Stay on These Roads by A-ha(1988)楽曲解説

1. 歌詞の概要

Stay on These Roads」は、A-haが1988年にリリースした同名のアルバム『Stay on These Roads』のタイトル曲であり、バンドの中でも特にエモーショナルでメランコリックなバラードです。この曲は、愛、別れ、そして希望をテーマにした楽曲でありながら、深い悲しみを内包したメッセージ性の強い作品となっています。

歌詞の中では、「これらの道を進み続けてほしい」と願う語り手の心情が描かれています。この「道」は比喩的な意味を持ち、人生の選択や、離れゆく愛する人とのつながりを示唆していると考えられます。楽曲全体を通して、切ない別れの予感と、それでも相手の幸せを願う心情が繊細に表現されています。

また、この曲はチェルノブイリ原発事故(1986年)に触発されたとも言われており、失われたものへの哀悼の意や、困難の中でも希望を失わずに進み続けることの大切さを歌っていると解釈することもできます。

2. 歌詞のバックグラウンド

A-haは、1980年代のシンセポップを代表するバンドですが、『Stay on These Roads』の頃になると、彼らの楽曲はよりメロディアスでエモーショナルな方向へと進化していました。本作はその代表例であり、バンドの持つ美しいメロディと、モートン・ハルケットの感情豊かなボーカルが際立つ楽曲となっています。

アルバム『Stay on These Roads』は、A-haのサウンドがより成熟し、シリアスなトーンへと移行した作品であり、「Stay on These Roads」はその中心的な楽曲のひとつです。この曲はライブでも頻繁に演奏され、ファンの間でも特に愛される楽曲のひとつとなりました。

3. 歌詞の抜粋と和訳

※ 歌詞の権利を尊重し、一部のみ引用しています。全文は こちら でご覧ください。

歌詞抜粋(英語):

The cold has a voice
It talks to me
Stillborn by choice
It airs no need to hold

和訳:

冷たい風が声を持ち
僕に語りかける
生まれることのなかったものが
何も求めずにただそこにいる

このフレーズは、喪失や孤独、そして過ぎ去ったものへの想いを表現しており、楽曲の持つ深い感情的なテーマを象徴しています。「生まれることのなかったもの(Stillborn by choice)」という表現は、失われた未来や、叶わなかった夢、もしくは人生の儚さを示唆しているようにも感じられます。

4. 歌詞の考察

「Stay on These Roads」は、単なる愛の歌ではなく、別れと希望が交錯する感情の揺らぎを描いた楽曲です。タイトルの「Stay on These Roads(この道を進み続けて)」というフレーズには、別れる相手に対する切実な願いが込められており、たとえ一緒にいられなくても、相手が幸せな道を歩むことを願う語り手の姿勢が感じられます。

また、前述の通り、チェルノブイリ原発事故をテーマにしているという説もあり、それを考慮すると、この曲は失われた人々への哀悼と、残された人々への励ましのメッセージとしても解釈できます。冷たく厳しい現実の中でも、前を向いて進むことの大切さを訴えかけているように感じられます。

音楽的には、静かなイントロから始まり、サビに向かって壮大なスケールへと広がる構成が特徴的です。この展開は、楽曲の持つメッセージ性を強調し、リスナーに深い感動を与えます。また、モートン・ハルケットのファルセットが特に際立つ曲でもあり、その繊細かつ力強いボーカルが、歌詞の持つ意味をより強く伝えています。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Vienna” by Ultravox
    壮大でメロディアスなバラードで、「Stay on These Roads」と同じくドラマティックな雰囲気を持つ。

  • “With or Without You” by U2
    切ない愛と別れをテーマにした楽曲で、エモーショナルなボーカルとメロディがA-haと共鳴する。

  • “Forever Young” by Alphaville
    ノスタルジックで壮大なテーマを持つシンセポップの名曲で、A-haのこの時期の楽曲とよく似た感情的な深みを持つ。

  • “Save a Prayer” by Duran Duran
    メランコリックなバラードで、A-haのサウンドと共通する幻想的な雰囲気を持つ。

6. 「Stay on These Roads」のミュージックビデオとライブでの魅力

「Stay on These Roads」のミュージックビデオは、自然の風景とバンドの演奏シーンが組み合わされた美しい映像となっており、楽曲の持つ壮大なテーマと調和しています。映像の中には、寂寥感のある風景が多く登場し、曲の持つ感情の深さを視覚的にも強調しています。

また、A-haのライブにおいてこの曲は、特に感動的な瞬間を生み出す楽曲のひとつです。モートン・ハルケットのボーカルは、ライブでもスタジオ音源と変わらない美しさを保っており、特にファルセットの部分では観客を魅了します。近年のアコースティックバージョンでは、シンプルなピアノアレンジとともに、より感情的な表現が際立つパフォーマンスが展開されています。


まとめ

「Stay on These Roads」は、A-haの中でも特に感情的でドラマティックな楽曲であり、別れと希望、喪失と前進というテーマを壮大なメロディとともに表現した名曲です。

ポップでキャッチーな「Take On Me」とは異なり、この曲ではバンドの持つシリアスで詩的な側面が強調されており、A-haの音楽の持つ深みを知るには最適な楽曲のひとつです。

もし、心に響くエモーショナルな楽曲を探しているなら、「Stay on These Roads」は間違いなくそのリストに加えるべき一曲でしょう。

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