発売日: 1984年2月6日
ジャンル: ニューウェーブ、アートロック、ポストパンク
Simple Mindsの6作目となる『Sparkle in the Rain』は、バンドが初期のシンセポップやニューウェーブのサウンドを越え、より壮大で力強いロックアプローチを確立した作品である。このアルバムは、バンドの代表作『New Gold Dream (81–82–83–84)』の華麗でドリーミーなサウンドを引き継ぎつつも、エネルギッシュでダイナミックな演奏が特徴となっている。
プロデューサーにはスティーヴ・リリーホワイト(U2やXTCを手掛けた名プロデューサー)を迎え、ギターとドラムを中心とした音圧の高いサウンドを作り上げた。このアプローチは、バンドをアリーナロックへと導くきっかけとなり、Simple Mindsのサウンドがさらに洗練された段階に入ったことを示している。
歌詞には、希望、変化、個人と社会の関係性がテーマとして散りばめられ、ジム・カーの力強いボーカルがメッセージ性を際立たせている。全体的に、より大胆で直接的な表現が特徴的であり、バンドの野心が強く感じられる一枚だ。
1. Up on the Catwalk
アルバムのオープニングを飾るドラマチックな楽曲で、政治的・社会的なテーマが歌詞に込められている。キラキラとしたシンセサウンドとエネルギッシュなリズムが印象的。
2. Book of Brilliant Things
ゴスペル調のコーラスと美しいピアノラインが特徴の楽曲で、感情的な広がりを感じさせる。希望と内省が交差する歌詞が心に響く。
3. Speed Your Love to Me
シングルとしてリリースされたポップな一曲で、疾走感のあるメロディとキャッチーなコーラスが特徴。バンドのエネルギッシュな側面を表現している。
4. Waterfront
アルバムの代表曲で、重厚なベースラインと繰り返されるリフが圧倒的な存在感を放つ。スコットランドの都市グラスゴーをテーマにした歌詞は、ジム・カーの地元への思いを感じさせる。
5. East at Easter
静かなイントロから徐々に盛り上がる構成が美しい楽曲。希望と再生をテーマにした歌詞と、シンプルながらも力強いアレンジが印象的。
6. Street Hassle
ルー・リードの楽曲をカバーした一曲で、オリジナルに敬意を払いながらもSimple Mindsらしいダイナミズムが加えられている。
7. White Hot Day
アルバムの中で特に力強い楽曲で、熱量の高いパフォーマンスが特徴。ジム・カーのボーカルが楽曲全体を牽引する。
8. “C” Moon Cry Like a Baby
実験的な要素が感じられるトラックで、複雑なアレンジとエモーショナルなメロディが際立つ。
9. The Kick Inside of Me
アルバムの中でも特に攻撃的でスピード感あふれる楽曲。ポストパンクらしい切れ味のあるギターが楽曲を引き立てている。
10. Shake Off the Ghosts
アルバムを締めくくるインストゥルメンタルで、シンセサイザーとギターが織りなす幻想的なサウンドスケープが美しい。全体の余韻を深める一曲。
アルバム総評
『Sparkle in the Rain』は、Simple Mindsがより力強く、ロック的な側面を追求した作品であり、バンドの新たなフェーズを象徴するアルバムである。シンセサウンドの洗練さを残しつつも、エネルギッシュでダイナミックなアプローチが、バンドをアリーナロックのステージへと押し上げた。特に「Waterfront」や「Up on the Catwalk」といった楽曲は、現在でもライブでの定番として愛されている。『Sparkle in the Rain』は、Simple Mindsの進化を知る上で欠かせない一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Unforgettable Fire by U2
スティーヴ・リリーホワイトが関与したアルバムで、壮大で感情的なサウンドが『Sparkle in the Rain』と共鳴する。
Quartet by Ultravox
シンセサウンドとロックの融合が美しく、『Sparkle in the Rain』のファンにも響く一枚。
True by Spandau Ballet
よりポップ寄りではあるが、洗練されたニューウェーブのサウンドが印象的なアルバム。
Dare by The Human League
シンセポップの名盤で、鮮やかでキャッチーなサウンドがSimple Mindsの洗練された一面と共通する。
Avalon by Roxy Music
エレガントで洗練されたサウンドが、『Sparkle in the Rain』の叙情性と響き合う一枚。
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