アルバムレビュー:See Ya ’Round by Split Enz

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日: 1984年11月
ジャンル: ポップロック、ニューウェイヴ、アートポップ、ソフィスティ・ポップ

概要

『See Ya ’Round』は、Split Enzが1984年にリリースした9作目にして最後のスタジオ・アルバムであり、バンドの終焉を予告するかのように、タイトルからして「また会おうぜ」と別れを含ませた静かなフィナーレとなった作品である。
このアルバムは、創設メンバーであり象徴的存在でもあったティム・フィンが脱退した後、ニール・フィンを中心に制作された唯一の作品であり、実質的には“Split Enz名義のCrowded House前夜”とも言える内容となっている。

楽曲は全体的にポップで親しみやすく、前作『Conflicting Emotions』で見られた内省的な緊張感よりも、開かれたメロディ志向と控えめなユーモア、そして内に秘めた感傷が印象的である。
ニール・フィンのソングライターとしての才能は完全に開花しており、バンドの解体と新たな出発の狭間で書かれた楽曲群には、終末の静けさと未来への予感が共存している。

なお、本作はオーストラリアとニュージーランドのみでのリリースにとどまり、Split Enzの活動におけるラスト・ページとして、最小限の派手さと最大限の誠実さで締めくくられることとなった。

全曲レビュー

1. Breakin’ My Back

エネルギッシュなポップ・ロックで幕を開ける1曲。
バンドの終盤にしては明るいトーンながら、リリックには疲労感や諦観も滲む。
“背中を折るような思い”という表現が、終焉前夜の頑張りのようにも聴こえる

2. I Walk Away

アルバムのハイライトであり、のちにCrowded Houseの1stアルバムにも別バージョンで収録されることになる重要曲。
別れをテーマにしながら、潔さと切なさが同居するニール・フィンの傑作バラード
“僕は去っていく”という宣言が、このアルバム全体のトーンを決定づけている。

3. Doctor Love

ユーモラスな詞とダンサブルなビートが特徴のポップ・ナンバー。
やや軽めの内容だが、ニールの軽妙なポップ・センスと語り口の巧みさが発揮された佳作

4. One Mouth Is Fed

バンド後期らしい控えめなアレンジの中に、経済格差や社会への不満をほのめかす皮肉なリリックが込められたミッドテンポの楽曲。
ポップでありながら、裏に社会的な視点が見え隠れする。

5. Years Go By

静かなバラード。
時間の経過とともに失われていくもの、残るものを淡々と歌い上げる。
ニール・フィンの内省的な筆致が際立ち、Split Enzという時代の終わりを振り返るような感傷が宿る。

6. The Lost Cat

ユーモラスな比喩に満ちた軽快なポップソング。
失われた“猫”=迷った自分、あるいは関係性の象徴として描かれ、寓話的ながらも親しみやすい

7. Adz

ペイジング的な短編インストゥルメンタル。
本編とは一線を画すミニマルなシンセ音が、アルバム全体の流れにちょっとした“間”を与える。

8. This Is Massive

唯一ノエル・クロンティンがリード・ボーカルを務めた楽曲。
Split Enzらしい遊び心が前面に出た、ユーモラスでトリッキーな構成。
最後期の「自由にやってみよう」という精神が表れている。

9. Kylie

物語調のバラードで、登場人物“Kylie”を通して若さや愛、未熟さが描かれる。
ニールのストーリーテリング力と、感情の余白を残すメロディの作り方が見事に融合した小品

10. Ninnie Knees Up

跳ねるようなリズムが楽しい、リズミカルで即興性のあるトラック。
タイトルはナンセンス的だが、終盤の軽さと自由を象徴するような曲構成で、バンドの“ほぐれた空気”が伝わってくる。

11. Voices

ラストにふさわしい、静かな余韻を残すバラード。
“声”という抽象的なテーマを通して、Split Enzというバンドが残してきた音楽、言葉、想いの全体が集約されるようなフィナーレ
さよならのかわりに残されたささやき。

総評

『See Ya ’Round』は、Split Enzというバンドが自らの終わりを静かに受け入れながらも、最後まで音楽に誠実であろうとした“穏やかな別れの手紙”である。
ティム・フィンというカリスマが去ったことで、創作の重心は完全にニール・フィンへと移行。
その結果、本作には繊細で誠実なニールの感性が一貫して流れており、Split EnzからCrowded Houseへと続く橋渡し的な作品となっている。

かつてのSplit Enzにあった演劇性や奇抜なアート感覚は鳴りを潜めたが、その代わりに、人の心の動きやささやかな日常に寄り添うようなポップソングが並んでいる。
派手さはなくとも、静かに寄り添うような温かさと、幕が下りたあとの余韻を丁寧に描いた、愛すべきラスト・アルバムである。

おすすめアルバム(5枚)

  • Crowded House / Temple of Low Men
     ニール・フィンの叙情性と内省的メロディが完全開花。Split Enzの後継としての正統作。

  • Squeeze / Cosi Fan Tutti Frutti
     変化後のバンドがより洗練されたポップに向かう姿が共通。

  • Prefab Sprout / From Langley Park to Memphis
     メロディ重視の知的ポップと優しい語り口が響き合う。

  • Paul McCartney / Tug of War
     個人による再出発と普遍的なメロディの探求。ニールのソロ感覚と通じる。

  • The Blue Nile / Hats
     静けさと感情の深さを併せ持つ、夜のポップの美学。『See Ya ’Round』の余韻と共鳴。

コメント

タイトルとURLをコピーしました