発売日: 1984年7月27日
ジャンル: スラッシュメタル
Metallicaの2作目となる『Ride the Lightning』は、スラッシュメタルの枠を超えた音楽的進化を遂げた重要な作品である。デビュー作『Kill ’Em All』の攻撃性やスピード感を保ちながらも、より複雑な楽曲構成と深いテーマ性が加わり、バンドの成熟を感じさせるアルバムだ。
本作では、メンバー全員が作曲に関わることで、音楽的な幅が広がった。特にクリフ・バートン(ベース)の影響が強く、クラシック音楽やプログレッシブロックの要素が取り入れられている。また、プロデューサーにフレミング・ラスムッセンを迎えたことで、サウンドのクオリティも格段に向上している。
歌詞には、死刑や戦争、終末思想など、哲学的で社会的なテーマが込められており、単なるスラッシュメタルの枠を超えた深みを持つ。Metallicaのキャリアにおいて、このアルバムは音楽的革新の象徴といえる。
1. Fight Fire with Fire
アコースティックギターの穏やかなイントロで始まり、突然の爆発的なスラッシュメタルサウンドへと展開する。この曲は核戦争の恐怖をテーマにしており、ヘットフィールドの怒りに満ちたボーカルとスピード感あふれる演奏がその緊張感を増幅させている。
2. Ride the Lightning
アルバムのタイトル曲で、死刑執行をテーマにした哲学的な内容を描いている。ドラマチックなリフと複雑な楽曲構成が印象的で、カーク・ハメットのギターソロが楽曲にさらなる深みを加えている。
3. For Whom the Bell Tolls
アーネスト・ヘミングウェイの小説にインスパイアされたこの曲は、戦争の無意味さを描いている。重厚なベースラインが楽曲を牽引し、スラッシュメタルというよりはヘヴィメタル的なアプローチが目立つ。
4. Fade to Black
Metallica初のバラードであり、静と動のコントラストが際立つ名曲。人生に絶望した人物の心情を描いた歌詞がヘットフィールドの感情的なボーカルで表現され、後半のギターソロが圧巻のクライマックスを迎える。
5. Trapped Under Ice
スピード感と攻撃性が際立つ曲で、タイトル通り「氷の下で動けない」ような閉塞感がテーマとなっている。勢い重視の演奏が、アルバム中でも特にエネルギッシュだ。
6. Escape
比較的ポップなメロディが特徴的な楽曲で、Metallicaの中では異色の一曲。自由への渇望を歌った歌詞が明快で、他の曲とは異なる軽やかさがある。
7. Creeping Death
旧約聖書の「出エジプト記」を題材にした壮大な楽曲。中盤の「Die by my hand!」というフレーズがライブでの盛り上がりポイントとなり、Metallicaの代表曲の一つとして愛されている。
8. The Call of Ktulu
アルバムを締めくくるインストゥルメンタルで、H.P.ラヴクラフトのクトゥルフ神話をテーマにしている。複雑な構成とクラシック音楽的な要素が光り、クリフ・バートンの作曲能力が存分に発揮された壮大な楽曲。
アルバム総評
『Ride the Lightning』は、スラッシュメタルというジャンルを越え、Metallicaが音楽的に飛躍した記念碑的な作品である。ヘヴィなリフとスピード感に加え、哲学的なテーマやドラマチックな楽曲構成が、このアルバムを他のメタル作品と一線を画す存在にしている。初期Metallicaの中でも特に評価の高いこのアルバムは、すべてのメタルファンにとって必聴の一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Master of Puppets by Metallica
Metallicaの3作目で、『Ride the Lightning』の進化形ともいえる傑作。さらに複雑な楽曲と壮大なテーマが楽しめる。
Peace Sells… But Who’s Buying? by Megadeth
スラッシュメタルの名盤で、Metallicaの音楽的ライバルの力量を感じられる作品。
Rust in Peace by Megadeth
テクニカルな演奏と社会的テーマが光る、スラッシュメタルの金字塔。
Reign in Blood by Slayer
スラッシュメタルのスピードと攻撃性を極限まで高めた作品で、『Ride the Lightning』とは異なるアプローチを楽しめる。
Powerslave by Iron Maiden
ドラマチックな楽曲構成と重厚なテーマが、『Ride the Lightning』の壮大さと共鳴する名盤。
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