Takin’ Care of Business by Bachman-Turner Overdrive(1973)楽曲解説

1. 歌詞の概要

「Takin’ Care of Business」は、Bachman-Turner Overdriveが1973年に発表したセカンド・アルバム『Bachman-Turner Overdrive II』に収録された、彼らの代表的アンセムである。

タイトルに含まれる「Takin’ Care of Business(仕事を片付ける、しっかりやる)」という表現は、アメリカン・ドリームや労働倫理を象徴するフレーズでもあり、実直な労働者の姿をストレートに讃えている。

一日8時間働いて、土曜日は音楽に没頭する。そんなシンプルなライフスタイルの中にも、誇りと自由を見出すBTOらしい視点が歌詞全体に流れている。これは、単に働くことを称賛するのではなく、労働と音楽の両方を人生の中心に置く“ロックする市民”への賛歌なのだ。

2. 歌詞のバックグラウンド

この曲の誕生には、BTOならではの興味深い逸話がある。

もともとランディ・バックマンはThe Guess Who時代に似たような曲を書いていたが、そのアイディアを元に、ツアー中にラジオでDJが「We’re takin’ care of business!(ビジネスに取り掛かるぜ!)」と言うのを耳にし、そのフレーズを取り入れることを思いついた。

リフは当初「ベートーヴェンの『月光ソナタ』のロック版」として作られたが、結果として全く異なる、非常にファンキーでキャッチーなギターリフへと進化を遂げた。

ライブでは観客と一緒に「Takin’ care of business!」と合唱されることが多く、今でも北米のスポーツイベントやテレビCM、映画などで使用される、国民的ロックソングとなっている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

引用元:Genius Lyrics

If you ever get annoyed
「もしイライラすることがあっても」
Look at me I’m self-employed
「俺を見てみな、自営業でやってんだ」
I love to work at nothing all day
「一日中なんもしない仕事なんて最高さ」

この一節には、労働の意味を根本から問うような皮肉と自由への憧れが込められている。

やりたくない仕事に追われる生活への批判をにじませながら、自分のやり方で「働くこと=生きること」にしているという自己肯定が、気持ちよく鳴り響いている。

4. 歌詞の考察

「Takin’ Care of Business」は、単なる労働礼賛ソングではない。

この楽曲には、「音楽で生きること」のロマンがはっきりと描かれている。9時5時の世界を羨ましく思うかもしれないが、自分のペースで自分のやり方で生きていく。それがたとえ茨の道であっても、誇らしく、そして痛快であるということを、この曲は教えてくれる。

また、「働くとは何か」「生きるとは何か」を、明るくポジティブに提示するこの歌の姿勢は、時代や国境を超えてリスナーの胸に響く普遍性を持っている。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Working for the Weekend by Loverboy
    カナダ発、労働者の週末の解放をテーマにした80sロックの名曲。BTOとのスピリットの共通点が多い。
  • Born to Run by Bruce Springsteen
    労働者階級の現実と、それを突き破るための“走り出す力”を歌い上げた永遠のロックンロール・アンセム。
  • American Woman by The Guess Who
    ランディ・バックマン在籍時代の楽曲。社会批判とハードな演奏が魅力的。
  • Slow Ride by Foghat
    BTOと同時代に活躍したハードブギー・ロックの代表曲。働く合間の“スローな時間”を楽しむ精神がリンクする。

6. ロックンロール労働讃歌の決定版

「Takin’ Care of Business」は、ロックンロールが“日常の中の解放”であり、“生活のリズム”そのものであることを証明する名曲である。

この曲が持つ力は、ただのノスタルジーではない。現代においても、型にはまらない働き方や、自分の信じる価値観に基づいて生きることを選ぶすべての人への応援歌として機能し続けている。

Bachman-Turner Overdriveは、この曲を通してロックと労働を結びつけ、「毎日が仕事だが、それも悪くない」と力強く叫んだ。

その声は、今日も世界のどこかで、朝の通勤電車や、夕暮れの作業現場、あるいは部屋の片隅でギターを鳴らす誰かの耳に届いているのだ。

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