1. 歌詞の概要
「Seek & Destroy（シーク・アンド・デストロイ）」は、Metallicaが1983年にリリースしたデビュー・アルバム『Kill ’Em All』に収録された楽曲であり、バンドの原点とも言えるスラッシュ・メタルの荒々しさと破壊的エネルギーを象徴する代表作である。
曲名の「Seek & Destroy（探し出して破壊せよ）」というフレーズが示すように、この曲は“攻撃性”と“支配欲”に満ちた視点から語られ、狙いを定めた獲物を容赦なく追い詰めて叩き潰すという暴力的なメンタリティが前面に出ている。
しかしながら、ここで語られる暴力は抽象的で、実際にはライブパフォーマンスの興奮や若者の内なる衝動を象徴する“メタファー”として機能している。
この楽曲の背後にあるのは、自己主張の解放、怒りの発散、混沌とする世界への反抗心である。つまり「Seek & Destroy」は、Metallicaがその名を世界に知らしめるための、最初の“咆哮”であった。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Seek & Destroy」は、James Hetfield（ジェイムズ・ヘットフィールド）と Lars Ulrich（ラーズ・ウルリッヒ）によって書かれた楽曲で、Iron MaidenやDiamond Head、MotörheadといったNWOBHM（ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル）から強く影響を受けている。
サウンド的には、メタルとパンクの中間にある荒削りなギターリフとスピーディーなリズムが特徴的で、まさにスラッシュ・メタルというジャンルの誕生を象徴する楽曲のひとつといえる。
「Kill ’Em All」の他の曲と同様に、低予算かつ粗野な制作環境にもかかわらず、その“未完成さ”がかえってリアルな緊張感とエネルギーを生み出している。
ライブではしばしば観客とのコール＆レスポンスが行われる人気ナンバーで、Metallicaの象徴的なアンセムとして何百回も演奏されてきた。ときにはセットのクライマックス、あるいはアンコールで披露される、まさに“伝説的定番”である。
3. 歌詞の抜粋と和訳
We’re scanning the scene in the city tonight
今夜、街の様子を探っているWe’re looking for you to start up a fight
お前を探してるんだ――ケンカを始めるためにThere’s an evil feeling in our brains
俺たちの頭の中には邪悪な感情が渦巻いてるBut it’s nothing new, you know it drives us insane
でも、それはいつものことさ――俺たちを狂わせるんだRunning, on our way
走れ、狙いは定まったHiding, you will pay
逃げてもムダだ、お前は代償を払うことになるDying, one thousand deaths
死ね、何千回でもSearching, seek and destroy
探せ、そして破壊せよ
出典: Genius Lyrics – Seek & Destroy by Metallica
4. 歌詞の考察
「Seek & Destroy」における“破壊”は、ただの暴力ではない。それは、抑え込まれてきた感情の解放であり、鬱積した怒りをエネルギーに変える一種の“自己表現”である。
「We’re scanning the scene in the city tonight（街の様子を探っている）」という冒頭の一節は、まるで獲物を狙うハンターのような視点で始まるが、それは同時に、混沌とした都市の中で何か“反応”を求めて彷徨う若者たちの姿とも重なる。
誰かを叩き潰したい、あるいは自分の存在を証明したい――その感情は、“破壊”というメタファーを通じて噴き出してくるのだ。
また、「evil feeling in our brains（邪悪な感情）」というラインに見られるように、この曲は“狂気”と“自己喪失”のぎりぎりを彷徨っている。
だがその狂気は制御不能ではなく、むしろ精密にリズムとリフに変換されており、そこにこそMetallicaの初期のカリスマ性が宿っている。
この曲が今もなおライブで熱狂的に支持されている理由は、まさにこの“シンプルで、だが止められない衝動”の描写にある。
それは多くのリスナーが胸の奥に抱えている「破壊願望」を、音楽という形で安全に、そして快楽的に解放してくれるからだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Whiplash by Metallica
スラッシュ・メタルの初期衝動がそのまま詰まった、猛烈なスピード感とライヴ讃歌。 - Hit the Lights by Metallica
『Kill ’Em All』のオープニングを飾る、若きMetallicaの勢いそのものを凝縮したナンバー。 - Fast as a Shark by Accept
メタルとスピードの結合を象徴する、スラッシュ以前のスラッシュ的楽曲。 - Overkill by Motörhead
スピードと破壊のアイコン、Motörheadによる暴走ロックンロールの真骨頂。 - Bring the Noise by Anthrax & Public Enemy
攻撃性とジャンル越境の融合が炸裂する、反骨精神の結晶的な一曲。
6. 衝動こそがすべて――Metallica、最初の“戦闘開始”宣言
「Seek & Destroy」は、Metallicaというバンドが持つ攻撃性と、彼らが信じる“メタルという解放装置”の可能性を、最も純粋な形で提示した楽曲である。
そのサウンドは粗削りで、歌詞も極めて直接的。しかしだからこそ、この曲は今なお生き続ける。なぜなら、人は常に「何かを壊したい」という衝動を抱えているからだ。
この曲が鳴り響くとき、そこには恐れも理屈もいらない。ただ拳を振り上げて、「破壊」を讃えるだけでいい。
それが悲鳴であれ、怒りであれ、叫びであれ――Metallicaはそれを音に変え、「Seek & Destroy」という名の解放区を作り出したのだ。
そして40年近く経った今も、この曲はライヴで鳴り響くたびに、新たな戦いの狼煙を上げている。
探し出して、破壊せよ。今この瞬間も。Sad but true――それが、Metallicaの真髄なのである。
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