
発売日:1978年6月
ジャンル:ハードロック、ブルース・ロック、クラシック・ロック、プロト・メタル、メロディック・ハードロック
概要
UFOの『Obsession』は、1978年に発表されたスタジオ・アルバムであり、Michael Schenker在籍期の最終スタジオ作として、バンドの歴史において非常に重要な位置を占める作品である。UFOは1970年代英国ハードロックの中でも、ブルース・ロックの骨格、メロディアスなギター、力強いヴォーカル、ドラマティックな曲展開を融合させたバンドとして知られる。特にドイツ出身のギタリストMichael Schenkerが加入して以降、バンドは単なるブギー系ハードロックから、より欧州的で叙情的なギター・ハードロックへと大きく進化した。
『Obsession』は、前作『Lights Out』で高まった完成度を受け継ぎながら、よりアメリカ市場を意識した洗練と、同時にバンド内の緊張感を感じさせる作品である。アルバム・タイトルの「Obsession」は「執着」「取りつかれた状態」を意味し、恋愛、欲望、成功、孤独、ロックンロール生活への執着といったテーマを暗示している。UFOの音楽は、派手なロックンロールの外側に、疲労、逃避、夜の街、壊れやすい関係を抱えていることが多い。本作でも、力強いリフや華麗なギターの裏に、どこか不安定で陰のある感情が流れている。
本作のプロデューサーはRon Nevisonで、彼は『Lights Out』に続き、UFOのサウンドをより大きく、より明瞭に仕上げている。録音はアメリカ的なスケール感を持ち、ギター、ドラム、ヴォーカルがしっかり前に出る一方、ストリングスやキーボードも効果的に使われ、単なる荒々しいハードロック以上の奥行きを生んでいる。UFOはこの時期、ライブ・バンドとしての迫力と、スタジオ・アルバムとしての構築美の両方を求めていた。その結果として『Obsession』は、荒さと洗練が同居するアルバムになっている。
Michael Schenkerのギターは、本作でも中心的な役割を担っている。彼のギターは、速弾きや派手な技巧だけでなく、フレーズの歌心、音色の美しさ、緊張感のある構成力に特徴がある。彼の演奏は、ブルースを基盤にしながらも、英国ハードロックの土臭さだけではなく、ドイツ/ヨーロッパ的な冷たい叙情性を持つ。この要素がUFOのサウンドを特別なものにした。『Obsession』でも、「Only You Can Rock Me」「Cherry」「Hot ’n’ Ready」「One More for the Rodeo」などで、鋭くもメロディアスなギターが楽曲を牽引している。
Phil Moggのヴォーカルもまた重要である。彼はRobert Plantのような超人的なハイトーン・シンガーではなく、より地に足のついたロック・ヴォーカリストである。少し荒れた声で、夜の街や酒場、恋愛の疲労、ロックンロール生活の倦怠を歌う。その声には、スター的な華やかさと同時に、現実的な男の弱さがある。UFOの歌詞世界が単なるファンタジーや神話ではなく、ロード、女、酒、失敗、孤独、欲望に根ざしているのは、Moggの声と作詞感覚によるところが大きい。
『Obsession』は、UFOにとって転換点でもあった。本作発表後、Michael Schenkerはバンドを離れ、UFOは代表的なライブ・アルバム『Strangers in the Night』でこの黄金期を総括することになる。したがって本作は、Schenker期UFOのスタジオ作品としての最終章であり、バンドの緊張が高まった状態で作られた作品として聴くことができる。『Lights Out』ほど一枚の名盤としての評価が集中する作品ではないが、ハードロック・バンドとしての成熟、メロディと攻撃性のバランス、そして終わりの予感を含んだ重要作である。
日本のリスナーにとって『Obsession』は、Michael Schenkerのギターを中心に1970年代ハードロックを聴くうえで外せない一枚である。後のNWOBHMやメロディック・メタル、ジャパニーズ・メタルにもつながるギターの美学がここにはある。荒々しいだけではなく、歌えるギター、ドラマを作るギター、曲の情緒を支配するギター。その魅力を味わえる作品である。
全曲レビュー
1. Only You Can Rock Me
オープニング曲「Only You Can Rock Me」は、『Obsession』を代表する楽曲であり、UFOのハードロック・バンドとしての魅力を非常に分かりやすく示すナンバーである。タイトルは「君だけが俺を揺さぶれる」という意味で、ロックンロール的な恋愛表現と、音楽そのものへの高揚が重なっている。
サウンドは明快で、リフはキャッチー、テンポも適度に速く、アルバムの入口として理想的である。Michael Schenkerのギターは鋭く、しかし歌心があり、単なる伴奏ではなく曲の感情を引っ張る役割を果たしている。Phil Moggのヴォーカルは、情熱的でありながら過度に叫びすぎず、曲に大人のロックらしい落ち着きも与えている。
歌詞は、相手に強く惹かれ、自分を本当に動かせるのはその人だけだという内容である。ハードロックにおける恋愛表現としては王道だが、UFOの場合、その言葉には単なる若い熱狂だけでなく、少し疲れた男がなおも何かに突き動かされるようなニュアンスがある。欲望と救いが混ざるところが、Phil Moggらしい。
「Only You Can Rock Me」は、UFOのライヴでも映えるタイプの楽曲であり、アルバム冒頭からバンドの勢いを示す。シンプルで力強いが、ギターのメロディが非常に洗練されている。Schenker期UFOの魅力を凝縮した一曲である。
2. Pack It Up (And Go)
「Pack It Up (And Go)」は、タイトル通り荷物をまとめて出ていく、あるいは関係や状況から離脱する感覚を持つ楽曲である。UFOの歌詞には、旅、移動、別れ、ロード生活の疲労が頻繁に登場するが、この曲もその流れにある。
サウンドはストレートなハードロックで、リズムには前へ進む推進力がある。曲の構成は比較的コンパクトで、余計な装飾を排し、バンドの勢いを前面に出している。Schenkerのギターは、リフとソロの両方で鋭い存在感を放つ。特に短いフレーズの中に緊張感を込める能力がよく表れている。
歌詞では、何かに見切りをつけて去ることが描かれる。恋愛関係の終わりとも、街や生活への倦怠とも、バンドのロード生活とも読める。UFOの楽曲では、去ることは自由であると同時に、逃避でもある。荷物をまとめて出ていく行為には、解放感と諦めの両方がある。
「Pack It Up (And Go)」は、アルバム序盤にロックンロール的な加速感を与える楽曲である。大きな代表曲ではないが、UFOのタイトな演奏とロード・バンドらしい乾いた感覚がよく出ている。
3. Arbory Hill
「Arbory Hill」は、短いインストゥルメンタル曲であり、アルバムの中で独特の静かな役割を持つ。ハードロック・アルバムの中にこのような短い叙情的な小品が挟まれることで、作品全体に緩急が生まれている。
Michael Schenkerのギターは、ここで特にメロディアスな側面を見せる。激しくリフを刻むのではなく、短い時間の中で情景を描くように音を置いていく。彼のギターが単なる攻撃的な楽器ではなく、歌う楽器であることがよく分かる。
タイトルの「Arbory Hill」は地名のように響き、丘の風景や記憶の場所を連想させる。歌詞がないため意味は開かれているが、曲の雰囲気にはどこか牧歌的で、少し寂しい空気がある。UFOの音楽にあるロード感や孤独感が、言葉なしで表現されているようにも聴こえる。
「Arbory Hill」は短い曲ながら、『Obsession』に叙情的な余白を与える。Schenkerのギタリストとしての感性を味わう小さな間奏曲であり、次曲「Ain’t No Baby」への流れにも効果的である。
4. Ain’t No Baby
「Ain’t No Baby」は、ブルース・ロックの感覚を持つミドルテンポの楽曲であり、Phil Moggのヴォーカルの味わいがよく出た曲である。タイトルは「もう子どもじゃない」「甘く見ないでくれ」といったニュアンスを含み、成熟、意地、恋愛の駆け引きを感じさせる。
サウンドは力強いが、前の曲ほど直線的ではない。リズムには少し粘りがあり、ブルース的な重みがある。Schenkerのギターはここでも鋭いが、曲の雰囲気に合わせて、やや重心の低いフレーズを聴かせる。UFOはメロディック・ハードロックとして語られることが多いが、ブルース・ロックの土台も非常に重要である。
歌詞では、相手に対して自分を甘く見るなという態度が描かれる。恋愛関係の中で傷つけられたり、軽く扱われたりした人物が、自分はもう簡単に振り回される存在ではないと宣言しているように響く。Moggの歌い方には、強がりと傷つきやすさが同時にある。
「Ain’t No Baby」は、UFOの大人びたハードロック性を示す楽曲である。派手なスピード感よりも、グルーヴとヴォーカルの表情を重視した曲であり、アルバムにブルース的な陰影を加えている。
5. Lookin’ Out for No. 1
「Lookin’ Out for No. 1」は、『Obsession』の中でも特にメロディアスで、バラード寄りの楽曲である。タイトルは「自分自身を守る」「自分を第一に考える」という意味で、恋愛や人生の中で傷ついた人物が、他者よりも自分を守ろうとする姿勢を示している。
サウンドは穏やかで、ストリングスや柔らかなアレンジが曲にドラマティックな広がりを与えている。UFOのハードロック・バンドとしてのイメージとは異なるが、このようなバラード的表現も彼らの重要な魅力である。Schenkerのギターは控えめながら、曲の感情を美しく支えている。
歌詞では、他人に振り回されることに疲れ、自分自身を守る必要を感じる人物が描かれる。これは冷たい自己中心性ではなく、傷ついた人間が生き延びるために身につける防御である。UFOの歌詞には、ロックンロールの派手な生活の裏にある孤独や自己防衛がしばしば現れる。
「Lookin’ Out for No. 1」は、アルバムの中で感情的な深みを担う曲である。Schenker期UFOはリフやソロだけでなく、こうした叙情的な曲でこそメロディの強さを発揮する。聴き逃せない重要曲である。
6. Hot ’n’ Ready
「Hot ’n’ Ready」は、UFOらしいストレートなハードロック・ナンバーであり、ライヴ映えするエネルギーを持つ曲である。タイトルは性的なニュアンスを含みながら、ロックンロールの即時的な高揚も表している。UFOの楽曲には、こうした欲望とステージ感が重なる曲が多い。
サウンドは勢いがあり、ギター・リフは非常に力強い。Schenkerの演奏は鋭く、短いフレーズの中で曲に火をつける。リズム隊もタイトで、ステージ上で観客を引き込むための即効性がある。Phil Moggのヴォーカルも、ここではより荒く、ロックンロール的な色気を持つ。
歌詞は深い物語というより、欲望、誘い、夜の熱気を中心にしている。だが、UFOのこうした曲には、単なる軽薄さではなく、ロード生活の一夜の高揚とむなしさが同時にある。熱く準備ができているという言葉の裏には、常に次の街へ移動していくロック・バンドの刹那性がある。
「Hot ’n’ Ready」は、『Obsession』の中でアルバムを再び加速させる役割を持つ。UFOのライヴ・バンドとしての強さを感じさせる、実に骨太なハードロック曲である。
7. Cherry
「Cherry」は、キャッチーなメロディと親しみやすいリフを持つ、アルバム中盤の重要曲である。タイトルは女性名、あるいは甘く魅力的な対象を示す言葉として機能している。UFOらしいラフなロックンロール感とメロディアスな魅力が共存する楽曲である。
サウンドは明るく、リズムも軽快で、アルバムの中でも比較的聴きやすい。Schenkerのギターは、ここでは攻撃性よりも曲のフックを支える役割が強い。リフが印象的で、ヴォーカル・メロディとの相性もよい。UFOがハードロック・バンドでありながら、ポップな感覚も持っていたことを示す。
歌詞では、Cherryという人物への欲望や関心が描かれる。深い心理描写というより、ロックンロール的な女性像と夜の感覚が中心である。だが、Phil Moggの歌い方にはどこか余裕があり、単なる若い衝動ではなく、大人の遊び心として響く。
「Cherry」は、アルバムの中で軽快な魅力を持つ曲である。代表曲として突出するタイプではないが、UFOのメロディセンスとハードロックの親しみやすさを示す、よくできたアルバム曲である。
8. You Don’t Fool Me
「You Don’t Fool Me」は、相手の嘘やごまかしを見抜くことをテーマにした楽曲である。タイトルは「君は俺をだませない」という意味で、恋愛や人間関係の中の不信感が中心にある。『Obsession』というアルバム名が示すように、本作には愛や欲望だけでなく、疑い、執着、自己防衛が流れている。
サウンドは重めで、リフには少し緊張感がある。バンドは曲をタイトにまとめ、Moggのヴォーカルが言葉の棘を伝える。Schenkerのギターは、ここでも曲の不信感を増幅するように鳴る。派手に弾きまくるというより、曲の感情に合わせた鋭さがある。
歌詞では、相手の言葉や態度の裏を見抜いている語り手が描かれる。恋愛において、信頼が失われると、どんな言葉も疑わしくなる。この曲は、その状態をストレートに表現している。UFOの歌詞における男たちは、強がる一方で、傷つくことを恐れている。その弱さが、こうした不信の言葉に表れる。
「You Don’t Fool Me」は、アルバムの中でやや地味ながら、感情の暗い側面を支える曲である。ロックンロールの華やかさの裏にある疑念と疲労を伝えている。
9. Lookin’ Out for No. 1 Reprise
「Lookin’ Out for No. 1 Reprise」は、前半に登場した「Lookin’ Out for No. 1」の主題を短く再提示する楽曲である。こうしたリプライズの使用は、アルバムに統一感と物語的な回帰をもたらす。
本編の「Lookin’ Out for No. 1」が自己防衛や孤独をテーマにしたメロディアスな曲だったのに対し、このリプライズはその感情の余韻を短く残す役割を持つ。ハードロックのアルバムにおいて、このような小さな回帰があることで、作品は単なる曲の集合ではなく、感情の流れを持つアルバムとして聴こえる。
Schenkerのギターやアレンジは、ここでも曲の叙情性を支えている。言葉よりも音の余韻が重要であり、前に歌われた「自分を守る」というテーマが、再び聴き手の中に浮かび上がる。
このリプライズは短いが、『Obsession』の中で重要な構成上の役割を果たしている。アルバム全体に漂う孤独と自己防衛の感覚を、終盤でもう一度思い出させる。
10. One More for the Rodeo
「One More for the Rodeo」は、UFOのロード・バンド的な感覚が強く表れた楽曲である。タイトルは「ロデオのためにもう一つ」といった意味で、アメリカ的な荒っぽさ、旅芸人のような生活、ショーを続ける者たちの疲労と誇りを連想させる。
サウンドは骨太で、ややブギー的な感覚もある。リズムにはロックンロールの粘りがあり、Schenkerのギターは曲に鋭いアクセントを加える。アルバム終盤において、再び地に足のついたロック感を取り戻す役割を果たしている。
歌詞では、ロデオというイメージを通じて、荒々しいショーの世界や、危険を承知で続ける生き方が描かれる。これはロック・バンドそのものの比喩としても読める。ステージに立ち、観客を沸かせ、また次の街へ向かう。華やかさの裏には、疲労と消耗がある。それでも「もう一つ」やるしかない。
「One More for the Rodeo」は、UFOのロックンロール生活への視線がよく表れた楽曲である。夢と消耗、自由と労働、興奮と倦怠が混ざった、実にUFOらしい曲である。
11. Born to Lose
ラスト曲「Born to Lose」は、アルバムを非常に印象的に締めくくる楽曲である。タイトルは「負けるために生まれた」という意味で、ハードロックの終曲としては非常に陰のある言葉である。ここには、UFOの持つ敗北感、アウトロー性、自己破壊的なロマンティシズムが凝縮されている。
サウンドは重く、哀愁を帯びている。曲は大きな勝利宣言で終わるのではなく、敗北を抱えたまま進んでいくような雰囲気を持つ。Phil Moggのヴォーカルは、強がりと諦めが混ざった独特の表情を見せる。Schenkerのギターも、最後までメロディアスで、曲の悲壮感を高めている。
歌詞では、自分は最初からうまくいかない運命だったというような感覚が描かれる。ただし、これは完全な自己憐憫ではない。ハードロックにおける「負け犬」意識は、しばしば反抗や誇りと結びつく。負けると分かっていても、なお立ち続ける。その姿勢が曲の奥にある。
「Born to Lose」は、『Obsession』を締めくくるにふさわしい終曲である。アルバム全体にあった欲望、自己防衛、ロード生活、孤独、執着が、最後に敗北の美学へと収束する。Schenker期UFOのスタジオ最終章として聴くと、さらに深い余韻を持つ曲である。
総評
『Obsession』は、UFOのMichael Schenker在籍期の最後を飾るスタジオ・アルバムであり、バンドの成熟と終わりの予感が同時に刻まれた作品である。前作『Lights Out』がUFOの完成度を大きく高めた代表作だとすれば、『Obsession』はその成果を引き継ぎつつ、よりアメリカ的なスケール感と、より複雑な感情の陰影を含んだアルバムである。
本作の最大の魅力は、やはりMichael Schenkerのギターである。彼のプレイは、単なるテクニックの誇示ではない。曲の中で何を弾くべきか、どのフレーズで感情を高めるべきかを的確に理解している。「Only You Can Rock Me」や「Hot ’n’ Ready」では鋭く攻撃的に、「Lookin’ Out for No. 1」や「Arbory Hill」では叙情的に、曲ごとに異なる表情を見せる。後のメロディック・ハードロックやヘヴィメタルのギタリストたちに与えた影響は非常に大きい。
Phil Moggのヴォーカルと歌詞も、本作の重要な柱である。彼はロック・スター的な派手さよりも、ロード生活の現実感、恋愛の疲労、夜の街の匂いを歌に持ち込む。「Pack It Up (And Go)」「You Don’t Fool Me」「One More for the Rodeo」「Born to Lose」などには、ロックンロールの華やかさだけではない、移動し続ける者の孤独がある。Moggの声があることで、UFOのハードロックは単なるギター・ショーではなく、人間臭い物語を持つ音楽になる。
アルバム全体の構成も興味深い。冒頭の「Only You Can Rock Me」で勢いよく始まり、「Pack It Up (And Go)」で加速し、「Arbory Hill」と「Lookin’ Out for No. 1」で叙情的な側面を見せる。中盤には「Hot ’n’ Ready」「Cherry」のようなロックンロール感の強い曲があり、終盤では「One More for the Rodeo」「Born to Lose」によってロードと敗北の美学へ向かう。単なるヒット曲集ではなく、UFOというバンドの生活感や精神性が流れている。
『Obsession』は、1978年という時代のハードロックとしても重要である。この時期、パンクの衝撃によって旧来のハードロックは批判され、同時にNWOBHMの波が近づいていた。UFOはその中間に位置するバンドであり、ブルース・ロックのルーツを持ちながら、ギターのメロディアスさやスピード感によって、次のメタル世代にも影響を与えた。本作には、その橋渡しとしての役割がはっきりある。
ただし、『Obsession』は完璧なアルバムというより、緊張と揺らぎを含んだ作品である。『Lights Out』ほど曲単位の強度が均一ではないと感じるリスナーもいるだろう。しかし、その揺らぎこそが、本作の人間的な魅力でもある。バンドが頂点に近づきながら、内部ではすでに不安定になっている。その状態が音ににじんでいる。
日本のリスナーにとって本作は、Michael Schenkerのギターを軸に聴くこともできるし、1970年代ハードロックがどのようにメロディック・メタルへつながっていったかを理解する作品としても重要である。特に、ハードロックにおける「歌えるギター」の魅力を知るには非常に適している。派手なリフだけでなく、曲の中で感情を語るギターがここにはある。
総じて『Obsession』は、UFOの黄金期の終盤を記録した重要作である。荒々しいロックンロール、メロディアスなギター、ロード生活の孤独、敗北感、自己防衛、欲望が一枚の中に詰め込まれている。『Lights Out』やライブ盤『Strangers in the Night』と並べて聴くことで、Schenker期UFOの完成形と終幕を理解できるアルバムである。
おすすめアルバム
1. UFO『Lights Out』
『Obsession』の前作であり、UFOのスタジオ作品の中でも最も高く評価される代表作のひとつ。タイトル曲「Lights Out」や「Love to Love」など、ハードロックの力強さと叙情性が見事に融合している。『Obsession』を理解するための最重要関連作である。
2. UFO『Strangers in the Night』
Michael Schenker在籍期UFOの魅力を総括する名ライブ・アルバム。『Obsession』収録曲もライヴの熱気の中でさらに力強く響く。UFOがスタジオだけでなく、圧倒的なライブ・バンドであったことを確認できる必聴盤である。
3. UFO『No Heavy Petting』
Schenker期UFOの中でも、よりブルース・ロック色とハードロックの勢いが強い作品。『Obsession』の洗練と比較すると、バンドの荒々しい魅力がよく分かる。UFOがメロディック・ハードロックへ進化する過程を知るために重要である。
4. Michael Schenker Group『The Michael Schenker Group』
UFO脱退後のMichael Schenkerが、自身のスタイルをさらに前面に出した初期ソロ代表作。UFO時代のメロディアスなギターを好むリスナーにとって自然な次の一枚であり、Schenkerの作曲家/ギタリストとしての個性をより明確に聴ける。
5. Thin Lizzy『Jailbreak』
UFOと同時代に、メロディアスなギター・ハードロックを確立した重要作。Thin Lizzyはツイン・リード、UFOはSchenkerの単独ギターという違いがあるが、歌心のあるギター、男の孤独、ロックンロールの物語性という点で深く響き合う。

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