On My Way by Sabrina Carpenter(2019)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「On My Way」は、Sabrina Carpenterが2019年にリリースした楽曲で、ノルウェーのプロデューサーであるアラン・ウォーカー(Alan Walker)とのコラボレーションによって生まれた。もう一人の参加アーティスト、ファルーク・サブリー(Farruko)によるスペイン語ラップもフィーチャーされており、英語・スペイン語・エレクトロニック・ポップのクロスオーバーを象徴するインターナショナルなヒットとなった。

この曲の中心にあるのは、“別れ”と“自立”の物語である。語り手である彼女は、愛していた相手と別れを決意し、自らの意志で“先に進むこと”を選ぶ。その決意は、悲しみではなく強さによって語られ、「私はもうあなたのところへは戻らない、今は自分の道を行く」という力強いメッセージが貫かれている。

エレクトロニックなトラックとメロディックなサビが交差する中で、Sabrinaのボーカルはしなやかでありながら芯のある響きを持ち、自立と再生を表現する。曲の展開は一貫して“別れの痛み”ではなく、“次のステージへのステップ”として描かれており、聴く者に前向きなエネルギーを与える。

2. 歌詞のバックグラウンド

この楽曲は、Alan Walkerがリード・アーティストとしてリリースしたもので、Sabrina CarpenterとFarrukoは客演という立ち位置にある。しかし、Sabrinaのヴォーカルがサビを担い、楽曲のエモーショナルな核を形作っていることから、彼女の代表作の一つとして数えられるようになった。

「On My Way」は、Alan Walkerの特有の“浮遊感のあるトラック”と、Sabrinaの透明感ある声が美しく融合した楽曲であり、世界的なリスナーに向けたグローバル・ポップとして成功を収めた。YouTubeでのミュージックビデオは5億回以上再生されており、彼女にとって初のワールドワイド・ヒットとなった。

ビデオでは、女性が任務を果たすために孤独な旅に出るという“アクション&謎解き”の物語が描かれ、歌詞の「目的地に向かう強い意思」と美しくリンクしている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

I’m sorry but
Don’t wanna talk, I need a moment before I go

ごめん、でも今は話したくないの
行く前に、ひとりになりたいだけ

‘Cause even if they understand
They don’t understand

わかってくれる人がいても
本当にはわかってくれないから

So then when I’m finished
I’m all ‘bout my business and ready to save the world

全てを終えたら
私は私の仕事に戻って、世界を救いに行くわ

I’m on my way
私は私の道を進んでいる

引用元:Genius Lyrics – On My Way

この歌詞は、相手との別れの瞬間に立つ語り手が、自分の感情にけじめをつけ、新しい旅へと踏み出す心の動きを描いている。「世界を救う」という誇張表現も、比喩としての“自分の人生を取り戻す”力強さを象徴している。

4. 歌詞の考察

「On My Way」の核心は、“誰かのもとを離れて、自分自身の軌道を選ぶ”という決断にある。この曲は、単なる失恋ソングではない。むしろ「愛は終わっても、私の物語は続いていく」という意志の歌だ。

冒頭で語り手は「今は話したくない」と言いながら、感情を整理しようとしている。それは冷たさではなく、自分を守るための静かな準備期間のようでもある。そしてサビで繰り返される「I’m on my way(私は進んでいる)」というフレーズは、悲しみを乗り越えて“自分の物語を選び取る”という肯定の言葉として響いてくる。

Sabrina Carpenterはこの楽曲において、他者に依存せず、自分で未来を切り開いていく強さを体現している。ポップミュージックにおける“別れ”が往々にして涙と未練に彩られるなかで、彼女はそれを“行動と前進”で描いている。だからこそ、この曲は聴く者にとって“決意の応援歌”として機能するのだ。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Faded by Alan Walker
     同じくWalkerのプロデュースによるエモーショナルなEDM。孤独と再生を美しく描く一曲。

  • Scared to Be Lonely by Martin Garrix & Dua Lipa
     別れた後も残る感情の揺れを、エレクトロポップで描いた切なくも力強い作品。
  • Don’t Call Me Up by Mabel
     過去を振り返らずに前へ進む意思をテンポよく表現した失恋後のアンセム。

  • No Tears Left to Cry by Ariana Grande
     感情の嵐を越えて、新たな始まりを迎えるというテーマが「On My Way」と重なる。

6. 静かなる決意のポップ・アンセム

「On My Way」は、誰かと別れるという選択の裏にある“未来への意志”を描いた一曲である。誰かを手放すことは、同時に自分を取り戻すことでもある。Sabrina Carpenterは、この楽曲を通じて、“傷ついたまま立ち止まる”のではなく、“傷ついたからこそ歩き出す”という姿勢を貫いている。

彼女の歌声は、涙ではなく風を連れている。背中を押すわけではなく、肩にそっと手を添えるようにして、「あなたの行く道を、あなた自身が選んでいい」と語りかけてくるのだ。

だから「On My Way」は、別れの歌であると同時に、始まりの歌でもある。終わりを迎えたあとでも、物語はつづく。あなたがその気になれば、今日が“新しい道の最初の一歩”になるのだから。

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