発売日: 1995年10月24日
ジャンル: グラムロック、オルタナティブロック、パワーポップ
1990年代のオルタナティブロック全盛期に彗星のごとく登場したイギリス出身のバンドSpacehogが放ったデビューアルバム『Resident Alien』は、グラムロックの華やかな遺伝子を受け継ぎつつ、90年代らしいオルタナティブロックのエッジと融合させた傑作だ。フロントマンのロイ・ランガンを中心に結成されたこのバンドは、ニューヨークを拠点に活動し、デヴィッド・ボウイやT. Rexの影響を色濃く受けながらも独自の音楽性を築き上げた。
本作の最大の特徴は、ロイの象徴的なファルセットボーカルと、ベースラインを前面に押し出したサウンドだ。リードシングル「In the Meantime」は、90年代を象徴するオルタナティブ・アンセムとして今なお愛されている。耳に残るメロディラインと印象的なベースのリフが絡み合い、一度聴けば忘れられない中毒性を持つ。
プロデューサーのブライス・ゴギンズが手がけたサウンドは、ロックのエネルギーとポップの親しみやすさを兼ね備え、洗練された仕上がりとなっている。1995年のリリース当時、グランジやオルタナティブ全盛の中で、このアルバムはグラムロックの復権と新たな可能性を示した作品と言えるだろう。
トラックごとの解説
1. In the Meantime
アルバムのオープニングを飾る代表曲。独特のベースラインとファルセットボーカルが耳に残る一曲で、「We love the all of you」と繰り返される歌詞がリスナーとの一体感を生む。グラムロックと90年代オルタナティブの融合を象徴する名曲だ。
2. Spacehog
バンド名を冠したこのトラックは、エネルギッシュなパンクとグラムの影響を感じる短いながらも強烈な一曲。シンプルなギターリフと力強いドラムが印象的で、ライブでの盛り上がりが目に浮かぶ。
3. Starside
宇宙をテーマにした幻想的な楽曲。穏やかなギターとシンセが絡み合い、浮遊感のあるサウンドスケープを作り上げる。ロイのボーカルが持つ透明感が、楽曲の夢幻的な雰囲気を一層引き立てる。
4. Candyman
ポップでキャッチーな楽曲ながらも、どこか不穏な雰囲気を纏っている。繰り返される「Candyman」のフレーズは中毒性が高く、ロイのボーカルが楽曲に深みを加えている。
5. Space Is the Place
疾走感溢れるパワーポップナンバー。軽快なギターと跳ねるようなリズムが特徴で、タイトル通り「宇宙」のような広がりと自由さを感じる楽曲だ。
6. Never Coming Down (Part I)
短いインストゥルメンタルで、アルバムの流れに変化をつけるブリッジのような役割を果たす。穏やかな雰囲気が次の曲への期待感を高める。
7. Cruel to Be Kind
力強いギターリフとメロディアスなボーカルが融合した楽曲。シンプルな構成ながらも耳に残るフックがあり、バンドのポップセンスが光る一曲だ。
8. Ship Wrecked
バラード調の楽曲で、切ないメロディとエモーショナルな歌詞が印象的。「Lost and alone」と歌うロイのボーカルは、聴き手の心に静かに響く。
9. Only a Few
シンプルながらも力強いビートが特徴の楽曲。ギターとベースが一体となってグルーヴを生み出し、バンドの演奏力が際立つ。
10. The Last Dictator
政治的なテーマを扱ったシリアスな楽曲。ダークなトーンと重厚なサウンドが、アルバムに深みを加えている。
11. Never Coming Down (Part II)
Part Iの続編であり、よりドラマチックな展開を見せる。美しいギターサウンドとリズムの変化が心地よく、アルバムのクライマックスを演出する。
12. Zeroes
サイケデリックな要素が強く、6分以上の壮大な楽曲。複雑な構成と多彩なサウンドが絡み合い、リスナーを深い音の世界へと誘う。
13. To Be a Millionaire… Was It Likely?
アルバムを締めくくる楽曲。静かな始まりから徐々に盛り上がる構成が印象的で、最後には隠しトラックが収録されている遊び心も光る。
アルバム総評
『Resident Alien』は、グラムロックの煌めきと90年代オルタナティブの洗練を融合させた一枚だ。代表曲「In the Meantime」の持つ中毒性と力強さを軸に、幻想的なトラックやバラードも織り交ぜ、バンドの多彩な音楽性が光る。Spacehogはデビュー作にして、時代の流れを超越した普遍的な魅力を持つアルバムを生み出した。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
『The Bends』 by Radiohead
美しいメロディとオルタナティブロックのエッジが融合した、90年代を代表する名盤。
『Mechanical Animals』 by Marilyn Manson
グラムロックの影響を受けたサウンドとコンセプチュアルな世界観が特徴的なアルバム。
『Dog Man Star』 by Suede
英国グラムロックの系譜を継ぎつつ、ドラマチックな音楽性を追求した作品。
『Ziggy Stardust』 by David Bowie
グラムロックの金字塔。Spacehogの音楽にも通じる華やかさと革新性が詰まっている。
『A Night at the Opera』 by Queen
多彩なサウンドと美しいハーモニーが特徴の名盤。Spacehogのポップで華やかな側面が好きな人におすすめ。
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