
- イントロダクション:Sugar Rayという“終わらない夏”のサウンド
- アーティストの背景と歴史:オレンジカウンティの悪ガキたちからラジオスターへ
- 音楽スタイルと影響:サーフ感、レゲエ、パンク、ポップの陽気な衝突
- 代表曲の楽曲解説
- アルバムごとの進化
- Lemonade and Brownies:荒削りなミクスチャー時代
- Floored:ヘヴィな殻を破った「Fly」の衝撃
- 14:59:自虐から生まれた最大の成功作
- Sugar Ray:ポップロックの安定期
- In the Pursuit of Leisure:余暇を追い求めるバンドの自己像
- Music for Cougars:2000年代後半の再登場
- Little Yachty:ヨットロックへ向かった成熟
- 影響を受けたアーティストと音楽
- 影響を与えたアーティストと音楽シーン
- 同時代バンドとの比較:Sugar Rayのユニークさ
- Mark McGrathというフロントマン:軽薄さを引き受けたポップスター
- ライブと現在の活動:ノスタルジーではなく“夏の再演”
- ファンと批評家の評価:軽さゆえの過小評価、軽さゆえの強さ
- Sugar Rayの魅力:爽快さの奥にある少しの寂しさ
- まとめ:Sugar Rayは“軽さ”をロックの武器にしたバンドである
- 関連レビュー
イントロダクション:Sugar Rayという“終わらない夏”のサウンド
Sugar Rayは、1990年代後半のアメリカン・ポップロックを語るうえで欠かせないバンドである。カリフォルニア州オレンジカウンティ周辺から登場し、当初はファンクメタル、パンク、ハードロック、ラップロックの荒々しい要素を持つバンドだった。しかし1997年の「Fly」をきっかけに、彼らはレゲエ、サーフロック、ポップ、オルタナティヴを軽やかに横断する存在へと変化していく。
Sugar Rayの音楽には、いつも陽射しがある。だが、それは単純に明るいだけの陽射しではない。浜辺のパーティー、ラジオから流れる夏のヒット曲、少し浮ついた恋、青春の終わり、軽薄さの裏にある寂しさ。そうしたものが混ざり合って、彼らの楽曲は“爽快なのに少し切ない”独特の感触を持つ。
公式プロフィールでは、Sugar RayはMark McGrathとRodney Sheppardを中心に30年以上続くバンドとして紹介され、1000万枚以上のセールス、4曲のトップ10ヒット、膨大なストリーミング、数百万枚規模のチケット販売を記録した存在とされている。そこでは彼らが「ポピュラー音楽とカルチャーの終わらない夏」を体現するバンドとも表現されている。(sugarray.com)
代表曲「Fly」、「Every Morning」、「Someday」、「When It’s Over」は、90年代末から2000年代初頭のラジオを彩った名曲である。批評的に深刻なロックバンドとして語られることは少ないかもしれない。しかし、Sugar Rayほど“軽さ”を武器にしたバンドも珍しい。彼らの音楽は、悩みを深掘りするのではなく、悩みをサングラス越しの景色へ変える。そこに、Sugar Rayのポップな魔法がある。
アーティストの背景と歴史:オレンジカウンティの悪ガキたちからラジオスターへ
Sugar Rayは1992年、カリフォルニア州オレンジカウンティで結成された。中心メンバーは、ボーカルのMark McGrath、ギターのRodney Sheppard、ベースのMurphy Karges、ドラムのStan Frazier、DJのCraig “DJ Homicide” Bullockである。Mark McGrathはコネチカット州生まれだが、幼少期にカリフォルニア州ニューポートビーチへ移り、南カリフォルニアの文化の中で育った。(wikipedia.org)
初期のSugar Rayは、後年の明るいポップイメージとはかなり違っていた。1995年のデビューアルバムLemonade and Browniesは、ファンクメタル、パンク、ラップロック、オルタナティヴの混合体であり、当時のRed Hot Chili Peppers、Faith No More、311、Beastie Boys、Fishboneなどに通じる雑食的なエネルギーを持っていた。
しかし、バンドの運命を変えたのは、1997年のセカンドアルバムFlooredに収録された「Fly」だった。この曲は、Sugar Rayのヘヴィで騒がしい側面とは異なり、レゲエ風のリズムと軽やかなポップメロディを持つ楽曲だった。もともとアルバム全体の中では異質な曲だったが、ラジオとMTVで大きく広がり、Sugar Rayは一気にメインストリームへ飛び出した。
その後、1999年の14:59で彼らは大きく方向転換する。アルバムタイトルは、Andy Warholの「誰もが15分間有名になれる」という有名な言葉を踏まえ、自分たちの“15分の名声”がもうすぐ終わるかもしれないという自虐的なユーモアを含んでいた。しかし実際には、この作品はバンド最大級の成功作となり、Billboard 200で17位、RIAAトリプルプラチナ認定を獲得した。(wikipedia.org)
音楽スタイルと影響:サーフ感、レゲエ、パンク、ポップの陽気な衝突
Sugar Rayの面白さは、音楽性の変化にある。初期はラップメタルやファンクメタルの荒さを持っていたが、「Fly」以降は、レゲエ、サーフロック、ポップロック、オルタナティヴ、ヨットロックの要素を取り入れ、より軽やかでラジオ向きのサウンドへ進んだ。
彼らの音楽には、南カリフォルニアの空気が濃い。ビーチ、スケート、サーフ、夏の午後、ドライブ、ラジオ、軽い恋愛。そうしたイメージが楽曲の奥に流れている。だが、単に“海辺の爽やかバンド”とまとめると、Sugar Rayの本質を見落とす。彼らの中には、パンクやハードコアへの愛もある。Mark McGrathは2019年のインタビューで、若い頃にThe Beatles、The Beach Boys、Christopher Crossを愛していた一方で、Black Flag、Circle Jerks、Sex Pistolsも好きだったと語っている。(gq.com)
この幅広い嗜好こそ、Sugar Rayの音楽を作っている。The Beach Boys的なカリフォルニアの陽射し、パンクの軽薄な勢い、レゲエの揺れ、ポップソングのフック、そして90年代オルタナティヴの少しひねくれた感覚。それらが混ざった結果、Sugar Rayは“真面目に軽い”バンドになった。
ここで重要なのは、彼らが自分たちの軽さを分かっていたことだ。Sugar Rayは、自分たちを大げさに神格化しなかった。むしろ、Mark McGrathのキャラクターには、常に自虐と冗談がある。14:59というタイトル自体が、それをよく示している。批評家に「一発屋」と見られることを逆手に取り、結果的にさらにヒットを重ねる。その身軽さが、Sugar Rayの強みだった。
代表曲の楽曲解説
「Fly」
「Fly」は、Sugar Rayの運命を変えた楽曲である。1997年のアルバムFlooredに収録され、レゲエ・ミュージシャンのSuper Catをフィーチャーしたこの曲は、バンドの本来のヘヴィなイメージから大きく外れた楽曲だった。しかし、その外れ方が奇跡的だった。
曲は軽い。驚くほど軽い。ギターは重く歪むのではなく、空気を撫でるように鳴る。リズムはレゲエ風に揺れ、Mark McGrathの声は力むことなく、夏のラジオから流れてくるように響く。Super Catのトースティングが加わることで、曲に異国的な香りとリズムの跳ねが生まれる。
「Fly」の魅力は、深刻さを拒否しているところにある。90年代オルタナティヴロックには、グランジ以降の重い内面性が強く残っていた。そこへSugar Rayは、まるでビーチサンダルで現れた。悩みはあるかもしれない。だが今は空を飛ぶように軽くなりたい。そんな気分が、この曲にはある。
「Every Morning」
「Every Morning」は、1999年の14:59を代表する楽曲であり、Sugar Rayのポップ化を決定づけた曲である。イントロの印象的なフレーズ、軽快なリズム、覚えやすいサビ。すべてがラジオ向きに磨かれている。
この曲のすごさは、明るいのに少し不安定なところだ。歌詞には、恋愛のすれ違いや浮気のニュアンスがあり、完全な幸福の歌ではない。だが、サウンドはあまりにも爽やかで、悩みが深刻に沈み込まない。朝の光の中で、昨日の問題が少しだけ軽く見える。その感覚が、「Every Morning」の魅力である。
14:59は、「Fly」の成功を受けて、バンドがより柔らかくメロディアスな方向へ進んだ作品だった。アルバムの背景として、「Fly」の成功が次作でのソフトな音作りを後押しし、Mark McGrath自身も同曲が“実験の青写真”になったと語っている。(wikipedia.org)
「Someday」
「Someday」は、Sugar Rayの中でも特にメロウで、少し切ない楽曲である。「Every Morning」が朝のポップソングだとすれば、「Someday」は夕暮れの曲だ。テンポは落ち着き、ギターは柔らかく、歌には過ぎ去った時間へのまなざしがある。
タイトルの“Someday”には、未来への希望と、今はまだ届かないものへの諦めが同時に含まれている。Sugar Rayの音楽は、しばしば軽いと見られるが、「Someday」には確かなメランコリーがある。夕方の海岸で、楽しかった一日が終わっていく時のような寂しさだ。
この曲は、Sugar Rayが単なるパーティーバンドではなかったことを示している。彼らは深刻ぶらない。しかし、軽さの裏にある寂しさを知っている。そのバランスが、この曲を長く残るものにしている。
「Falls Apart」
「Falls Apart」は、14:59の中でもややロック寄りの楽曲である。Sugar Rayのポップな側面が大きく注目される中で、この曲は彼らがまだギターを前に出すバンドであることを思い出させる。
歌詞は、心が崩れていくような不安を扱っている。明るいビーチポップのイメージとは違い、少し暗い題材だ。しかし、曲は過度に重くならない。ギターの勢いとポップなフックによって、崩壊の感覚がラジオ向きのロックソングへ変換されている。
「Falls Apart」は、Sugar Rayの二面性を示す曲だ。彼らは完全にハードロックを捨てたわけではない。ただ、重さをそのまま出すのではなく、ポップの形に整えるようになったのである。
「When It’s Over」
「When It’s Over」は、2001年のセルフタイトルアルバムSugar Rayを代表する楽曲である。バンドのポップロック路線がさらに洗練され、より大人びたサウンドになっている。
この曲には、終わりを受け入れる軽やかさがある。タイトルは「それが終わったら」という意味だが、曲調は悲劇的ではない。むしろ、終わりを少し遠くから眺めているような余裕がある。Mark McGrathの声は、感情を深く掘り下げるというより、過去の恋をラジオのフックに変えてしまう。
Sugar Rayの強みは、失恋すら軽くできることだ。もちろん、その軽さを物足りないと感じる人もいるだろう。しかし、ポップミュージックには、悲しみを少しだけ踊れる形へ変える役割もある。「When It’s Over」は、その役割をよく果たした曲である。
「Answer the Phone」
「Answer the Phone」は、Sugar Rayの軽快でユーモラスなポップ感覚がよく出た楽曲である。電話に出てくれ、というシンプルなモチーフを、彼ららしい明るいロックソングへ変えている。
この曲の魅力は、日常の軽さにある。大げさなテーマではない。恋愛のもどかしさ、連絡が取れない苛立ち、でも深刻にはなりきれない感覚。Sugar Rayは、そうした小さな感情をポップに変換するのがうまい。
「Into Yesterday」
「Into Yesterday」は、2007年の映画Surf’s Upのサウンドトラックで広く知られる楽曲であり、Sugar Rayのサーフ感覚が自然に生きた曲である。タイトル通り、昨日へ戻るようなノスタルジックな響きがある。
この曲では、バンドのサーフロック的な軽快さと、少し大人になった後の郷愁が重なる。90年代のSugar Rayを知るリスナーにとっては、彼らの“夏の記憶”がもう一度戻ってくるような曲でもある。
「Make It Easy」
「Make It Easy」は、2019年のアルバムLittle Yachty期を象徴する楽曲である。このアルバムでSugar Rayは、自分たちのサーフポップ感覚をさらにヨットロック寄りへ進めた。GQのインタビューでは、Mark McGrathが同作をヨットロックへ自然に向かったアルバムとして語り、若い頃に好きだったThe Beach BoysやChristopher Crossへの愛にも触れている。(gq.com)
「Make It Easy」には、年齢を重ねたSugar Rayの柔らかさがある。若い頃の騒がしさは薄れ、その代わりに、肩の力を抜いたポップ職人としての魅力が出ている。タイトル通り、難しくしない。簡単にする。Sugar Rayの美学は、ここでも一貫している。
アルバムごとの進化
Lemonade and Brownies:荒削りなミクスチャー時代
1995年のLemonade and Browniesは、Sugar Rayのデビューアルバムである。後年の爽やかなイメージから入ったリスナーには驚きの作品かもしれない。ここでのSugar Rayは、ファンクメタル、パンク、ラップロック、オルタナティヴを混ぜた騒がしいバンドである。
この作品には、90年代初頭の西海岸ミクスチャー文化の匂いがある。重いギター、ふざけた態度、ジャンルをまたぐ軽薄さ。Sugar Rayは最初から“真面目なロックバンド”ではなく、遊びながらジャンルを壊すバンドだった。
ただし、この時期の彼らはまだ方向性が定まっていない。勢いはあるが、ポップソングとしての完成度は後年ほど高くない。Lemonade and Browniesは、Sugar Rayがまだ自分たちの本当の武器を見つける前の、若く荒い記録である。
Floored:ヘヴィな殻を破った「Fly」の衝撃
1997年のFlooredは、Sugar Rayの転機となったアルバムである。全体としてはまだヘヴィで、ラップロックやファンクメタルの要素が強い。しかし、その中に「Fly」という異質な曲が入っていた。
「Fly」は、アルバムの中でまるで別の窓を開けたような曲だった。そこから入ってきたのは、海風、レゲエの揺れ、ポップの軽さである。この曲の成功によって、Sugar Rayは自分たちの新しい可能性を知ることになる。
GQのインタビューでも、Mark McGrathは「Fly」によってバンドが大きく広がり、その後の作品へつながっていったことを振り返っている。(gq.com) つまりFlooredは、バンドの過去と未来が同居する作品だ。ヘヴィなSugar Rayと、ポップなSugar Ray。その境界線が、ここにある。
14:59:自虐から生まれた最大の成功作
1999年の14:59は、Sugar Rayの代表作である。タイトルは“15分の名声”への自虐だが、結果的にはその名声を延長する作品になった。アルバムはBillboard 200で17位を記録し、RIAAトリプルプラチナ認定を受けた。(wikipedia.org)
このアルバムでは、バンドは明確にポップへ舵を切っている。「Every Morning」、「Someday」、「Falls Apart」など、ラジオ向きの楽曲が並ぶ。重いギターは後退し、メロディ、リズム、軽快なアレンジが前に出る。
批評的には、彼らの方向転換を疑問視する声もあった。しかし、14:59はポップアルバムとして非常によくできている。AllMusicの評でも、前作までのメタル的な殻から、より穏やかでメロディアスなパスティーシュへ大きく変化した作品として捉えられている。(wikipedia.org)
14:59は、Sugar Rayが“軽さ”を本格的な武器にしたアルバムだ。彼らは深刻なオルタナティヴの顔を捨て、夏のラジオの王者になったのである。
Sugar Ray:ポップロックの安定期
2001年のセルフタイトルアルバムSugar Rayは、前作の成功を受けて作られた作品である。ここでは、バンドのサーフポップ/オルタナティヴポップ路線がより安定している。「When It’s Over」や「Answer the Phone」は、その代表曲だ。
この作品では、Sugar Rayはもう迷っていない。自分たちが何を求められているかを理解し、それをきちんと形にしている。批評的な冒険は少ないかもしれない。しかし、職人的なポップロックとしての完成度は高い。
2001年という時代は、ポップパンク、ニューメタル、ティーンポップ、ヒップホップが混在していた。その中でSugar Rayは、重さでも過激さでもなく、軽快さで存在感を保った。これは簡単なことではない。
In the Pursuit of Leisure:余暇を追い求めるバンドの自己像
2003年のIn the Pursuit of Leisureは、タイトルからしてSugar Rayらしい。余暇の追求。深刻な使命ではなく、楽しさ、気楽さ、遊び。彼らは自分たちのポップなイメージをさらに押し広げていく。
しかし、この時期にはSugar Rayの商業的な勢いは徐々に落ち着いていった。90年代末のラジオを支配した爽快ポップロックの時代は変化し、音楽シーンは新しい方向へ進んでいた。Sugar Rayの軽さは、時代の気分と少しずつ距離ができていく。
それでも、このアルバムには彼ららしい曲がある。無理に重くならず、あくまでポップに振る舞う。その姿勢は一貫していた。
Music for Cougars:2000年代後半の再登場
2009年のMusic for Cougarsは、Sugar Rayが長い間隔を経て発表した作品である。タイトルには相変わらずの冗談っぽさがあり、バンドの自虐的なユーモアが健在であることを示している。
この時期のSugar Rayは、もはや時代の最前線のバンドではなかった。しかし、90年代を経験したファンにとって、彼らの音楽は夏の記憶そのものになっていた。新作は大きなチャート成功を収めたわけではないが、Sugar Rayが自分たちの役割を理解しながら活動を続けていたことを示す作品である。
Little Yachty:ヨットロックへ向かった成熟
2019年のLittle Yachtyは、Sugar Rayにとって10年ぶりのアルバムであり、バンドがヨットロック的な方向へ進んだ作品である。GQは同作を、Sugar Rayが完全にヨットロックへ舵を切ったアルバムとして紹介し、Mark McGrath自身も年齢を重ねた今、昔のような激しい曲へ戻る気はなく、自然な流れでこの音になったと語っている。(gq.com)
これは非常にSugar Rayらしい進化である。若い頃はパンクやファンクメタルをやっていたバンドが、「Fly」でポップに開き、年齢を重ねてヨットロックへ向かう。流れとしては自然だ。海、太陽、軽いリズム、柔らかなコーラス。Sugar Rayがずっと持っていた“夏”の感覚が、より大人っぽく、滑らかになった作品である。
Little Yachtyは、過去の再現ではない。むしろ、Sugar Rayが自分たちの軽さを年齢相応に更新したアルバムだ。若い頃のビーチパーティーから、夕方のマリーナへ。彼らの夏は、形を変えながら続いている。
影響を受けたアーティストと音楽
Sugar Rayのルーツには、The Beach Boys、The Beatles、Christopher Cross、Black Flag、Circle Jerks、Sex Pistols、Red Hot Chili Peppers、Beastie Boys、Fishbone、311などがある。Mark McGrath自身がThe Beach BoysやChristopher Crossと同時に、Black FlagやSex Pistolsも愛していたと語っている点は、Sugar Rayを理解するうえで非常に重要だ。(gq.com)
つまり、Sugar Rayは最初から“陽気なポップだけ”のバンドではない。彼らの軽さの裏には、パンクの悪ふざけ、ミクスチャーの雑食性、サーフカルチャーの開放感がある。The Beach Boys的なカリフォルニア幻想と、オレンジカウンティのパンク的な軽薄さ。その両方がSugar Rayを作った。
影響を与えたアーティストと音楽シーン
Sugar Rayは、90年代末のラジオポップロックに大きな影響を与えた。彼らは、オルタナティヴロックが重くなりすぎた時代に、軽く、明るく、レゲエやサーフ感を含むポップロックの道を示した。
後のサーフポップ、レゲエロック、ビーチ系ポップロック、夏フェス向きの軽快なオルタナティヴには、Sugar Rayの影がある。彼らは、Sublimeや311とは違う形で、レゲエ的な揺れをメインストリームのポップロックに持ち込んだ。Sublimeがよりストリートで荒い存在だったのに対し、Sugar Rayはよりテレビ向き、ラジオ向き、ポップ向きだった。
また、90年代ノスタルジーの中で、Sugar Rayの楽曲は現在も強い力を持つ。公式サイトに現在の公演予定が掲載されているように、バンドは今もライブ活動を続けており、Beachlife Festivalや各地のフェス、カジノ、イベントなどで演奏している。(sugarray.com)
同時代バンドとの比較:Sugar Rayのユニークさ
Sugar Rayを同時代のバンドと比較すると、その立ち位置はかなり独特である。
Sublimeがレゲエ、パンク、スカ、ヒップホップをストリート感覚で混ぜたバンドなら、Sugar Rayはそれをよりポップで明るく、ラジオ向きにした存在だ。Sublimeの音には危うさと粗さがある。一方、Sugar Rayには軽さと親しみやすさがある。
311と比較すると、311はより演奏志向で、ファンク、レゲエ、メタル、ヒップホップを安定したバンドサウンドとして融合した。Sugar Rayは、よりキャラクターとヒットソングの力が強い。Mark McGrathのテレビ的な華やかさも、Sugar Rayの大きな要素だった。
Smash Mouthと比べると、どちらも90年代末の陽気なポップロックを代表するバンドである。Smash Mouthが60年代ガレージやラウンジ感覚をコミカルに使ったのに対し、Sugar Rayはよりサーフ、レゲエ、ビーチカルチャー寄りだった。Smash Mouthがカラフルな遊園地なら、Sugar Rayは海沿いのラジオ局である。
Mark McGrathというフロントマン:軽薄さを引き受けたポップスター
Sugar Rayを語るうえで、Mark McGrathの存在は欠かせない。彼は、90年代末のMTV時代にぴったりのフロントマンだった。金髪、整った顔立ち、軽妙なトーク、過剰に深刻ぶらない態度。People誌で1998年に“Sexiest Rocker”に選ばれたこともあり、彼はロックバンドのボーカリストでありながら、テレビタレント的な親しみやすさも持っていた。(wikipedia.org)
このキャラクターは、Sugar Rayの評価を複雑にした。真面目なロックファンからは軽く見られがちだった一方で、彼の明るさと自虐性は、Sugar Rayの音楽にぴったり合っていた。彼は自分を神秘的なロックスターとして演出しなかった。むしろ、自分がポップカルチャーの中でどう見られているかを理解し、それを笑いに変えた。
Sugar Rayの音楽は、Mark McGrathのこの態度と切り離せない。軽い。だが、その軽さを引き受ける覚悟がある。これは意外に難しい。深刻ぶるほうが簡単な時もある。Sugar Rayは、あえて軽くあることで、90年代末のポップロックに独自の場所を作った。
ライブと現在の活動:ノスタルジーではなく“夏の再演”
Sugar Rayは現在もライブ活動を続けている。公式サイトには2026年時点の公演予定が掲載されており、Redondo BeachのBeachlife Festival、ラスベガス、ナンタケット、各地のフェスやイベントなどが並んでいる。(sugarray.com)
彼らのライブは、最新アルバムの芸術的到達点を提示する場というより、90年代末から続く“夏の記憶”を再演する場所だ。「Fly」、「Every Morning」、「Someday」、「When It’s Over」が鳴ると、観客は一気に1999年のラジオへ戻る。そこには懐かしさがある。しかし、単なる懐古だけではない。
Sugar Rayの曲は、ライブで聴くと非常に機能的だ。サビが分かりやすく、テンポが軽く、客席が自然に歌える。深い没入ではなく、全員で肩の力を抜く時間。Sugar Rayのライブは、まさに“終わらない夏”のイベントである。
ファンと批評家の評価:軽さゆえの過小評価、軽さゆえの強さ
Sugar Rayは、批評的に高く神格化されるタイプのバンドではない。むしろ、軽い、商業的、ポップすぎる、一発屋的、と見られてきた時期も長い。しかし、彼らのディスコグラフィーを改めて聴くと、ヒットソングを作る能力の高さがよく分かる。
「Fly」で偶然のように開いた扉を、「Every Morning」と「Someday」でしっかり広げ、「When It’s Over」で2000年代初頭までつなげた。これは偶然だけではできない。ポップソングのフック、ラジオで映える音色、時代の空気を読む感覚が必要だ。
公式プロフィールが示すように、Sugar Rayは1000万枚以上のセールス、4曲のトップ10ヒット、膨大なストリーミングを記録したバンドである。(sugarray.com) これは、彼らの音楽が多くの人の生活に入り込んだ証拠だ。評論の歴史よりも、車のラジオ、ビーチのスピーカー、夏の記憶の中で生き続けるタイプのバンドなのである。
Sugar Rayの魅力:爽快さの奥にある少しの寂しさ
Sugar Rayの最大の魅力は、爽快さの奥にある少しの寂しさだ。「Fly」は軽いが、どこか逃避の歌でもある。「Every Morning」は明るいが、恋愛の混乱を含んでいる。「Someday」は穏やかだが、過ぎ去った時間への切なさがある。「When It’s Over」はポップだが、終わりを見つめている。
つまり、Sugar Rayの夏は永遠ではない。だからこそ美しい。彼らの曲は、夏休みの最中ではなく、夏休みが終わる少し前に似合う。まだ太陽は出ている。まだ海にも入れる。だが、どこかで終わりが近づいていることを知っている。その微妙な感覚が、Sugar Rayのポップソングに意外な深みを与えている。
まとめ:Sugar Rayは“軽さ”をロックの武器にしたバンドである
Sugar Rayは、サーフロックとポップの境界を彩る爽快バンドである。オレンジカウンティのミクスチャー的な荒さから始まり、Flooredの「Fly」で一気に新しい方向を見つけ、14:59でラジオポップの名手へ変貌した。「Every Morning」、「Someday」、「When It’s Over」といった楽曲は、90年代末から2000年代初頭の空気を今も鮮やかに伝えている。
彼らは、ロックを重く深刻なものとしてではなく、陽射しと海風の中で鳴るポップとして提示した。初期のパンクやファンクメタルの衝動を背景に持ちながら、最終的にはサーフ、レゲエ、ヨットロック、ポップを横断する“終わらない夏”のバンドになった。
Sugar Rayの音楽は、軽い。だが、その軽さは空っぽではない。人生の問題を解決してくれるわけではないが、数分だけ気分を軽くしてくれる。車の窓を開け、ラジオの音量を上げ、海の方へ向かいたくなる。そんな力を持つ音楽である。
Sugar Rayは、90年代末のポップロックにおいて、軽さを恐れなかったバンドだ。その軽さこそが、彼らを今も夏の記憶の中で輝かせている。

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