1. 歌詞の概要
「Quiet Eyes」は、Golden Earringが1986年に発表したアルバム『The Hole』に収録されたバラードであり、シングルとしてもリリースされた。ハードロックや疾走感あるロードソングで知られる彼らの作品群の中では異色の存在で、静かな切なさと叙情性を湛えた楽曲である。
歌詞は「静かな瞳（Quiet Eyes）」を持つ女性への想いを軸に展開する。愛する相手との関係に終わりが近づいていることを感じながらも、まだその人の存在にすがりたい気持ちが描かれている。彼女の沈黙や瞳に宿る悲しみが、関係の行方を暗示しており、別れを受け入れられない主人公の心情がにじみ出ている。愛と別離のはざまで揺れる心を、シンプルでストレートな言葉で歌い上げているのが特徴だ。
2. 歌詞のバックグラウンド
Golden Earringは70年代から80年代にかけて「Radar Love」（1973）や「Twilight Zone」（1982）といった国際的なヒットを飛ばし、ハードロックを軸にしながらも幅広い音楽性を展開していた。1986年のアルバム『The Hole』は、彼らが80年代の音楽シーンに適応しつつ独自のスタイルを模索した作品であり、「Quiet Eyes」はその中で最も内省的で叙情的なナンバーである。
当時のロック・シーンではパワーバラードが注目を集めており、Bon JoviやScorpionsといったバンドが感傷的なバラードを大ヒットさせていた。「Quiet Eyes」もその流れに呼応しつつ、Golden Earring特有の哀愁とヨーロッパ的な叙情性を前面に押し出している。シングルとしてリリースされ、オランダ国内で大きな人気を獲得したことからも、この曲が彼らにとってどれほど重要な位置を占めていたかがわかる。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に「Quiet Eyes」の印象的な部分を抜粋し、英語歌詞と和訳を併記する。
（歌詞引用：Genius）
When the quiet eyes of evening
Look at you, you can’t disguise
夕暮れの静かな瞳が君を見つめるとき
君はもう隠せない
The words are not enough
言葉では足りないんだ
Quiet eyes, they know too much
静かな瞳、それはあまりにも多くを知っている
So much sorrow, so much love
そこには多くの悲しみと、多くの愛が宿っている
I can’t stand losing you
君を失うなんて耐えられない
歌詞は瞳に映る「沈黙の真実」に焦点を当て、別れの気配と愛の余韻を同時に描き出している。
4. 歌詞の考察
「Quiet Eyes」は、Golden Earringの中でも特に感情表現がストレートなバラードであり、別れの予感を静かに、しかし確実に突きつけてくる。瞳に宿る「静けさ」は、相手が口にしなくてもすでに答えを知っていることを示している。悲しみと愛が入り混じるその瞳は、主人公にとって逃れられない現実を映す鏡のような存在だ。
「言葉では足りない（The words are not enough）」というフレーズは、感情が言葉を超える段階に達していることを示しており、音楽そのものがその感情を補完している。バンドの持つハードな一面ではなく、抒情的で繊細な一面を強く打ち出した作品であり、彼らの多様性を示す好例である。
音楽的にも、しっとりとしたギター、穏やかなリズム、そしてBarry Hayのヴォーカルが胸に迫る。彼の声はここでは荒々しさを抑え、感情を絞り出すようにして歌われており、歌詞の切実さを一層強調している。
（歌詞引用：Genius）
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Going to the Run by Golden Earring
哀感漂うバラードで、同じく別れと愛のテーマを扱う代表曲。 - Radar Love by Golden Earring
疾走感の中に哀愁を感じさせる彼らの代表曲で、「旅と愛の象徴」として共通する。 - Still Loving You by Scorpions
80年代を代表するバラードで、愛と別れの葛藤をストレートに描く。 - Is This Love by Whitesnake
同時代的な感傷的ロック・バラード。 - I Want to Know What Love Is by Foreigner
愛の意味を探し求める大ヒット・バラードで、「Quiet Eyes」の情感に近い。
6. Golden Earringにとっての意義
「Quiet Eyes」は、Golden Earringがハードロックだけのバンドではなく、深い感情を繊細に表現できる存在であることを証明した楽曲である。特に80年代半ばの彼らにとって、この曲は新しいリスナー層にアピールする重要な役割を果たし、バンドの幅広い音楽性を示すものとなった。
「Radar Love」「Twilight Zone」といったエネルギッシュな代表曲と並び、「Quiet Eyes」は彼らのバラード的側面を代表する楽曲であり、Golden Earringのキャリア全体を見渡す上で欠かせない一曲といえるだろう。
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