アルバムレビュー:Smell the Magic by L7

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1990年9月1日(1991年にフルアルバムとして再発)
ジャンル: グランジパンクロックハードロック


概要

『Smell the Magic』は、L7が1990年にSub Popレーベルから発表したセカンド・アルバムであり、L7がグランジ・シーンの最前線に躍り出る契機となった決定的な作品である。

当初は6曲入りのEPとしてリリースされたが、1991年には3曲を追加し、フルアルバムとして再発。
これによりL7は、NirvanaSoundgardenらと並ぶ形で“グランジの時代”の象徴的存在となり、女性ロックの歴史に新たな地平を切り開いた。

前作『L7』(1988)がローカルなパンクスピリットとDIY精神に満ちた生々しい作品だったのに対し、本作ではより重厚でタイトなバンドサウンド、より明確なメッセージ性、そして爆発的なエネルギーが加わっている。

Sub Popという“グランジの聖地”からのリリースという文脈も相まって、本作は90年代初頭のシーンにおいて、女性が轟音と怒りで存在を証明した稀有な例として、後年まで語り継がれることとなる。


全曲レビュー

1. Shove

L7を象徴する代表曲であり、オープニングから一気にギア全開。
「ねじ込んでやる(Shove)」という挑発的フレーズに、権威や男社会への反逆が凝縮されている。

2. Fast and Frightening

タイトル通り、高速かつ凶暴なナンバー。
女性が“速くて恐ろしい”存在であるというステレオタイプを逆手にとった、痛快でパワフルな自己肯定。

3. (Right On) Thru

前作にも登場した楽曲の再録版。
L7の根っこにある“直進力”を、よりクリアな音像で再提示している。

4. Deathwish

重く引きずるようなギターと、怒りに満ちたヴォーカルが交差する中速ナンバー。
抑圧された者の叫びが、楽曲全体を通して鈍く響く。

5. ’Till the Wheels Fall Off

ラフでグルーヴィーな構成のロックンロール・トラック。
「ぶっ壊れるまで走り続ける」という、L7らしい破壊的な美学が感じられる。

6. Broomstick

パンクとサイケの中間を漂う異色曲。
“魔女のほうき”を思わせるタイトルは、女性の力や異端性の象徴ともとれる。

7. Packin’ a Rod

武器(Rod)を携えた女=危険であることの宣言。
性的かつ暴力的なメタファーが、L7のアイロニーと暴発的エネルギーを体現。

8. Just Like Me

個性の肯定と、他者との対比をテーマにしたミディアム・テンポの一曲。
「あなたもわたしも同じ」と言いながら、その言葉に込められた複雑な感情が胸を刺す。

9. American Society

Eddie & the Subtitlesによる1980年代パンクのカバー。
腐敗したアメリカ社会を鋭く断罪し、アルバムの締めくくりにふさわしい反骨のメッセージを放つ。


総評

『Smell the Magic』は、L7というバンドが“ただの女性パンクバンド”という枠を超え、怒り・セクシュアリティ・ポリティクス・暴力性・連帯感といった多様なテーマを、すべて“音”としてぶちまけたアルバムである。

このアルバムを聴くことは、単なる娯楽ではない。
それは、性差別・階級格差・暴力の社会に対するノイズによる抗議であり、自己の身体と声を武器にする試みなのだ。

L7はここで、フェミニズムを叫ばずに叫んでみせた。
そして“怒る女”が嘲笑される文化に中指を立てて、“怒って何が悪い?”と咆哮した。


おすすめアルバム

  • Babes in Toyland / Fontanelle
     同時代の女性グランジの代表格。野性的で攻撃的な音像がL7と並び立つ。

  • Hole / Live Through This
     パーソナルな怒りとポップ性を融合させた、フェミニズム・グランジの金字塔。

  • Bikini Kill / Pussy Whipped
     直接的なフェミニズム・パンクの先鋭。L7の暴力性と理想主義が交差する。

  • The Gits / Frenching the Bully
     重く鋭く、そして痛みを抱えた女性オルタナティヴ・パンク。

  • Soundgarden / Louder Than Love
     Sub Pop系グランジの文脈で、L7との共鳴点が多い男性バンド。

ファンや評論家の反応

リリース当初はメインストリームから距離を置きつつも、グランジの熱気を先導する“本物の音”として、特にUKを中心に高い評価を受けた。

“女性のバンド”というカテゴライズを超え、L7は“過激であることが美しい”という概念を提示し、90年代ロックに風穴を開けた

のちに『Bricks Are Heavy』でブレイクする彼女たちの、その原点として本作は今なお鮮烈な衝撃を放ち続けている。


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