、できない。
Talkは、その「話すことの失敗」を歌っているようにも聞こえる。
歌詞引用元:Dork、ToyLyrics掲載歌詞
楽曲情報:Talkは2022年3月にBeatopiaからの先行シングルとして発表され、アルバムBeatopiaは2022年7月15日にDirty Hitからリリースされた。
4. 歌詞の考察
Talkの歌詞は、会話の歌でありながら、実は会話がうまくいかない歌である。
タイトルはTalk。
話す。
でも、ここでの会話は落ち着いたものではない。
火曜日に電話をかける。
「元気?」と言う。
でも、もう遅い。
相手は複雑で、関係も複雑で、言葉を交わしても何かがほどけるわけではない。
むしろ、話すことでまた巻き込まれていく。
この曲の主人公は、相手を完全に拒んでいない。
むしろ、自分から電話している。
つまり、関係を終わらせたいのに終わらせられない人の声である。
もう無理だとわかっている。
面倒だとわかっている。
でも、連絡する。
その矛盾こそがTalkの中心だ。
歌詞の中には、「いつも自分が何かを見つけると、それを壊してしまう」というような感覚がある。
これは、恋愛における自己破壊の感覚にも近い。
せっかく何かいいものを見つけたのに、自分で壊してしまう。
あるいは、壊れるような相手ばかり選んでしまう。
この「わかっているのに繰り返す」感じは、Beabadoobeeの楽曲によくある。
彼女の歌には、若さの中の衝動がある。
傷つくと知っていても近づく。
面倒になると知っていても電話する。
明日後悔するとわかっていても、今夜は止まれない。
Talkは、その瞬間を切り取っている。
この曲の火曜日は、単なる曜日ではなく、そういう衝動の舞台である。
金曜日なら、少し言い訳ができる。
週末だから。
夜遊びだから。
でも火曜日だと、少しだけおかしい。
だからこそ、この曲の主人公は自分の衝動を誤魔化せない。
わざわざ火曜日に電話している。
つまり、本当にしたかったのだ。
サウンド面では、Talkは非常に軽快だ。
ギターは明るく歪み、ドラムは前へ出る。
歌詞が持つ後悔や面倒くささに比べて、曲の足取りは驚くほど軽い。
このギャップがいい。
本当に面倒な関係の中にいるとき、人は必ずしも暗い音楽の中にいるわけではない。
友人と出かける。
お酒を飲む。
笑う。
電話をかける。
その場では楽しい。
でも、帰り道に少しだけ虚しくなる。
Talkは、その夜の前半の音だ。
まだ暗くなりきっていない。
まだ笑っている。
でも、どこかで「これ、また良くない方向へ行くかも」とわかっている。
この軽さの中にある不安が、曲を魅力的にしている。
Beatopiaというアルバム全体の中で見ても、Talkはかなり現実寄りの曲だ。
Beatopiaには、子どもの頃の空想世界や夢のようなサウンドがある。Entertainment Weeklyのインタビューでも、BeatopiaがBeabadoobeeの幼少期に作った世界から着想を得た作品であり、ファジーなサイケロックやキャッチーなポップを含む作品として紹介されている。EW.com
その中でTalkは、現実の夜の曲である。
電話。
曜日。
相手。
混乱。
とても具体的だ。
しかし、この現実の曲があるからこそ、Beatopiaの空想世界にも足場ができる。
夢の世界へ逃げる前に、まず現実の面倒な感情がある。
Talkは、その入口なのだ。
Beabadoobeeのボーカルも、この曲では絶妙である。
力みすぎない。
叫びすぎない。
でも、歌詞の中にある苛立ちと未練はちゃんと伝わる。
彼女の声には、柔らかさがある。
しかし、柔らかいだけではない。
少し拗ねたような、少し投げやりなような、若い人が深夜に電話をかけるときの声の温度がある。
「どうしてそんなに面倒にするの?」と歌うときも、完全な怒りではない。
怒っている。
でも、まだ好きでもある。
面倒だと思っている。
でも、まだ相手に反応してしまう。
この曖昧さが、とてもリアルだ。
Talkは、解決の曲ではない。
関係を整理する曲でもない。
むしろ、整理できないから電話してしまう曲である。
その意味で、タイトルのTalkは少し皮肉でもある。
話したい。
でも、話してもどうにもならない。
それでも話す。
なぜなら沈黙よりはましだから。
この不器用さが、曲の本当のテーマなのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- 10:36 by Beabadoobee
Beatopiaからのシングルで、Pitchforkは10:36がアルバムからの3枚目のシングルとして発表され、眠りにつくために人との接触へ依存する感覚を扱った曲だと紹介している。Pitchfork
Talkが火曜日の夜の衝動なら、10:36はもっと静かな依存の曲である。誰かがいないと眠れない、という弱さを、軽いギターとポップなメロディに乗せている。Talkの軽快さと人恋しさに惹かれる人に合う。
- See You Soon by Beabadoobee
Beatopia収録曲で、Talkに続くアルバムの重要なシングルのひとつである。アルバムBeatopiaのシングル群としてTalk、See You Soon、Lovesong、10:36などが紹介されている。Reddit
Talkよりも浮遊感があり、サイケデリックな質感が強い。Beatopiaの夢見るような側面を知るにはぴったりの曲である。Talkの現実的な夜から、少し意識がほどける場所へ行くような流れで聴ける。
- Care by Beabadoobee
2020年のFake It Flowersを代表する曲であり、Beabadoobeeの90年代オルタナティヴ・ロックへの愛が強く出た楽曲である。PitchforkはCareを2020年のベストソングのひとつとして取り上げたこともある。Pitchfork
Talkのギター感が好きなら、Careもぜひ聴きたい。こちらはより怒りが強く、相手の無関心を突き放す曲である。Talkが面倒な関係へまた近づいてしまう曲なら、Careはもう相手の言葉を信じない曲として響く。
- Worth It by Beabadoobee
Fake It Flowers収録曲で、恋愛の迷い、浮気心、自己嫌悪を扱った楽曲である。Talkの「わかっているのにやめられない」感覚と非常に近い。
Talkよりも少し重く、90年代オルタナの質感が濃い。自分が悪い方向へ進んでいるとわかっていながら、その感情を止められない人の曲として聴ける。
Talkの軽快なギター・ロック感、90年代オルタナティヴの明るい毒、キャッチーなサビが好きな人には、HoleのCelebrity Skinも相性が良い。
Beabadoobeeは90年代ギターロックの美学を現代的に更新しているが、Celebrity Skinはその系譜の重要曲のひとつである。Talkよりも攻撃的でグラマラスだが、歪んだギターとポップなフックの組み合わせがよく響き合う。
6. 火曜日の夜に電話してしまう、軽やかな自己破壊
Talkの特筆すべき点は、自己破壊的な衝動を、とても軽やかに鳴らしているところである。
この曲は深刻に沈まない。
むしろ、走る。
ギターは明るい。
ドラムは軽い。
声は柔らかい。
でも、歌われていることはわりと危ない。
相手は複雑だ。
関係も複雑だ。
きっと電話しないほうがいい。
でも、電話する。
この「しないほうがいいことをする」瞬間が、Talkの核である。
若さの中には、そういう夜がある。
次の日のことを考えればやめたほうがいい。
あの人に連絡すれば面倒になる。
もう終わった話を蒸し返すことになる。
でも、今は話したい。
その衝動が勝つ。
Talkは、その瞬間を責めない。
美化もしない。
ただ、そのままギター・ロックにする。
ここがBeabadoobeeらしい。
彼女の音楽には、失敗する自分への優しさがある。
完璧な主人公ではない。
同じことを繰り返す。
面倒な相手に惹かれる。
自分で壊す。
後悔する。
でも、それを曲にできる。
Talkは、そのポップな証明である。
火曜日という設定も、曲を特別にしている。
火曜日は、週末のようにドラマチックではない。
だからこそ、リアルだ。
人間の感情は、金曜や土曜だけに爆発するわけではない。
なんでもない火曜日に、突然誰かのことを思い出す。
電話したくなる。
少しだけ出かけたくなる。
普通の日常の中に、異常な衝動が差し込む。
この感じを、Talkはとてもうまく掴んでいる。
また、この曲はBeatopiaの先行シングルとしても非常に効果的だった。
Beatopiaは、子どもの頃の空想世界をもとにしながらも、現実の傷や恋愛、孤独、成長を含むアルバムである。Dorkは同作を、7歳のBeabadoobeeの想像力から生まれ、彼女がずっと持ち続けてきた、幻想的でありながら深く個人的な世界として紹介している。Readdork
Talkは、そのアルバムへ入る最初の合図として、夢よりも先に衝動を鳴らす。
これは大切だ。
空想世界Beatopiaは、現実から完全に切り離された楽園ではない。
現実の面倒さ、傷、夜、未練があるからこそ、その世界が必要になる。
Talkは、その現実側の入口である。
この曲を聴くと、Beabadoobeeがただ懐古的な90年代ギターロックをやっているのではないことがわかる。
たしかに音の質感には、90年代から2000年代初頭のオルタナティヴ・ロック、インディーロック、ポップパンクの影がある。
しかし、歌詞の感覚は現代的だ。
夜に電話する。
関係を複雑にする。
自分でもわかっているのに、同じことを繰り返す。
その不安定さは、SNS時代の人間関係にもよく合う。
連絡先は消せない。
相手の存在は画面に残る。
簡単に電話できる。
簡単に後悔できる。
Talkは、そういう時代のギター・ポップでもある。
最後に残るのは、軽やかな後味だ。
この曲は、聴き手を重い場所に置き去りにしない。
むしろ、面倒な気持ちを持ったまま少し踊らせてくれる。
それが大きい。
人間関係の失敗や衝動は、いつも悲劇的なバラードになるわけではない。
ときには、明るいギターで走り抜けるしかない夜もある。
Talkは、そんな夜のための曲である。
火曜日に電話をかける。
相手は複雑だ。
自分もきっと複雑だ。
でも、今は話したい。
このどうしようもない短い衝動を、Beabadoobeeは3分ほどのきらめくギター・ロックにしてみせた。
だからTalkは、軽い曲でありながら、妙に忘れがたい。
それは、この曲が「若さの失敗」を責めずに鳴らしているからだ。
間違える。
電話する。
また傷つく。
でも、その瞬間にも音楽は鳴る。
Talkは、その音楽である。

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