アルバムレビュー:No Heavy Petting by UFO

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1976年5月

ジャンル:ハードロック、ブリティッシュ・ロック、プロト・メタル、クラシック・ロック

概要

UFOの『No Heavy Petting』は、1970年代中盤の英国ハードロックが、ブルース・ロック由来の重さから、よりメロディックで鋭利なヘヴィ・ロックへと移行していく過程を記録した重要作である。UFOは1969年にロンドンで結成され、初期にはスペース・ロックやサイケデリック・ロックの色合いを持つバンドとして出発した。しかし、ドイツ出身のギタリスト、Michael Schenkerが加入したことで、バンドの音楽性は大きく変化する。彼の流麗かつ攻撃的なギター・プレイは、UFOを単なるブギー/ブルース系ハードロック・バンドから、後のメロディック・ハードロックやヘヴィメタルへ直結する存在へと押し上げた。

『No Heavy Petting』は、1974年の『Phenomenon』、1975年の『Force It』に続く、Michael Schenker在籍期の流れに位置するアルバムである。前作『Force It』では、UFOはリフの強度、楽曲のスピード感、フィル・モグの男臭いヴォーカル、ピート・ウェイの押しの強いベース、アンディ・パーカーの安定したドラムを武器に、英国ハードロックの中でもかなり完成度の高い作品を作り上げた。本作『No Heavy Petting』は、その勢いを保ちながら、キーボード奏者Danny Peyronelを正式メンバーとして迎え、より厚みのあるアレンジと、メロディックな方向性を強めている。

アルバム・タイトルの『No Heavy Petting』は、英語圏での若者文化や性的な言葉遊びを含む、UFOらしい軽妙でやや下世話なニュアンスを持っている。UFOはLed ZeppelinやDeep Purpleのような神話的な大仰さとも、Black Sabbathのような暗黒性とも異なり、ストリート感覚、酒場のロックンロール、ツアー生活の荒々しさを持つバンドだった。その一方で、Michael Schenkerのギターは非常に構築的で、クラシカルな旋律感すら感じさせる。この粗野さと洗練の対立こそ、UFOの魅力の中心である。

本作では、その二面性がよく表れている。オープニングの「Natural Thing」や「Can You Roll Her」には、ライブで映える直線的なハードロックの推進力があり、「Belladonna」や「Martian Landscape」には、叙情性と幻想性を備えたメロディックな側面がある。さらに「I’m a Loser」や「On with the Action」では、敗北感や自己破壊的な感情が、ブルース由来の重さとハードロックの音圧によって表現される。つまり『No Heavy Petting』は、単にリフの強いロック・アルバムではなく、UFOが持つ哀愁、危うさ、ロマンティシズムをより明確に打ち出した作品である。

1976年という時代背景も重要である。この頃の英国ロック界では、70年代前半のハードロックやプログレッシブ・ロックが成熟する一方で、パンク・ロックの台頭が目前に迫っていた。長尺のソロや技巧的な演奏が古いものとして批判され始める時期でもあり、ロックの価値観は大きく揺れ動いていた。しかしUFOは、過剰にプログレッシブな方向へ進むことも、流行に合わせて音を簡素化することもなく、タフなバンド・サウンドとメロディックなギター・ワークを軸に、自分たちのスタイルを磨き続けた。その結果、本作は後のNWOBHM、メロディック・メタル、アリーナ・ロックに通じる要素を多く含むアルバムとなった。

Michael Schenkerの影響力は特に大きい。彼のギターは、ブルースを基盤としながらも、音の選び方、フレージング、ヴィブラート、ソロの構成において、同時代の多くのギタリストとは異なる透明感を持っていた。Ritchie Blackmoreのクラシカルな緊張感、Jimmy Pageの黒魔術的な濁り、Tony Iommiの重厚なリフとは別の方向で、Schenkerは鋭く、歌うようで、同時に危ういギターを鳴らした。『No Heavy Petting』は、その個性がバンド・アンサンブルの中でよく機能した作品であり、後の『Lights Out』やライブ名盤『Strangers in the Night』へ向かう重要な橋渡しでもある。

また、Phil Moggのヴォーカルと作詞も見逃せない。Moggは圧倒的な高音や演劇的な表現で聴かせるタイプではなく、やや投げやりで、乾いた色気と不良性を持つシンガーである。彼の歌には、成功者の堂々とした姿よりも、酒、失敗、女、旅、孤独、苛立ちを抱えた人物のリアリティがある。UFOの楽曲が単なるギター・ヒーロー作品に終わらないのは、Moggの声が人間臭い物語性を与えているからである。

『No Heavy Petting』は、UFOの最高傑作として真っ先に挙げられることは少ないかもしれない。一般的には『Lights Out』や『Obsession』、あるいはライブ盤『Strangers in the Night』の評価が高い。しかし本作には、バンドが黄金期へ到達する直前の勢い、荒さ、試行錯誤、そして楽曲の充実が詰まっている。UFOがスペース・ロック的な初期から脱却し、英国ハードロックの中核へと進んでいく過程を理解するうえで、非常に重要な一枚である。

全曲レビュー

1. Natural Thing

アルバム冒頭を飾る「Natural Thing」は、UFOのハードロック・バンドとしての魅力を端的に示す楽曲である。シンプルで力強いリフ、前へ突き進むリズム、Phil Moggのラフなヴォーカル、そしてMichael Schenkerの鋭いギターが一体となり、オープニングにふさわしい即効性を生んでいる。

この曲の特徴は、余計な装飾を排したストレートなロックンロール感覚にある。リフは複雑ではないが、ピート・ウェイのベースが前に出ることで、曲全体に太い推進力が生まれる。アンディ・パーカーのドラムは派手に叩きすぎず、バンドを堅実に支える。そこへSchenkerのギターが切り込むことで、単なるブギー・ロックではなく、UFOらしい硬質なハードロックへと昇華されている。

歌詞のテーマは、欲望や衝動を自然なものとして肯定するロックンロール的な感覚に近い。タイトルの「Natural Thing」は、理屈ではなく身体が求めるもの、説明できない引力を示している。UFOの歌詞には、しばしば恋愛や性的なニュアンスが登場するが、それは甘美なロマンスというより、旅先の夜や一時的な関係、ツアー生活の乾いた現実と結びついている。本曲でも、そうした肉体的で即物的な感覚が前面に出ている。

ライブ映えする楽曲であり、後年のUFOのステージでも重要な位置を占めるタイプのナンバーである。アルバムの導入として、バンドの肉体性とスピード感を鮮明に提示している。

2. I’m a Loser

「I’m a Loser」は、タイトルからも分かるように、敗北感や自己否定をテーマにした楽曲である。UFOの魅力は、単なる強さや豪快さだけではなく、負け犬的な哀愁をハードロックの中に持ち込む点にある。本曲はその代表的な一例である。

音楽的には、ブルース・ロックの影響が色濃い。テンポは極端に速くなく、重く引きずるような感覚がある。ギター・リフは硬質だが、そこにはどこか沈んだ感情が漂う。Schenkerのソロは、派手な技巧誇示というより、歌の感情をさらに深める役割を果たしている。彼のフレージングは鋭いが、同時に哀愁があり、この曲の敗北感を音で具体化している。

Phil Moggのヴォーカルは、本曲の説得力を大きく支えている。彼の声は、完全に打ちのめされた人物というより、自分が負けていることを理解しながらも、それを皮肉まじりに受け止める人物のように響く。この乾いた自嘲は、UFOの歌詞世界において非常に重要である。敗北を美化するのではなく、酒場で吐き捨てるように歌う。その生々しさが曲にリアリティを与えている。

歌詞における「敗者」は、恋愛における失敗者であると同時に、社会的な成功から外れた人物でもある。1970年代ハードロックの多くは、自信や力強さを前面に出したが、UFOはそこに不安定さや傷を持ち込んだ。この曲は、本作の中でも特に人間臭い魅力を持つ楽曲である。

3. Can You Roll Her

「Can You Roll Her」は、アルバム前半の勢いをさらに加速させるハードロック・ナンバーである。タイトルには性的な含みやロックンロール的な俗語感覚があり、UFOらしい不良性が表れている。深刻なメッセージ性よりも、リフとリズムの身体的な快感を重視した曲といえる。

サウンド面では、ギターとベースの絡みが非常に重要である。ピート・ウェイのベースは単なる低音の支えではなく、曲を前へ押し出すエンジンとして機能している。彼の演奏は、UFOのステージ上のイメージと同じく、攻撃的で目立つ。Schenkerのギターはその上で鋭く切り込み、リフとソロの両面で曲に緊張感を与える。

Danny Peyronelのキーボードも、本曲の厚みに貢献している。UFOの音楽にキーボードが加わることで、サウンドは単純なギター・ロックから一歩広がり、よりアリーナ向けのスケール感を持つようになる。ただし、Deep Purple的なキーボード主導のバトルではなく、あくまでギター中心のサウンドを補強する役割である。

歌詞の内容は、ロックンロール的な欲望、誘惑、夜の場面を思わせる。UFOはここで高尚な物語を語るのではなく、ツアー・バンドとしての荒っぽい生活感を音にしている。曲の価値は、複雑な構成ではなく、リフが鳴った瞬間に身体を動かす直接性にある。

4. Belladonna

「Belladonna」は、『No Heavy Petting』の中でも特に叙情性が際立つ楽曲であり、UFOのメロディックな側面を代表する一曲である。タイトルの「Belladonna」は有毒植物の名前であり、同時に美しい女性を連想させる響きを持つ。美しさと危険、魅惑と毒性が重なるこの言葉は、曲全体の雰囲気をよく表している。

音楽的には、前の数曲に比べてテンポが抑えられ、ギターとヴォーカルのメロディが前面に出る。Schenkerのギターは、ここでリフの攻撃性よりも、旋律的な美しさを強調している。彼の演奏には、ブルース的な泣きだけではなく、欧州的な哀愁と透明感がある。この曲は、Schenkerが単なるハードロック・ギタリストではなく、メロディを組み立てる能力に優れた音楽家であることを示している。

Phil Moggの歌唱も印象的である。彼はバラード的な曲でも過度に甘くならず、どこか距離を置いた歌い方をする。そのため「Belladonna」は、ロマンティックでありながら、完全には安心できないムードを保っている。美しい対象に惹かれながらも、その危険性を知っている人物の歌として響く。

歌詞のテーマは、魅惑的だが毒を持つ存在への執着である。これは恋愛の比喩としても読めるし、破滅的な欲望そのものの象徴としても読める。UFOの音楽では、愛は救いであると同時に、しばしば消耗や転落をもたらす。本曲はその両義性を、メロディックなハードロックとして非常に美しく表現している。

5. Reasons Love

「Reasons Love」は、愛の理由、あるいは愛に理由を求めることの不確かさを扱った楽曲である。タイトルは一見シンプルだが、UFOらしい乾いた視点から見ると、愛が必ずしも純粋で明快なものではなく、状況、欲望、孤独、妥協によって揺れ動くものとして描かれている可能性が高い。

サウンドは、ミディアム・テンポのハードロックを基調としている。リフは力強いが、曲全体にはどこか浮遊感があり、単純な直線的ロックには収まらない。Danny Peyronelのキーボードが加わることで、音像に奥行きが生まれ、Schenkerのギターもその空間の中でよりメロディックに響く。

この曲で興味深いのは、UFOのハードロックが単なる力押しではなく、歌のメロディを大切にしている点である。Phil Moggのヴォーカル・ラインは派手ではないが、耳に残る。彼は声を張り上げることで感情を示すのではなく、言葉の置き方と節回しで曲のニュアンスを作る。これにより、曲は重さを保ちながらも、聴きやすいメロディック・ロックとして成立している。

歌詞における愛は、理想化されたものではない。理由を探す時点で、すでに関係は不安定であり、感情は揺らいでいる。UFOのラブソングには、幸福な成就よりも、関係のズレやすれ違いが多く描かれる。本曲もその流れにあり、アルバム中盤に人間関係の複雑さを持ち込んでいる。

6. Highway Lady

「Highway Lady」は、UFOのツアー・バンドとしての生活感と、ロード・ソング的なロマンを結びつけた楽曲である。タイトルにある「Highway」は、1970年代ロックにおいて重要なモチーフであり、自由、移動、孤独、逃避、そして終わりのない旅を象徴する。「Lady」は、その旅の中で出会う女性であると同時に、道路そのもの、あるいはロックンロール生活の誘惑を擬人化した存在としても読める。

音楽的には、スピード感と荒々しさが強い。ギター・リフは直線的で、リズム隊は曲を力強く前へ押し出す。Schenkerのギターは、走行感を持つフレーズで曲全体に勢いを与える。UFOのサウンドは、ここで非常に肉体的で、ライブ・ステージを強く意識させる。

歌詞では、旅の中での出会いと別れ、あるいは高速道路を走り続ける生活の興奮と空虚さが描かれている。ハードロックのロード・ソングはしばしば自由を賛美するが、UFOの場合、その自由には疲労や孤独もつきまとう。ホテル、会場、酒場、車窓の風景が繰り返される中で、人間関係は一時的になり、感情も安定しない。

この曲は、UFOの男臭いロックンロール的側面をよく示している。叙情的な「Belladonna」と対照的に、「Highway Lady」はより粗く、外向きで、道路の埃を感じさせる楽曲である。アルバムにスピードとライブ感を与える重要なナンバーである。

7. On with the Action

「On with the Action」は、タイトル通り、行動、騒ぎ、前進を促すようなエネルギーを持つ楽曲である。UFOの音楽には、内省的な哀愁と同時に、考える前に動くというロックンロールの衝動がある。本曲はその衝動が強く表れた一曲である。

サウンドは硬質で、リフの切れ味が際立つ。Schenkerのギターは鋭く、バンド全体を引き締めている。ピート・ウェイのベースは前のめりで、アンディ・パーカーのドラムは安定した重量感を与える。キーボードはサウンドに厚みを加えるが、曲の中心はあくまでギターとリズム隊の押しである。

歌詞のテーマは、停滞を嫌い、何かを起こそうとする姿勢にある。ただし、それは理想主義的な行動主義ではなく、もっと荒っぽく、夜の街やツアー生活に根差した「騒ぎを続ける」感覚に近い。UFOの世界では、行動することは必ずしも解決を意味しない。むしろ、止まると不安や空虚さに飲み込まれるため、動き続けるしかないという感覚がある。

本曲は、アルバム後半に再びテンションを高める役割を担っている。UFOのハードロックは、単なる様式美ではなく、移動し続けるバンドの生活感と結びついている。「On with the Action」は、その生活感を荒々しく音にした楽曲である。

8. A Fool in Love

「A Fool in Love」は、恋愛における愚かさや盲目性を扱った楽曲である。タイトルはブルースやソウルの伝統にも通じるもので、愛に振り回される人物像を率直に示している。UFOはここで、ハードロックの音圧を用いながら、古典的なラブ・ブルースのテーマを自分たちの言葉で表現している。

音楽的には、ブルース・ロック的な重みと、UFOらしいメロディックな構成が共存している。ギターは感情の起伏を担い、ヴォーカルはその中心で物語を進める。Schenkerのプレイは、曲の悲哀を過剰に飾るのではなく、的確なフレーズで補強する。彼のソロは、感情を一気に爆発させるというより、抑えられた悔しさや苛立ちを積み重ねるように響く。

歌詞のテーマは、愛によって判断力を失うことにある。自分でも愚かだと分かっていながら、相手から離れられない。この構図はブルースの伝統的な題材だが、UFOの場合はそこに1970年代ハードロックの荒れた生活感が加わる。恋愛は美しい救済ではなく、酒や旅や孤独と同じように、人を消耗させるものとして描かれる。

Phil Moggの声は、この曲に非常によく合っている。彼の歌には、悲劇的に泣き叫ぶのではなく、自分の愚かさを分かったうえでなお抜け出せない人物の諦念がある。この乾いた情感が、UFOのラブソングを独特なものにしている。

9. Martian Landscape

アルバムを締めくくる「Martian Landscape」は、本作の中でも最も幻想的で、UFOの初期にあったスペース・ロック的な感覚を思い起こさせる楽曲である。タイトルの「火星の風景」は、地球上のロード・ソングや酒場の物語から離れ、より異世界的なイメージを呼び込む。アルバムの最後にこの曲が置かれることで、『No Heavy Petting』は単なるハードロック作品にとどまらず、バンドの過去と未来をつなぐような余韻を持つ。

音楽的には、メロディックで広がりのある構成が特徴である。ギターは攻撃的なリフよりも、空間を描くような響きを重視している。キーボードも重要な役割を果たし、曲に幻想的な質感を加える。Danny Peyronelの存在が本作の音響的な広がりに貢献していることは、この曲で特に分かりやすい。

歌詞のテーマは、孤独、距離、未知の場所への視線として読むことができる。火星の風景というイメージは、SF的であると同時に、精神的な孤立の比喩でもある。人間関係やツアー生活の現実を描いてきたアルバムが、最後に宇宙的な距離感へと広がることで、UFOというバンド名が持つ本来のイメージとも接続する。

この曲は、後のUFOが追求するメロディック・ハードロックの叙情性にも通じている。派手な爆発で終わるのではなく、少し謎めいた余韻を残す点が印象的である。『No Heavy Petting』の終曲として、バンドのロックンロール的な荒さと、幻想的なメロディ感覚の両方をまとめ上げている。

総評

『No Heavy Petting』は、UFOがMichael Schenker加入後に確立したハードロック路線をさらに磨きつつ、キーボードを加えた厚みのあるサウンドへ進んだアルバムである。『Phenomenon』で方向性を固め、『Force It』で勢いを増したバンドが、本作ではよりメロディックで、よりドラマ性のある作品を作ろうとしている。その意味で本作は、次作『Lights Out』での大きな飛躍を準備したアルバムといえる。

本作の最大の魅力は、粗野なロックンロール感覚と、Michael Schenkerの洗練されたギター・ワークが同時に存在している点にある。UFOは、同時代のハードロック・バンドの中でも、特にストリート感のあるバンドだった。Phil Moggの歌詞と歌唱には、旅、失敗、酒、女、欲望、敗北、孤独といった現実的なテーマが刻まれている。一方で、Schenkerのギターは、その現実を高い音楽的次元へ引き上げる。彼のソロは、楽曲の中で物語を展開し、単なる見せ場ではなく、歌詞の感情を補完する役割を持つ。

Danny Peyronelのキーボードが加わったことも、本作の個性を形作っている。キーボードはUFOの音を過度にプログレッシブにするのではなく、楽曲の厚みと色彩を増す方向で使われている。「Belladonna」や「Martian Landscape」のような楽曲では、その効果が特に大きく、バンドが単なるリフ主体のハードロックにとどまらないことを示している。

アルバム全体の構成を見ると、「Natural Thing」「Can You Roll Her」「Highway Lady」「On with the Action」のような直線的なハードロックと、「I’m a Loser」「Belladonna」「A Fool in Love」「Martian Landscape」のような哀愁を帯びた楽曲がバランスよく配置されている。このバランスが、UFOというバンドの核心である。力強さだけでもなく、叙情性だけでもない。荒々しく鳴らしながら、どこか傷ついている。この感覚が、後のメロディック・ハードロックやヘヴィメタルに大きな影響を与えた。

1970年代英国ハードロックの歴史の中で見ると、『No Heavy Petting』は、Led ZeppelinやDeep Purpleの巨大な影に隠れがちな作品かもしれない。しかし、UFOが後続に与えた影響は非常に大きい。Iron MaidenをはじめとするNWOBHM世代、1980年代のメロディック・メタル、さらにはアメリカのハードロック・バンドに至るまで、UFOの曲作り、ツイン・ギターではなく単独リード・ギターを中心にしたドラマ作り、哀愁を帯びたリフとソロの構成は、多くのバンドに受け継がれている。

日本のリスナーにとって本作は、UFO入門としては『Lights Out』や『Strangers in the Night』に続いて聴くと、その価値が見えやすいアルバムである。完成度という点では次作以降に一歩譲る部分もあるが、バンドが黄金期へ向かう過程の熱量がはっきりと刻まれている。荒削りな部分も含めて、1970年代ハードロックの生々しい魅力を味わえる作品である。

『No Heavy Petting』は、UFOのディスコグラフィの中で過渡期に位置する作品でありながら、単なる中継点ではない。ここには、Schenker期UFOの核となる要素がすでに揃っている。硬質なリフ、歌うギター、Phil Moggの乾いた哀愁、ピート・ウェイの攻撃的なベース、ロード・バンドとしての荒々しさ、そして時折顔を出す幻想性。そのすべてが、1976年の英国ハードロックの空気の中で鳴っている。本作は、UFOが本格的な名声を獲得する直前の、勢いと危うさを封じ込めた重要なアルバムである。

おすすめアルバム

1. UFO『Force It』

『No Heavy Petting』の前作であり、Michael Schenker加入後のUFOがハードロック・バンドとして大きく成長した作品。リフの力強さ、楽曲のまとまり、Phil Moggのヴォーカルの存在感が際立つ。『No Heavy Petting』の荒々しさやブルース・ロック的な重さを理解するうえで重要な一枚である。

2. UFO『Lights Out』

UFOのスタジオ作品の中でも特に評価が高いアルバム。メロディックな完成度、アレンジの洗練、Schenkerのギター・ワークがさらに高い水準に達している。『No Heavy Petting』で提示された方向性が、よりドラマティックに結実した作品として聴くことができる。

3. UFO『Strangers in the Night』

UFOの魅力を決定的に示したライブ・アルバム。スタジオ録音以上にバンドの熱量と演奏力が伝わり、Michael Schenker期UFOの集大成として評価されている。『No Heavy Petting』収録曲のライブ的な性格を理解するうえでも欠かせない作品である。

4. Scorpions『In Trance』

Michael Schenkerの兄であるRudolf Schenkerが率いるScorpionsの初期重要作。ドイツ的な哀愁と英国ハードロックの影響が結びつき、後のメロディック・メタルへつながる要素を多く含んでいる。UFOの欧州的なメロディ感覚と比較して聴くと興味深い。

5. Thin Lizzy『Jailbreak』

1976年のハードロックを代表する作品のひとつ。UFOと同じく、男臭いロックンロール感覚とメロディックなギター表現を併せ持つ。Thin Lizzyはツイン・リード・ギターの美学を確立したバンドだが、哀愁を帯びたハードロックという点でUFOと深く通じる。

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